整形・災害外科

末梢神経―Current Concept in 2022

2022年04月臨時増刊号(65巻 05号)

企 画 大村 威夫
定 価 8,250円
(本体7,500円+税)
在庫状況 あり
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末梢神経−Current Concept in2022
I 末梢神経再生の基礎
神経細胞体におけるintrinsic growth
大村 威夫
末梢神経再生におけるextrinsic growthとハイブリッド型人工神経の開発
上村 卓也
神経筋接合部の基礎
栗本 秀
II 末梢神経疾患の診断
身体所見のとり方
澤田 智一
電気生理学的検査
国分 則人
画像診断−エコー
中島 祐子
絞扼性ニューロパチーに似た脳神経内科疾患
安藤 哲朗
脊椎疾患との鑑別
園生 雅弘
III 手術方法
神経端端縫合
神田 俊浩
神経誘導術
岡本 秀貴
神経移植術
山本 美知郎
IV 腕神経叢損傷
外傷性腕神経叢損傷の診断・治療戦略
星川 慎弥
神経移植術・神経移行術
西浦 康正
Double free muscle transfer
坂本 相哲
V 前・後骨間神経麻痺
前骨間神経麻痺・後骨間神経麻痺の病態
岩月 克之
特発性前骨間神経麻痺と後骨間神経麻痺-疫学、臨床的特徴と治療法の選択
越智 健介
特発性前・後骨間神経麻痺に対する手術療法
田尻 康人
VI 手根管症候群
手根管症候群の疫学・診断
原 友紀
手根管症候群の保存療法
宇佐美 聡
手根管症候群重症例に対する手術決定
鈴木 重哉
重度の手根管症候群に対する母指対立再建術−走路変更した短母指伸筋腱への長掌筋腱移行
木森 研治
VII 肘部管症候群、Guyon管症候群
肘部管症候群の疫学・診断
林 正徳
肘部管症候群の手術療法 -尺骨神経皮下前方移動術、単純除圧術(肘部管開放術)
内山 茂晴
重度肘部管症候群に対する腱移行術
森澤 妥
Guyon管症候群
小平 聡
VIII 胸郭出口症候群
胸郭出口症候群の診断
北村 歳男
胸郭出口症候群 -鏡視下を含めた手術療法の適応、実際
高橋 啓
IX 下肢の末梢神経障害
梨状筋症候群 -診断のポイント、保存療法・手術療法
三木 健司
足根管症候群の診断と治療
吉田 綾
X 最近の話題
末梢神経外科領域におけるロボット手術の現状と今後の展望
市原 理司
神経障害性疼痛のメカニズムと治療における最近のトピックス
谷口 彩乃
Neuroplasticityの歴史と概要
平田 仁
 この度、日本手外科学会の理事である平田 仁先生より末梢神経の特集号の編集という大役を仰せつかりました。
 私が卒後3年、今でいう専攻医として浜松医科大学付属病院へ戻った際、恩師である長野 昭名誉教授が赴任され、長野先生が専門とされた腕神経叢損傷や砂時計様くびれによる前骨間神経麻痺の治療を間近で拝見させていただき、末梢神経の魅力に取りつかれました。長野先生より学ばせていただいたことは末梢神経の治療内容のみならず、患者を診ること、そして身体所見より診断に至る姿勢です。「患者を診なさい。答えはすべて患者が持ってます」や「手術を行うからには保存療法より優れているという根拠を示しなさい。そうでなければ外科医としてメスをもつ資格はありません」は長野先生の口癖でした。
 末梢神経障害の治療を行うにあたり最大の魅力は、中枢神経とは異なり末梢神経の障害された軸索が再生可能であるということです。しかし、その軸索再生の速度は遅く、末梢の支持細胞ならびに支配筋は経時的に変性に陥り、治療にもタイムリミットが存在します。たとえどんなに素晴らしい治療を行おうと時期を逸すれば全く回復を得ることができないのです。そのため、末梢神経障害の治療には迅速かつ正確な診断力に加え、適切なタイミングを逃さない決断力も要求されてきます。
 もう一つの魅力として、他の整形外科疾患と違い、画像診断があくまでも補助診断であり、理学所見が診断のほぼすべてを占めるということです。近年診断を検査に頼り、患者を診る能力が低下する中、末梢神経の診察では患者を診ずして診断を行うことは不可能です。鑑別には脊髄病変のみならず、ときには神経内科疾患を考慮する必要があることも大変興味深い点です。
 これら末梢神経障害治療の魅力を踏まえまして、今回の編集にあたりまずは末梢神経再生の基礎で末梢神経再生のメカニズム、末梢神経再生のポイント、次に診察の要点、鑑別診断、診断のgolden standardとなる電気生理学的検査、そして各論、最後に最近のトピックスを末梢神経の分野を代表する先生方に執筆いただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
 この特集号が末梢神経障害の治療にあたる先生方の一助となり、また一人でも多くの方に興味をもっていただけるきっかけとなりましたら幸いです。

2022年4月
浜松医科大学 整形外科
大村 威夫