整形・災害外科

脊椎インストゥルメンテーションのリスクとベネフィット

2010年08月号(53巻 09号)

企 画 徳橋 泰明
定 価 2,592円
(本体2,400円+税)
在庫状況 なし
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特集 脊椎インストゥルメンテーションのリスクとベネフィット
腰椎変性後側弯症に対する脊椎骨切りまたは椎体間解離を併用した矯正固定術
種市 洋
高度脊柱変形に対する骨切り術を併用した椎弓根スクリュー法の有用性と問題点
松本 守雄
早期発症側弯症に対するgrowing rod法の現状と問題点
宇野 耕吉
椎弓根スクリュー固定後の脊椎骨折
上井 浩
高齢者脊柱変形に対するインストゥルメンテーション手術の効用と合併症対策
宮腰 尚久
プレートを併用した頚椎広範囲前方除圧固定手術における留意点
大川 淳
頚椎インストゥルメンテーション手術と椎骨動脈損傷
根尾 昌志
頚椎後弯に対する椎弓根スクリューを用いた矯正固定術
江幡 重人
■Personal View
複合性局所疼痛症候群について
堀内 行雄
■分子レベルからみた整形外科疾患
変形性関節症とGDF5(Growth and Differentiation Factor 5)の関連性
池川 志郎
■新しい医療技術
新しい臨床研究の統合型分析手法−EBM確立のために
織田 崇
■臨床
小さな軟部肉腫の治療
土谷 一晃
両側大腿骨近位部骨折の検討
森田 誠
■手術
術後長母指屈筋腱損傷予防を目的としたintermediate fibrous zoneでの方形回内筋切離による橈骨遠位端骨折掌側プレート固定
善財 慶治
■研究
Sound wave analysisによるセメントレス大腿骨ステム挿入時のハンマリング音の解析
大山 純一
■症例
脱臼性股関節症を原因とした大腿神経麻痺を伴う腸腰筋血腫の1例
小坂 正裕
下肢壊死性軟部組織感染症の2例−酸化・抗酸化動態と生命予後
小圷 知明
■医療史回り舞台
(218)「数奇の運命を辿った医師で作家の上田秋成」
篠田 達明
■整形外科用語の散歩道
Tandem gait/Tangential osteochondral fracture/Target sign
国分 正一
■整形外科手術・私のポイント
脊椎ナビゲーション手術
大友 一
◇リーマンショック以後、低迷していた企業の業績は国内外ともようやく底を打ち、反転の時期に入ってきたようです。株式の配当を増額する企業も増加してきました。しかし、ギリシア危機はハンガリー、ポルトガルなどにも影響を与え、EUの動揺はなお続いています。アメリカではメキシコ湾海底からの原油流出の影響が甚大です。わが国では首相の在任期間が1年と持たないという状況が常態となってしまいました。企業のガバナンスの中には、幾多の試練を経ながらも生き残っていく力強さとしたたかが伺えるところもありますが、日本国のガバナンスには統治者の責任とか気迫というようなものが少なくなってきようにも見えます。

◇わが国では人口減少が問題になっていますが、世界全体での人口は爆発的と言ってよい勢いで増加しています。食糧の値段は高騰し、国連の調査では飢えに苦しむ人の数は2007年の7億2300万人から2009年には10億人を突破しました。食糧品の世界総生産は年間で少なくとも3%以上の増加が必要ですが、実際の
増産量は2%前後で、世界の飢餓人口は増加を続けざるを得ないというのが現状です。緊急時のための食糧備蓄は極めてわずかしかなく、また、食糧生産に不可欠の水資源と土壌資源の開発についても、ほとんど停滞状態といってもよい状況です。これに関連して、鉄分、ビタミンA、ビタミンDなどの栄養素については、世界人口の15%が欠乏状態であり、25%で不足状態にあるとのことです。世界的な規模での食糧の増産と輸送についてのガバナンスが必要となってきているのでしょう。

◇個人の自由な創意と工夫の尊重が、発展の原動力であることは明らかです。しかし、ソ連の崩壊から20年近くが過ぎ、「見えざる手」によってコントロールされると考えられていた市場経済体制が、人々の間で新たな階層化を促進し、社会全体を制御不可能なものしていくのではないかという不安も感じられます。市場経済のリスクとベネフィットを許容したうえで、民主主義にもとづく適切なガバナンスとはどのようなものか、現実の課題として真剣に考えなければならない時期に来ているように思います。

◇今月号の特集は「脊椎インストゥルメンテーションのリスクとベネフィト」です。脊椎の強力な固定法の登場で、不安定性や変形の強い胸腰椎での頑固な疼痛や神経症状をコントロールできるようになりました。QOLの改善に大きな貢献をしたことは確かです。しかし、その一方で、新たな合併症や問題が生じてきたことも、また、誰もが認める事実でしょう。この特集では、脊椎固定術の経験豊富な方々が、各々の経験にもとづきリスクとベネフィットを考察し、脊椎インストゥルメンテーションの適正使用を示していただきました。最近流行のPro−Conの議論とは異なり、落ち着いた事実を知ることができる内容になっています。日常診療の糧にしていただければ幸いです。

(中村利孝)