整形・災害外科

TFCC損傷の病態と治療

2010年04月号(53巻 04号)

企 画 中村 俊康
定 価 2,640円
(本体2,400円+税)
在庫状況 なし
  • 定期購読のご案内
  • 次号予告
  • 最新号
  • 投稿規定
  • 臨時増刊号一覧

特集 TFCC損傷の病態と治療
高解像度MRIによるTFCC損傷の診断
田中 利和
手関節鏡によるTFCC損傷の診断と治療
安部 幸雄
掌側進入による直視下TFCC縫合術と尺骨手根骨間靱帯修復術
森友 寿夫
背側進入によるTFCC縫合術とTFCC再建術
中村 俊康
鏡視下TFCC縫合術
藤尾 圭司
TFCC損傷に対する尺骨短縮術
建部 将広
尺骨茎状突起骨折・偽関節・変形治癒の治療
小野 浩史
月状三角間(LT)靱帯損傷の治療
面川 庄平
■Personal View
脊椎脊髄外科、そして若手脊椎脊髄医育成への思い−新しい医局を運営することになって
松山 幸弘
■分子レベルからみた整形外科疾患
アンギオテンシンIIレセプター阻害剤によるマウス骨肉腫細胞の肺転移抑制効果
藤本 哲穂
■新しい医療技術
2D-3D image matching法による人工膝関節の動態解析
小林 章郎
■臨床
中手骨頚部骨折に対する治療−髄内釘固定法とプレート固定術の比較
藤谷 良太郎
■手術
上腕骨大結節骨折に対してブリッジングスーチャーテクニックを用いた手術治療
上野 栄和
■経験
陳旧性屈筋腱断裂に対する遊離腱移植術後の早期運動療法での入院期間短縮の試み
亀田 正裕
認知症が頚髄損傷患者の治療成績に及ぼす影響
保坂 泰介
股関節関節内遊離体に対する鏡視下手術の有用性
山本 泰宏
■症例
比較的まれな腰椎黄色靱帯内血腫の1例
和田 大志
■医療史回り舞台
(214)「人気漫画『Dr. コトー診療所』の先駆者」
篠田 達明
■整形外科用語の散歩道
Sacral sparing/Sclerotome/Slice fracture
国分 正一
■整形外科手術・私のポイント
膝骨軟骨移植術
中川 泰彰
◇この原稿を書いているのは、バンクーバー五輪の真最中である。

◇前半の五輪をめぐる最もホットで明るい話題は、約1年4カ月前の大けがを乗り越えた高橋大輔選手がフィギュアスケート男子で悲願のメダルを獲得したこ
とであろう。膝前十字靭帯損傷はスポーツ障害の代表的なもので、鏡視下手術の進歩により各種競技で元のレベルへの復帰は珍しくなくなっているが、なにしろ世界一を競うオリンピックでの話である。ご本人はホームページで自分で変えられないものを受けいれて、変えられるものを変えていくしかない! きっとこの経験から沢山のことを考えて、学んで、スケーターとして! 男として! 一人の人間として! 一回り大きくなって戻ってきたいと思います!!!"と力強いことを述べているが、恐らく不安に苛まれていたことは想像に難くない。

◇これほどの奇跡的回復は、ご本人の精神力だけでなくスポーツ医学の進歩、外科的治療技術の進歩、リハビリテーション、その後のトレーニングなど、障害を受けた選手の復帰を支援する全ての関係者の総力が実を結んだ結果と思われる。演技を見ていて、怪我をする以前に比べて動作がむしろ滑らかというか、力が抜けた柔らかさがあるように思えたが、高橋選手への取材報道を聞いて納得した。約半年のリハビリ期間中に膝の怪我の回復のみでなく、固いと自覚していた股関節の柔軟性改善にも取り組んだそうだ。

◇そう考えると、靭帯損傷は大変なハンディキャップになったが、この期間いわば基礎トレーニングに集中でき、よりスケールの大きい選手に生まれ変われるきっかけになったともいえる。ご本人は怪我をしてよかったとまで言っている。メダルを取れたからこそ出る言葉であろうが、順調にいっておれば経験できない精神的肉体的試練に耐え、それを克服できたことからの本心から出たものであるように思われる。転んでもただではおきないという言葉は語弊を含むが、転んだ時に見える世界は普段と異なり、新しい発見をする可能性がある。失敗が視点を切り替える良いきっかけになりそのチャンスを生かすこともあり得るということを高橋選手が身を以て証明したように感じる。関係者の方々各々が、いわゆる医者冥利に尽きる思いを持たれたと思う。我々も普段診療にあたって似たような小さい経験はしているが、病者との出会いがきっかけでお互いにマイナスをプラスに転じる経験にしたいものである。

◇今月の特集は「TFCC損傷の病態と治療」である。従来手首の捻挫の一つとして軽く扱われ、短期間の固定や外用薬で治療されていたが、難治性・慢性の手関節疼痛の原因の一つとして注目されるようになった。最近まで疼痛の原因としての認識はあっても根治的方法がないため、姑息的治療に終わることが多かったと考えられるが、近年、画像診断の進歩と病態の解明、小関節での関節鏡技術や微小外科などの進歩によって根治的治療の可能性が見えるようになってきた。本特集にてその詳細が解説されているのでご一読いただければ幸いである。

(飯田寛和)