SSI診療の最新動向を探る!
I SSI診療の現状
整形外科感染症コンサルティングとOrtho Supportの活動概要
山田 浩司
Ortho Supportの活動の中から見えてきたSSI予防と治療の問題点
山田 浩司
米国における整形外科領域感染症科医の役割と研修の実際−Mayo Clinicでの経験から
松尾 貴公
整形外科SSI診療(予防と治療)における看護師の役割
小林 菜実
II SSI予防の最新エビデンス
整形外科手術のSSI予防目的にどの抗菌薬を投与すべきか?
大野 久美子
整形外科手術の予防抗菌薬投与の適切な投与期間は?
永田 向生
整形外科手術のSSI予防にバンコマイシンパウダー局所散布は有用か?
岩田 栄一朗
人工関節手術のSSI・PJI予防に抗菌薬含有骨セメントは有用か?
池田 信介
整形外科手術のSSI予防に術前鼻腔除菌、 皮膚除菌は有用か?
今釜 崇
整形外科手術のSSI予防として術前にどの消毒薬で術野消毒を行うべきか?
梶山 史郎
整形外科手術のSSI予防としての粘着ドレープ(ポビドンヨード非含有/ポビドンヨード含有)は有用か?
辻 成佳
整形外科手術のSSI予防に希釈ポビドンヨード洗浄は有用か?
井上 大輔
整形外科手術のSSI予防にバイオクリーンルームや宇宙服は有用か?
山本 豪明
整形外科手術のSSI予防に正常体温維持は有用か?
森井 健司
整形外科手術のSSI予防に抗菌縫合糸は有用か?
坂 なつみ
整形外科手術のSSI予防に陰圧閉鎖療法は有用か?
勝見 俊介
銀コーティングインプラントのSSI予防効果
河野 俊介
III SSIの治療
整形外科医が知っておくべき、ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系抗菌薬の特徴と使い分け
浜田 幸宏
整形外科医が知っておくべき、キノロン系抗菌薬、リンコマイシン系抗菌薬、アミノグリコシド系抗菌薬の特徴と使い方
大路 剛
『MRSA感染症の診療ガイドライン2024』の改訂ポイントと、整形外科医が知っておくべき抗MRSA薬の特徴と使い方
松下 和彦
主要な抗菌薬の移行性とバイオアベイラビリティ
中島 美治
主要な抗菌薬の副作用と使用上の注意点
加藤 秀雄
SSI・PJI・FRI治療における抗菌薬の適正な投与期間は?
谷口 俊文
インプラント感染に対するリファンピシン併用療法の効果
小林 直実
IV エキスパートに聞く、私のSSI・PJI・FRI治療−THA−PJI治療編
私のTHA−PJI治療−DAIRを中心に
崔 賢民
私のTHA−PJI治療−二期的再置換術を中心に
内山 勝文
私のTHA−PJI治療−一期的再置換術を中心に
おおえ 賢一
V エキスパートに聞く、私のSSI・PJI・FRI治療−FRI編
FRIにおけるbone transportの有用性
野坂 光司
私のFRI治療−Masquelet法を中心に
本田 哲史
私のFRI治療−慢性骨髄炎に対するPapineau法
星 亨
私のFRI治療−CLAPを中心に
高原 俊介
VI バイオフィルム
バイオフィルム総論
西谷 江平
本臨時増刊号では、整形外科手術部位感染(SSI)の予防と治療をテーマにさせていただきました。まず、SSI対策については、著者の先生方に可能な限り最新のエビデンスに基づいたレビューをお願いしました。また、治療に関しては抗菌薬と外科的アプローチの両面から最新の知見をまとめていただきました。各領域のエキスパートの皆様の英知を結集し、大変素晴らしい内容にまとまったのではないかと思います。
整形外科のSSI予防は日々進化しています。絶えず新たな研究が行われ、様々な考え方が紹介されるようになりました。しかし、日々の忙しい診療の中でこれらの研究をまとめ、科学的に吟味することはとても難しいです。そのため、本増刊号のようにそれぞれの専門家がわかりやすく現状をまとめ、しかも日本語で紹介したレビューは非常に役に立つのではないかと思います。また、現時点でのエビデンスを整理し、それぞれの領域の限界を知ることはresearch gapの理解につながります。今後われわれがどのような方向に研究を進めていくべきかの道標になるのではないかと考えています。
SSI治療はさらに難しいテーマです。SSIの発生割合は低く、病態も非常に複雑であり、質の高い研究が組みにくいという背景があります。ですが、何もせず感染した患者を放置することはできません。われわれ整形外科医は、少しでも機能障害を残さないように、可能な限りスマートに、そして効果的な治療法を常に選択しなければなりません。
感染症治療の基本は抗菌薬です。抗菌薬の正しい知識なく、感染した患者を治療することはできません。しかし、整形外科関連学会で抗菌薬の使用法について系統立てた話を聞ける機会は激減しています。そこで本増刊号では、整形外科感染症診療で頻用する抗菌薬を厳選し、その特徴を初学者にもわかりやすく解説していただくようにお願いしました。また、抗菌薬の組織移行性とその副作用についても正しく理解する必要があります。これらは、国内外のガイドライン作成(『JAID/JSC感染症治療ガイド2023』、The International Consensus Meeting on Infection 2025など)に関わられた先生方を中心に執筆をお願いしました。外科的アプローチもまた重要です。様々な治療法がありますが、本増刊号では比較的治療法が確立しつつある骨折関連感染症(FRI)と股関節の人工関節周囲感染(PJI)に絞り、国内最前線でご活躍中の先生方に初学者でもわかりやすいようにその考え方、治療方針をおまとめいただきました。
本増刊号が、より質の高いSSI予防と治療の実践、そして新たなアイデアの創出に少しでもつながれば幸いです。
2025年4月
医療法人社団悠愛会 理事長、中野島整形外科 院長
一般社団法人Ortho Supportコンサルタント
山田 浩司