産婦人科の実際

女性がんサバイバー支援とライフステージケア

2026年10月臨時増刊号(75巻 11号)

企 画 佐藤 美紀子、小林 陽一、岡本 愛光
定 価 9,900円
(本体9,000円+税)
在庫状況 なし
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特集 女性がんサバイバー支援とライフステージケア
I.総論
(1)サバイバーシップ医療とは何か
小林 陽一
(2)日本におけるがんサバイバーシップの普及と今後の課題
佐藤 美紀子
(3)女性のライフステージに応じたサバイバー支援の必要性
佐藤 美紀子
(4)サバイバーシップケアにおける多職種・地域連携
鍔本 浩志
II.生殖・妊孕性の視点
(1)小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存に関する現状
森田 明里、中村 健太郎、鈴木 直
(2)治療後の妊娠・出産の実際とリスク
春日 義史
(3)女性がんサバイバーにおける不妊治療の選択肢と倫理的課題−ライフステージを見据えた妊孕性支援と患者支援体制−
加藤 弘輔、杉本 公平、正木 希世
(4)妊娠・出産を望まない患者への支援
奈良 和子
(5)治療後の月経異常・早発閉経への対応
高江 正道、鈴木 直
III.周産期・母性の視点
(1)妊娠中にがんと診断された場合の対応−薬物療法の安全性・分娩時期管理および新生児予後の包括的検討−
田畑 務
(2)がんサバイバーの妊娠・出産支援体制
笠原 里紗、北野 敦子
(3)母親としての役割と育児支援−心理的・社会的サポート−
中山 貴美子
IV.更年期・老年期の視点
(1)治療による更年期症状とそのマネジメント
高松 潔
(2)閉経後女性の性機能障害と対応
永田 知映
(3)高齢婦人科がんサバイバーにおける多疾患併存への対応−サバイバーシップケアと機能維持の視点から−
長島 文夫
(4)高齢がん患者におけるフレイル・サルコペニアの予防と運動療法−GLISによる最新定義と周術期管理への応用−
吉田 好雄、井上 大輔
(5)認知機能低下と長期的影響
尾臺 珠美、寺内 公一
V.身体的合併症への対応
(1)がん治療後の二次がんリスク管理
櫻井 健一
(2)心血管疾患・骨粗鬆症への対応
若槻 明彦
(3)「また蜂窩織炎か!」を防ぐ婦人科がん術後リンパ浮腫診療−保存療法・局所病変制御・LVAへつなぐ実践戦略−
三原 誠、原 尚子、岩永 洋平
(4)消化器・泌尿器合併症
金城 真実
(5)がんサバイバーの慢性疼痛・神経障害のマネジメント
阿部 博昭、井上 玲央、住谷 昌彦
(6)-1アピアランスケア(1)
薬物療法・放射線治療による外見変化と心理的影響
野澤 桂子
(6)-2アピアランスケア(2)
ウィッグ・スキンケア・メイクアップ支援の実際
小林 智美
(6)-3アピアランスケア(3)
手術に伴う外見変化(肥厚性瘢痕、腹壁瘢痕ヘルニア、ストーマ)とその対応
久慈 志保、鈴木 直
(6)-4アピアランスケア(4)
ボディイメージと性的健康(sexual well-being)への影響
渡邊 知映
(6)-5アピアランスケア(5)
医療者によるアピアランス支援の導入と多職種連携
藤間 勝子
VI.心理的・社会的・経済的支援
(1)がんサバイバーの精神・心理ケア
藤澤 大介
(2)性生活・パートナーシップ・親密性への影響
酒井 瞳
(3)家族・子どもへの心理社会的サポート−がんを告知された患者と家族のコミュニケーション支援と、子どもの発達段階に応じたかかわり−
伏見 幸弘
(4)がん患者の就労支援−Cancer and Work in Japan−
遠藤 源樹
(5)就労を支える社会的基盤−社会保障制度、企業制度、法制度−
池田 俊也
VII.がん種別サバイバー支援の特徴
(1)婦人科がんサバイバーに特有の課題
池永 有加、澤田 健二郎
(2)婦人科医に知ってほしい乳がんサバイバー支援の要点
片岡 明美
(3)甲状腺がんの治療と長期管理
齋藤 麻梨恵、杉谷 巌
VIII.デジタルヘルスと新技術
(1)デジタルヘルスとフェムテックによる症状管理
元木 葉子
(2)WHO分類からひも解く婦人科がんサバイバーシップとデジタル介入−ハイブリッド型サバイバーケアの構築と日本における社会実装への展望−
山口 建、的場 優介、中本 康介
(3)ビッグデータとAIによる長期フォローアップの未来像
金尾 健、曾根 献文
【企画者のことば】

 近年、がん医療は診断技術の進歩と治療選択肢の拡大により、長期生存が現実のものとなりつつあります。特に婦人科がんや乳がんは若年層から高齢者まで幅広い年齢層に発症し、女性にとって「治療後の人生」が長く続いていくことが特徴です。治療成績の向上は大きな成果である一方、がんサバイバーが直面する身体的・心理社会的課題は多岐にわたり、その内容はライフステージによって大きく異なります。
 AYA世代では、妊孕性温存や将来の妊娠・出産、治療による早発閉経の問題が重要となります。妊娠可能年齢にある患者さんでは、治療後の妊娠の安全性、育児への影響、パートナーシップや性機能の問題が顕在化します。さらに更年期・老年期に差し掛かるサバイバーにとっては、ホルモン環境の変化、骨粗鬆症や心血管疾患、フレイル、認知機能低下など、多疾患併存への対応が欠かせません。また、すべてのライフステージに共通して、リンパ浮腫、慢性疼痛、排尿・排便障害、精神的ストレス、経済的負担、就労支援、家族支援といった横断的課題が存在します。
 国際的には、サバイバーシップケアはがん医療の重要な柱として位置づけられ、NCCN や ASCO においても包括的ケアの指針が示されています。しかし、日本では医療制度・社会保障制度、地域性、文化的背景の違いから、画一的なモデルの導入は十分ではなく、女性サバイバー特有の問題に焦点を当てた包括的な議論は必ずしも十分とはいえません。
 本書では、「女性がんサバイバー支援」をライフステージの観点から体系的に整理し、生殖医療、周産期医療、更年期医療、老年医学、精神腫瘍学、緩和ケア、リハビリテーション、社会医学、デジタルヘルスなど多領域の専門家に執筆をお願いしました。婦人科がんに限らず、乳がんや甲状腺がんなど女性に多いがんも対象とし、臨床実践に直結する最新知見と、日常診療で活用できる視点を盛り込んでいます。
 治療の「成功」は、単に腫瘍を制御することにとどまりません。治療後の長い人生を、その人らしく健やかに生きるための支援こそが、真の意味でのがん医療の完成形です。
 本書が、女性がんサバイバーの生涯に寄り添う医療を発展させる一助となることを願っています。

2026年9月吉日

聖路加国際病院附属メディローカス女性診療科 医長 佐藤 美紀子
湘南鎌倉総合病院産婦人科 統括部長、杏林大学産科婦人科学 客員教授 小林 陽一
国際医療福祉大学大学院医学部 教授、山王病院 病院長、東京慈恵会医科大学 名誉教授 岡本 愛光