産婦人科の実際

ガイドラインのすき間を埋める!臨床医マエストロの技

2017年10月臨時増刊号(66巻 11号)

企 画
定 価 8,800円
(本体8,000円+税)
在庫状況 なし
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■周産期領域
GQ-1 緊急頸管縫縮術の有用性とコツは?
大槻 克文
GQ-2 早産児の帝王切開の適応は?−経腟分娩をトライするか?
安藤 一道
GQ-3 切迫早産における安静(入院・外来)の適応と有用性は?
成瀬 寛夫
GQ-4 分娩誘発における効果的な器械的頸管熟化処置は?
桑原 慶充
GQ-5 HDPの予防は?妊婦健診でみるべきポイントと患者へのアドバイスは?
藤崎 碧
GQ-6 つわりの治療は? 外来診療でできることと入院治療のポイントは?
恩田 威一
GQ-7 妊娠初期の胎児エコーのknacks and pitfallsは?
和田 誠司
GQ-8 妊娠中後期の胎児エコーのknacks and pitfallsは?−循環器
中田 雅彦
GQ-9 妊娠中後期の胎児エコーのknacks and pitfallsは?−胸部
小澤 克典
GQ-10 妊娠中期の胎児エコーのknacks and pitfallsは?−中枢神経
市塚 清健
GQ-11 妊娠中後期の胎児エコーのknacks and pitfallsは?−腹部
高橋 雄一郎
GQ-12 妊娠中後期の胎児エコーのknacks and pitfallsは?−四肢
永岡 晋一
GQ-13 胎児MRIのknacks and pitfallsは?
種元 智洋
GQ-14 周産期医療での遺伝医療は?遺伝カウンセリングを行うタイミングは?
佐村 修
GQ-15 子宮内胎児死亡例へのグリーフケアは?
竹内 正人
■婦人科領域
GQ-16 ピルを切るタイミングは?閉経期症例への対応は?
岩佐 弘一
GQ-17 婦人科腹腔鏡下手術の適応範囲は?専門医と専攻医の境界は?
堤 治
GQ-18 子宮鏡手術の工夫と適応範囲は?DNGなど薬物療法とデバイスの応用は?
齊藤 寿一郎
GQ-19 挙児希望のある女性で子宮筋腫核出術をどうするか?
小西 郁生
GQ-20 子宮内膜症性?胞の薬物療法、DNGを使うコツは?
阪埜 浩司
GQ-21 子宮頸部細胞診異常例の診断とCIN症例の経過観察
小田 瑞恵
GQ-22 子宮頸がん症例に対する妊孕性温存療法は?微小浸潤症例への対応は?
小林 裕明
GQ-23 乳癌症例への子宮内膜病変フォローはいつまで行うのか?異常を疑う症例への対応は?
進 伸幸
GQ-24 HBOCを疑う卵巣がん症例への対応は?
野村 秀高
GQ-25 進行卵巣癌症例のNAC-IDS後にレジメンを変える必要はあるか?
斎藤 元章
GQ-26 進行卵巣癌症例に腹腔鏡手術は適応となるか?
干場 勉
GQ-27 婦人科がん症例の血栓症対策のknacks and pitfallsは?
川口 龍二
■生殖領域
GQ-28 低用量アスピリン+ヘパリン療法の適応は?
佐藤 善啓
GQ-29 POIの治療、薬物療法とIVAは?
河村 和弘
GQ-30 精液所見と不妊治療の戦略は?
柳田 薫
GQ-31 不妊症における統合医療の用い方は?
井田 守
GQ-32 不妊治療の終結点、ARTの限界は?
京野 廣一
GQ-33 胚および胚盤胞の評価方法は?従来の形態学的評価とTLCによる評価方法の比較検討は?
湯本 啓太郎
GQ-34 若年がん患者に対する妊孕性温存療法の適用と要件は?
鈴木 由妃
GQ-35 胚移植カテーテル挿入困難例に対するノウハウは?
岡本 純英
GQ-36 子宮内膜症性卵巣嚢胞合併ART症例に対する治療戦略は?
藤原 敏博
GQ-37 Poor responder症例に対する排卵誘発方法は?
福田 愛作
GQ-38 Mild stimulationのポイントは?
谷田部 典之
GQ-39 着床前遺伝子診断の臨床的問題点と展望-遺伝的保因者および非保因者へのスクリーニングの課題
末岡 浩
GQ-40 不妊患者に対する心理的サポートは?
久保 春海
企画者のことば

 「医療崩壊」という言葉が世間に浸透し始めてからすでに10年以上になるのではないだろうか。産婦人科領域で最も医療崩壊という言葉を象徴するもの、そして、大きな転機になったのは大野病院事件であることは論を俟たない。この事件の報道などを通じて我々産婦人科医が知ったのは、産婦人科医療に対する世間の認識とのギャップであった。また、裁判の判決では、科学的な根拠ではなく、裁判官が考える社会通念が重要であることを知った。
 このような社会背景をもとにガイドラインの必要性が認識され、日本産科婦人科学会によって産婦人科診療ガイドラインは作成され、今では若い医師たちの教科書のような存在として用いられている。ガイドラインの存在により、これに従って診療をすすめておけば自分たちは守られる、そんな安心感を持って医療ができる時代になったのである。自分の若いころにこういうものがあればよかったな、そう思うと同時に、若い医師たちを見ていて、一種の違和感を覚えるときがあるのも事実である。
 その違和感とは何か? 今の若い医師たちが優秀であることは間違いなく、意欲にあふれている人たちばかりである。ガイドラインはほぼ丸暗記しているのではないか、と思うような者さえいる。しかし、ときにガイドラインでは対応できない症例に対した際に、「とりあえずガイドラインから逸脱したことはしていないからそれでいい」、言葉には出さないが、そんな表情が読み取れることがたまにあるのだ。
 もちろんわれわれ医療者も生活があり、自分を法的に守る努力はすべきである。だが、ガイドラインのみで多様性にあふれる症例すべての問題に対応できるわけでない。ガイドラインから一歩踏み出す勇気がわれわれには求められているのではないか。漠然とそういう思いを抱いていた。そんなある日、ドラマで弁護士が次のようなセリフを言った。「この分厚い六法全書も実はすき間だらけ。そのすき間を埋めるのが弁護士の仕事なんですよ。」まさにこのことである。われわれ医師はガイドラインのすき間を埋めることが仕事なのである。しかし、そのすき間を埋めることは容易なことではない。ベテランの各々の分野のマエストロともいうべき人だけが知っている、臨床の技、それを若い医師に伝えることが、彼らをさらに成長させ、医療のレベルアップに役立つに違いない。このような背景から本特集の企画をすることになった。本特集を読んだ若い医師たちのなかから次世代のマエストロが現れるものと信じている。
 *診療ガイドラインは、CQ(clinical question)ですが、本特集はGQ(gap question) の方が適していると思われますので、GQとしてありますことをご了解下さい。

 杉本 公平、岡本 愛光