遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン 2024年版 第3版

エビデンスをアップデート! 最新HBOC診療指針!

編 集 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構
定 価 4,180円
(3,800円+税)
発行日 2024/07/11
ISBN 978-4-307-20481-1

B5判・344頁

在庫状況 あり

多診療科・多職種・当事者がガイドライン作成に加わることで多くの意見を収集し、一人ひとりが納得のいく選択を行えるよう推奨決定に至るまでの議論をわかりやすく記載。総論・遺伝領域では多遺伝子パネル検査(MGPT)のさらなる普及を踏まえBRCA遺伝子に限定せず解説。乳癌・卵巣癌領域では領域をまたがるクエスチョン(RRSO、ART等)を統合し推奨を明瞭化。前立腺癌・膵癌・皮膚癌においても最新エビデンスを反映した。
・CQ 毎のエビデンスの確実性および推奨一覧
・本ガイドライン作成にあたって(スコ-プ)
・本ガイドラインで用いる用語の解説
・重要臨床課題・診療アルゴリズム

I.総論
総論1.遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の概要
総論2.家族歴聴取と家系図記載法
総論3.BRCA1/2 病的バリアント保持者のがん発症に関与する環境因子等

II.各論
II-1.遺伝子診断・遺伝カウンセリング領域
遺伝BQ1.どのようなクライエントにHBOC を含む遺伝性腫瘍の遺伝学的検査を勧められるか?
遺伝BQ2.HBOC を含む遺伝性腫瘍が疑われるクライエントにどのような検査を施行するか?
遺伝BQ3.HBOC における遺伝カウンセリングの役割と施行時期は?
遺伝BQ4.HBOC を含む遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリングで提供すべき情報は?
遺伝BQ5.遺伝学的検査の結果BRCA1/2 病的バリアントが検出されなかった場合にどのように対応するべきか?
遺伝BQ6.遺伝学的検査の結果が病的意義不明のバリアント(VUS)であった場合にどのように対応するべきか?
遺伝BQ7.遺伝学的検査を望まないクライエントにはどのように対応するべきか?
遺伝BQ8.生殖に関する遺伝カウンセリングにはどのように対応するべきか?

II-2.乳癌領域
乳癌BQ1.どのような乳癌患者にBRCA 遺伝学的検査を推奨するか?
乳癌BQ2.BRCA1/2 病的バリアント保持者の乳癌根治手術・リスク低減手術に乳頭温存乳房切除術(NSM)は推奨されるか?
乳癌BQ3.BRCA1/2 病的バリアント保持者の乳癌根治手術・リスク低減手術に乳房再建術は推奨されるか?
乳癌BQ4.BRCA1/2 病的バリアントを保持する乳癌患者に対し、乳房手術後放射線療法は推奨されるか?
乳癌CQ1.BRCA1/2 病的バリアントを保持する乳癌患者に対し、対側リスク低減乳房切除術(CRRM)は推奨されるか?
乳癌CQ2.乳癌未発症のBRCA1/2 病的バリアント保持者に対し、両側リスク低減乳房切除術(BRRM)は推奨されるか?
乳癌CQ3.BRCA1/2 病的バリアントを保持する乳癌患者に対し、乳房温存療法は推奨されるか?
乳癌CQ4.BRCA1/2 病的バリアント保持者には造影乳房MRI を用いたサ-ベイランスが推奨されるか?
乳癌CQ5.BRCA1/2 病的バリアントを保持する乳癌患者に対し、新規乳癌発症予防のためにタモキシフェン(TAM)は推奨されるか?
乳癌CQ6.BRCA1/2 病的バリアントを保持する転移再発乳癌に対し、プラチナ製剤の投与は推奨されるか?
乳癌CQ7.BRCA1/2 病的バリアントを保持する転移再発乳癌に対し、PARP 阻害薬の投与は推奨されるか?
乳癌CQ8.BRCA1/2 病的バリアントを保持する乳癌患者に対する周術期(術後)薬物療法に、PARP 阻害薬の投与は推奨されるか?
乳癌FQ1.BRCA1/2 病的バリアントを保持する乳癌患者に対する周術期薬物療法にプラチナ製剤の投与は推奨されるか?
乳癌FQ2.乳癌未発症のBRCA1/2 病的バリアント保持者に対し、化学予防は推奨されるか?
乳癌FQ3.BRCA1/2 病的バリアント保持者に対し、ブレスト・アウェアネスは推奨されるか?
乳癌FQ4.リスク低減乳房切除術(RRM)検体にはどのような病理検索が推奨されるか?
乳癌FQ5.男性のBRCA1/2 病的バリアント保持者に対し、乳癌の一次予防、二次予防は推奨されるか?
乳癌FQ6(乳腺・婦人科合同).BRCA1/2 病的バリアントを保持する乳癌患者で挙児希望がある場合に、生殖補助医療(ART)は推奨されるか?

II-3.卵巣癌領域
卵巣癌BQ1.どのような卵巣癌患者にBRCA 遺伝学的検査が推奨されるか?
卵巣癌BQ2.BRCA1/2 病的バリアント保持者に対するリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)の標準的な術式は?
卵巣癌BQ3.BRCA1/2 病的バリアント保持者に対し、リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)が実施されない場合、卵巣癌のサ-ベイランスの方法は何が推奨されるか?
卵巣癌CQ1(乳腺・婦人科合同).BRCA1/2 病的バリアント保持者に対し、リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)は推奨されるか?
卵巣癌CQ2.リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)の際の卵管の病理検索はSEE-FIMが推奨されるか?
卵巣癌CQ3.卵巣癌に対し初回薬物療法で用いられるプラチナ製剤併用レジメンは、BRCA1/2 病的バリアント保持者(BRCA1/2 関連卵巣癌)に対しても同様に推奨されるか?
卵巣癌CQ4.プラチナ製剤を含む初回薬物療法に奏効したBRCA1/2 病的バリアントを保持する卵巣癌患者に対し、PARP 阻害薬の維持療法が推奨されるか?
卵巣癌CQ5.BRCA1/2 病的バリアント保持者の卵巣癌発症リスク低減のために低用量経口避妊薬(OC)あるいは低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)の内服は推奨されるか?
卵巣癌CQ6.乳癌未発症のBRCA1/2 病的バリアント保持者に対し、ホルモン補充療法(HRT)は推奨されるか?
卵巣癌FQ1.リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)後の原発性腹膜癌のサ-ベイランスの方法は何が推奨されるか?
卵巣癌FQ2.BRCA1/2 病的バリアントを保持し妊孕性温存を希望する卵巣癌患者に、卵巣温存の術式や化学療法の省略は推奨されるか?
卵巣癌FQ3.BRCA1/2 病的バリアント保持者に対し、リスク低減卵管摘出術(RRS)は推奨されるか?
卵巣癌FQ4.リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)時に病理学的所見が認められた場合に追加治は推奨されるか?

II-4.前立腺癌領域
前立腺癌BQ1.どのような前立腺癌患者にBRCA 遺伝学的検査を行うか?
前立腺癌CQ1.前立腺癌が未検出であるBRCA1/2 病的バリアントの男性保持者に対し、前立腺特異抗原(PSA)によるサ-ベイランスは推奨されるか?
前立腺癌FQ1.BRCA1/2 病的バリアントを保持する前立腺癌に対し、どのような治療が推奨されるか?

II-5.膵癌領域
膵癌BQ1.どのような膵癌患者にBRCA 遺伝学的検査を行うか?
膵癌BQ2.膵癌リスクを有する生殖細胞系列病的バリアント保持者に対して有用な膵サ-ベイランスの方法は?
膵癌CQ1.BRCA1/2 病的バリアントを保持するプラチナ製剤感受性切除不能膵癌に対し、PARP 阻害薬の維持療法は推奨されるか?

II-6.皮膚癌領域
皮膚癌BQ1.BRCA1/2 病的バリアントの保持は悪性黒色腫の発症と関連があるか?

・お役立ちサイト一覧
・利益相反状況の開示について
・索引
 本ガイドラインは、2016年8月にHBOC診療体制の整備拡充を目的として発足した日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療機構の下で、ガイドライン作成部会が設立され、2021年7月に発行された「遺伝性乳癌卵巣癌 (HBOC) 診療ガイドライン2021年版」の改訂版です。
 2021年以降、遺伝医療の進歩とその医療現場への導入が急速に進み、HBOCの診断と管理においても大きな変革がみられました。次世代シーケンシング技術や多遺伝子パネル検査の普及により、BRCA1およびBRCA2以外の遺伝子変異の特定が進み、より精度の高いリスク評価が可能となっています。この進展により、患者ごとの個別化検診や医療の提供が広がっています。
 日本においても、ガイドライン初版の発行1年前の2020年にBRCA1/2の遺伝学的検査およびリスク低減手段が医療として導入され、乳癌卵巣癌と診断された患者への適用が始まりました。さらに、BRCA関連の治療薬も臨床現場で再発予防として使用され、遺伝医療を考慮しない治療計画は立てられない状況となっています。
 このような背景の中で、本ガイドラインは最新のエビデンスに基づき、HBOCの診断、管理、および治療に関する具体的な指針を提供します。これにより、医療従事者が最適な診療を提供し、個々の患者のリスクプロファイルに基づいた個別化医療の実践を目指します。また、遺伝医療の進歩とその医療現場への迅速な導入の中で、遺伝的背景をもつ個人やその家族が医療者と協働しながら、情報を整理し、それぞれの価値観を考慮した最適な選択肢を見つけられるよう支援します。
 本ガイドラインの作成には、Minds「診療ガイドライン作成マニュアル2020」の作成方法を遵守し、推奨決定の会議では当事者の意見を必ず反映するよう努めました。外部評価でも多角的な視点からの意見を反映しております。ガイドラインは完成版ではなく、日々新たなエビデンスや社会状況の変化に応じて進化し続けるものです。本ガイドラインを手にした皆様がさらに育て、活用いただけることを願っております。
 最後に、大変なご尽力をいただいた委員の皆様お一人お一人のお力がなければなしえなかったことであり、厚く御礼申し上げます。作業を遅延することなく進めていただいた各統括委員、領域リーダーの先生方、そして北野編集委員のリーダシップがなければ、進めることはできませんでした。当事者の方々にはオンラインでの長時間にわたる推奨決定会議にもかかわらず、ご自身の経験からのとても大事なご意見を賜り心からの敬意と感謝を表します。日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療機構の中村理事長、事務局の島本様、そして金原出版の宇野様に心より御礼申し上げます。

2024年7月
 
日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)
ガイドライン作成部会 委員長 山内 英子