脳腫瘍診療ガイドライン 成人脳腫瘍編 2024年版 第3版

膠芽腫、転移性脳腫瘍、PCNSLに加えてGradeII・III神経膠腫を収載

編 集 日本脳腫瘍学会
監 修 日本脳神経外科学会
定 価 4,620円
(4,200円+税)
発行日 2024/08/01
ISBN 978-4-307-20468-2

B5判・264頁・図数:6枚

在庫状況 あり

成人脳腫瘍で比較的発症頻度が高く、ある程度のエビデンスが蓄積されている膠芽腫、転移性脳腫瘍、中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)の3分野について、2019年版をもとに部分改訂し、今回新たにGradeII・III神経膠腫を収載した。推奨決定に関して統一性が得られるよう、Minds2007に準拠して作成された既存の3分野についてもMinds2014による推奨方法に変更した。関連学会、患者団体にもご協力いただき、脳腫瘍診療に臨む医療者に役立つ内容となっている。

【関連書籍】脳腫瘍診療ガイドライン 小児脳腫瘍編 2022年版
脳腫瘍診療ガイドライン 成人脳腫瘍編2024年版 について
成人脳腫瘍編の共通項目

1章 膠芽腫
改訂のポイント
総論
初発例への手術療法
 CQ 1 成人初発膠芽腫に対する手術療法はどのような意義があるか?
初発例への放射線治療
 CQ 2 成人初発膠芽腫に対する放射線治療はどのような意義があるか?
初発例への化学療法
 CQ 3 成人初発膠芽腫に対する化学療法の種類と意義はどのようなものがあるか?
光線力学的療法
 CQ 4 悪性神経膠腫(初発・再発)を含めた悪性脳腫瘍に対して、開頭腫瘍摘出術の際のタラポルフィンナトリウムと半導体レーザを用いた光線力学的療法は有効か?
交流電場腫瘍治療システム
 CQ 5 膠芽腫に対する、交流電場腫瘍治療システム(NovoTTF-100Aシステム)の使用は有効か?
再発例への治療
 CQ 6 成人再発膠芽腫に対する治療はどのように行うか?
高齢者初発例への術後治療
 CQ 7 高齢者初発膠芽腫に対して手術後どのような治療が推奨されるか?

2章 転移性脳腫瘍
改訂のポイント
総論
単発・少数個
 CQ 1-a 単発あるいは少数個の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?
多数個
 CQ 1-b 多数個の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?
薬物療法
 CQ 2 転移性脳腫瘍の治療のなかで薬物療法(分子標的治療薬を含む)はどう選択するのか?
再発例への治療
 CQ 3 再発の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?
髄膜がん腫症
 CQ 4 髄膜がん腫症に対する治療はどう選択するのか?
頭蓋骨転移
 CQ 5 頭蓋骨転移に対する治療はどう選択するのか?
ステロイド・浸透圧利尿薬
 CQ 6 転移性脳腫瘍に対するステロイドや浸透圧利尿薬はどう使用するのか?
抗てんかん薬
 CQ 7 転移性脳腫瘍に対する抗てんかん薬はどう使用するのか?

3章 中枢神経系原発悪性リンパ腫
改訂のポイント
総論
手術
 CQ 1 PCNSLの診療における手術の位置づけは?
ステロイド療法
 CQ 2-a 診断確定前にステロイド療法は施行するべきか?
 CQ 2-b 診断確定後のステロイド療法の位置づけは?
ステージング:眼科検査、全身検査
 CQ 3 脳リンパ腫に対して眼科的検査、全身精査は必要か?
寛解導入療法:(1)初発時治療
 CQ 4 PCNSLに対してどのような初発時治療が推奨されるか?
寛解導入療法:(2)多剤併用療法
 CQ 5 PCNSLに対する寛解導入療法として多剤併用療法が推奨されるか?
寛解導入療法:(3)リツキシマブ
 CQ 6 PCNSLに対してリツキシマブの併用は推奨されるか?
放射線治療の意義と実際
 CQ 7-a PCNSLに対する放射線治療ではどのような照射野が推奨されるか?
 CQ 7-b PCNSLに対する放射線治療ではどのような照射線量が推奨されるか?
大量化学療法
 CQ 8 PCNSLに対して自家幹細胞移植を伴う大量化学療法は推奨されるか?
維持療法
 CQ 9 寛解導入後の維持療法は推奨されるか?
髄注療法
 CQ 10 PCNSLに対する抗がん薬の髄注療法は推奨されるか?
高齢者治療
 CQ 11 高齢者PCNSLに対してどのような治療法が推奨されるか?
VRL治療法
 CQ 12 眼内リンパ腫にはどのような治療法があるか?
再発治療
 CQ 13 再発PCNSLに対し、どのような治療法が推奨されるか?

4章 成人GradeII・III神経膠腫
総論
課題1:手術摘出の適応と意味
 CQ 1 どのような手術を選択すべきか?
課題2:組織診断後の治療の選択
 CQ 2 手術中に腫瘍摘出腔にカルムスチン徐放性ポリマー(BCNU-wafer)を留置すべきか?
 CQ 3 手術後に放射線治療を行うべきか?
 CQ 4 手術後に化学療法を行うべきか?
課題3:経過観察の方法と再発の診断
 CQ 5 術後の経過観察と画像診断の方法と頻度はどうするか?
課題4:臨床症状への対応
 CQ 6 神経症状(てんかん、高次機能障害など)への対応はどうするか?
課題5:再発時の治療
 CQ 7 再発時の治療はどのように行うのか?
第3版 序

 今回、脳腫瘍診療ガイドラインシリーズのうち、成人脳腫瘍を対象とした診療ガイドラインの改訂第3版を上梓することとなりました。
 脳腫瘍診療ガイドラインは、2016年に成人脳腫瘍3分野「成人膠芽腫、成人転移性脳腫瘍、中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)」について第1版が刊行されたのを端緒に、2019年に同3分野について改訂第2版が発行となり、さらに、2022年に日本脳腫瘍学会のホームページで先行公開された小児脳腫瘍6分野(SEGAは改訂2版、その他は初版)が1冊に統合され発刊されました。

 このたび、成人脳腫瘍診療ガイドラインとして未作成であった「GradeII・III神経膠腫」が完成いたしました。あわせて上記の成人脳腫瘍3分野につきましても部分的な改訂を加えた改訂第3版を作成し、ご協力をいただきました関連学会によるレビューをいただき、反映いたしました。今回の改訂のポイントにつきましては、各分野のガイドラインの前文に記載されております。

 今回新たに収載された「GradeII・III神経膠腫」ガイドラインは、小児脳腫瘍分野の各ガイドラインと同様に「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」に準拠して作成されておりますが、先行発刊されている「膠芽腫、転移性脳腫瘍、PCNSL」の3分野のガイドラインは「Minds診療ガイドライン作成の手引き2007」に準拠しているため、今回の部分改訂では、推奨提示、推奨度について統一性が得られるよう、「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」による推奨方法に変更いたしております。

 脳腫瘍のWHO分類は2021年に改訂され、分子診断が前版に比べより多く採用されました。診断基準や診断名の変更に伴い、従来の臨床試験エビデンスをそのまま適用することが困難となり、新たな分類法による新規のエビデンスの創出が待たれます。それに伴い、今回発刊する成人脳腫瘍4 分野および小児脳腫瘍6分野を含めたすべての分野で、2026年を目途に全面改訂を予定いたしており、すでに新たなガイドライン作成ワーキンググループ(WG)委員・システマティックレビュー(SR)委員により「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2020」に従って改訂作業が開始され、順調に準備が進んでおります。

 今回の改訂第3 版の発刊におきましても、執筆をいただいたWG委員ならびにSRを担当された先生方の精力的なボランティア活動によって初めて完成したものです。繰り返し議論や会合を重ねられ、本ガイドライン作成にご尽力いただいた委員の皆様、ならびにご協力をいただきました関連する各学会に心より深謝申し上げます。

2024年6月
特定非営利活動法人 日本脳腫瘍学会
理事長 永根 基雄