脳腫瘍診療ガイドライン 小児脳腫瘍編 2022年版 第3版

小児脳腫瘍編として代表的な6腫瘍型を収載!

編 集 日本脳腫瘍学会
監 修 日本脳神経外科学会
定 価 4,400円
(4,000円+税)
発行日 2022/05/18
ISBN 978-4-307-20433-0

B5判・272頁・図数:10枚・カラー図数:1枚

在庫状況 あり

2019年版に収載されたSEGAを含め、代表的な6腫瘍型を収載した。小児がん領域では、脳腫瘍は白血病に次いで2番目に発症頻度が高く、最も予後不良である。また、腫瘍型によって生物学的悪性度や好発年齢・好発部位、治療反応性に大きく異なることから、小児脳腫瘍の適切な治療法に関する情報提供を目的として作成された。関連学会、患者団体にもご協力いただき、脳腫瘍診療に臨む医療者に役立つ内容となっている。

【関連書籍】脳腫瘍診療ガイドライン 成人脳腫瘍編 2024年版
脳腫瘍診療ガイドライン 小児脳腫瘍編2022年版について
小児脳腫瘍編の共通項目

1章 上衣下巨細胞性星細胞腫 subependymal giant cell astrocytoma:SEGA
総論
課題1:画像診断
CQ1 結節性硬化症と診断された患者のフォローアップにおいて、頭部画像診断(MRIまたはCT)検査は無症候性SEGAの診断率を高めるために有用か?
CQ2 非急性症候性または無症候性のSEGA患者に対して、定期的な頭部画像診断(MRIまたはCT)検査は有用か?
課題2:外科的治療
CQ3 非急性症候性または無症候性(増大あり)のSEGAに対する外科的摘出は、急性症候性となってから行われる場合と比較して有用か?
課題3:化学療法
CQ4 非急性症候性または無症候性(増大あり)のSEGAに対して、外科的切除の対象とならない場合にmTOR阻害薬投与は有用か?
課題4:放射線治療
CQ5 外科的切除の対象とならない非急性症候性または無症候性(増大あり)のSEGAに対して放射線治療は有用か?

2章 中枢神経原発胚細胞腫瘍 CNS germ cell tumor
総論
課題1:診断、分類
CQ1 中枢神経原発胚細胞腫瘍における腫瘍マーカー(AFP、HCG)の測定は有用か?
CQ2 中枢神経原発胚細胞腫瘍における病理組織診断は必要か?
課題2:外科的治療
CQ3 ジャーミノーマに対して積極的な摘出手術は必要か?
CQ4 NGGCTに対して摘出手術は必要か?
CQ5 中枢神経原発胚細胞腫瘍に合併した水頭症に対して手術は必要か?
課題3:ジャーミノーマに対する治療
CQ6 ジャーミノーマにおいて化学放射線療法は必要か?
課題4:NGGCTに対する治療
CQ7 NGGCTには化学放射線療法を行うことが有用か?
課題5:再発時の治療方針
CQ8 再発ジャーミノーマに対し救済治療を行う必要があるか?
CQ9 再発NGGCTに対し救済治療は有用か?
課題6:長期予後
CQ10 中枢神経原発胚細胞腫瘍におけるフォローアップは必要か?

3章 びまん性橋グリオーマ diffuse intrinsic pontine glioma:DIPG
総論
課題1:診断
CQ1 臨床経過、臨床所見、画像検査からDIPGと診断することは推奨されるか?
課題2:外科的治療
CQ2 腫瘍切除は推奨されるか?
CQ3 水頭症に対する手術は推奨されるか?
課題3:放射線治療
CQ4 放射線治療は行うべきか?
CQ4-1 初発のDIPGに対して、放射線治療は行うべきか?
CQ4-2 照射後再発時のDIPGに対して、放射線治療は行うべきか?
課題4:化学療法
CQ5 化学療法を行うべきか?
CQ5-1 放射線治療との併用について
CQ5-2 放射線治療後の化学療法について
CQ5-3 再発(進行)時の化学療法について

4章 視神経視床下部神経膠腫 optic pathway/hypothalamic glioma:OPHG
総論
課題1:診断
CQ1 臨床経過、臨床所見、画像検査からOPHGと診断することは推奨されるか?
課題2:遺伝的背景
CQ2 遺伝学的背景の探索は必要か?
課題3:外科的治療
CQ3 外科的治療の意義はあるか?
CQ4 腫瘍切除率は予後に影響するか?
CQ5 再発時摘出の意義はあるのか?
課題4:化学療法
CQ6 初期治療として化学療法は有効か?
CQ7 再発時の化学療法は生命予後を改善するか?
課題5:放射線治療
CQ8 放射線治療は有効か?

5章 小児・AYA世代上衣腫 ependymoma in childhood、adolescent and young adult
総論
課題1:外科的治療
CQ1 肉眼的全摘出は生命予後を改善するか?
課題2:放射線治療
CQ2 3歳以上の症例に放射線治療は有用か?
CQ3 3歳未満の症例に放射線治療は有用か?
CQ4 全脳全脊髄照射は有用か?
課題3:化学療法
CQ5 化学療法は推奨されるか?
CQ5-1 3歳以上症例に対して、化学療法は推奨されるか?
CQ5-2 3歳未満症例に対して、化学療法は推奨されるか?
課題4:再発時の治療
CQ6 再発時の適切な治療法は何か?

6章 髄芽腫 medulloblastoma
総論
課題1:外科的治療
CQ1 肉眼的全摘出は生命予後を改善するか?
課題2:神経認知機能を含む機能的予後と生命予後の向上
CQ2 手術後の予後因子は何か?
課題3:放射線治療
CQ3 全脳脊髄照射において、標準線量からの線量低減または線量増加は有用か?
課題4:陽子線治療
CQ4 放射線治療として陽子線治療は推奨されるか?
課題5:化学療法
CQ5 3歳以上の標準リスク群にはどのような術後治療が推奨されるか?
CQ6 3歳以上の高リスク群にはどのような術後治療が推奨されるか?
CQ7 3歳未満の群にはどのような術後治療が推奨されるか?
課題6:再発時の治療
CQ8 局所再発時の適切な治療法は何か?
CQ9 播種再発に対する適切な治療法は何か?
課題7:治療による晩期障害
CQ10 髄芽腫に特徴的な晩期障害とそれをきたしやすい背景因子は何か?

略語一覧
索引
 今回、新たに脳腫瘍診療ガイドラインシリーズとして、小児脳腫瘍の診療ガイドラインをここに発刊する運びとなりました。

 これまで日本脳腫瘍学会理事を中心に脳腫瘍診療ガイドライン拡大委員会が組織され、広島大学杉山一彦教授を委員長とし、成人脳腫瘍3腫瘍型について公開・発刊してまいりました。WHO脳腫瘍分類では多様な腫瘍型が規定されており、先行した3腫瘍型以外の脳腫瘍に対するガイドライン作成も順に着手されました。特に脳腫瘍は小児期に好発する腫瘍型が多く存在し、小児がん領域では脳腫瘍は白血病に次いで2番目に多く、最も予後不良であることから、小児脳腫瘍に対する適切な治療法に関する情報提供は必須と考えられます。

 その観点より6腫瘍型[上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)、中枢神経原発胚細胞腫瘍(CNS GCT)、びまん性橋膠腫(DIPG)、視神経視床下部神経膠、小児・AYA 世代上衣腫、髄芽腫]に対してそれぞれガイドライン作成ワーキンググループ(WG)を構成し、「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」に則り作業が進められました。脳腫瘍は希少がんであるが故の困難さがあるため、一部では「希少疾患など、エビデンスが少ない領域での診療ガイドライン作成」のMinds提言も参照いたしました。システマティックレビュー(SR)を基にエビデンス総体を形成し、WGでの審議により推奨内容が決定され、その結果を本ガイドラインの統括委員会で承認後、関連各種学会ならびに患者会による外部評価を実施し、最終版に反映いたしました。

 2018年12月にSEGAガイドラインがまず日本脳腫瘍学会ホームページに公開され、2021年以降残る5腫瘍型の公開に至ることができました。特に東アジア・日本に好発するCNS GCTに対するガイドラインは英文論文化され、世界に先駆けて2021年10月にNeuro-Oncology誌に発表されたことは特筆に値いたします。これらのガイドラインが日常臨床の場で小児脳腫瘍の診療にあたられているすべての方々への手引きとなれば幸いです。

 先行して発刊された成人脳腫瘍3腫瘍型の作成時と同様、今回も執筆をいただいたWG委員ならびにSRを担当された先生方の精力的なボランティア活動によって初めて完成したものです。繰り返し議論や会合を重ねられ、本ガイドライン作成にご尽力いただいた委員の皆様に心より深謝申し上げます。

令和4年4月
特定非営利活動法人 日本脳腫瘍学会
理事長 永根 基雄