ここがポイント! 脳卒中の理学療法

『ここがポイント!整形外科疾患の理学療法』の待望の姉妹編、ついに登場!

編 集 河村 廣幸
定 価 5,500円
(5,000円+税)
発行日 2018/07/01
ISBN 978-4-307-75053-0

B5判・256頁・カラー図数:615枚

在庫状況 あり

筆者らの臨床経験に基づき、実習先や現場ですぐに役立つ知識と技術を豊富な写真とともに紹介。気楽に読めるコラムを多用しながら「誰もができる片麻痺評価・治療書」をめざした。初学者でも自信と興味をもって脳卒中片麻痺へのアプローチを学べる。解剖学、神経内科学の各専門家に加え、作業療法士、言語聴覚士、義肢装具士による理学療法に役立つ知識・見るべきポイントの解説ページも見逃せない。これまでの書籍とは違った味わいを堪能できる一冊。

【関連書籍】ここがポイント! 整形外科疾患の理学療法 第3版
第I章 理学療法を行う前に知っておくべきこと
片麻痺の理学療法を行う前に知っておくべきこと
 A.身だしなみ
 B.評価のために


第II章  理学療法士が知っておくべき脳卒中片麻痺治療のための基礎知識
1.末梢の感覚受容器による運動調節と脳の血液供給の運動への影響
 A.末梢の感覚受容器による運動の調節
 B.上位中枢による運動の調節( 脳の動脈と関連する下行路を中心として)
 C.大脳半球と間脳、前循環と後循環
 D.小脳・脳幹(中脳、橋、延髄)と後循環
 E.脊髄の血液供給
 F.脳の静脈

2.脳血管障害と薬物治療
 A.脳血管障害の病型
 B.病型と治療
 C.理学療法士が知っておくべき薬物治療

3.リスク管理
 A.意識
 B.血圧管理
 C.急変時に脈を触診する意義
 D.脈拍の観察
 E.排尿・排便に伴う血圧の変動
 F.入浴に伴う血圧の変動
 G.治療環境に関して

4.急性期の摂食・嚥下
 A.急性期嚥下障害の実状(リスク)
 B.誤嚥性肺炎を誘発する4要因
 C.理学療法士に知っておいてほしい急性期の二次障害予防のためのアプローチ

5.急性期の言語聴覚療法
 A.理学療法士に知っておいてほしい言語症状
 B.重症度による初回評価の方法

6.理学療法士に知っておいてほしい作業療法と高次脳機能障害への対応
 A.ベッドサイドでの観察
 B.病室内での観察
 C.評価・治療場面と高次脳機能障害
 D.ADL トレーニング


第III章 脳卒中片麻痺治療のための検査・測定
1.カルテからの情報収集
 A.医療情報
 B.画像情報
 C.社会情報

2.医療面接(問診)
 A.接遇マナー
 B.急性期での留意点
 C.回復期・維持期での留意点

3.視診
 A.顔面の状態
 B.皮膚の状態
 C.浮腫の観察
 D.四肢・脊柱のアライメントの確認
 E.姿勢の観察

4.形態測定
 A.身長とBMI の関係
 B.四肢周径

5.反射検査
 A.伸張反射(深部反射)
 B.クローヌス(clonus)
 C.病的反射
 D.平衡反応(equilibrium reaction)
 E.軽度の麻痺の判別

6.関節可動域検査
 A.顎関節
 B.肩関節
 C.足関節
 D.足趾
 E.体幹

7.筋力検査
 A.筋力検査の方法
 B.注意点

8.総合評価
 A.脳卒中機能評価セット(Stroke Impairment Assessment Set:SIAS)
 B.National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)
 C. Fugl-Meyer(フューゲル-マイヤー)Assessment(FMA)
 D. いつ、どの評価を用いるのか?

9.運動機能評価
 A.Brunnstrom Recovery Stage(BRS)
 B.FMA 運動項目
 C.SIAS 麻痺側運動機能テスト
 D.Motricity Index

10.筋緊張検査
 Modifi ed Ashworth Scale(MAS)

11.活動評価
 A.機能的自立度評価(FIM)
 B.modifi ed Rankin Scale(mRS)

12.高次脳機能障害の評価
 A.意識レベル
 B.認知機能
 C.前頭葉機能

13.意欲の評価
 A.脳卒中後、意欲低下を引き起こす原因
 B.apathyとは
 C.意欲の評価
 D.脳卒中における意欲低下の発生頻度と予後


第IV章  理学療法士が知っておくべき装具・杖・車椅子の知識
1.装具の知識
 A.長下肢装具(KAFO)
 B.短下肢装具(AFO)
 C.装具のチェックアウト

2.杖の知識
 A.杖の種類
 B.杖の基準高
 C.杖の誤った使用方法
 D.杖の先ゴム
 E.杖の便利グッズ

3.車椅子の知識
 A.車椅子の種類と適応
 B.車椅子の選定と適合・調整
 C.片麻痺者の片手片足駆動
 D.車椅子のフットサポート操作


第V章 治療介入
1.運動療法のために
 A.運動療法の考え方
 B.「アライメントを整える」とは
 C.「分離運動を促す」とは
 D.促通手技と抑制手技
 E.筋力増強運動は悪か
 F.片麻痺と転倒
 G.介助時の注意
 H.歩行補助具

2.関節可動域運動
 A.運動の進め方のポイント 原則、進行方向
 B.運動の手順? 背臥位での他動運動を中心に
 C.運動の手順? 自己他動運動

3.ADLと直結する運動療法
 A.全身調整運動・体力回復
 B.関節可動域運動
 C.筋力増強運動
 D.基本動作練習
 E.ADLトレーニング


ちょっとヒント
・必要以上に歩容にこだわり過ぎも…?
・手の温度が患者さんに伝わる意味を考えよう
・運動器の解剖の知識を確実なものにしよう
・名人の手の動きを観察しよう
・障害を予測できるようにしよう
・掃除ロボットについて考えてみよう
・CTとMRI
・エアウェイ(airway)
・「誤嚥」と「誤飲」の違い
・対座法を行っているときの反応からわかること
・意識障害と他動運動
・身体失認と視覚
・指の名称
・私の持ち物
・左半側空間無視と電子血圧計
・麻痺側上肢の認知
・認知再教育
・箸使用の可否
・OTからPTへの要望
・症例報告会での日時紹介
・カルテ・紹介状を生かしたコミュニケーションのコツ
・理学所見
・体軸内回旋
・緊張性頚反射
・BRSを測定する前に(動作からStageを推察する)
・“動かせない”=運動障害?
・筋緊張の評価
・FIMを生かした評価のコツ
・単脚杖の便利な機能
・グリップの形状
・多点杖の特徴・その他のタイプ
・足元を見よう
・杖先ゴムの交換時期
・段差昇降を車椅子介助で行う際の方法と車椅子の移動方法
・片麻痺者の動作についての考え方
・治療ベッドの高さ
・寝返り動作介入時の操作部位
・後傾しがちな患者さんの立位練習


ドクターから一言
・branch atheromatous disease(BAD)
・「脳血管障害」?「脳卒中」?―言葉の問題
・early CT sign と出血性梗塞
・ischemic penumbra(ペナンブラ)
『ここがポイント!整形外科疾患の理学療法』(改訂第2版、2006年、金原出版)の発売以降、中枢神経疾患の理学療法についても作成してほしいと、特に学生や若い理学療法士の方々から要望が多数挙がっておりました。現在流通している中枢神経疾患に対する理学療法の書籍には、教科書のような総論的なものや、高度な技術や特殊な技法を紹介する難解なものが多くみられます。関節可動域運動を例に挙げると、片麻痺という病態を考慮し、顎関節〜頚部の関節可動域を含め詳細に説明している書籍は見あたりません(そもそも、最近では全身の関節可動域運動を説明している書籍を探すのにも苦労します)。また、「アライメントを整える」や「分離運動を促す」などはよく聞かれるフレーズですが、それ自体が何を意味するのかを説明しているものは皆無といえます。そのため、初学者が自信をもって治療を行うことは難しいのが現状かと思います。

 また、中枢神経疾患、特に脳卒中片麻痺については多くの治療体系があり、それぞれがその独自性と効果を謳っています。しかしながら、それぞれの治療体系に固執するがために、その優位性ばかりが強調され、対峙する手法はあたかも悪手のように表現しているものも見受けられます。そこで本書では特定の治療体系に偏らず、「基本は運動学」を合い言葉に、筆者らの臨床経験に基づき、直接役立つ知識と技術としての誰もができる片麻痺評価・治療書を目指しました。もちろん、本書から得た知識を基に発展的に各治療体系に進めば、より幅広い視野から知識・技術を習得できるかと思います。

 さらに本書の特徴として、解剖学、神経内科学の各専門家だけでなく、作業療法士や言語聴覚士、義肢装具士から理学療法士に知っておいてもらいたいことや理学療法に役立つ専門知識を提供してもらったことが挙げられます。病室に入った瞬間に、物品の配置から患者の障害レベルを予測するなど、これまで気にもとめていなかったことが重要な意味をもつことに気づかされることと思います。

 本書では、これまで見よう見まねで行ってきた評価や治療がより深い意味をもっていることを初学者にもわかりやすく、かつ発展的に学習を進められるように解説しました。いくつかはその根拠が明確でないものもありますが、片麻痺治療に対し興味をもって携われるように記載しました。これまでの書籍とは違った味わいを堪能していただければと思います。

 本書を作成するにあたり、原稿を早く書きなさいと大阪に来る度にお尻を叩いていただいた金原出版営業部の石塚龍樹氏、それでもかなり原稿完成に遅れを生じていたにも関わらず粘り強く笑顔で待っていただいた編集部の鈴木素子氏に深謝いたします。

2018年6月
河村 廣幸