がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版 第2版

がん治療に伴う外見変化への治療的・整容的対応、5年ぶりの改訂

編 集 日本がんサポーティブケア学会
定 価 2,860円
(2,600円+税)
発行日 2021/10/20
ISBN 978-4-307-70241-6

B5判・204頁・図数:28枚・カラー図数:6枚

在庫状況 あり

がん治療(手術・薬物療法・放射線療法)により皮膚障害や脱毛、爪の変形・変色などの外見(=アピアランス)の変化を生じた患者に医療者がより良いアピアランス支援を実践できるよう、医学・看護学・薬学・香粧品学・心理学の専門家が集結し、現在のエビデンスをもとに治療面と日常整容面のアプローチを分かりやすく解説。誤った情報に惑わされないために、がん診療に携わる医療者必読の一冊。
項目一覧
本ガイドラインについて

I.治療編
・化学療法
総論
CQ1 化学療法誘発脱毛の予防や重症度軽減に頭皮クーリングシステムは勧められるか
FQ2 化学療法中の脱毛予防や化学療法後の頭髪の再発毛促進にミノキシジル外用薬は勧められるか
FQ3 化学療法後の睫毛の再発毛促進にビマトプロストは勧められるか
FQ4 化学療法による脱毛に対する再発毛の促進に、非薬物療法の治療は勧められるか(マッサージなど)
FQ5 化学療法による皮膚色素沈着に対する予防や治療としてビタミンC の投与は勧められるか
FQ6 化学療法による皮膚色素沈着に対する予防や治療としてトラネキサム酸の投与は勧められるか
FQ7 化学療法による皮膚色素沈着に対してハイドロキノンの外用は勧められるか
CQ8 化学療法による手足症候群の予防や重症度の軽減に保湿薬の外用は勧められるか
FQ9 化学療法による手足症候群に対する治療として副腎皮質ステロイド外用薬は勧められるか
CQ10 化学療法による手足症候群の予防や発現を遅らせる目的で、ビタミンB6を投与することは勧められるか
FQ11 タキサン系薬剤による爪障害の予防に冷却療法は勧められるか

・分子標的療法
総論
BQ12 分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹に対して保湿薬の外用は勧められるか
BQ13 分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹に対して副腎皮質ステロイド外用薬は勧められるか
BQ14 分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹に対して抗菌外用薬は勧められるか
FQ15 分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹に対してアダパレンの外用は勧められるか
FQ16 分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹に対して過酸化ベンゾイルゲルの外用は勧められるか
CQ17 分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹の予防あるいは治療に対してテトラサイクリン系抗菌薬の内服は勧められるか
FQ18 分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹に対してマクロライド系抗菌薬の内服は勧められるか
FQ19 分子標的治療に伴う鼻前庭炎に対して推奨される局所治療はあるか
BQ20 分子標的治療に伴う皮膚乾燥(乾皮症)に対して保湿薬の外用は勧められるか
BQ21 分子標的治療に伴う皮膚乾燥(乾皮症)に対して副腎皮質ステロイド外用薬は勧められるか
BQ22 分子標的治療による皮膚乾燥(乾皮症)に伴う掻痒に対して抗ヒスタミン薬の内服は勧められるか手足症候群
CQ23 分子標的治療に伴う手足症候群に対して保湿薬の外用は勧められるか
FQ24 分子標的治療に伴う手足症候群に対して副腎皮質ステロイド外用薬は勧められるか
FQ25 分子標的治療に伴う手足症候群に対して創傷被覆材の使用は勧められるか
BQ26 分子標的治療に伴う爪囲炎に対して勧められる局所治療はあるか

・放射線療法
総論
BQ27 放射線皮膚炎の軽減に洗浄は勧められるか
CQ28 放射線治療による皮膚有害事象に対して保湿薬の外用は勧められるか
CQ29 放射線皮膚炎の軽減/予防のために照射部位への副腎皮質ステロイド外用薬の塗布は勧められるか
CQ30 放射線治療中にデオドラントの使用を継続してもよいか
FQ31 軟膏等外用薬を塗布したまま放射線治療を受けてもよいか


II.日常整容編
・日常整容
総論
BQ32 化学療法中の患者に対して、安全な洗髪等の日常的ヘアケア方法は何か
FQ33 再発毛の促進や脱毛予防に化粧品・医薬部外品等の使用は勧められるか
BQ34 化学療法終了後に再発毛し始めた患者や脱毛を起こさない化学療法を施行中の患者は、縮毛矯正(ストレートパーマ)やウェーブパーマを施術してもよいか
BQ35 化学療法終了後に再発毛し始めた患者や脱毛を起こさない化学療法を施行中の患者は、染毛してもよいか
FQ36 化学療法による眉毛脱毛に対してアートメイクは勧められるか
BQ37 がん薬物療法中の患者に対して勧められる紫外線防御方法は何か
CQ38 手術瘢痕の顕著化を防ぐ方法としてテーピングは勧められるか
BQ39 分子標的治療に伴う爪障害に対する日常整容的介入として勧められる方法はあるか
FQ40 タキサン系薬剤による爪変化の予防に化粧品・医薬部外品等の使用は推奨されるか
BQ41 化学療法に起因した脱毛にウィッグは勧められるか
FQ42 乳房再建術後に使用が勧められる下着はあるか
CQ43 がん治療に伴う外見変化に対する心理・社会的介入は、QOLの維持・向上等に勧められるか


III.参考資料
1.分子標的療法による皮膚症状の治療選択
2.放射線皮膚炎の治療選択
3.CTCAE

索引
 このたび、日本がんサポーティブケア学会(JASCC)は、「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版」を発刊することとなった。本ガイドラインは、がん患者の外見支援に関するガイドラインの構築に向けた研究班(班長:野澤桂子先生)によって上梓された、「がん患者に対するアピアランスケアの手引き2016年版」の改訂版である。初版発刊時の改訂規定によりJASCCが改訂を引き継がせていただくこととなった。
 脱毛や皮膚障害、瘢痕など、がん治療に伴う外見の変化は、患者の苦痛の上位にあるにもかかわらず、長い間、命と引き換えにやむを得ないものと考えられていた。しかし、患者の生存期間が延長し、働く患者が顕著に増加した現代、外見の問題にかかわるアピアランスケアは、がん治療の継続や推進のためにも、医療者による支持療法の一つといえよう。実際に、この5年間で、社会における外見の問題に対する姿勢は大きく変化した。「尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」をうたった2018年の第3期がん対策推進基本計画に初めて「アピアランス」の課題が取り上げられ、患者のQOL向上のために医療者が外見の問題を適切に支援することが求められるようになったことは、顕著な変化である。
 しかし、支持療法全般にいえることではあるが、新しい領域ゆえに、EBMの流れからは程遠い現状もある。それでも、ガイドラインを作成することは、新たな知見が生まれる契機となり、アピアランスケアの活性化が期待される。
 本ガイドラインが、治療による外見変化に悩む患者のケアにかかわる多くの医療関係者の方々に活用され、患者と医療関係者が同じ土俵に立つ対話のきっかけとなることを望む。医療者が行う診療や患者指導、情報提供において、患者とともにより良いアピアランスケアの方法を選択するための一助になれば幸いである。
 がん治療に伴う外見の変化は、その症状も治療やケア方法も多種多様であるがゆえに、医学のみならず、看護学、薬学、香粧品学、心理学というまったく異なる専門領域からの検討が必要となる。それゆえ本ガイドラインの作成は、分野を越えた諸学会や団体の理解と協力がなければ実現することができなかった。アピアランスケアガイドライン作成委員会に委員の推薦をいただいた日本皮膚科学会、日本臨床腫瘍学会、日本放射線腫瘍学会、日本がん看護学会、日本臨床腫瘍薬学会、日本香粧品学会、日本心理学会、全国がん患者団体連合会に御礼を申し上げる。また、ガイドラインの作成方法に関しては、日本医療機能評価機構Mindsの森實敏夫先生をはじめ、同機構EBM医療情報部、日本医学図書館協会のみなさまの支援をいただいた。そして、完成まで惜しみなくご尽力くださった作成委員会の委員長である野澤桂子先生をはじめとする委員・協力委員の方々、外部評価委員の会員諸氏、パブリックコメント募集に有益な示唆をくださった先生方、金原出版、すべてのみなさまに、心より感謝を申し上げる。

2021年10月
日本がんサポーティブケア学会
理事長 佐伯 俊昭
ガイドライン委員長 内富 庸介