ストーマリハビリテーション 基礎と実際 第3版

臨床現場で求められている基本に忠実なストーマリハビリテーションの教科書、完成!

編 集 ストーマリハビリテーション講習会実行委員会
定 価 6,600円
(6,000円+税)
発行日 2016/02/29
ISBN 978-4-307-70199-0

B5判・368頁・カラー図数:200枚

在庫状況 あり

永続的な内容を中心に据えたストーマリハビリテーションのスタンダードとなる成書になっている。本書は、基礎教育講習会用のテキストで、GIO・SBOs(http://www.jsscr.jp/kisokyoiku.html)に対応している。やや上級者向けのリーダーシップコースには、類書の「ストーマリハビリテーション─実践と理論」が対応し、棲み分けをはかっている。
第1章 ストーマリハビリテーションの歴史と概念
 1.ストーマリハビリテーションの歴史
  1 わが国にストーマリハビリテーションが本格的に導入されるまで
  2 わが国におけるストーマリハビリテーションの発展
 2.ストーマとストーマリハビリテーション
  1 ストーマとはなにか
  2 リハビリテーション医学におけるストーマリハビリテーションの特徴
  3 ストーマ保有者へのケア(支援)の基本
  4 ストーマ保有者が遭遇する不安と対処

第2章 皮膚と腹壁の解剖生理学とスキンケア
 1. 皮膚の解剖生理とスキンケア
  1 ストーマに関連した皮膚の構造と機能
  2 予防的スキンケアとその原則
  3 治療的スキンケア
  4 ストーマケアにおけるパッチテストの意義
 2.腹壁の解剖生理
  1 ストーマ手術と腹壁
  2 腹壁の区分
  3 腹壁の構成、解剖
  4 腹壁の働き
  5 腹膜の解剖生理

第3章 消化管疾患と消化管ストーマ
 1.ストーマに関連した消化管の解剖生理
  1 消化管の基本構造
  2 小腸の解剖生理
  3 大腸の解剖生理
  4 上部消化管の解剖生理
 2.消化管ストーマの適応と造設手段
  1 消化管ストーマの構造と造設法
  2 単孔式結腸ストーマ造設術
  3 双孔式結腸ストーマ造設術
  4 単孔式回腸ストーマ造設術
  5 双孔式回腸ストーマ造設術
  6 ハルトマンの手術
  7 腹腔鏡下におけるストーマ造設術
  8 経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneousendoscopic gastrostomy:PEG)と消化管栄養瘻
 3.ストーマ造設を必要とする疾患と病態
  1 永久的結腸ストーマを要する疾患、病態
  2 一時的結腸ストーマを要する疾患、病態
  3 永久的回腸ストーマを要する疾患、病態
  4 一時的回腸ストーマを要する疾患、病態
  5 ハルトマン手術を要する疾患と病態
  6 骨盤内臓全摘術を要する疾患と病態
  7 経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)と消化管栄養瘻

第4章 泌尿生殖器疾患と尿路変向術
 1.尿路変向に関連した泌尿生殖器の解剖生理
  1 泌尿器の構造と機能
  2 生殖器の構造と機能
 2.尿路変向術の適応と手術手技
  1 腎瘻造設術
  2 膀胱瘻造設術
  3 尿管皮膚瘻造設術
  4 回腸導管造設術
  5 尿管S 状結腸吻合術
  6 回腸新膀胱造設術(自排尿型代用膀胱形成術)
 3.尿路変向を必要とする疾患と病態の概説
  1 腫瘍性疾患
  2 炎症性疾患
  3 先天奇形
  4 外傷性疾患

第5章 小児におけるストーマ造設
 1.ストーマに関連した消化管・尿路の発生学
  1 消化管の発生学
  2 尿路の発生学
 2.消化管ストーマを必要とする疾患
  1 ヒルシュスプルング病(Hirschsprungdisease)
  2 直腸肛門奇形(鎖肛)
  3 総排泄腔外反症(膀胱腸裂)
  4 低出生体重児特有の未熟性に基づく異常
  5 小児消化管ストーマの特徴(成人と異なる点)
 3.尿路ストーマを要する疾患と造設
  1 膀胱外反症および類似疾患とストーマ
  2 神経因性膀胱機能障害とストーマ
  3 先天性尿路通過障害による腎・尿管障害
  4 その他
  5 小児尿路ストーマの特徴(成人と異なる点)

第6章 ストーマ用品
 1.ストーマ用品の分類
  1 ストーマ装具の分類と特徴
  2 皮膚保護剤
  3 ストーマ用洗腸用具
  4 失禁用採尿具
  5 アクセサリー
 2.ストーマ用品のかかえる問題点
  1 製品の安全性
  2 価格
  3 利便性
  4 商品名とパッケージ
 3.ストーマ用品を用いた危険な自己管理
  1 面板装着期間(不適切な交換間隔)
  2 ストーマ袋を洗う・中を拭くなどの行為
  3 ストーマ袋の再利用

第7章 ストーマ周囲のスキンケア
 1.ストーマ周囲皮膚障害の原因と特徴
 2.ストーマ皮膚の観察
  1 ストーマ皮膚変化の判定
  2 ストーマ皮膚の部位による判定
 3.ストーマ皮膚の予防的スキンケア
  1 排泄物による皮膚障害の回避
  2 物理刺激の軽減
  3 化学刺激の軽減

第8章 ストーマ造設術の術前管理
 1.ストーマ造設術の術前
  1 術前のストーマリハビリテーション
  2 術前の一般的処置
  3 術前のオリエンテーション
  4 術前の説明と同意
  5 消化管ストーマの術前管理と特徴
  6 尿路ストーマの術前管理と特徴
 2.小児のストーマ造設術の術前管理と特徴
  1 小児期のストーマ造設時期
  2 小児の家族を対象とした術前ケア
  3 小児の術前ストーマオリエンテーションの特徴と内容

第9章 ストーマの位置決め
 1.位置決めの意義
 2.ストーマの種類と位置
  1 消化管
  2 尿路
 3.位置決めの実際
  1 準備と時期
  2 必要物品
  3 原則
  4 手順

第10章 ストーマ造設術の術後管理
 1.術後のストーマリハビリテーション―支援にあたるものの留意点
  1 ストーマリハビリテーションに対する支援
 2.術後短期間のケア
  1 一般状態のケア
  2 開腹創・ドレーンの管理
  3 会陰創の管理
  4 ストーマケア
 3.社会復帰へ向けてのケア
  1 術後退院までのケアの目標
  2 ケア方法の確立
  3 社会復帰用装具の選択
  4 セルフケア訓練
  5 術後のスキンケア
  6 消化管ストーマケアの特徴
  7 尿路ストーマケアの特徴
  8 小児のストーマ造設術後管理の特徴
 4.化学療法中のケア
  1 化学療法の目的
  2 治療と副作用対策
  3 ストーマ保有者における化学療法中のケア
  4 曝露対策
 5.ストーマリハビリテーションにおける多職種連携
  1 医療を取り巻く環境の変化
  2 ストーマケアにおける医療連携
  3 チーム医療の本質

第11章 灌注排便法
 1.灌注排便法とは
  1 ストーマリハビリテーションにおける意義
  2 灌注排便法の利点と欠点
  3 灌注排便法の適応と不適応
 2.灌注排便法の実際
  1 指導の開始時期
  2 灌注排便法の実施
  3 実施中の主なトラブルと予防法・対処法
  4 灌注排便法を中止すべき状況

第12章 瘻孔管理
 1.瘻孔の基本
  1 瘻孔とは
  2 瘻孔の原因
  3 瘻孔の種類
  4 瘻孔の診断と評価
 2.瘻孔の全身管理
  1 消化液の生理
  2 抗生物質治療
  3 水・電解質の補給
  4 栄養管理
  5 精神・社会のケア
 3.瘻孔の局所ケア
  1 瘻孔の局所ケアの原則
  2 局所管理の実際
 4.栄養瘻

第13章 ストーマの合併症とその管理
 1.ストーマ合併症の総論・各論
  1 総論:合併症が起こると何が問題なのか
  2 各論:合併症の発生時期による分類
 2.ストーマ合併症
  1 ストーマ壊死
  2 ストーマ陥没
  3 ストーマ周囲膿瘍、ストーマ周囲蜂巣炎
  4 粘膜移植
  5 ストーマ瘻孔
  6 ストーマ脱出
  7 ストーマ出血
  8 ストーマ閉塞
  9 ストーマ粘膜皮膚離開
 3.ストーマ狭窄
  1 傍ストーマヘルニア
  2 ストーマの穿孔
  3 ストーマ腫瘤
  4 ストーマ静脈瘤
  5 ストーマの位置不良
 4.尿路ストーマの特徴的な合併症
  1 ストーマの狭窄・閉塞による尿流出障害
  2 回腸導管過長
  3 偽上皮腫性肥厚(pseudoepitheliomatous hyperplasia:PEH)
  4 尿路感染
  5 尿路結石
  6 腹腔内尿瘻
 5.小児ストーマの特徴的な合併症
  1 ストーマ自体の合併症

第14章 ストーマ保有者の皮膚障害
 1.皮膚障害の基礎
  1 疾患準備状態と素因
  2 皮膚障害と環境変化
  3 デルマドローム
  4 皮膚pH と緩衝作用・中和能
  5 皮膚障害と食事
  6 皮膚障害と糞便・尿
 2.ストーマ周囲皮膚障害
  1 ストーマ周囲皮膚炎
  2 皮膚障害と皮膚保護剤
  3 皮膚障害の要因からみた技術対応
 3.スキンケア
  1 スキンケアが困難な場合
  2 高度の皮膚障害に対するスキンケア
  3 薬剤(外用薬)の使用
  4 管理時期からみたスキンケア
  5 局所管理の因子を考慮したスキンケア

第15章 骨盤内手術に伴う下部尿路機能障害
 1.正常の排尿様式と尿路の神経支配
 2.術後下部尿路機能障害の原因
 3.排尿状態の変化(尿流動態検査)
  1 主な尿流動態検査と下部尿路機能障害
 4.下部尿路機能障害による全身・上部尿路への影響
 5.術後下部尿路機能障害の治療方針
  1 排尿障害に対する治療
  2 尿失禁に対する治療
 6.清潔間欠自己導尿法(CiC)
  1 残尿の定義と測定法
  2 自己導尿の適応
  3 自己導尿の実際
  4 自己導尿の回数決定
  5 自己導尿を中止してよい条件
 7.薬物療法
  1 排尿障害
  2 尿失禁
 8.外科的治療
  1 排尿障害
  2 尿失禁
 9.下部尿路機能障害の予防(自律神経温存法)
  1 原理
  2 実際
  3 成績

第16章 骨盤内手術に伴う性機能障害
 1.術後の性機能障害
  1 性生活の援助の重要性
  2 ストーマ保有者の性機能障害
 2.男性の術後性機能障害
  1 性機能障害を生ずる機序
  2 性機能障害の分類
  3 性機能障害の診断
  4 性生活における心理面の重要性
  5 骨盤内手術と性カウンセリング
  6 性機能障害の対処法
  7 ストーマ造設者の性交体位
  8 性機能障害の予防(自律神経温存法)
  9 ストーマ保有者に対する看護側の対応
 3.女性の術後性機能障害
  1 女性性反応と女性性機能障害の変遷
  2 女性性機能障害とセクシュアリティ
  3 女性性機能障害の実態
  4 原因
  5 対策
 4.ストーマ保有者の妊娠・出産
  1 ストーマ保有者の妊娠・出産の実情
  2 ストーマ保有者の妊娠・出産への対応とケア
 5.性機能障害に対する相談窓口
  1 ストーマ保有者の身近にいる医療者
  2 WOCNとストーマ外来
  3 婦人科外来
  4 泌尿器科外来、女性泌尿器科外来
  5 性カウンセリング室
  6 協働・連携の必要性

第17章 ストーマ保有者の生活支援
 1.日常生活の留意点
  1 食事
  2 衣服
  3 入浴
  4 睡眠
  5 運動(スポーツ)
  6 通学・労働
  7 旅行
  8 ストーマ用品の管理方法
  9 緊急に病院に連絡すべき事態
 2.原疾患の増悪再発などへの対処
 3.ストーマ保有者の会(患者会)の意義と役割
  1 「ストーマ保有者の会」の歴史
  2 「ストーマ保有者の会」の種類
  3 オストミービジター

第18章 ストーマ外来の意義と役割
 1.ストーマ外来の意義
  1 ストーマ外来の目的
  2 特殊性
 2.ストーマ外来の実際
  1 ストーマ外来の開設と運営 314
  2 診療報酬
  3 ストーマ外来の診療・ケア・リハビリテーション
  4 フォローアップと継続ケアの必要性、ストーマ外来受診の考え方 318
  5 術前外来オリエンテーション
  6 ストーマ外来の問題点

第19章 ストーマ保有者が活用できる社会保障制度と福祉サービス
 1.社会保障制度と福祉サービスとは
  ストーマ保有者の活用できる社会福祉制度の変遷
 2.医療社会資源を用いる意義と諸制度
  1 障害者総合支援法
  2 公的年金制度
  3 生活保護法による医療費と治療材料の現物給付
  4 児童福祉法
  5 難治性特定疾患
  6 介護保険
  7 訪問看護
  8 介護職によるストーマ装具交換

第20章 一時的ストーマの造設と閉鎖
 1.一時的消化管ストーマ
  1 一時的ストーマが造設される状況
  2 閉鎖の要件
  3 閉鎖時期
  4 閉鎖手技
  5 合併症
  6 括約筋温存術における一時的ストーマ閉鎖後の排便状況
  7 閉鎖前後のストーマ保有者への支援
 2.小児ストーマ
  1 ヒルシュスプルング病
  2 直腸肛門奇形
  3 新生児消化管穿孔に対するストーマ造設と閉鎖
●第3版の発刊にあたって ― 序

「今、臨床現場で本当に求められているのは基本的なことがしっかり書かれているストーマリハビリテーションの教科書なのです」
これは一昨年夏、本書の編集をしているストーマリハビリテーション講習会実行委員会の席上での、指導的立場にある看護職の講師の発言である。実はこの時の議題は出版から10年を経過した「ストーマリハビリテーション―実践と理論」の改訂作業をしたらどうか、というものであった。
この発言がきっかけになって、会議では「先ず、『ストーマケア―基礎と実際 改訂第2版』をさらに改訂しよう」という方向性が打ち出された。第2版が上梓されてから既に4半世紀が過ぎ、この間、入院期間の短縮に伴って入院中のストーマセルフケアの指導時間が大変短くなった。それに伴ってストーマ外来の役割も術後のケア中心から、術前ケアにも重きが置かれるようになっている。また装具、とくに新たな皮膚保護剤の開発も進んでいる。さらに分子標的薬を中心とした悪性腫瘍に対する化学療法が進歩した結果、副作用としての皮膚障害が新たな患者さんの悩みになっている。緩和ストーマという概念も導入されてきた。このように他の医学・看護の領域と同様に、ストーマリハビリテーションも変革が著しく、旧版には多くの変更が求められている。
 そこで実行委員会では、まず「ストーマケア―基礎と実際 改訂第2版」を抜本的に見直し、新たな教科書となるべく「ストーマリハビリテーション―基礎と実際 第3版」を刊行することとした。なお将来的には「ストーマリハビリテーション―実践と理論」も改訂版を出版する予定である。
 ストーマリハビリテーション―基礎と実際 第3版は以下のような考えのもとに刊行した。

1.新しいことも必要だが、永続的な内容(今後もあまり変わらないこと)を中心に据えて、ストーマリハビリテーションのスタンダードとなる成書を目指した。
2.各地で開催されているストーマリハビリテーションの基礎的な講習会のテキストとしても役立つことも目指している。したがって、ストーマリハビリテーション基礎教育講習会用の学習目標(http://www.jsscr.jp/kisokyoiku.html)を網羅したものとした。
3.読者としてはストーマリハビリテーションをこれから学んでいこうという医師、看護師を想定しているが、在宅医療を担っている医師、訪問看護師、初期研修医なども対象としている。
4.ストーマケアだけでなく、ストーマリハビリテーションの成書にしたいと、名称も変更した。

 なお、消化管ストーマの造設に関しては「消化管ストーマ造設の手引き」が刊行されている。本書では尿路ストーマ、小児ストーマ、瘻孔なども広く取り上げ解説している。用語に関しては「ストーマリハビリテーション学用語集 第3版」に準拠するように努めた。また、「ストーマリハビリテーション―実践と理論(やや上級者向けの内容が多い)」とは棲み分けをはかったつもりである。
 本書がこれからのストーマリハビリテーションの発展の新たな礎となり、ストーマ保有者のQOLの向上につながれば幸いである。

平成28年2月

ストーマリハビリテーション講習会実行委員会
池内健二、石川眞里子、板橋道朗、作間久美、高波眞佐治、船橋公彦、籾山こずえ、安田智美、渡邊成(編集委員長)※五十音順