SCOM 037 入門顎関節症治療のための咬合分析と診断

咬合理論の顎関節症治療をわかりやすく解説!!

監 修 武田 泰典
著 者 外川 正
定 価 3,080円
(2,800円+税)
発行日 2009/06/25
ISBN 978-4-307-50537-6

A5判・112頁・図数:69枚

在庫状況 なし

本書のテーマは、いわゆる「顎関節症」に対して、正しい疾患名を付与するとともに、その診断に基づく治療方法を確立することにある。多くの歯科臨床医から、顎関節症はよくわからない疾患として認識されてきた。その原因は、顎関節が他の関節とは異なる特徴をもつ関節であり、顎関節が咬合という複雑な機能によりさまざまな影響を受けているということ、さらに、いわゆる「顎関節症」にはさまざまな疾患が含まれていて、歯科医療機関と他診療科との連携が欠かせない疾患もそのなかに含まれていることなどから、治療が困難な疾患と思われているからに他ならない。したがって、いわゆる「顎関節症」の診断・治療への道を開くためには、それらの課題を整理し、こなしていくことが大切である。このところ、いわゆる「顎関節症」に関する国際的専門書の改訂版が相次いで出版され、日本語訳も出版されてきている。それらの専門書は、いわゆる「顎関節症」の診断に際して、咬合理論に基づく咬合分析の必要性を示唆している。しかし、それらの書籍による示唆が、日本の研究者や顎関節専門医の議論に十分反映されているとは言い難い。その結果、歯科医師の多くは、顎関節症に対して根拠の乏しい対症療法を施しているにすぎないのである。歯科医師は、顎関節症治療の最初のステップとして、その疾患を歯科医療機関で取り扱うのか、他診療科に診察を依頼するのか、他診療科に対して連携医療を提案するのかを判断する必要がある。その見極めは、患者が不正咬合をもっているかどうかにより判断される。要するに、患者の不正咬合が否定された場合、その疾患は咬合とは無縁の疾患である可能性が高いので、歯科医療機関にて診断・治療することは適切ではないことになる。歯科医師のとるべき次のステップは、患者を適切な他診療科に診察依頼することである。このように、咬合理論に基づく咬合分析は、いわゆる「顎関節症」の治療の最初のステップにおいて重要な役割を担う。しかし、咬合理論に基づく咬合分析を修得することは簡単なことではなく、時間と労力をかけて分厚く難解な専門書を読破しなければならない。本書は、咬合理論に基づく咬合分析についてイラストを用いてわかりやすく簡潔に解説している。本書が、咬合理論への読者の関心を高め、学びたいと思うきっかけを作り、専門書への橋渡しとして役に立つことを期待する。いわゆる「顎関節症」の治療にあたっては、耳鼻科あるいは心療内科に診察依頼または連携が不可欠なものがある。そのため、歯科医師は、歯科医療機関のみならず、関連する隣接診療科の医師との交流、情報交換を重視し、信頼関係の構築に努力することが大切である。
(「序」より)
1 はじめに
2 顎関節
 1. 顎関節の構造
 2. 顎関節の運動
 3. 歯、咀嚼筋、顎関節の関係
 4. 開口と顎関節
3 不正咬合とは
 1. 形態的不正咬合
 2. 機能的不正咬合
4 不正咬合の原因
 1. 形態的不正咬合の原因
 2. 機能的不正咬合の原因
5 機能的不正咬合に起因する疾患
 1. 歯の損傷
 2. 歯の周囲組織の損傷
 3. 顎関節周囲の筋肉障害
 4. 顎関節自体の障害
 5. 精神・心機構の障害
6 顎関節症
 1. 咀嚼筋の疾患
 2. 顎関節内の疾患
 3. その他の器官の疾患
7 咬合理論
 1. 咬合理論
 2. 咬合理論の歴史
8 顎関節症の診察
 1. 問診
 2. 視診
 3. 触診
 4. 聴診
 5. X線診査
 6. 咬合分析
 7. 調節性咬合器に装着した診断用模型
 8. 下顎運動の記録
 9. その他
9 顎関節症の診断・治療の手順
 1. 咬合分析と咬合調整
 2. 疾患の部位と病態および進行程度の特定
 3. 原因の特定
 4. 治療方法の選択
10 咬合調整の実際
 1. 咬合調整の原則
 2. 中心位における咬合干渉の除去
 3. 側方位における咬合干渉の除去
 4. 前方位における咬合干渉の除去
 5. 前歯誘導の調和
11 治療効果の得られる顎関節症
 1. 診察方法
 2. 確定診断
 3. 治療法
 4. いわゆるスプリント療法
12 治療効果が得られにくい顎関節症
 1. 関節円板前方転位の種類
 2. 関節円板前方転位の原因
 3. 関節円板前方転位の治療
13 難治性顎関節症
 1. 非復位型関節円板前方転位癒着
 2. 変形性顎関節症
14 その他の顎関節症治療
 1. 全体的な咬合面再構成
 2. 外科手術
15 日本の顎関節症治療の現状
 1. 医原性疾患としての顎関節症患者
 2. 疾患名の間違った使い方
 3. 顎関節症治療の実態
文献
索引