学校薬剤師のための学校環境衛生試験法

改正「学校環境衛生基準」に基づいた、学校薬剤師必携の書!

編 集 日本薬学会 / 日本薬剤師会
定 価 3,960円
(3,600円+税)
発行日 2018/09/05
ISBN 978-4-307-47046-9

B5判・184頁・図数:75枚・カラー図数:15枚

在庫状況 あり

日本薬学会環境・衛生部会と日本薬剤師会学校薬剤師部会が初めて共同編集した決定版。
改正「学校環境衛生基準」に準拠し、「教室等の環境」「飲料水」「水泳プール」の各検査項目について原理・手順をわかりやすく解説し、測定の際の注意点、測定値の正しい評価にもふれた。
現場を熟知する現役の学校薬剤師が執筆した実践的な内容はすぐに応用でき、学校に的確な指導助言ができる。巻末には、薬剤師国家試験で出題された学校環境衛生基準の測定項目に関連した問題を掲載!
第1 教室等の環境に係る試験法
[1] 換気および保温等
1 試料の採取の基本事項
2 各試験法
(1)換気(二酸化炭素)
(2)温度
(3)相対湿度
(4)浮遊粉じん
  1.重量濃度測定法(Low-Volume Air Sampler法)
  2.相対濃度測定法
(5)気流
  1.カタ温度計による測定
  2.微風速計による測定
(6)一酸化炭素
(7)二酸化窒素
  1.ザルツマン法
  2.化学発光法
  3.簡易法
(8)揮発性有機化合物:ホルムアルデヒド
  1.DNPH誘導体化固相吸着/溶媒抽出法-HPLC法
  2.DNPH誘導体化固相吸着/溶媒抽出法と同等以上の検査方法
(9)揮発性有機化合物:トルエン・キシレン・パラジクロロエベンゼン・エチルベンゼン・スチレン
  1.固相吸着/加熱脱着法-GC/MS法
  2.固相吸着/溶媒抽出法-GC/MS法
  3.容器採取法-GC/MS法
  4.検知管法
(10)ダニまたはダニアレルゲン
  1.匹数法
  2.酵素免疫測定法(ELISA法)
  3.免疫クロマト法および遊離グアニン定量法
[2] 採光および照明
(1)照度
  参考:基準以上の水銀を使用した蛍光管について
  参考:JIS照度基準

第2 飲料水等の水質に係る試験法
[1] 水質
1 試料の採取および保存の基本事項
1)理化学的試験用試料
(1)試料の容器
(2)採取方法
(3)試料の採水量
(4)試料の保存および運搬
2)細菌試験用試料
(1)試料の容器
(2)採取方法
(3)試料の保存および運搬
2 各試験法
(1)一般細菌
  1.標準寒天培地法
(2)大腸菌
  1.特定酵素基質培地法
(3)塩化物イオン
  1.硝酸銀滴定法
  2.イオンクロマトグラフ法(陰イオン)
(4)有機物(全有機炭素(TOC)の量)
  1.全有機炭素計測定法
(5)pH値
  1.ガラス電極法
(6)味
  1.官能法
(7)臭気
  1.官能法
(8)色度
  1.比色法
  2.透過光測定法
(9)濁度
  1.比濁法
  2.透過光測定法
  3.積分球式光電光度法
(10)遊離残留塩素
  1.ジエチル-p-フェニレンジアミン法(DPD法)
  2.電流法
  3.吸光光度法
(11)外観
  1.官能法

第3 水泳プールに係る試験法
[1] 水質
1 試料の採取および保存の基本事項
 1)理化学的試験用試料
 (1)試料の容器
 (2)採取方法
 (3)試料の採取量
 (4)試料の保存および運搬
 2)細菌試験用試料
 (1)試料の容器
 (2)採取方法
 (3)試料の保存および運搬
2 各試験法
(1)有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)
  1.滴定法による定量
(2)総トリハロメタン
  1.パージ・トラップ-ガスクロマトグラフ/質量分析計による一斉分析法
  2.ヘッドスペース-ガスクロマトグラフ/質量分析計による一斉分析法
(3)遊離残留塩素
  1.ジエチル-p-フェニレンジアミン法(DPD法)
  2.電流法
  3.吸光光度法
(4)一般細菌
  1.標準寒天培地法
[2] 屋内プールの空気質
1 試料の採取
2 各試験法
(1)空気中の二酸化炭素
(2)空気中の塩素ガス

第4 教室等の備品の管理に係る試験法
[1] 黒板面の色彩
1 黒板面の色彩
 1.標準法―黒板検査用色票を用いる
 2.簡易法―簡易版黒板検査用色票を用いる
参考  色彩の表記等
付 一般試験法:機器分析法
(1)学校環境衛生基準の検査方法で用いられる主な機器分析法
(2)クロマトグラフィー
(3)高速液体クロマトグラフィー
(4)イオンクロマトグラフィー
(5)ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)
(6)全有機炭素(TOC)計

●参考文献
●「学校環境衛生基準」(文部科学省告示第60号)
 (平成30年3月30日告示第60号)
●薬剤師国家試験 衛生試験法関連問題(第97〜103回)
●索引
 学校薬剤師の主な職務としては、学校環境衛生の検査に従事し、学校環境衛生の維持および改善に関し、必要な指導ならびに助言を行うことが挙げられる。学校環境衛生の検査については、学校保健安全法により定められた「学校環境衛生基準」にその項目が規定されている。したがって、学校薬剤師にとって基準項目にある環境衛生試験法が実施できる、もしくはその測定法の原理、精度などについて熟知していることは、その専門性から必要不可欠である。
 本書は平成30年4月に施行された改正「学校環境衛生基準」にある「教室等の環境」、「飲料水」、「水泳プール」の各検査項目について、その原理、手順等を分かりやすく示している。
 昭和39年に初めて示された「学校環境衛生の基準」は、検査項目も少なく学校薬剤師が自ら分析測定を行っていた。しかし、分析技術が進歩し、基準の検査項目も増えてその多くは高額な精密分析機器を使用しないと分析できないものとなり、分析専門機関に依頼することになっている。しかし、その分析法の原理、精度、測定の際の注意点など十分な知識を持ったうえでないと、分析機関からの成績報告書にある測定値を正しく評価し、学校に指導助言できないことになる。
 日本薬学会では薬学部の学生が活用しやすい衛生薬学実習用テキストとして『必携・衛生試験法』(日本薬学会編、金原出版)を2011年に出版し、多くの薬学部で利用されている。本書はこの『必携・衛生試験法』の解説部分を利用し、学校環境衛生基準に準拠した公定法として試験法を書き直し、また、『必携・衛生試験法』に掲載されていない試験項目については新たに試験法と解説を加えたものとして出版した。
 そして何よりも、本書は学校薬剤師が実際の学校環境衛生活動において利用しやすいものとなるよう、日本薬剤師会学校薬剤師部会と日本薬学会環境・衛生部会の共同編集による出版となっている。出版するに当たり、日本薬学会環境・衛生部会の試験法出版委員会(委員長・佐藤雅彦)内に『学校薬剤師のための学校環境衛生試験法』編集委員会を設置し、作業を進めてきたが、この2つの団体による共同編集は初めてのことであり画期的である。日本薬剤師会学校薬剤師部会からの執筆者は全員現役の学校薬剤師であり、その現場で熟知する視点から執筆、編集にかかわっていただき、大変使いやすいものになっている。
 薬局での実務実習において学校薬剤師の先生が実習生に対しその活動について指導されることがある。巻末には第97〜103回薬剤師国家試験で出題された学校環境衛生基準の測定項目に関連した国家試験問題を掲載したので、どのような国家試験問題が出題されているか確認し、実習生の指導に活用していただきたい。
 本書は学校薬剤師が学校環境衛生検査に従事する際に、分析の専門家として必要な情報が網羅してあり、手元に置きたい1冊となることを願って企画編集したものである。大変お忙しいところご尽力いただいた編集委員の皆様に深く感謝申し上げる。
 末筆ながら、本書は金原出版の福村直樹社長、編集の大塚めぐみ氏の支援のもとで上梓に至ったこと心より感謝申し上げる。

 平成30年8月
公益社団法人 日本薬学会
環境・衛生部会 部会長 永瀬 久光



 昭和5年、小樽市の小学校で体調を崩した児童に医薬品を服用させるつもりで誤って昇汞(塩化第二水銀)を飲ませてしまい、一人の児童のかけがえのない命が失われるという大変痛ましい事故が発生しました。この事故の起こる以前から全国各地の薬剤師から学校薬剤師の必要が提唱されてはいましたが、実現には至っていませんでした。しかしこの事故を契機として、「様々な薬品類を備蓄している学校には学校薬剤師を配置すべきである」という薬剤師の声が議会を動かし、同年、東京市麹町区に学校薬剤師第一号が誕生し、その後全国各地に学校薬剤師が誕生しました。
 昭和29年、学校教育法施行規則の一部改正があり、ここで初めて学校薬剤師の法制化が実現し、学校薬事衛生を主な職務として従事することになりました。昭和33年には学校薬剤師の必置性が学校保健法に明記され、学校薬剤師は学校環境衛生の維持に努め、その改善を図ることが主な職務とされました。
 しかしながら、学校環境衛生の重要性が認識されていたにもかかわらず、「学校環境衛生の基準」に基づいた学校環境衛生検査の実施状況は決して良いとは言えない状況にありました。そこで、「学校環境衛生の基準」の位置付けをより明確にすることを目的として平成21年4月1日、それまでの「学校保健法」は「学校保健安全法」に改正され、「学校環境衛生基準」を文部科学大臣が定めることとなって、学校の設置者及び校長の責務が明確化されることになりました。それに伴い、指導助言に当たる学校薬剤師の職務の重要性も高まっています。
 学校薬剤師の職務執行の準則は学校保健安全法施行規則第24条に7項目定められ、学校薬剤師はその準則に従い職務を執行しています。その職務の中でも学校環境衛生の維持及び改善に関して指導助言を行うことは重要な職務となっています。しかし、学校環境衛生に関する専門的知識は、現在多くの学校薬剤師の本務である薬剤師として携わっている調剤業務や医薬品販売に必要な専門的知識とは異なる別の化学分野である衛生化学の知識が必要であり、欠かすことができません。
 そのため、多くの学校薬剤師は日本薬剤師会学校薬剤師部会等が発信する情報を入手したり、同部会や都道府県または市町村薬剤師会学校薬剤師部会(又は学校薬剤師会)が開催する研修会、講習会等に参加して知識の研鑽を積んでいます。その上で手元に学術的な解説書があれば心強いのではないでしょうか。
 今回、本書を企画するにあたり、日本薬学会環境・衛生部会と日本薬剤師会学校薬剤師部会が強い信頼関係を築き上げ、学校薬剤師が学校環境衛生検査に従事するうえで必要な知識や試験検査に用いる機器類の解説及び検査の意義、更には基準に適性を欠くと判断した際の指導助言のポイント等を網羅した本書を発刊できることになりました。
 平成30年4月1日に施行された「学校環境衛生基準」の一部改正ではマスコミもその一部を取り上げて報道しています。これまであまり光のあたることの少なかった環境衛生に対して国民の関心を芽生えさせる機会になっているのではないでしょうか。この機会をばねとして学校薬剤師の活動をより一層活発にすることで、顔の見える学校薬剤師になれるのではないかと思っています。
 本書を活用して頂くことで、学校薬剤師が学校環境衛生活動に従事して、学校職員や児童生徒等の学校での環境衛生を適正に保つという世界に例を見ない学校薬剤師制度が、より一層充実していくことを願っています。

 平成30年8月
公益社団法人 日本薬剤師会
学校薬剤師部会 部会長 村松 章伊