爪 第2版 基礎から臨床まで

初版から10年、最新の内容となったベストセラーの改訂版ついに刊行!

著 者 東 禹彦
定 価 15,400円
(14,000円+税)
発行日 2016/06/10
ISBN 978-4-307-40054-1

A4判・244頁・カラー図数:418枚

在庫状況 あり

爪の基礎的な知見、ならびに現在の爪疾患に関する臨床的知見・治療法をまとめたロングセラーテキストの改訂版ついに刊行!50年にわたり爪疾患の原因や治療法に関する研究を行う爪のスペシャリストの決定版。陥入爪・巻き爪に対する多くの治療法の登場,治療可能となった厚硬爪や爪甲鉤彎症についても追加し、本邦美容業界のジェルネイルの普及もふまえて解説・文献の追加を行った。QOL の改善に役立つ、関係者必携の書。


【関連書籍】知っておきたい爪の知識と病気 すべての疑問を解決します!
おもな内容
■爪の構造
 爪各部位の名称と定義/正常な爪の組織/爪部のケラチン発現パターン/爪甲はどこから作られるのか/onychodermal band, onychocorneal band, onychocorneal junction/抜爪法と組織検査法/組織作製法/指趾の名称

■爪の発生と生理
 爪の発生/爪の成長速度と交替日数/爪の成長方向/爪甲の彎曲、大きさ、厚み/爪甲の強度と組成/正常な爪甲の色と水分含量(爪半月はなぜ乳白色か?)/経爪甲的水分喪失(蒸散量)/爪半月の出現頻度、大きさ/生理的爪甲縦条/爪の組成/爪の年齢による変化/爪と法医学/爪甲の薬剤透過性/爪甲の透光性/ヒト爪母細胞の培養/爪甲下の菌叢/爪の自然免疫/末節骨と爪甲/側爪郭と爪甲/爪の切り方/爪の役割

■爪の症状と発症機序
 形の変化/色の変化/爪郭部の変化

■先天性の爪の変化
 末節部に限局した変化/全身性疾患の部分現象として生じる 爪甲の変化

■後天性の爪の変化

■全身性疾患と爪の変化

■薬剤による爪の変化

■職業と爪疾患

■皮膚疾患と爪の変化

■爪部の感染症

■機械的原因による爪の変化

■マニキュアと爪

■爪および爪周囲組織の腫瘍
 良性腫瘍/悪性腫瘍

■爪部に限局した炎症性疾患
 爪―基礎から臨床まで―を2004年(平成16年)に出版し、多くの方々にご愛読いただき、著者として大変喜ばしいことと感謝している次第です。
 さて、最近10年間での医学関係での最大のトピックスはノーベル生理学・医学賞の日本人受賞者が二人も誕生したことです。
 2012年にはiPS細胞を創出された京都大学在職の山中伸弥教授が受賞されました。
山中教授は神戸大学医学部のご卒業ですが、卒業後わたくしの母校である大阪市立大学医学部の整形外科学教室、薬理学教室に学び、学位を取得されています。その後学研都市にある奈良先端科学技術大学院大学を経て、ついで現職の京都大学と移られてiPS細胞を創出されました。ご令室は皮膚科医で、大阪市立大学皮膚科に在籍されていました。このような理由もあって、山中教授のノーベル賞受賞はわたくしにとっても大変うれしい出来事でした。さらに、2015年には大村智北里大学特別栄誉教授のノーベル生理学・医学賞の受賞も大変喜ばしい出来事でした。大村智先生が発見され、米国の製薬会社メルク社との共同研究によりイベルメクチン(マクロライド系)として製品化されました。熱帯の風土病オンコセルカ症、フィラリア症には1回の投与で有効です。東南アジアの糞線虫症の特効薬となっています。畜産でも利用されていますし、犬糸状虫にも有効です。ヒトの疥癬にはイベルメクチンを2回投与すると有効なことが判っていたのですが、本邦では導入が遅れたのは残念なことでした。ストロメクトールという商品名で発売され、健康保険でも使用できるようになり、皮膚科医にとっても大変有益な薬剤となったのですから、ノーベル生理学・医学賞の受賞は喜ばしい出来事でした。
 さて、第1版出版後10年以上の歳月の経過で、その間にはヒトゲノムの解明、遺伝子と病気の解明、ケラチンに関する研究などのような基礎医学の進歩があり、皮膚科の臨床でもダーモスコピーの導入、分子標的薬の普及など、また爪疾患に対する関心の高まりなどによる新しい病名の登場、陥入爪・巻き爪に対する多くの治療法の登場、美容業界ではスカルプチュアネイルに替わって本邦ではジェルネイルの普及などがあります。
 医師は開業しても臨床研究を続けられるという恵まれた職業です。厚硬爪や爪甲鉤彎症については従来治療法がないとされていましたが、わたくしの最近の研究により治療可能であることが明らかとなっています。爪甲鉤彎症で悩んでいる人は多く、ぜひともQOLの改善に役立てていただきたいと考えています。
 第1版の内容に関しては特に訂正すべき点もないのですが、本邦では利用できなくなった薬剤グリセオフルビンがあり、グリセオフルビンに関する記述は削除することにしました。第2版では最近の進歩を取り入れて、増補・改訂をすることに致しました。
 この改訂版が初版にも増して、皆様方の臨床のお役に立てればと念じています。
 最後に、本書の刊行にあたっては、多大なるご尽力をいただいた金原出版の大塚めぐみ氏に心から御礼申し上げます。

2016年6月吉日
著者 東 禹彦