Q&Aによる鼓膜・鼓室形成術

読みやすいQ&A方式!症例観察とその事実をもとにした術式改良の結果を掲載!

著 者 湯浅 涼
定 価 5,720円
(5,200円+税)
発行日 2009/09/11
ISBN 978-4-307-37100-1

B5判・112頁・図数:184枚・カラー図数:166枚

在庫状況 なし

接着法が開発・発表されてから20年が経過し、この術式は耳科学を専攻する耳鼻咽喉科医に広く認められ、現在では全国的に普及、定着している。そして、低侵襲性手術Minimally invasive surgeryの牽引役として、日帰り・短期滞在手術の普及に大きな力になってきた。この間に、筆者らは国内外の学会・講演会・講習会などで、この接着法に関して数多く発表する機会が与えられた。その際に多くの貴重な質問を戴いたので、それらの質問に答えるものを書として残すことも有意義であると考えていた。そこに金原出版からのお誘いもあり、2002年3月に刊行した拙書「実践鼓膜・鼓室形成術(金原出版)」と一部重複する内容で、Q&A方式の中耳手術書を執筆することにした。
本書は筆者らが日頃行っている中耳手術に関しての術式、手術方針などを中心とした内容であり、ややもすると独断的な記述が随所にみられる。元来、手術手技は術者によって少なからず異なることは当然で、それは恩師である手術指導者の影響、それに術者自身の経験、成績などを基にした変革が加味され、術者それぞれの流儀が出来上がるためであろう。筆者も年間400例以上の中耳手術を30年以上継続して行っており、それらの症例の経過を自らが定期的に観察して、そこから得られた事実をもとに、術式の改良が行われて今日に至っている。本書の内容はこのような筆者自身の術式の変遷の結果、辿り着いた現時点での結論ともいえる。したがって、Q&Aの内容に関しては読者によっては疑問あるいは違和感を覚える箇所も少なくないかもしれないが、記述は多くの症例と歳月から導かれたものであり、多少なりとも読者に益することがあると信じて執筆した。今後、読者からのご意見、ご指導を賜り、機会をみて改定版の出版も念頭に置き、刊行の挨拶とさせて頂きたく思う。
(「はじめに」より)
1.術前検査
 Q1 術前の純音オージオグラムから伝音障害状態は推測できるか?
 Q2 低音域(250〜500Hz)のみA−B gapがみられる場合は連鎖異常か?
 Q3 術前パッチ検査の必要性は?最適材料は?
 Q4 両側高度混合難聴の場合、正確な骨導値測定法は?どちらの耳の手術を先行すべきか?
 Q5 術前検査として耳管機能検査は必要か?
 Q6 耳管開放症の術後対応法は?−Bezold粉末の耳管内への噴霧法−
 Q7 Bezold粉末とは?その製法は?

2.局所麻酔
 Q8 接着法で使用する鼓膜麻酔の組成と使用上の注意は?
 Q9 耳科手術における局所麻酔の前投薬は?
 Q10 耳科手術を局所麻酔で無痛的に行うためのポイントは?
 Q11 耳手術における浸潤麻酔の注射部位は?−耳の知覚神経支配−
 Q12 骨削除が必要な鼓室形成術でも純局所麻酔下で可能か?
 Q13 伸展した真珠腫例でも純局所麻酔で可能か?
 Q14 全身麻酔の場合でも局所に浸潤麻酔は必要か?
 Q15 なぜ、耳科手術で局所麻酔を薦めるのか?−高齢化社会への対応−
 Q16 耳科手術での局所麻酔の限界は?

3.術前の細菌学的検査
 Q17 術前検査として耳漏細菌検査は必要か?
 Q18 耳漏培養結果、起炎菌が緑膿菌、MRSAほか、多剤耐性菌の場合の対応は?

4.術中聴力検査
 Q19 局所麻酔での鼓膜・鼓室形成術で術中聴力検査法は?
 Q20 純音閾値との相関は?
 Q21 反対耳のマスキング方法は?
 Q22 全例に術中聴力検査を施行するのか?
 Q23 術中聴力検査が聴力改善に効を奏した実例は?

5.鼓膜形成術(接着法)
 Q24 接着法では鼓膜麻酔薬の表面麻酔のみで可能か?
 Q25 接着法の適応は乾燥した中心性、小〜中穿孔に限定すべきか?
 Q26 大穿孔例に接着法を適応するための技術とは?
 Q27 辺縁性穿孔の場合も適応か?その場合の手技は?
 Q28 穿孔縁の全周、特に前方が直視困難な場合の対処法は?
 Q29 残存鼓膜に石灰化が著明な場合の処理は?
 Q30 他医での鼓膜・鼓室形成術施行後の再穿孔例にも接着法が適応するか?
 Q31 接着法では鼓膜材料に筋膜でなく、皮下結合組織を使用する理由は?
 Q32 皮下結合組織は表層には脂肪組織が含まれるが、それでも使用可能か?
 Q33 トリミングされた移植弁を新鮮化された穿孔縁に密着させる技術は?
 Q34 接着法は安全性が高いが、副損傷は起こり得るのか?
 Q35 Only hearing earに対する接着法の安全性は?
 Q36 パッチ利得が十分得られないOnly hearing earの場合の対処法は?
 Q37 両側鼓膜穿孔例に接着法は同日手術可能か?
 Q38 透析施行患者(週3回)の手術日程は?
 Q39 外傷性鼓膜裂傷(鼓膜換気チューブ抜去後の穿孔)に対する接着法の施行時期は?
 Q40 接着法の長期成績(穿孔閉鎖率)は?
 Q41 再穿孔の発生は術後いつ頃が多いか?また、経過観察はどのくらい必要か?
 Q42 術後穿孔の大きさ、位置、再々穿孔の頻度などは?
 Q43 再穿孔に対する再閉鎖術とは?
 Q44 頻回の再穿孔をきたす症例の対処法は?
 Q45 接着法の禁忌は?
 Q46 鼓膜穿孔閉鎖による聴覚以外の恩恵は?

6.接着法を応用した低侵襲性鼓室形成術
 Q47 低侵襲性鼓室形成術とは具体的にどのような術式か?
 Q48 鼓室形成術I型と鼓膜形成術との違いは?また、鼓膜形成術と鼓膜穿孔閉鎖術の違いは?
 Q49 針穴程度の穿孔からの持続する耳漏の対処法は?
 Q50 局所麻酔で鼓室形成術を行うための局所麻酔法のポイントは?
 Q51 耳鏡内操作のみで行う術式とは?
 Q52 耳鏡内のみで手術の進行が不可能な場合の外耳道開創法は?
 Q53 耳内アプローチですべての症例に対処可能か?
 Q54 経外耳道的に乳突蜂巣内の病巣郭清Mastoidectomyは可能か?
 Q55 ノミによる上鼓室開放・乳突腔削開術のポイントは?
 Q56 肥厚鼓室粘膜の処理は−摘出か、温存か?
 Q57 角化上皮が肥厚鼓室粘膜上にある場合の処理は?
 Q58 鼓室内病変が高度で局所の指南が困難なときには?
 Q59 アブミ骨(底板)の安全な確認方法は?
 Q60 正円窓の安全な病巣摘出法は?また、下鼓室病変の郭清の必要性は?
 Q61 画像診断で乳突腔に軟部陰影がある場合、乳突削開術は必要か?
 Q62 鼓室形成術IIIc/IIIi型での連鎖形成に最適な材料とその形状は?
 Q63 鼓室形成術IVc型での連鎖形成材料に最適な材料とその形状は?
 Q64 術後の聴力の推移は?
 Q65 鼓室形成術においても鼓膜形成に接着法が適応となるか?

7.真珠腫性中耳炎
 Q66 真珠腫に自然治癒はあるか?
 Q67 外来での処置で治療可能な真珠腫はあるか?
 Q68 すべての真珠腫に対して画一的術式で対応可能か?
 Q69 外耳道削除型(CWD法)でのCavity problemの防止法は?
 Q70 開放乳突腔の充填術の必要性は?
 Q71 先天性真珠腫は早急な手術が必要か?
 Q72 幼少児の先天性真珠腫に対する術式は?
 Q73 CWD法施行例では真珠腫の再発はあり得ないか?
 Q74 両側性真珠腫の頻度は?注意点は?
 Q75 真珠腫Matrixが露出硬膜に癒着している場合の対処法は?
 Q76 妊婦の真珠腫への対応は?

8.アブミ骨手術
 Q77 耳硬化症(アブミ骨固着症)の治療方針は?
 Q78 自家軟骨を用いたアブミ骨手術とは?
 Q79 高度混合難聴の耳硬化症も手術適応か?それとも補聴器装用か?

9.術後処置・管理
 Q80 接着法、経外耳道アプローチによる低侵襲性鼓室形成術での、術後の処置・管理は?
 Q81 CWD法における術後処置の要領は?乳突腔のパッキング期間は?
 Q82 開放乳突腔の肉芽が感染し、耳漏が持続した場合の処理法は?
 Q83 鼓膜・鼓室形成術後の食事、安静度は?
 Q84 鼓室形成術の術後の仕事・就学への復帰、新幹線乗車、飛行機搭乗などの制限は?
 Q85 術後の経過観察の頻度、期間は?

10.耳科手術におけるインフォームド・コンセント(IC)
 Q86 慢性穿孔性中耳炎におけるICは?
 Q87 真珠腫におけるICは?
 Q88 耳硬化症、耳小骨奇形などに対するICは?
 Q89 耳科手術における副損傷についてのICは?
 Q90 フィブリン糊の使用に関するICは?

索引