小児の中等度難聴ハンドブック

医師、言語聴覚士、臨床検査技師らに必携の1冊

編 集 加我 君孝 / 内山 勉 / 新正 由紀子
定 価 5,280円
(4,800円+税)
発行日 2009/05/01
ISBN 978-4-307-37095-0

B5判・172頁・図数:78枚・カラー図数:3枚

在庫状況 あり

中等度難聴の小児は、補聴されないままでも聴いて話すために楽観的に扱われがちでありました。現在でも、発見が小学校入学前後であることが少なくありません。しかし、その結果、小・中学校での授業に追いつくのが困難であったり、コミュニケーションが完全でないため人間関係に葛藤が生じたり、中学を卒業する頃になって言語力が不足であることに気づかれたりしておりました。新生児聴覚スクリーニングが始まって今年で10年目になり、高度難聴だけでなく、中等度難聴も同時に早期に発見されるようになりました。早期発見に使われる自動ABRは35?dBで反応がなければreferと表示されるようになったからです。このために、高度難聴よりも多くの軽・中等度難聴疑いの新生児が精密聴力検査機関に紹介されるようになりました。
本書の編者の我々は、2007年12月15日に厚生科学研究費の一般向け公開講座で“小児の中等度難聴”を開催し、この問題の重要性を取り上げました。同時にこの数年、学会でも小児の中等度難聴の研究発表が増えてきました。米国でも同じで、2006年の12月12〜13日にワシントンのNIHで“OutcomesResearchinChildrenwithMildtoSevereHearingLoss”というワークショップが開催され、その報告が“EarandHearing”2007年28巻の6号713〜777ページに記載されています。この報告でも、今後いかに対処すべきか暗中模索であることがわかります。
このような国内外の小児の中等度難聴に対する関心の高まりを背景に、約1年間余りを執筆の準備に費やして刊行するものです。心理、言語、診断から療育までの広い領域をカバーできるように、我が国の気鋭の専門家に分担執筆をお願いしてできあがったのが本書であります。
本書が小児の難聴に取り組んでいる医師、言語聴覚士、臨床検査技師など関連領域の臨床家の座右の書として参考にしていただければ望外の幸です。
(「はじめに」より)
I. 心理、言語
 1 中等度難聴児の心理と心のケア
  1 両側小耳症・外耳道閉鎖症
  2 両側中耳奇形
  3 両側感音難聴
  4 脳性麻痺に伴う両側感音難聴
  5 中枢性聴覚障害
  6 心のケアの方法について
  7 心のケアのためのチーム医療
 2 中等度難聴の発見年齢と補聴期間の及ぼす言語発達への影響
  1 中等度難聴児の言語発達の調査
  2 中等度難聴児の言語発達と聴覚補償
 3 中等度難聴児の言語発達の評価方法
  1 中等度難聴と言語発達
  2 中等度難聴と言語発達の評価方法
  3 難聴児の言語発達評価について
 4 中等度難聴児の前言語期の音声分析による評価
  1 健常児の構音の発達について
  2 中等度難聴児の構音発達について
  3 中等度難聴児の構音はどこまで正常化するか?
II. 疾患
 5 中等度難聴を伴う小児の病気
  1 先天性軽度〜中等度難聴を合併する疾患
  2 後天性軽度〜中等度難聴を合併する疾患
 6 中等度難聴を伴う特別な疾患 −脳性麻痺を中心として−
  1 難聴を伴う重複障害の発症機序
  2 難聴の診断
  3 補聴器装用と効果
  4 重複障害の今後
 7 小児の中等度難聴を起こす疾患のCT所見
  1 滲出性中耳炎
  2 癒着性中耳炎
  3 慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎
  4 外傷
  5 外耳道閉鎖症
  6 中耳奇形・耳硬化症
 8 中等度難聴の遺伝子
  1 難聴遺伝子とその分類
  2 難聴の遺伝子診断
  3 遺伝子診断の臨床での活用
  4 遺伝子診断の現実的な問題点
  5 小児の中等度難聴の原因となる代表的遺伝子の臨床像
  6 臨床と研究における今後の展開
III. 検査、診断
 9 中等度難聴確定診断のためのOAE・気導ABRとASSR
  1 OAE・気導ABR・ASSRの特徴
  2 症例からみた検査法の選択および比較
 10 中等度難聴確定診断のための骨導ABRと骨導ASSR
  1 新生児期における聴覚の精密検査
  2 骨導ABR
  3 骨導ASSR
  4 症例
  5 今後の課題
 11 新生児聴覚スクリーニング後のABRの正常化
  1 ABR正常化症例の発生頻度
  2 ABRの記録前の準備と判定の注意
  3 ABR正常化症例の初期の病態
  4 ABR正常化の機序
  5 ハイリスクファクターとABR正常化の関係
  6 CORとABRの乖離例について
IV. 補聴、手術、療育
 12 中等度難聴児にふさわしい補聴器
  1 中等度難聴児にふさわしい補聴器の形状
  2 音響特性からみた補聴器の選択
  3 補聴器適合システム
  4 中等度難聴児にふさわしい補聴器の問題点
 13 中等度難聴小・中学生の補聴器フィッティング
  1 補聴器フィッティング
  2 補聴器フィッティングの評価
  3 中等度難聴小・中学生の補聴器フィッティング
 14 小耳症・外耳道閉鎖症の手術前と手術後の補聴器の選択
  1 注意を要する片側症例
  2 両側小耳症・外耳道閉鎖症に対するアンケート調査
  3 ヘアーバンド式の骨導補聴器
  4 形成外科との外耳道形成共同手術
  5 骨導補聴器の最近の動向
 15 中等度難聴児の療育計画
  1 中等度難聴と療育(治療教育)
  2 中等度難聴児の療育体制
  3 中等度難聴児の療育計画
 16 中等度難聴と初等・中等学校教育
  1 難聴学級および通級における指導の概要
  2 幼児の指導
  3 中学生以降の指導
  4 保護者支援
  5 特殊教育から特別支援教育体制への移行
V. 人工内耳
 17 人工内耳装用児の認知と言語 −人工内耳装用時は中等度難聴か?−
  1 装用閾値の変遷
  2 音声言語による教育を受けている補聴器装用児の装用閾値
  3 日本語音声音圧レベルの配慮
  4 3m離れた場所からの装用閾値と単語了解度
  5 人工内耳装用児の言語発達
 18 中等度難聴児および人工内耳装用児の音声言語指導
  1 言語指導における中等度難聴と人工内耳の相違点と類似点
  2 乳児期〜幼児前期の指導
  3 幼児中期〜幼児後期の指導
  4 学童期の指導
VI. 中枢聴覚の新たな問題
 19 小児の聴覚情報処理障害の臨床像
  1 概念・障害機序
  2 定義
  3 臨床症状
  4 分類
  5 検査
  6 介入と(リ)ハビリテーション
索引