理解を深めよう視野検査 第1版補訂版

身体障害者手帳における視野検査の項を改正に対応し全面改訂!

監 修 松本 長太
編 集 若山 曉美 / 小林 昭子 / 南雲 幹 / 田中 恵津子
石井 祐子
定 価 7,150円
(6,500円+税)
発行日 2021/02/26
ISBN 978-4-307-35172-0

B5判・240頁・図数:250枚・カラー図数:29枚

在庫状況 あり

10年以上にわたって好評を博してきた「理解を深めよう視野検査」が、視野検査の基礎知識と臨床力がきちんと身につく、豊富な図版と症例を呈示したわかりやすい記述はそのままに、視野検査が重要な役目を担う身体障害認定要領における視覚障害認定基準の改正に対応するため、当該項目を全面的に書き下ろし補訂版となりました。初学者の履修にも、臨床現場での対応にも、専門家の復習にも役立つ、視野検査の解説書の決定版です!
I.視野を理解するための解剖
 1.網膜部位再現性
 2.P細胞、M細胞、K細胞

II.視野検査を理解するための視覚生理学
 1.閾値
 2.空間加重と時間加重
 3.視野検査と受容野
 4.視野に関する影響因子
 
III.視野検査
 1.視野とは
 2.視野検査の歴史
 3.視野の測定法
 4.動的視野検査
 5.静的視野検査

IV.疾患別にみた視野異常の特徴
 1.網膜色素変性症
 2.緑内障
 3.視神経疾患
 4.視路疾患
 5.高次脳機能障害
 6.心因性視覚障害

V.疾患別にみたGoldmann視野計による検査の進め方
 1.網膜色素変性症
 2.緑内障
 3.視神経疾患
4.視路疾患
 5.高次脳機能障害
 6.心因性視覚障害

VI.疾患別にみた静的視野計による評価法
 1.緑内障
 2.視神経疾患
 3.視路疾患

VII.その他の視野検査
 1.対座法
 2.アムスラーチャート・M-CHARTS
 3.FDT視野検査
 4.Blue on yellow視野検査
 5.フリッカー視野検査
 6.眼底視野検査
 7.両眼視野
 8.ロービジョンから捉える視野検査

VIII.その他
 1.専門用語とその解説
 2.身体障害者手帳における視野検査
 3.検査機器メンテナンス

IX.症例集
 1.網膜色素変性症(1)〈IV-1-症例2〉
 2.網膜色素変性症(2)〈IV-1-症例3〉
 3.緑内障(1)〈IV-2-症例2〉
 4.緑内障(2)〈IV-2-症例3〉
 5.視神経疾患虚血性視神経症〈IV-3-症例2〉
 6.視神経疾患レーベル病〈IV-3-症例3〉
 7.視神経疾患多発性硬化症 〈IV-3-症例4〉
 8.視路疾患下垂体腺腫(ホルモン非分泌性)〈IV-4-症例1〉
 9.視路疾患下垂体腺腫(プロラクチン産生)〈IV-4-症例4〉
 10.視路疾患外側膝状体〈IV-4-症例5〉
 11.視路疾患後頭葉(1)〈IV-4-症例7〉
 12.視路疾患後頭葉(2)〈IV-4-症例8〉
 13.心因性視覚障害(1)〈IV-6-症例1〉
 14.心因性視覚障害(2)〈IV-6-症例2、V-6-症例2〉

索引
はじめに

 日進月歩の眼科学において、高度医療が行われるようになり、視機能評価の重要性はますます高くなっています。特に視機能評価として代表される「視野」は、視覚の根幹となる機能といっても過言ではありません。
 このたび、理論に基づいた視野検査を理解するために、疾患別の視野異常の特徴を把握し、どのような症例にも対応できる検査戦略を習得するべく『理解を深めよう視野検査』を企画いたしました。本書の特徴としては、視野検査を行う視能訓練士はもちろんのこと、診断、治療を行う眼科医の先生方にも臨床で役立つ内容にするべく、眼科医と視能訓練士がタッグを組んで取り組みました。
 視野検査は大別して動的視野検査と静的視野検査に分かれます。近年では静的視野検査が多く実施されるようになってきました。しかしながら動的視野検査も、視神経疾患、後期の緑内障症例や日常生活での視機能評価といった点について重要な検査となります。また動的視野検査については、検者の技量が検査結果に影響することが問題点としてあげられています。この点を解決するべく本書では、特にGoldmann視野計による動的視野検査について経験豊富な視能訓練士の方々に執筆を依頼しました。Goldmann視野計による測定戦略は、検査開始から終了までどのように視標を動かしたか、さらに暗点の測定など多くの図を用いて測定の軌跡を詳細に記述していただきました。これまでの本にはない測定戦略が視覚でわかる特色ある本となりました。
 臨床の現場では、視野に関する理論や検査方法を理解できていても、いざ臨床で目の前の症例にどのような視野検査を選択するべきか、また信頼性が高く診断できる検査結果を得るためにどのように検査を進めるべきか、といった実践に即した内容が求められています。そのために本書では、視野異常を示す代表的な疾患として、網膜色素変性症、緑内障、視神経疾患、視路疾患、高次脳機能障害、心因性視覚障害をとりあげ、これらの症例について眼科医と視能訓練士が同じ具体症例を用いて記述することにより、これまでにない実践に役立つ内容になっています。具体的には一つの疾患について眼科医が、症例をあげてその疾患の病態、視野異常の特徴、診断に適する視野検査法の選択を述べ、その眼科医とタッグを組んだ視能訓練士が、同一症例の動的視野検査の方法を具体的に解説するという構成にしています。さらに説明で用いた症例については、巻末の症例集にできるかぎり原寸大に近い状態で掲載しました。
 視野を理解するために欠かすことができない解剖や視覚生理について非常にわかりやすく記述されており、疾患と視野異常との関係を知るためには必読です。また本書の理解を、ひいては視野についての正しい理解を深めるために書かれた専門用語の解説は、読者の理解を助けてくれることになります。特殊な視野検査については、原理や明度識別閾値との違いを中心に評価のポイントがわかるようになっています。さらに両眼視野から、ロービジョンから、身体障害者手帳からと、あらゆる面から視野を捉える内容となりました。検査機器メンテナンスの点では、各メーカーの専門家にトラブルシューティングを中心に執筆者をお願いしました。
 このようにして出来上がりました『理解を深めよう視野検査』は、そのタイトルのように皆様の視野検査に対する理解を深めるとともに、視野検査の奥深さと面白さを知る味わいある内容となりました。
 ご多忙のところ玉稿を賜りました執筆者の先生方と編集者一同の「視野」に対する熱い思いが届くことを願っております。

2009年6月
編集者一同