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ホルモン補充療法ガイドライン 2025年度版
日々更新されるHRTのエビデンス、必要な知識をアップデート!

監修編集 | 日本女性医学学会 |
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後 援 | 日本産科婦人科学会 |
定 価 | 4,400円 (4,000円+税) |
発行日 | 2025/05/25 |
ISBN | 978-4-307-30158-9 |
A4判・200頁・図数:4枚
在庫状況 | なし |
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HRTガイドラインが装いを新たにし、8年ぶりに改訂された。より安心安全にHRTを行うには? ベネフィットを高め、リスクを低下させる薬剤・投与方法(量・経路・期間)は? 実臨床で判断に迷うポイントについて最新のエビデンスをもとに解説する。総論には「感覚器」「QOL」「肝臓・胆嚢系疾患」、CQには「閉経関連尿路性器症候群(GSM)」「サルコペニア」「子宮筋腫」「リウマチ性疾患」「炎症性腸疾患」「性別不合」が新たに加わった。
1.はじめに:本ガイドラインの目的
2.本ガイドラインの作成手順と利用上の注意点
3.ホルモン補充療法の特色と施行上の一般的注意点
■総論編(HRTのエビデンスと実際)
1.HRTに期待される作用・効果
1)更年期障害
2)運動器系(骨・軟骨・関節・筋肉・ロコモ)
3)脂質代謝
4)糖代謝
5)循環器系(血管・血圧)
6)中枢神経系 (1)認知機能
7)中枢神経系 (2)気分障害
8)皮膚・毛髪
9)泌尿器系
10)生殖器系
11)悪性腫瘍(悪性新生物)
12)歯科口腔系
13)感覚器
14)QOL(全死亡率/疲労感/QOL)
2.HRTに予想される有害事象
1)不正性器出血
2)乳房痛
3)乳癌
4)片頭痛
5)動脈硬化・冠動脈疾患
6)脳卒中
7)静脈血栓塞栓症
8)子宮内膜癌
9)卵巣癌
10)その他の腫瘍・類腫瘍
11)肝臓・胆嚢系疾患
3.HRTの実際
1)禁忌症例と慎重投与症例
2)薬剤の種類と特徴
3)薬剤の投与法と投与量
4)薬物の相互作用
5)HRT前・中・後の管理法
6)適応と管理のアルゴリズム
■CQ編(Clinical Question)
I.症状・疾患
CQ101 関節痛に対しHRTは有効か?
CQ102 不眠に対しHRTは有効か?
CQ103 腰痛に対しHRTは有効か?
CQ104 骨盤臓器脱(POP)に対しHRTは有効か?
CQ105 骨盤臓器脱(POP)の手術療法前後にエストロゲン投与は推奨されるか?
CQ106 過活動膀胱(OAB)に対しHRTは有効か?
CQ107 閉経関連尿路性器症候群(GSM)に対しHRTは有効か?
CQ108 舌痛症に対しHRTは有効か?
CQ109 HRTは性機能障害を改善させるか?
CQ110 冠攣縮性狭心症および微小血管狭心症に対しHRTは有効か?
CQ111 サルコペニア予防にHRTは有効か?
II.病態既往
CQ201 喫煙者にHRTは可能か?
CQ202 肥満者にHRTは可能か?
CQ203 子宮内膜症既往または子宮内膜症に罹患している女性にHRTは可能か?
CQ204 子宮筋腫を有する女性にHRTは可能か?
CQ205 高血圧を有する女性にHRTは可能か?
CQ206 糖尿病を有する女性にHRTは可能か?
CQ207 早発卵巣不全(POI)にHRTは推奨されるか?
CQ208 子宮頸癌治療後のHRTは推奨されるか?
CQ209 子宮体癌治療後のHRTは推奨されるか?
CQ210 卵巣癌治療後のHRTは推奨されるか?
CQ211 BRCA1/2病的バリアント保持女性にHRTは推奨されるか?
CQ212 エストロゲン欠落症状がない女性にHRTは推奨されるか?
CQ213 リウマチ性疾患を有する女性にHRTは推奨されるか?
CQ214 炎症性腸疾患を有する女性にHRTは可能か?
CQ215 性別不合にホルモン療法は推奨されるか?
III.薬剤
CQ301 子宮を有する女性に経口エストリオール(E3)製剤の単独使用は可能か?
CQ302 レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)はHRTに用いる黄体ホルモン製剤として使用可能か?
CQ303 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)製剤はHRTにおける子宮内膜保護目的として使用可能か?
IV.開始・中止
CQ401 心血管系の有害事象を減らすためにHRTの開始時期を考慮すべきか?
CQ402 60歳以上の女性に対する新規HRTは可能か?
CQ403 HRTはいつまで継続可能か?
CQ404 HRT終了時に漸減法は推奨されるか?
CQ405 周術期にHRTは中止すべきか?
V.その他
CQ501 HRT施行中に不正性器出血が起こった場合の対応は?
CQ502 プラセンタ療法は更年期障害に対するHRTの代替となるか?
Appendix
1. 更年期女性におけるHRTの有用性
2. 更年期障害とHRTにおける保険診療上の留意点
3.HRT問診票
略語集
索引
2.本ガイドラインの作成手順と利用上の注意点
3.ホルモン補充療法の特色と施行上の一般的注意点
■総論編(HRTのエビデンスと実際)
1.HRTに期待される作用・効果
1)更年期障害
2)運動器系(骨・軟骨・関節・筋肉・ロコモ)
3)脂質代謝
4)糖代謝
5)循環器系(血管・血圧)
6)中枢神経系 (1)認知機能
7)中枢神経系 (2)気分障害
8)皮膚・毛髪
9)泌尿器系
10)生殖器系
11)悪性腫瘍(悪性新生物)
12)歯科口腔系
13)感覚器
14)QOL(全死亡率/疲労感/QOL)
2.HRTに予想される有害事象
1)不正性器出血
2)乳房痛
3)乳癌
4)片頭痛
5)動脈硬化・冠動脈疾患
6)脳卒中
7)静脈血栓塞栓症
8)子宮内膜癌
9)卵巣癌
10)その他の腫瘍・類腫瘍
11)肝臓・胆嚢系疾患
3.HRTの実際
1)禁忌症例と慎重投与症例
2)薬剤の種類と特徴
3)薬剤の投与法と投与量
4)薬物の相互作用
5)HRT前・中・後の管理法
6)適応と管理のアルゴリズム
■CQ編(Clinical Question)
I.症状・疾患
CQ101 関節痛に対しHRTは有効か?
CQ102 不眠に対しHRTは有効か?
CQ103 腰痛に対しHRTは有効か?
CQ104 骨盤臓器脱(POP)に対しHRTは有効か?
CQ105 骨盤臓器脱(POP)の手術療法前後にエストロゲン投与は推奨されるか?
CQ106 過活動膀胱(OAB)に対しHRTは有効か?
CQ107 閉経関連尿路性器症候群(GSM)に対しHRTは有効か?
CQ108 舌痛症に対しHRTは有効か?
CQ109 HRTは性機能障害を改善させるか?
CQ110 冠攣縮性狭心症および微小血管狭心症に対しHRTは有効か?
CQ111 サルコペニア予防にHRTは有効か?
II.病態既往
CQ201 喫煙者にHRTは可能か?
CQ202 肥満者にHRTは可能か?
CQ203 子宮内膜症既往または子宮内膜症に罹患している女性にHRTは可能か?
CQ204 子宮筋腫を有する女性にHRTは可能か?
CQ205 高血圧を有する女性にHRTは可能か?
CQ206 糖尿病を有する女性にHRTは可能か?
CQ207 早発卵巣不全(POI)にHRTは推奨されるか?
CQ208 子宮頸癌治療後のHRTは推奨されるか?
CQ209 子宮体癌治療後のHRTは推奨されるか?
CQ210 卵巣癌治療後のHRTは推奨されるか?
CQ211 BRCA1/2病的バリアント保持女性にHRTは推奨されるか?
CQ212 エストロゲン欠落症状がない女性にHRTは推奨されるか?
CQ213 リウマチ性疾患を有する女性にHRTは推奨されるか?
CQ214 炎症性腸疾患を有する女性にHRTは可能か?
CQ215 性別不合にホルモン療法は推奨されるか?
III.薬剤
CQ301 子宮を有する女性に経口エストリオール(E3)製剤の単独使用は可能か?
CQ302 レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)はHRTに用いる黄体ホルモン製剤として使用可能か?
CQ303 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)製剤はHRTにおける子宮内膜保護目的として使用可能か?
IV.開始・中止
CQ401 心血管系の有害事象を減らすためにHRTの開始時期を考慮すべきか?
CQ402 60歳以上の女性に対する新規HRTは可能か?
CQ403 HRTはいつまで継続可能か?
CQ404 HRT終了時に漸減法は推奨されるか?
CQ405 周術期にHRTは中止すべきか?
V.その他
CQ501 HRT施行中に不正性器出血が起こった場合の対応は?
CQ502 プラセンタ療法は更年期障害に対するHRTの代替となるか?
Appendix
1. 更年期女性におけるHRTの有用性
2. 更年期障害とHRTにおける保険診療上の留意点
3.HRT問診票
略語集
索引
◆ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版発刊にあたって
2002年に報告された米国の大規模臨床試験であるWomen’s Health Initiative(WHI)研究におけるエストロゲン+黄体ホルモン併用試験の中間結果とそれに伴う本試験の中止により、「HRT=危険」といったネガティブなイメージが定着してから既に20年が経過しました。「十年一昔」という諺がありますが、この20年の間に多くのデータが蓄積され、HRTの本当の実力とリスクの実際が明らかになり、また、リスクを回避するための方策も確立してきました。
しかし、医学の進歩に対して、正確な情報を適切にフォローすることには難しさがあるのも事実です。「医療の原点は医師患者相互における信頼関係にあります。信頼関係を構築するためには当該疾患に対する現在の標準的な概念や治療法を充分説明できること、そして患者の疑問に対して適切に回答できることが必要になると思います」…これは、HRTガイドラインの初版である2009年度版の巻頭に当時の日本更年期医学会理事長であり、ガイドラインとりまとめの委員長であられた水沼 英樹 先生がお書きになられた文章ですが、今もこれがgold standardであることは言うまでもなく、今回のHRTガイドラインもこの理念を引き継いで、これをかなえるツールとなるべく策定されました。
これまで、HRTガイドラインは日本産科婦人科学会と日本女性医学学会が協同で、2012年と2017年に改訂を行っており、今回が3回目となります。今回からは日本女性医学学会が中心となって作業を進めてきました。前回の改訂からの7年の間にもHRTを取り巻く環境は大きく変化したように思います。2017年度版の時には「HRTは(2002年の)振り出しに戻る」という状況でしたが、HRTの有用性の再評価がなされ、適応拡大とともに、予防医学への応用も進んできました。ロコモティブシンドロームやフレイル、閉経関連尿路性器症候群(GSM)といった新しい概念へもHRTの有用性が検討されています。また、製剤としても、2021年から天然型黄体ホルモンが日本においても利用できるようになりました。一方、HRTによるリスクについては、肺がんリスクが低下していたというメタ解析や胃がんリスクの低下を示した新たなメタ解析なども報告されましたし、乳がんリスクについても、HRTが発がんさせるのではなく、既に存在していたがんを進展させるという考え方の妥当性も報告されています。このようにHRTを推進する根拠も増えた一方で、認知症リスクへの影響やサルコペニア予防への効果など、今後の検討を要する課題もあります。また、HRTの普及に伴い既往疾患を持つ女性への施行の可否の問題も顕在化しています。さらに施行前・中の検診が十分になされていないという残念な報告もあります。抗がん剤治療とは異なり、死亡につながらないという安易な考えからか、いまだに独自のレジメンを使っている方もいらっしゃるようです。これらの点で本ガイドラインの持つ意味はたいへん大きいものと考えられます。ぜひ通読していただき、明日からの診療に役立てていただきたいと思います。
最後になりましたが、多忙な中、多くのデータを精査し、執筆していただいた樋口 毅 委員長以下、執筆者の先生方、また、ドラフトを読み込んでいただき有意義なご指摘をいただいた評価委員の先生方など本ガイドラインにかかわっていただいたすべての方々に心より御礼を申し上げるとともに、本ガイドラインが日本における安全・安心かつ有効なHRTの普及、ひいては日本人女性のQOLの維持・向上に貢献することを祈念いたしております。
2025年4月
一般社団法人 日本女性医学学会
理事長 高松 潔
◆HRTガイドライン2025年度版発刊に際して
このガイドラインの初刊行は2009年6月、続いて2012年、2017年に改訂されました。「HRTの治療薬としての側面と、健康増進もしくは疾病予防の意義」の視点は一貫していますが、それぞれの改訂毎にテーマがあったように思います。初版は言うまでもなくWHI報告で萎縮した更年期医療に対して、この結果を一般化することへの警鐘、そして安心、安全にHRTを行う指南書として作られました。2012年度版はHRTのリスクを認めつつも、どのようにすればそれを回避、低減ができるのかに重きをおきエビデンスを蓄積したものとなっています。そして2017年度版は新たに30のCQを加え、より実臨床での有用性を高めたものとなりました。それぞれで中心的な立場をとられた水沼 英樹 元理事長、?松 潔 理事長、岡野 浩哉 理事にあらためて敬意を表します。
今回の改訂は助走の段階で大きな変革が必要でした。ひとつは、従来、日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会(初版時は生殖内分泌委員会)と本学会の共同制作でありましたが、本学会単独事業となること、もうひとつは作成の基準ともいえる日本医療機能評価機構(Minds)診療ガイドライン作成マニュアルに準拠することでした。販売、在庫管理までを日産婦で行っていた既存の流れをどうするか、委員会、理事会で協議を重ねました。また、本ガイドラインに対してMindsより指摘されている「作成の厳密さ(どのような手順で作成したかの明示)」、「編集の独立性(策定関係者全員とその所属施設のCOIの公開)」などをどのように改善、反映させるかの理解を深めるため、MindsのEBM医療情報部の吉田 雅博 先生の講演会も開き準備を進めてきました。
さて、今回のガイドラインでは、新項目として総論に感覚器、QOL、肝臓・胆嚢系疾患を入れました。CQにはGSM、サルコペニア、子宮内膜症既往、リウマチ性疾患、炎症性腸疾患との関係を追加し、やや趣を異にすると感じられるかもしれませんが、情報として必要な場面も想定して性同一性障害(性別不合)に対するホルモン療法のCQを入れました。よりいっそう実診療に即し、shared decision makingの際も役立つと考えています。
内容に対しては多くのパブリックコメントをいただき、第30回日本女性医学学会ワークショップ(2025年3月1日青森市開催)でのコンセンサスミーティングでも活発な議論が持たれ、ガイドライン内容の細部にわたるブラッシュアップができたと確信しました。
改訂を重ねた今版もエビデンスについては海外からの報告が内容の主体であることは否めません。しかし、本学会が日本におけるHRTの適正使用の実践とエビデンスの創生を目的に2023年6月から開始した、“ホルモン補充療法登録者を対象とした長期フォローアップ追跡調査”という研究が広がり、その結果から日本人のエビデンスを掲載できる日も近いものと思っています。
最後に、作成にあたり若槻 明彦 前理事長、高松 潔 理事長、ガイドライン検討委員会、作成委員の先生方、詳細な評価をしてくださった評価委員の方々に深い感謝の念を禁じえません。そして、完成に至るまで後ろ支えとなり様々な事務的作業をこなしてくださった日本女性医学学会事務局 信澤 美恵子様、編集をゼロから完成まで一手に引き受け、辛抱強く伴走していただいた金原出版株式会社 編集部 安達 友里子様に深甚なる謝意を表します。
2025年4月
ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版検討委員会
委員長 樋口 毅
2002年に報告された米国の大規模臨床試験であるWomen’s Health Initiative(WHI)研究におけるエストロゲン+黄体ホルモン併用試験の中間結果とそれに伴う本試験の中止により、「HRT=危険」といったネガティブなイメージが定着してから既に20年が経過しました。「十年一昔」という諺がありますが、この20年の間に多くのデータが蓄積され、HRTの本当の実力とリスクの実際が明らかになり、また、リスクを回避するための方策も確立してきました。
しかし、医学の進歩に対して、正確な情報を適切にフォローすることには難しさがあるのも事実です。「医療の原点は医師患者相互における信頼関係にあります。信頼関係を構築するためには当該疾患に対する現在の標準的な概念や治療法を充分説明できること、そして患者の疑問に対して適切に回答できることが必要になると思います」…これは、HRTガイドラインの初版である2009年度版の巻頭に当時の日本更年期医学会理事長であり、ガイドラインとりまとめの委員長であられた水沼 英樹 先生がお書きになられた文章ですが、今もこれがgold standardであることは言うまでもなく、今回のHRTガイドラインもこの理念を引き継いで、これをかなえるツールとなるべく策定されました。
これまで、HRTガイドラインは日本産科婦人科学会と日本女性医学学会が協同で、2012年と2017年に改訂を行っており、今回が3回目となります。今回からは日本女性医学学会が中心となって作業を進めてきました。前回の改訂からの7年の間にもHRTを取り巻く環境は大きく変化したように思います。2017年度版の時には「HRTは(2002年の)振り出しに戻る」という状況でしたが、HRTの有用性の再評価がなされ、適応拡大とともに、予防医学への応用も進んできました。ロコモティブシンドロームやフレイル、閉経関連尿路性器症候群(GSM)といった新しい概念へもHRTの有用性が検討されています。また、製剤としても、2021年から天然型黄体ホルモンが日本においても利用できるようになりました。一方、HRTによるリスクについては、肺がんリスクが低下していたというメタ解析や胃がんリスクの低下を示した新たなメタ解析なども報告されましたし、乳がんリスクについても、HRTが発がんさせるのではなく、既に存在していたがんを進展させるという考え方の妥当性も報告されています。このようにHRTを推進する根拠も増えた一方で、認知症リスクへの影響やサルコペニア予防への効果など、今後の検討を要する課題もあります。また、HRTの普及に伴い既往疾患を持つ女性への施行の可否の問題も顕在化しています。さらに施行前・中の検診が十分になされていないという残念な報告もあります。抗がん剤治療とは異なり、死亡につながらないという安易な考えからか、いまだに独自のレジメンを使っている方もいらっしゃるようです。これらの点で本ガイドラインの持つ意味はたいへん大きいものと考えられます。ぜひ通読していただき、明日からの診療に役立てていただきたいと思います。
最後になりましたが、多忙な中、多くのデータを精査し、執筆していただいた樋口 毅 委員長以下、執筆者の先生方、また、ドラフトを読み込んでいただき有意義なご指摘をいただいた評価委員の先生方など本ガイドラインにかかわっていただいたすべての方々に心より御礼を申し上げるとともに、本ガイドラインが日本における安全・安心かつ有効なHRTの普及、ひいては日本人女性のQOLの維持・向上に貢献することを祈念いたしております。
2025年4月
一般社団法人 日本女性医学学会
理事長 高松 潔
◆HRTガイドライン2025年度版発刊に際して
このガイドラインの初刊行は2009年6月、続いて2012年、2017年に改訂されました。「HRTの治療薬としての側面と、健康増進もしくは疾病予防の意義」の視点は一貫していますが、それぞれの改訂毎にテーマがあったように思います。初版は言うまでもなくWHI報告で萎縮した更年期医療に対して、この結果を一般化することへの警鐘、そして安心、安全にHRTを行う指南書として作られました。2012年度版はHRTのリスクを認めつつも、どのようにすればそれを回避、低減ができるのかに重きをおきエビデンスを蓄積したものとなっています。そして2017年度版は新たに30のCQを加え、より実臨床での有用性を高めたものとなりました。それぞれで中心的な立場をとられた水沼 英樹 元理事長、?松 潔 理事長、岡野 浩哉 理事にあらためて敬意を表します。
今回の改訂は助走の段階で大きな変革が必要でした。ひとつは、従来、日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会(初版時は生殖内分泌委員会)と本学会の共同制作でありましたが、本学会単独事業となること、もうひとつは作成の基準ともいえる日本医療機能評価機構(Minds)診療ガイドライン作成マニュアルに準拠することでした。販売、在庫管理までを日産婦で行っていた既存の流れをどうするか、委員会、理事会で協議を重ねました。また、本ガイドラインに対してMindsより指摘されている「作成の厳密さ(どのような手順で作成したかの明示)」、「編集の独立性(策定関係者全員とその所属施設のCOIの公開)」などをどのように改善、反映させるかの理解を深めるため、MindsのEBM医療情報部の吉田 雅博 先生の講演会も開き準備を進めてきました。
さて、今回のガイドラインでは、新項目として総論に感覚器、QOL、肝臓・胆嚢系疾患を入れました。CQにはGSM、サルコペニア、子宮内膜症既往、リウマチ性疾患、炎症性腸疾患との関係を追加し、やや趣を異にすると感じられるかもしれませんが、情報として必要な場面も想定して性同一性障害(性別不合)に対するホルモン療法のCQを入れました。よりいっそう実診療に即し、shared decision makingの際も役立つと考えています。
内容に対しては多くのパブリックコメントをいただき、第30回日本女性医学学会ワークショップ(2025年3月1日青森市開催)でのコンセンサスミーティングでも活発な議論が持たれ、ガイドライン内容の細部にわたるブラッシュアップができたと確信しました。
改訂を重ねた今版もエビデンスについては海外からの報告が内容の主体であることは否めません。しかし、本学会が日本におけるHRTの適正使用の実践とエビデンスの創生を目的に2023年6月から開始した、“ホルモン補充療法登録者を対象とした長期フォローアップ追跡調査”という研究が広がり、その結果から日本人のエビデンスを掲載できる日も近いものと思っています。
最後に、作成にあたり若槻 明彦 前理事長、高松 潔 理事長、ガイドライン検討委員会、作成委員の先生方、詳細な評価をしてくださった評価委員の方々に深い感謝の念を禁じえません。そして、完成に至るまで後ろ支えとなり様々な事務的作業をこなしてくださった日本女性医学学会事務局 信澤 美恵子様、編集をゼロから完成まで一手に引き受け、辛抱強く伴走していただいた金原出版株式会社 編集部 安達 友里子様に深甚なる謝意を表します。
2025年4月
ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版検討委員会
委員長 樋口 毅
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