卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第2版

WHO 2020分類に基づき病理学的な取扱いを改訂!

編 集 日本産科婦人科学会 / 日本病理学会
定 価 7,150円
(6,500円+税)
発行日 2022/12/26
ISBN 978-4-307-30153-4

B5判・136頁・図数:2枚・カラー図数:124枚

在庫状況 あり

WHO組織分類(2020年)に基づき病理学的な取扱いを一新。高異型度漿液性癌に関して、原発巣の決定基準を記載し、決定に至るまでの考え方をフローチャートにまとめた。巻末には精選された124枚の組織図譜や、付録として免疫組織化学に用いる抗体/マーカーの一覧表、臨床的取扱いに基づいた卵巣腫瘍の分類表が収載されている。


【関連書籍】卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 臨床編 第1版補訂版
1.改訂の要点と留意事項
2.病理診断報告書の記載法
 a.高異型度漿液性癌の原発巣
 b.組織学的異型度(Grade)
 c.治療効果判定
 d.リンパ節転移の扱い
3.切除・摘出検体の取扱い
 a.固定
 b.肉眼観察と切り出し
4.術中迅速組織診断
5.進行期分類
 a.進行期分類(日産婦2014、FIGO 2014)
 b.TNM分類(UICC 第8版)
 c.FIGO分類(2014)とTNM 分類(UICC 第8版)の対応
6.組織学的分類
 a.はじめに
 b. 卵巣腫瘍の臨床病理学的取扱いと国際疾病分類(腫瘍学)International Classification of Diseases for Oncology(ICD-O)
 c.組織学的分類およびICD-Oコード
 d.組織学的分類の説明
 1.卵巣腫瘍 Ovarian tumors
 I.上皮性腫瘍 Epithelial tumors
  A.漿液性腫瘍 Serous tumors
  B.粘液性腫瘍 Mucinous tumors
  C.類内膜腫瘍 Endometrioid tumors
  D.明細胞腫瘍 Clear cell tumors
  E.漿液粘液性腫瘍 Seromucinous tumors
  F.ブレンナー腫瘍 Brenner tumors
  G.その他の癌 Other carcinomas
 II.間葉系腫瘍 Mesenchymal tumors
 III.混合型上皮性間葉系腫瘍 Mixed epithelial and mesenchymal tumors
  A.腺肉腫 Adenosarcoma
 IV.性索間質性腫瘍 Sex cord-stromal tumors
  A.純粋型間質性腫瘍 Pure stromal tumors
  B.純粋型性索腫瘍 Pure sex cord tumors
  C.混合型性索間質性腫瘍 Mixed sex cord-stromal tumors
 V.胚細胞腫瘍 Germ cell tumors
  A.奇形腫 Teratomas
  B.未分化胚細胞腫 Dysgerminoma
  C.卵黄嚢腫瘍 Yolk sac tumor
  D.胎芽性癌 Embryonal carcinoma
  E.非妊娠性絨毛癌 Non-gestational choriocarcinoma
  F.混合型胚細胞腫瘍 Mixed germ cell tumor
  G.単胚葉性奇形腫 Monodermal teratomas および奇形腫から発生する体細胞型腫瘍 Somatic neoplasms arising from teratomas
  H.胚細胞・性索間質性腫瘍 Germ cell-sex cord-stromal tumors
 VI.その他の腫瘍 Miscellaneous tumors
  A.ウォルフ管腫瘍 Wolffian tumor
  B.高カルシウム血症型小細胞癌 Small cell carcinoma, hypercalcemic type
  C.充実性偽乳頭状腫瘍 Solid pseudopapillary neoplasm
  D.その他の腫瘍 Miscellaneous tumors
 VII.腫瘍様病変 Tumor-like lesions
  A.子宮内膜症性嚢胞 Endometriotic cyst
  B.卵胞嚢胞 Follicle cyst
  C.黄体嚢胞 Corpus luteum cyst
  D.大型孤在性黄体化卵胞嚢胞 Large solitary luteinized follicle cyst
  E.黄体化過剰反応 Hyperreactio luteinalis
  F.妊娠黄体腫 Pregnancy luteoma
  G.間質過形成 Stromal hyperplasia および間質莢膜細胞過形成 Stromal hyperthecosis
  H.線維腫症 Fibromatosis
  I.広汎性浮腫 Massive edema
  J.ライディッヒ細胞過形成 Leydig cell hyperplasia(門細胞過形成 Hilar cell hyperplasia)
  K.その他 Others
 VIII.転移性腫瘍 Metastatic tumors

 2.卵管腫瘍 Tubal tumors
 I.上皮性腫瘍 Epithelial tumors
  A.漿液性腫瘍 Serous tumors

 3.腹膜腫瘍 Peritoneal tumors
 I.中皮腫瘍 Mesothelial tumors
  A.アデノマトイド腫瘍 Adenomatoid tumor
  B.高分化型乳頭状中皮性腫瘍 Well-differentiated papillary mesothelial tumor
  C.中皮腫 Mesothelioma
 II.腹膜に特有な間葉系腫瘍 Mesenchymal tumors specific to peritoneum
  A.平滑筋腫瘍 Smooth muscle tumors
  B.その他の腫瘍 Other tumors
 III.ミュラー管型上皮性腫瘍 Mullerian-type epithelial tumors
 IV.転移性腫瘍 Metastatic tumors
  A.癌および肉腫Carcinomas and sarcomas
  B.腹膜偽粘液腫 Pseudomyxoma peritonei(PMP)
  C.膠腫症 Gliomatosis

7.図譜
8.これまでの既刊の序

付1 卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌の診断に用いられる免疫組織化学
付2 臨床的取扱いに基づいた卵巣腫瘍の分類

索引
 『卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第2版』をここに上梓する。
 本規約は、2020年9月に刊行された世界保健機関(World Health Organization:WHO)による女性生殖器腫瘍分類 第5版(WHO分類 第5版)に準拠したものである。WHO分類 第5版における特筆すべき点は、卵巣・卵管・腹膜に存在する高異型度漿液性癌の原発巣を決定するための新たな診断基準が正式に採用・記載されたことであり、本書においてもこれを採用した。今後は我が国においても、高異型度漿液性癌の多くが卵管原発と診断されるものと考えられる。2014年春に発行されたWHO分類 第4版では、蓄積された研究結果に基づき、漿液性癌には低異型度漿液性癌と高異型度漿液性癌という2つの組織型があること、両者は形態のみならず、発生過程、分子遺伝学的背景、生物学的振る舞いが異なり、低異型度漿液性癌が真の卵巣癌であるのに対し、高異型度漿液性癌の多くが卵管を起源として卵巣や腹膜へ転移・進展したものであることが記載された。婦人科腫瘍の進行期分類の国際標準であるFIGO分類(2014)においても、卵巣腫瘍、卵管癌、腹膜癌の3つが包括して取り扱われることになった。このような背景のもと、我が国の『卵巣腫瘍取扱い規約』は『卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約』と名称を変え、「臨床編 第1版」(杉山 徹委員長、安田政実病理系委員長)が2015年8月に、WHO分類 第4版に準拠した「病理編 第1版」(規約第1版)(杉山 徹委員長、安田政実病理系委員長)が2016年7月に発刊された。
 本規約の体裁は規約第1版を概ね踏襲したが、同時進行で改訂作業が行われた『子宮頸癌取扱い規約 病理編 第5版』および『子宮体癌取扱い規約 病理編 第5版』との統一性も重視し、冒頭に規約第1版およびWHO分類 第4版からの主な改訂点をまとめた。続いて、病理診断報告書の記載法と報告様式の例を提示し、切除・摘出検体の取扱いや術中迅速組織診断について解説し、進行期分類を掲載した点は規約第1版と同様である。がんゲノム医療の時代を迎えた今日、適切な検体の取扱いは、正確な組織診断と進行期の決定のみならず、分子遺伝学的解析に堪える品質のパラフィンブロックを作製するという観点からも必要不可欠であり、婦人科医と病理医の連携が図られることを期待したい。進行期は、FIGO分類(2014)とそれに対応するUICC 第8版を採用した。用語は、可能な限り日本産科婦人科学会 編『産科婦人科用語集・用語解説集』をはじめ各専門領域の用語を採用して統一を図り、WHO分類 第5版で新たに採用された用語については編集委員会での議論を踏まえて記述したが、齟齬が生じることがあり得ることをご理解いただきたい。図譜は、規約第1版で掲載したものに適宜追加、変更を加えた。
 WHO分類 第5版の編集・改訂には、小西郁生京都大学名誉教授、片渕秀隆熊本大学名誉教授に加えて、本規約の改訂・編集に関わった三上芳喜熊本大学教授、清川貴子東京慈恵会医科大学教授らが参画し、改訂の背景にある思想と議論、歴史的変遷を踏まえながら編集作業を進めることが可能であった。本規約の改訂作業は、日本産科婦人科学会と日本病理学会から委員を迎えて2021年8月に開始され、幾度かのon-siteならびにon-line会議を経て推敲を重ね、2022年12月に発刊に至った。本規約が、精度の高い病理診断、病理医と産婦人科医の共通理解に基づいた最適な診療、臨床研究の発展、適正な癌登録事業に寄与することを祈念している。

2022年12月

日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会 委員長 永瀬 智
卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約改訂小委員会 委員長 馬場 長
日本病理学会卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約改訂病理系委員会 委員長 清川 貴子