患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第3版

婦人科がん治療の正しい情報が得られる解説書、待望の改訂!

編 集 日本婦人科腫瘍学会
定 価 2,750円
(2,500円+税)
発行日 2023/07/15
ISBN 978-4-307-30150-3

B5判・264頁・カラー図数:52枚

在庫状況 あり

「どんな検査や治療法があるの?」「ロボット手術って何?」「副作用は予防できる?」「遺伝するって本当?」「性生活はどうなるの?」―。子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの治療にあたって知りたい69の疑問について、婦人科がん治療を専門とする医師が最新の情報をQ&A方式でわかりやすく解説しています。患者さんとそのご家族にとって、安心して治療を受けられる道しるべとなる一冊です。
■子宮頸がん
Q01 どのような病気ですか? その原因や症状について教えてください。
Q02 HPVワクチンってどのようなものなのでしょうか?
Q03 子宮頸がん検診の結果をどう見ればよいのでしょうか? 異常が見つかったら、どのような検査をするのでしょうか?
Q04 広がり方の分類(進行期分類)について教えてください。また、細胞診の分類と進行期分類は別のものでしょうか?
Q05 CIN 3(上皮内がん/高度異形成)と言われました。どのような治療法がありますか? 将来、妊娠できますか?
Q06 円錐切除術を受けた後に病変が残っていると言われました。子宮を取らなければならないでしょうか?
Q07 IA期(微小浸潤がん)と言われました。どのような治療法がありますか?
Q08 治療前の検査の結果、IB期あるいはII期と言われました。どのような治療法がありますか?
Q09 がんが子宮頸部にとどまっていると言われました。腹腔鏡手術の治療は可能なのでしょうか?
Q10 治療前の検査の結果、III期あるいはIVA期と言われました。どのような治療法がありますか?
Q11 IVB期と言われました。どのような治療法がありますか?
Q12 治療前の検査の結果、IB期あるいはII期と言われました。子宮や卵巣を残すことはできますか? 妊娠することはできますか?
Q13 最初に手術や放射線治療を受けたのですが、さらに治療を行うことがあると言われました。どのような場合ですか? どのような治療法がありますか?
Q14 上皮内腺がんと言われました。どのような治療法がありますか?
Q15 腺がんと言われました。腺がんは、扁平上皮がんとどう違うのでしょうか? また、治療法は異なるのでしょうか?
Q16 妊娠中に子宮頸がんが見つかりました。出産は可能でしょうか? また、どのように治療が行われますか?
Q17 治療が終わってから、どのくらい病院に通わないといけませんか? また、治療後にはどのような検査がありますか?
Q18 過去に放射線治療を行った部分に再発が見つかりました。どのような治療法がありますか?
Q19 まだ放射線治療を受けていない部分に再発が見つかりました。どのような治療法がありますか?

■子宮体がん
Q20 どのような病気ですか? その原因や症状について教えてください。
Q21 進行すると、どのように広がるのですか? 広がり方の分類(進行期分類)についても教えてください。
Q22 がんが子宮体部にとどまっているようだとのことで手術を勧められました。どのような手術になりますか? 手術以外の治療法はありますか?
Q23 腹腔鏡手術(ロボット手術)を勧められました。どのような手術でしょうか?
Q24 手術をするときは、リンパ節を取り除くのでしょうか?
Q25 手術で卵巣を残したいのですが、可能でしょうか?
Q26 がんが子宮体部にとどまっているようだということです。手術ではなく、放射線治療ではだめでしょうか?
Q27 手術でがんは取りきれたのに、追加治療が必要と言われました。どういうことなのでしょうか?
Q28 治療が終わってから、どのくらい病院に通わないといけませんか? また、治療後にはどのような検査がありますか?
Q29 がんが子宮の外まで広がっているようだということです。どのような治療法がありますか?
Q30 手術で完全に摘出できなかったと言われました。どのような治療法がありますか?
Q31 子どもを授かる可能性を残すことができたらと思います。何か方法があるでしょうか?
Q32 子宮内膜異型増殖症と言われました。放っておくとどのような心配がありますか? また、どのような治療法がありますか?
Q33 数カ所の再発が見つかり、手術は難しそうです。どのような治療になりますか?
Q34 子宮肉腫の疑いがあるので手術が必要と言われました。子宮肉腫とは何ですか? どのような手術になるのでしょうか?
Q35 子宮肉腫で手術を受けた後、追加治療が必要と言われました。どのような治療法がありますか?
Q36 妊娠だと思い産婦人科を受診したら、胞状奇胎の疑いがあると言われました。どのような病気なのでしょうか?
Q37 胞状奇胎と言われ通院していましたが、抗がん剤治療が必要と言われました。どういうことでしょうか? 将来、妊娠できますか?
Q38 絨毛がんと診断され、肺と脳に転移があると言われました。どのような治療法がありますか?

■卵巣がん
Q39 どのような病気ですか? その原因や症状について教えてください。
Q40 広がり方の分類(進行期分類)について教えてください。
Q41 卵巣がんの疑いがあると言われ、手術を勧められました。どのような治療になりますか?
Q42 卵巣以外の他の臓器にがんが広がっているので、手術の前に抗がん剤の治療を受けるように勧められました。どうしてですか?
Q43 手術をして卵巣がんと診断され、抗がん剤治療を受けたところ、また手術が必要と言われました。2回目の手術について教えてください。
Q44 腹腔鏡手術はできないのですか?
Q45 卵巣がんの疑いがあると言われ、手術を勧められました。今後、妊娠できますか? また、片方の卵巣だけにがんがある場合、もう一方の卵巣は残せますか?
Q46 手術の後に抗がん剤治療が必要と言われました。どのような薬をどのように使うのですか?
Q47 遺伝子検査を勧められました。どのような検査で、どのような意味があるのでしょうか?
Q48 抗がん剤の副作用が心配です。予防法や対処法はありますか?
Q49 手術と抗がん剤治療で病気がなくなったと聞いたのに、維持療法を勧められました。どのようなことをするのでしょうか? いつまで続くのでしょうか?
Q50 境界悪性腫瘍が疑われると言われました。どういうものですか? また、どのような治療をしますか?
Q51 治療が終わってから、どのくらい病院に通わないといけませんか? また、治療後にはどのような検査がありますか?
Q52 しばらく調子がよかったのに再発と言われました。ただ、「抗がん剤が効きやすい再発」と言われました。どういうことでしょうか? これからどのような治療があるのでしょうか?
Q53 治療が終わってすぐに再発と診断されました。「抗がん剤が効きにくいかもしれない」と言われてショックです。これからどのような治療法がありますか?
Q54 20代の女性です。胚細胞腫瘍が疑われると言われました。どのような病気ですか?
Q55 悪性卵巣胚細胞腫瘍と言われました。まず手術を勧められましたが、どのような手術をするのですか? 将来、妊娠できますか?
Q56 悪性卵巣胚細胞腫瘍と言われ手術をしました。抗がん剤治療も必要と言われましたが、治療にはどのような薬を使いますか? また、どのような副作用がありますか?

■共通
Q57 手術後の障害として、尿が出にくくなるとか便秘になると聞きますが、どうなのでしょうか?
Q58 手術の際にリンパ節を取り除くと言われましたが、それをするとどのような影響が考えられますか? リンパ浮腫になりますか? 予防法や対処法を教えてください。
Q59 治療のため、卵巣のはたらきが低下していると言われました。どうしたらよいでしょうか?
Q60 手術の後に腸閉塞(イレウス)になることがあると言われました。予防法や対処法を教えてください。
Q61 婦人科がんを治療した後、性生活はどう変わるでしょうか?
Q62 治療後、自宅に戻ってから急な受診が必要な場合はどのようなときですか?
Q63 再発しないためにはどうしたらよいですか? 再発の早期発見のために、どのような検査をどのくらい続けますか? 気をつけたい症状などはありますか?
Q64 緩和ケアやホスピスについて教えてください。
Q65 がん免疫療法は効果があるのでしょうか?
Q66 子宮体がんや卵巣がんは遺伝すると聞きましたが、本当ですか?
Q67 がんパネル検査を勧められました。どのような検査ですか?どのようなことがわかるのでしょうか?
Q68 新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスの感染が心配です。がんの治療中も予防接種は受けたほうがよいでしょうか?
Q69 歯の具合が良くありません。がん治療中や治療の後に歯科を受診してもよいでしょうか?

■Memo(コラム)
・子宮頸がん撲滅に向けて ─ WHOの呼びかけ─
・臨床試験と治験
・チョコレート嚢胞のがん化
・アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)
・将来、妊娠の可能性を残す(妊孕性温存)ための卵子凍結保存について
発刊にあたって

 2019年の報告では、日本人の女性約10,000人が子宮頸癌と診断されており、18,000人が子宮体癌、13,000人が卵巣癌と診断されています。病院で「がん」と告げられた方や、治ったと思っていた「がん」が再発したと告げられた時、多くの方は大きな衝撃を受け、不安や落ち込んだ日々が続きます。日常生活もままならない状態になる方もおり、ご本人、そして、ご家族にとっては、とてもつらい時期となります。しかし、多くの方は自分の病気を徐々に受け入れていき、病気と向き合おうとする気持ちが芽生えてきます。この本を手にとっている方は、きっとつらい時期を乗り越えつつあるのではないかと思います。

 自分の病気と向き合おうという気持ちになった時に大切なことは、自分の病気のことやその病気の治療方法をよく知ることです。現代の情報社会では、ネットで検索すると、たくさんの情報を瞬時に手に入れることができます。便利な面がある一方で、その情報が正しいことを記載しているとは限りません。時には、不安を煽るだけの不確かな情報だったり、効果があいまいな商品を買わせるための営利目的の情報もあります。

 「ガイドラインに沿った治療を受ければ完治できたはずなのに、不確かな情報に振り回されて治療の時期を逃し残念な結果になってしまった。」私たち医療提供者が一番残念に思うことです。そのような悲劇が起きないように、私たち日本婦人科腫瘍学会では、現時点での最適な治療(標準治療)がどのようなものかを知っていただくことが、これから先の治療を考えて決めていく上でとても大事なことだと考え、ガイドラインの解説書である本書を企画し、2010年に初版を発刊しました。

 本書 第2版は2016年に発刊されましたが、その後、子宮頸癌、子宮体がん、そして卵巣がんの「治療ガイドライン」はそれぞれ改訂を行い、現在は、2022年版、2023年版、2020年版が最新版となっています。第3版では、これらの最新の「治療ガイドライン」に記載された内容を患者さんやそのご家族に正しく伝えるために、できるだけわかりやすく表現することに努めました。また、これから治療に臨む方や治療が一段落した方が、自分自身が知りたいと思われる項目を選んでお読みいただき、その項目で情報が完結するように編集しています。さらに、ロボット手術、分子標的治療薬や遺伝子検査、がんパネル検査といった最新の情報も盛り込んでいます。また、新型コロナワクチンを代表とするワクチンの予防接種やがん免疫療法、性生活、歯の治療といった、治療後の生活のなかで患者さんから多く寄せられる質問も取り上げています。

 本書を発刊するにあたり、85名の医師が誠実に執筆してくださり、日本婦人科腫瘍学会 三上幹男理事長はじめ、多くの学会員の先生方のご協力を得て発刊することができました。本ガイドラインが婦人科がんの患者さんとそのご家族にとって良い道しるべになり、最良の治療方針が選択され最善の結果が得られることを願っています。

2023年6月
日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会
委員長 永瀬 智
「患者さんとご家族のための治療ガイドライン」改訂委員会
金内 優典、村松 俊成、徳永 英樹