運動器慢性疾患に対する運動療法

イラストによる、目で見てわかる実践的な解説書。膝、腰、股関節など症例の多い整形疾患に対する運動療法を具体的に紹介!

黒澤 尚
定 価 8,250円
(7,500円+税)
発行日 2009/09/11
ISBN 978-4-307-25143-3

B5判・308頁・図数:233枚

在庫状況 なし

編者は1980年代後半から変形性膝関節症に対する運動療法に興味をもち、それ以後さまざまな試み、実践を行ってきた。実際にSLR運動などを行ってみて、その予想以上の疼痛緩和の効果、身体全体に対する健康増進効果を経験して、運動療法に徐々に確信をもつようになった。これらの効果は1990年代後半から現在まで国内外で多数行われてきたRCTが裏づけている。わが国でも2002年以降、日本整形外科学会など3学会が主導した「変形性膝関節症に対するSLR訓練の効果」と「腰痛症に対する運動療法の効果」の2つの多施設、共同RCTの結果がそれらを裏づけている。しかし、これら運動療法が治療法として従来のNSAIDを中心とする薬物治療に勝るとも劣らない愁訴軽減効果があるにもかかわらず、必ずしもわが国では、よく行われる治療にはいまだなっていない。その原因には医療保険上の点数の問題も大きいが、他方、全国のほとんどの整形外科医は医学部や研修医時代に主治療法としての運動療法の方法や効能を指導されていないことも大きいと考えられる。
本書は慢性運動器疾患に対する運動療法をそれぞれ実践されておられる方々にできるだけ具体的にその方法と結果を記述していただき、運動療法の普及の一助にしていただきたいと考えた。まだまだ運動療法は完成されたものではない。運動療法は世界的にみてもいまだ発展途上であり、方法、効果、適応、効果の機序等に関して未知のことが多く、最新の医科学による解析、研究が待たれている分野である。特に運動療法の効果の機序に関しては将来、他の治療法にも結びつく可能性のある未知の現象が隠されている領域である。
(「序」より)
第I章 基礎編
 1.機械的刺激と骨組織
 2.物理的刺激と軟骨細胞
 3.力学的負荷と腱組織
 4.滑膜細胞のメカニカルストレスに対する応答性
 5.運動と内分泌
 6.運動と免疫
 7.運動器と痛み
 8.運動器慢性疾患に対する行動変容のための認知行動療法的アプローチ
 9.変形性関節症の生物学的マーカー
 10.慢性運動器疾患の評価法
 11.水中運動の特性と利点

第II章 臨床編
 1.腰椎疾患
  Review−慢性非特異的腰痛に対する運動療法
  1.運動器生活習慣病としてみた腰痛症とその介入効果
  2.前屈・後屈障害型腰痛に対する運動療法の効果
  3.変形性脊椎症による慢性腰痛に対する運動療法
  4.腰部脊柱管狭窄症における運動療法
  5.慢性腰痛症に対する運動療法の効果
  6.ダイナミック運動療法(大阪市大方式)
  7.虚弱高齢者の慢性腰痛に対する運動療法の効果
  8.腰痛症に対する水中運動
  COLUMN−慢性腰痛に対する簡便な運動療法

 2.変形性股関節症
  Review−変形性股関節症に対する運動療法
  1.変形性股関節症に対するエクササイズボールを使用したボール体操の実際
  2.筋力強化のための運動療法
  3.股関節疾患に対する水中運動

 3.変形性膝関節症
  Review−変形性膝関節症に対する運動療法
  1.大腿四頭筋強化運動
  2.股関節外転筋強化を中心とする運動療法
  3.変形性膝関節症に対する減量療法
  4.神経運動器協調訓練
  5.筋力強化訓練
  6.SLR訓練の効果(3学会によるRCT結果)
  7.変形性膝関節症に対する歩行訓練の効果
  8.変形性膝関節症に対する軟骨温存を促す振り子運動療法
  9.運動療法とヒアルロン酸関節内注射の治療効果の比較
  10.変形性膝関節症に対する大腿四頭筋セッティング訓練の効果
  11.水中運動
  COLUMN−セラバンドを使用した運動療法
        −変形性膝関節症に対する二関節筋ストレッチング
 4.骨粗鬆症
  Review−骨粗鬆症
  1.背筋強化運動
  2.ダイナミックフラミンゴ療法
  3.骨粗鬆症の運動療法 

 5.運動器不安定症
  Review−運動器不安定症
  1.高齢者の運動機能
  2.高齢者の運動、生活機能の評価法
  3.転倒予防教室
  4.自主運動を主体とした地域での転倒予防教室
  5.廃用症候群に対する訓練効果
  6.パワーリハビリテーションの効果
  COLUMN−太極拳