膵癌診療ガイドライン 2025年版 第7版

新たな要素が加わり、ブラッシュアップされた改訂版、出来!

編 集 日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会
定 価 4,180円
(3,800円+税)
発行日 2025/07/25
ISBN 978-4-307-20500-9

B5判・352頁

在庫状況 あり

本版では「患者会や膵がん教室への参加」「老年医学的評価」に関する2つのCQが、医療者と患者市民団体で構成されるグループで検討された臨床疑問として、初めて掲載された。また「Future Research Question」を新設し、バイオマーカーやがん遺伝子パネルを用いた診断、メタリックステント留置後の偶発症への対応など、膵癌診療における最新の動向についても解説した。診断から治療まで最新のエビデンスを網羅し、患者・市民の視点も取り入れた、膵癌診療に携わるすべての医療者にとって必携の一冊。


【関連書籍】患者・市民のための膵がん診療ガイド 2023年版
略語一覧

本ガイドラインについて
1.本ガイドラインの目的
2.改訂の目的
3.本ガイドラインの適応が想定される対象者、および想定される利用対象者
4.本ガイドラインが取り扱う健康上の問題
5.本ガイドラインを使用する場合の注意事項
6.改訂ガイドラインの特徴
7.エビデンス収集方法(文献検索)・採用基準
8.システマティックレビューの方法
9.推奨の作成・決定の方法
10.患者・市民参画の推進と患者・市民グループの役割について
11.ガイドライン改訂作業の実際
12.外部評価およびパブリックコメント
13.今後の改訂
14.ガイドラインのモニタリング
15.資金
16.利益相反に関して
17.ガイドライン普及と活用促進のための工夫
18.患者・市民向け解説書
19.協力者
20.参考文献

CQ・FRQ・ステートメント一覧

総論
1.診断
2.外科的治療法
3.補助療法
4.放射線療法
5.化学療法
6.ステント療法
7.支持・緩和療法
8.患者・市民の立場から

アルゴリズム
CQ略号凡例・早見表
診断アルゴリズム
治療アルゴリズム
薬物療法アルゴリズム
プレシジョンメディスンアルゴリズム

各論
I 診断法(Diagnosis)
1.診断法(Diagnosis)〔D〕
 D1 糖尿病患者の新規発症・増悪に対して、膵癌の可能性を考慮した精査が推奨されるか?
 D2 慢性膵炎患者に対して、膵癌の可能性を考慮した経過観察は推奨されるか?
 D3 膵管内乳頭粘液性腫瘍の患者に対して、併存膵癌の可能性を考慮した精査・経過観察は推奨されるか?
 D4 膵癌リスクとなる生殖細胞系列遺伝子の病的バリアント保有者や家族性膵癌の近親者に対して、膵癌を考慮した精査・経過観察は推奨されるか?
 D5 膵癌を疑う臨床所見を有する患者に対して、腹部超音波(US)はスクリーニング法として推奨されるか?
 D6 膵癌を疑った場合に、腹部MRIは診断法として推奨されるか?
 D7 膵癌を疑った場合、EUSは診断法として推奨されるか?
 D8 膵癌を疑った場合に、FDG-PETは診断法として推奨されるか?
 D9 膵癌を疑う膵腫瘤が認められる場合に、EUS-FNAは病理診断法として推奨されるか?
 D10 膵腫瘤はみられないが膵癌を疑う膵管の異常所見が認められる場合に、ERCPを用いた細胞診は推奨されるか?
 D11 膵癌の病期診断に、MRIは推奨されるか?
 D12 膵癌の病期診断に、EUSは推奨されるか?
 D13 膵癌の病期診断にFDG-PET検査は推奨されるか?
 D14 審査腹腔鏡は根治切除を企図する膵癌の病期診断の評価に推奨されるか?
 D1(P)切除不能膵癌に対して、生殖細胞系列のBRCA検査は推奨されるか?
 D2(P)家族歴・既往歴や血縁者の遺伝子バリアントから膵癌発症の遺伝性リスクが疑われる未発症者に対して、遺伝学的検査は推奨されるか?
 FRQ-D1 膵癌を疑った場合、バイオマーカーによる評価は推奨されるか?
 FRQ-D2 CTによるスクリーニングは膵癌早期診断に有用か?
 FRQ-D3 病診連携を活かした膵癌早期診断プロジェクトの実施は、膵癌早期発見のために推奨されるか?
 FRQ-D1(P)切除不能膵癌患者に対して、がん遺伝子パネル検査は推奨されるか?

II 治療法(Treatment)
1.切除可能(Resectable)膵癌の治療法〔R〕
A 外科的治療法(Operation)〔O〕
 RO1 膵癌では手術件数の多い施設で外科的切除を受けることが推奨されるか?
 RO2 腹腔細胞診陽性膵癌に対する外科的治療は推奨されるか?
 RO3 膵癌の術前からの多職種による複合介入(ERAS)は推奨できるか?
 RO4 膵癌に対して予防的領域リンパ節郭清は推奨されるか?
 RO5 膵頭十二指腸切除の適応のある膵癌に対して低侵襲手術(腹腔鏡下手術・ロボット支援手術)は推奨されるか?
 RO6 尾側膵切除術の適応のある膵癌に対して低侵襲手術(腹腔鏡下手術・ロボット支援手術)は推奨されるか?
 RO7 膵癌の切除後5年以上の定期的な経過観察は推奨されるか?
 RO8 術前・術後の膵酵素補充療法は推奨されるか?
 RO9 80歳以上の膵癌に対して外科的治療は推奨されるか?
 RO10 膵癌に対するR0切除のための膵全摘は推奨されるか?
B 補助療法(Adjuvant)〔A〕
 RA1 切除可能膵癌に対して術前補助療法は推奨されるか?
 RA2 切除可能膵癌の術後補助化学療法は推奨されるか?

2.切除可能境界(Borderline Resectable)膵癌の治療法〔B〕
A 外科的治療法(Operation)〔O〕
 BO1 切除可能境界膵癌に対して外科的切除は推奨されるか?
 BO2 切除可能境界膵癌に対して動脈合併切除は推奨されるか?
B 補助療法(Adjuvant)〔A〕
 BA1 切除可能境界膵癌に対して術前補助療法は何が推奨されるか?
 BA2 切除可能境界膵癌に対して術後補助化学療法は推奨されるか?

3.局所進行切除不能(Locally Advanced)膵癌の治療法〔L〕
 L1 局所進行切除不能膵癌に対して一次治療は何が推奨されるか?
A 放射線療法(Radiation)〔R〕
 LR1 局所進行切除不能膵癌に対して化学放射線療法は何が推奨されるか?
 LR2 局所進行切除不能膵癌に対する放射線療法として、領域リンパ節への予防照射は推奨されるか?
 LR3 局所進行切除不能膵癌に対して化学放射線療法前の導入化学療法は推奨されるか?
 LR4 痛みなどの局所症状を伴う局所進行切除不能膵癌および遠隔転移を有する膵癌に対して、放射線療法や化学放射線療法は推奨されるか?
 LR5 局所進行切除不能膵癌に対する放射線療法として、高精度放射線治療(強度変調放射線治療、体幹部定位放射線治療、粒子線治療)を用いた線量増加は推奨されるか?
 LR6  局所進行切除不能膵癌に対する化学放射線療法と併用するハイパーサーミアは推奨されるか?
B 化学療法(Chemotherapy)〔C〕
 LC1 局所進行切除不能膵癌に対して一次化学療法は何が推奨されるか?
 LC2/MC2 切除不能膵癌に対して二次化学療法は何が推奨されるか?
 LC3/MC3 高齢者の進行膵癌に対して、一次化学療法は何が推奨されるか?
 LC1(P)/MC1(P)生殖細胞系列BRCAの病的バリアントを保有する切除不能膵癌に対して化学療法は何が推奨されるか?
 LC2(P)/MC2(P)進行膵癌に対して、臓器横断的に検出され得る遺伝子異常を標的とした薬物療法は推奨されるか?
C 外科的治療法(Operation)〔O〕
 LO1 初診時切除不能である局所進行膵癌に対する集学的治療後の原発巣切除は推奨されるか?
D 補助療法(Adjuvant)〔A〕
 LA1 初診時切除不能局所進行膵癌に対する原発巣切除後に術後補助化学療法は推奨されるか?

4.遠隔転移を有する(Metastatic)膵癌の治療法〔M〕
A 化学療法(Chemotherapy)〔C〕
 MC1 転移性膵癌の一次化学療法として、何が推奨されるか?
 MC2/LC2 切除不能膵癌に対して二次化学療法は何が推奨されるか?
 MC3/LC3 高齢者の進行膵癌に対して、一次化学療法は何が推奨されるか?
 MC1(P)/LC1(P)生殖細胞系列BRCAの病的バリアントを保有する切除不能膵癌に対して化学療法は何が推奨されるか?
 MC2(P)/LC2(P)進行膵癌に対して、臓器横断的に検出され得る遺伝子異常を標的とした薬物療法は推奨されるか?
B 外科的治療法(Operation)〔O〕
 MO1 膵癌の術後転移・再発巣に対して外科的切除は推奨されるか?
 MO2 初診時切除不能である遠隔転移を伴う膵癌に対して集学的治療後の外科的切除は推奨されるか?
C 放射線療法(Radiation)〔R〕
 MR1 痛みを有する膵癌骨転移に放射線療法は推奨されるか?
 MR2 膵癌の術後転移、再発巣に対して放射線療法は推奨されるか?

5.支持・緩和療法(Supportive & Palliative Medicine)〔S〕
A ステント療法(Stenting)〔SSt〕
 SSt1 膵癌に対する胆道ドレナージ法として、内視鏡的経乳頭的胆道ドレナージは推奨されるか?
 SSt2 閉塞性黄疸を伴う膵癌に対する経乳頭的胆道ドレナージとしてカバー付きメタリックステントは推奨されるか?
 FRQ-SSt1 カバー付きメタリックステント留置後の偶発症に対してステント抜去/交換は推奨されるか?
 SSt3 胃十二指腸閉塞合併膵癌の閉塞性黄疸に対する胆道ドレナージとして、超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD)は推奨されるか?
 SSt4 消化管閉塞を伴う切除不能膵癌に対して、内視鏡的消化管ステント留置術は推奨されるか?
B 支持・緩和療法(Supportive & Palliative Medicine)〔SSp〕
 SSp1 膵癌患者・家族の精神・心理的苦痛の軽減を目指した介入は推奨されるか?
 SSp2 がん疼痛がある膵癌患者に、非オピオイド鎮痛薬、オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬、神経ブロックは推奨されるか?
 SSp3 進行膵癌患者に、アドバンス・ケア・プランニングを行うことは推奨されるか?
 SSp4 プラチナ系およびタキサン系含有レジメンの末梢神経障害に対して、プレガバリン、デュロキセチン、ミロガバリンは推奨されるか?
 SSp5 化学療法を行う切除不能膵癌患者に、静脈血栓塞栓症予防のための抗凝固療法を行うことは推奨されるか?
 SSp6 進行膵癌患者の悪液質に対して、グレリン受容体作動薬は推奨されるか?

6.患者・市民の立場から(Patient & Citizen)〔PC〕
 PC1 膵癌患者と家族が、体験の共有や知識の提供を目的としたプログラムに参加することは推奨されるか?
 PC2 高齢の膵癌患者において、老年医学的評価を行うことは推奨されるか?

COLUMN
 COLUMN1 膵癌診療において健診・検診・人間ドックの果たす役割
 COLUMN2 家族性膵癌登録制度

膵癌診療ガイドライン2025年版の外部評価の結果
公開前評価結果
あとがき
索引
 膵癌診療ガイドラインは、2006年の初版刊行以来、おおよそ3年ごとに改訂が行われており、2022年には第6版が発行されました。医療技術の進歩や高齢化の進展など、わが国のがん診療を取り巻く環境は大きく変化しており、診断・治療が特に困難とされる膵癌においては、こうした変化に的確に対応し、最善の医療を提供していくことが極めて重要です。このような背景を踏まえ、現状に即した診療指針の提示を目的として、2023年9月に改訂委員会が設立され、本改訂作業が開始されました。
 本改訂では、従来の8つの専門グループ(診断、外科的治療法、補助療法、放射線療法、薬物療法、ステント療法、支持・緩和療法、プレシジョン・メディスン)に加え、2022年版より新設された「患者・市民グループ」の活動を継続し、患者・市民参画のさらなる推進を図りました。ガイドラインの作成は、『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020』に準拠し、方法論グループの助言を得て、科学的根拠に基づいた体系的な手順で進められました。作業過程で作成された各種テンプレートや会議での検討事項は、「膵癌診療ガイドライン2025年版・詳細資料集」としてオンラインで公開予定です。
 改訂作業には、日本膵臓学会から委嘱された各専門分野の医師に加え、がん看護、薬学、心理、ソーシャルワークなどの多職種医療者、ならびに患者・市民を含む60名が委員として参画しました。さらに、作成協力者48名、図書館司書2名、事務局および出版社を含む総勢110名体制で議論と検討を重ね、本ガイドラインを取りまとめました。加えて、2つの外部評価委員会およびパブリックコメントから寄せられた多くのご意見を反映し、内容の精査と最終化を行いました。外部評価委員会からはおおむね高い評価をいただいており、その結果は巻末に掲載しております。
 本ガイドラインが、膵癌診療に携わるすべての医療従事者、そして患者さん・ご家族にとって有用な診療指針となることを願うとともに、ご尽力いただいたすべての関係者の皆様に心より感謝申し上げます。