臨床・病理 食道癌取扱い規約 第12版

術前治療の重要性を反映。実臨床に即した新Stage分類を策定

編 集 日本食道学会
定 価 4,400円
(4,000円+税)
発行日 2022/09/24
ISBN 978-4-307-20461-3

B5判・160頁・図数:20枚・カラー図数:142枚

在庫状況 あり

7年ぶりの改訂。重要性が高まっている術前治療を勘案し、術前診断に関する記載、特にT4 診断およびリンパ節転移診断について大幅に追加・修正した。今版より転移個数によるN分類を採用。TNM分類との整合性を図るとともに、術前治療が標準となった時代における新たなStage分類を策定した。その他、治療効果判定規準、食道胃接合部癌に関する記述など詳細な改訂を加え、より実臨床に即した規約となった。
●第1部 規約
1 目的と対象、記載法
 1.1 目的
 1.2 対象
 1.3 記載法
2 原発巣の記載
 2.1 病巣の数と大きさ、周在性
 2.2 占居部位
 2.3 病型分類
 2.4 壁深達度(T)
 2.5 浸潤形式(INF)
 2.6 脈管侵襲(Ly/V)
 2.7 外科的切除標本の記載
 2.8 内視鏡治療所見の記載
 2.9 多発癌、重複がん
 2.10 壁内転移(IM)
3 リンパ節転移の記載
 3.1 食道癌のリンパ節部位の名称、番号、およびその範囲と境界
 3.2 領域リンパ節
 3.3 リンパ節転移の程度(N)
4 遠隔臓器および遠隔リンパ節転移(M)
5 進行度
 5.1 頸部・胸部食道癌・食道胃接合部癌(扁平上皮癌)の進行度分類
 5.2 食道胃接合部癌(腺癌)の進行度分類
 5.3 リンパ節郭清程度および癌の遺残度
6 内視鏡的および外科的切除標本の取り扱い
 6.1 内視鏡的切除標本の取り扱い
 6.2 外科的切除標本(原発巣)の取り扱い
 6.3 切除標本の切り出し
7 病理組織所見
 7.1 病理組織所見の記載
8 食道胃接合部およびバレット食道の取り扱い
 8.1 食道胃接合部(EGJ)の同定
 8.2 バレット食道
 8.3 バレット食道腺癌
 8.4 食道胃接合部癌
9 治療法
 9.1 内視鏡的治療
 9.2 手術治療
 9.3 ステント留置術
 9.4 バルーン拡張術
 9.5 放射線および化学療法に共通する一般的事項
 9.6 放射線療法(RT)
 9.7 化学療法(CT)、免疫療法(IO)
 9.8 集学的治療
 9.9 温熱療法(HT)
10 治療成績
 10.1 追跡調査
11 TNM 分類

●第2部  食道癌に対する放射線療法および化学療法の効果判定規準
はじめに
1 対象
 1.1 対象病変の分類
2 標的病変の効果判定規準
 2.1 完全奏効(CR)
 2.2 部分奏効(PR)
 2.3 進行(PD)
 2.4 安定(SD)
3 非標的病変の効果判定規準
 3.1 完全奏効(CR)
 3.2 不完全奏効/安定(Non-CR/Non-PD)
 3.3 進行(PD)
4 CT/PET-CT による原発巣の治療効果判定規準
 4.1 CT による治療効果判定
 4.2 PET による治療効果判定
5 内視鏡による原発巣の治療効果判定規準
 5.1 原発巣完全奏効:原発巣CR
 5.2 原発巣不完全奏効/安定:原発巣non-CR/non-PD9
 5.3 原発巣進行:原発巣PD
 5.4 経過観察中の原発巣局所再発:原発巣LR
6 総合効果
7 最良総合効果判定と効果の確定
8 薬物・放射線治療の組織学的効果判定規準

●参考資料
1 病型分類
2 画像による隣接臓器浸潤cT4 診断
 2.1 CT 画像提示:cT3r
 2.2 CT 画像提示:cT3br
 2.3 CT 画像提示:cT4
3 食道癌の領域リンパ節の名称、番号およびその範囲と境界
4 CT およびPET-CT によるリンパ節転移診断能
5 組織図譜
6 バレット粘膜、バレット食道
 6.1 肉眼所見
 6.2 バレット粘膜の種類
 6.3 バレット食道腺癌
7 原発巣測定法による効果判定規準の有用性と妥当性の検討
 7.1 腫瘍形態に応じた原発巣測定法の種類と予後との相関の検討
 7.2 PET-CT でのSUVmax 減少率と予後との相関の検討
8 内視鏡による原発巣の治療効果判定規準
9 薬物・放射線治療の組織学的効果判定規準
10 進行度別予後曲線
索引
第12版 序
 2015年に第11版が発刊されてから7年経過し、第12版を発行することとなった。
 今回の改訂においては、術前治療の重要性が高まっていることを勘案し、術前診断に関する記載、特に治療方針に大きな影響があると考えられるT4 診断およびリンパ節転移診断について、大幅に追加・修正するとともに、治療効果判定規準についても改訂を加えた。また、領域横断的がん取扱い規約との整合性を図るように改訂を加えた。
 前回の改訂からの継続検討事項として、UICCのTNM分類と可能な限り整合性が図られたが、UICCのTNM分類第7 版では日本食道学会の全国登録のデータが反映されていないこと、鎖骨上リンパ節の取り扱いが全く異なるため、N分類の整合性は見送られていた。今回は、N分類も含め、TNM分類との整合性を図るべく、転移個数による分類を採用した。また、全国登録のデータをもとにリンパ節転移状況と生存率から郭清効果が検討され、領域リンパ節の群分類が変更されていたが、再発頻度も検討することで、より実臨床に即した領域リンパ節を策定した。これらリンパ節転移のステージングの変更に伴い、食道癌全国登録の予後情報を用いて、術前治療が標準となった時代における新たなステージング分類を策定した。
 食道胃接合部癌の診断基準が決定し、7ページからなる小冊子が追加されていたが、今回の改訂では、日本胃癌学会と合同で食道胃接合部癌の定義および記載項目を策定した。また、食道胃接合部癌の領域リンパ節を策定し、病期診断に関する記載を追記した。委員による多くの議論が重ねられ本改訂が行われた。まだ議論すべき点も残っているが各委員の尽力に心より感謝したい。

改訂要旨:
(1) 食道の区分としてAe をなくし、食道胃接合部領域(Jz)を新たに規定した。
(2) 画像診断で隣接臓器浸潤の判定に難渋することがあるので、cT3 を切除可能(cT3 resectable:cT3r)と切除可能境界(cT3 borderline resectable:cT3br)に亜分類した。cT3r、cT3br、cT4 の鑑別診断について、参考CT 画像とその根拠となる参考所見を追記した。
(3) cN の診断のため、各リンパ節の領域別にCT によるリンパ節サイズによる診断精度を参照して、推奨カットオフ値を示した。また、PET による診断も参考資料として加えた。
(4) リンパ節転移の程度(グレード)分類において、TNM 分類との整合性を鑑み、領域リンパ節の転移個数による分類を採用した。これに伴い胸部食道癌では占居部位ごとのリンパ節群を廃止し、新たに胸部食道癌全体に対する領域リンパ節を設定した。この際、鎖骨上リンパ節は領域リンパ節ではなく遠隔リンパ節と分類した。ただし、切除による根治が期待されるのでM1aとして他の遠隔転移M1b と区別する。106pre、106tbR、112aoP は転移陽性例では郭清されることも多いが、十分なデータがないので今回は、遠隔転移M1b とした。
(5) リンパ節郭清の程度(D)は術式により規定し、胸部食道癌ではD1:D2 未満の郭清、D2:2領域郭清、D3:3 領域郭清と定義した。ただし、106tbL、111、8a、11p は標準的2 領域郭清範囲に含めるが省略してもよいとした。
(6) 進行食道癌に対する術前治療が標準化されたことに伴い、これまでは共通であった進行度分類を、臨床的進行度分類、組織学的進行度分類に分けてそれぞれ最新のデータに基づき設定した。
(7) 食道胃接合部癌に関して、日本胃癌学会と合同で、食道胃接合部癌の定義および記載項目を策定し、胃癌および食道癌全国登録での取り扱いを整理することで、今後さらなる実態調査を行えるようにした。また、領域リンパ節を策定し、病期診断に関する記載を追記した。
(8) RECIST の治療効果判定規準では食道癌原発巣は非標的病変となっているが、予後に対する影響が大きいので、一定以上の大きさの原発巣に対するCT による効果判定規準の指標を作成した。また同時に内視鏡による原発巣の治療効果判定規準を更新した。さらに、内視鏡によるCR判定後の局所再発の診断基準を策定した。
(9) 内視鏡診断・治療の進歩に伴い、日本食道学会の拡大内視鏡による食道表在癌深達度診断基準検討委員会で策定された分類(2012 年9 月)の内容を規約に記載した。
(10)「 Squamous intraepithelial neoplasia」を再評価し改訂した。
(11) 従来存在していた手術所見:surgical findings[s](手術肉眼所見、術中画像所見、切除標本の肉眼所見)、および内視鏡治療所見:findings in the endoscopic treatment[e](術中所見・切除標本の肉眼所見)は、final findings に含めるとし、記載項目から削除した。

2022年9月
日本食道学会
理事長 土岐 祐一郎