患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版 第4版 大腸癌について知りたい人のために

大腸癌治療の最新の情報に改訂! 薬物療法について解説が充実

編 集 大腸癌研究会
定 価 1,320円
(1,200円+税)
発行日 2022/01/25
ISBN 978-4-307-20445-3

B5判・88頁・カラー図数:12枚

在庫状況 あり

大腸癌の専門家の先生たちによる患者さんのための解説書が、8年ぶりに新しくなりました。「遺伝子検査」や「ロボット支援下手術」といった、患者さんの気になる最新のトピックを追加しました。さらに、お薬を使った治療の進め方や、特徴については表を使い、今まで以上に分かりやすく、詳しく解説しました。大腸癌の治療を進められる中で、患者さんやご家族の方の疑問を正しく解決できる、頼りになる1冊です。
1.ガイドラインを理解するための基礎知識
 1 大腸とは
 ・解剖学的位置
 ・各部位の名称
 ・血液の流れ
 ・リンパの流れ(リンパ系)
 ・神経の走行(神経支配)
 ・大腸壁の構造
 ・大腸の働き
 2 大腸癌とは
 ・大腸癌が発生するしくみ
 ・遺伝的素因
 ・大腸癌の肉眼的形態
 3 大腸癌の患者数
 4 大腸癌の広がり方
 ・浸潤
 ・リンパ行性転移
 ・血行性転移
 ・腹膜播種
 ・ステージ分類(病期分類)
 5 大腸癌による症状
 6 大腸癌の検査法
 (1)検診法
  ・便潜血検査
 (2)診断法
  ・直腸指診
  ・注腸造影検査
  ・大腸内視鏡検査
 (3)治療方針を決めるために必要な検査
  ・胸部腹部CT:computed tomography
  ・腹部超音波検査
  ・MRI:magnetic resonance imaging
 その他の検査
  CT コロノグラフィ
  カプセル内視鏡
  PET(positron emission tomography:陽電子断層撮影)
 7 大腸癌の治療法
 (1)内視鏡治療
  ・ポリペクトミー
  ・内視鏡的粘膜切除術(EMR)
  ・内視鏡的粘膜下層?離術(ESD)
  ・内視鏡治療の適応
  ・内視鏡治療の合併症
 (2)手術治療
  ・リンパ節郭清
  ・結腸癌の手術
  ・直腸癌の手術
  ・腹腔鏡下手術
 (3)手術治療の合併症
  ・手術操作に直接関係して発生する合併症
  ・手術操作とは直接関係なく発生する合併症
  ・手術治療の後遺症
 (4)薬物療法(抗がん剤療法)
  ・薬物療法の目的
  ・薬物療法の副作用
  ・薬物療法の効果判定
 (5)放射線治療
  ・放射線療法の副作用
 (6)緩和医療
  ・緩和医療とは

2.大腸癌治療ガイドラインの解説
 1 治療の原則
 2 ステージ0 〜ステージIIIの大腸癌の治療
 (1)内視鏡治療と手術治療の選択
 (2)手術治療
 3 ステージIVの大腸癌の治療
 4 血行性転移の治療
  ・肝転移の治療
  ・肺転移の治療
  ・脳転移の治療
 5 再発した大腸癌の治療
 6 薬物療法
  ・薬物療法の内容
  ・術後補助化学療法
  ・切除不能進行・再発大腸癌に対する薬物療法
  ・薬物療法の継続
 7 放射線療法
  ・補助放射線療法
  ・緩和的放射線療法
 8 大腸癌手術後のサーベイランス
  ・サーベイランスとは
  ・再発が起こりやすい時期と臓器
  ・再発する割合
  ・サーベイランスの方法
 9 緩和医療・ケア

大腸癌の予防法
 Q1 大腸癌にならない予防法はありますか?
大腸癌のステージ
 Q2 ステージIIIの大腸癌といわれました。ステージとは何ですか?
大腸癌の内視鏡治療
 Q3-1 早期大腸癌だから内視鏡で切り取ることができるといわれました。お腹を切らなくてもよいのでしょうか?
 Q3-2 良性のポリープは癌になることはありますか?切除した方が良いのでしょうか?
リンパ節郭清
 Q4-1 大腸癌の手術の時、リンパ節も取るといわれました。なぜリンパ節を取るのでしょうか?
 Q4-2 リンパ節を取っても大丈夫ですか?
大腸癌の手術治療
 Q5-1 手術が必要といわれ、大腸を20〜30cm切り取るといわれました。後遺症は大丈夫でしょうか?
 Q5-2 手術を受けるにあたり、排尿機能と性機能に障害が残る可能性があると説明されました。なぜでしょうか?
 Q5-3 腹腔鏡下手術とは何ですか?
 Q5-4 ロボット支援下手術について教えてください。
入院から退院までの経過
 Q6 大腸癌手術の入院から退院までの経過はどのようになりますか?
大腸癌手術の合併症について
 Q7 大腸癌の手術後にはいろいろな合併症が起こり得るとの説明を受けました。詳しく教えてください。
肛門括約筋温存の可否
 Q8 直腸癌で永久人工肛門になるといわれました。人工肛門になるかどうかは、どのように決められるのでしょうか?
人工肛門について
 Q9-1 人工肛門とはどういうものでしょうか?
 Q9-2 人工肛門はどのような管理をするのでしょうか?
 Q9-3 お風呂に入っても大丈夫なのでしょうか?旅行に行って、温泉に入れるのでしょうか?
 Q9-4 日常生活で困ることがあれば教えてください。
大腸癌の治療成績
 Q10 大腸癌はどの程度まで治るようになりましたか?また、「5年生存率」とは何ですか?
大腸癌の再発
 Q11-1 癌 を全部切り取ったのに、どうして再発が起こるのでしょうか?
 Q11-2 再発は早期に見つければ治るのでしょうか?
 Q11-3 再発した時の治療法はあるのでしょうか?
大腸癌の薬物療法
 Q12-1 大腸癌の薬物療法ではどんな薬がありますか?また、どんな副作用が起こりますか?
 Q12-2 大腸癌の遺伝子検査とは何ですか?分子標的薬が使える患者さんと使えない患者さんがいると聞きますが、どうしてですか?
 Q12-3 分子標的薬を単独で使った場合、効果は減少しますか?
 Q12-4 薬物療法で重い副作用を起こしてしまった場合、その後、薬物治療はできないのでしょうか?
大腸癌の補助化学療法
 Q13 手術で癌を取り除いたら、もう治療はしなくて良いでしょうか?手術で取ったリンパ節に転移が見つかり、抗がん剤治療を奨められました。
切除不能進行・再発大腸癌の薬物療法
 Q14-1 肝臓と肺に転移して、抗がん剤治療を奨められました。抗がん剤治療は効くのでしょうか?
 Q14-2 ステージIVの大腸癌といわれました。抗がん剤が効かなくなった場合はどうなるのでしょうか?
 Q14-3 抗がん剤を休むと、症状が進んでしまいますか?
放射線治療
 Q15 大腸癌の放射線治療について教えてください。
大腸癌手術後の生活について
 Q16-1 大腸癌手術後の食事のとり方について教えてください。
 Q16-2 大腸癌手術後の生活で気をつけることは何ですか?仕事に復帰することはできますか?
大腸癌手術後のサーベイランス
 Q17 大腸癌手術後に、定期的に通院して検査が必要といわれました。どのような検査をするのでしょうか?また、いつまで通院する必要があるのでしょうか?
大腸癌の腫瘍マーカー
 Q18 大腸癌手術後の検査で、CEAが高いので検査をするといわれました。どのような意味なのでしょうか?
「説明と同意」
 Q19 大腸癌の治療を始めるにあたって「説明と同意」に署名を求められました。これは必要なことでしょうか?
セカンドオピニオン
 Q20-1 大腸癌と診断されましたが、お医者さんによって奨められた治療法が異なります。どうしたらよいでしょうか?
 Q20-2 ガイドライン以外の治療法を奨められましたが、決心がつきません。
代替療法
 Q21-1 友人に代替療法を奨められました。効果はあるのでしょうか?
 Q21-2 光免疫療法は大腸癌に適用になるのでしょうか?
臨床試験
 Q22 担当医から臨床試験の説明がありましたが、参加しようかどうか迷っています。臨床試験とはどのようなものですか?
高額療養費
 Q23-1 高額療養費とは何のことですか?
 Q23-2 ロボット支援下手術を受けると治療費が高額になりますか?
がんゲノム医療
 Q24 がんゲノム医療とはどのようなものですか?
2022年版の刊行にあたって

 大腸癌は1975年以来増え続けており、2012年以降悪性腫瘍の中で最も多い癌になりました(国立がんセンターがん情報サービス。2011年は2位でした。)。その後も1位を保っていて、2018年の統計では、患者総数で1位(男性は3位、女性は1位)であり、大腸癌にかかった人は152,254人(男性86,414人、女性65,840人)でした。2019年の統計では、大腸癌で亡くなる方は肺癌に次いで多く(男性3位、女性1位)51,420人(男性27,416人、女性24,004人)でした。これは、男性では30人に一人が、女性では37人に一人が大腸癌で亡くなることを意味しています。また、高齢化や年齢構成の影響を除いた年齢調整罹患率をみると男性では横ばいですが、女性は増加しています。これは大腸癌では年齢とともに罹患率が高くなることから女性の大腸癌の患者さんが増えているのは高齢の方が増えていることによるものです。
 一方、幸いなことに大腸癌は比較的治りやすい癌であり、2009年から2011年の相対5年生存率(性別、生まれた年、年齢分布を同じにした日本人集団との比較)は男女とも72%です。大腸癌の場合は手術を行ってから5年経過して再発することはほとんどないことから、5年生存率は治る割合と考えてよい数値です。また、年次推移を見ても年齢調整死亡率は男女とも減少しています。
 日本の大腸癌を専門に扱っている病院の大腸癌の治療成績は世界に冠たるものです。しかし、このように大腸癌が増えてくると日常診療の中で大腸癌を扱う病院が増えてきています。そのため、大腸癌の患者さんがどの病院で治療を受けても不利益を受けないために、それまで専門病院で蓄積されてきた大腸癌の診断や治療のノウハウを広く公開することを目的として、大腸癌研究会では2005年に「大腸癌治療ガイドライン医師用」を刊行しました。その後、2009年、2010年、2014年、2016年、2019年に改訂しています。
 一方、大腸癌にかかった患者さんが安心して治療を受けるためには、大腸癌とはいったいどのような病気なのか、担当医から説明を受けた大腸癌の治療はいったいどのようなものかを正しく知っておくことが大切です。最近、インターネットを使ってがん情報を簡単に得ることができるようになりました。しかしながら、インターネットの情報は必ずしも正しいとは限らず、また、標準治療から外れた効果が怪しげな治療法を薦めるサイトもあります。大腸癌研究会では患者さんのみならずそのご家族の方や一般の方に、大腸癌に関する正しい知識や標準治療、適切な治療の情報を届けるために「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン」を2006年に刊行し、2009年、2014年に改訂を行ってきました。この度、大腸癌治療の進歩に伴い新たに改訂を行いました。一般の方々にも十分に理解できるような表現になるように試みましたが、わかりにくい点や疑問に思う点があれば担当の先生にお聞きになり、大腸癌にしっかり向き合って、困難を乗り超えていただきたいと思います。

2021年12月

大腸癌研究会会長
杉原 健一