制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版

8年ぶりの書籍全面改訂。Mindsの手法に準拠した最新指針

編 集 日本癌治療学会
定 価 3,080円
(2,800円+税)
発行日 2023/10/20
ISBN 978-4-307-20439-2

B5判・208頁・図数:44枚

在庫状況 あり

がん薬物療法により発現する悪心・嘔吐を適切に評価し抑制することは、がん患者のQOL改善と治療完遂のための重要な課題である。8年ぶりの全面改訂となる今版は、Minds2017に準拠し作成した。各章の総論・Questionを充実させ、非薬物療法による制吐療法、患者サポート、医療経済などについても新たにQuestionや解説を追加し、制吐療法における、患者と医療従事者の意思決定支援に必要な情報提供を目指した。
I.本ガイドラインの概要
はじめに
1.本ガイドラインの目的
2.本ガイドラインが対象とする利用者
3.本ガイドラインが対象とする患者
4.利用上の注意
5.本ガイドラインにおける用語の定義
6.Questionの区分と呼称について
7.診療ガイドライン作成方法
 (1)作成主体
 (2)作成基本方針
 (3)スコープ作成
 (4)Questionの作成
 (5)文献検索と採択基準
 (6)システマティックレビュー
 (7)推奨草案作成
 (8)推奨決定
8.外部評価
 (1)制吐薬適正使用ガイドライン評価ワーキンググループによる外部評価
 (2)日本癌治療学会および関連領域の学会におけるパブリックコメント
 (3)日本癌治療学会がん診療ガイドライン評価委員会による外部評価
9.本ガイドラインの普及と改訂
10.利益相反(COI)
11.利益相反申告
 (1)推奨決定会議における投票権の制限
 (2)本ガイドラインの独立性
第3版関係者名簿
1.ガイドライン作成団体
2.ガイドライン作成組織
3.ガイドライン責任組織
4.外部評価組織
5.ガイドライン作成方法論アドバイザー
6.委員推薦協力学会
7.パブリックコメント協力学会
Question・推奨一覧
アルゴリズム
アルゴリズム1:高度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法
アルゴリズム2:中等度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法
アルゴリズム3:軽度・最小度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法
アルゴリズム4:突出性悪心・嘔吐に対する制吐療法
アルゴリズム5:予期性悪心・嘔吐の予防と治療
ダイアグラム
ダイアグラム1:高度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法
ダイアグラム2:中等度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法
ダイアグラム3:軽度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法
ダイアグラム4:最小度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法
略語一覧

II.総論
1.概要
2.悪心と嘔吐
3.がん患者に対する悪心・嘔吐治療の基本
4.本ガイドラインにおける催吐性リスク評価と制吐療法
 (1)悪心・嘔吐に対するリスク評価
 (2)注射抗がん薬の催吐性リスク評価
 (3)注射抗がん薬の催吐性リスクに応じた制吐療法
 (4)経口抗がん薬の催吐性リスク評価と制吐療法
 (5)制吐療法の評価
5.制吐療法の医療経済評価

III.急性期・遅発期の悪心・嘔吐予防
1.概要
2.抗がん薬の催吐性リスクに応じた予防的制吐療法
 (1)高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防
 (2)中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防
 (3)軽度・最小度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防
BQ1 高度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法にはどのようなものがあるか?
BQ2 高度催吐性リスク抗がん薬に対する5-HT3受容体拮抗薬の選択において考慮すべき点は何か?
BQ3 中等度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法にはどのようなものがあるか?
BQ4 中等度催吐性リスク抗がん薬に対する5-HT3受容体拮抗薬の選択において考慮すべき点は何か?
BQ5 軽度・最小度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法にはどのようなものがあるか?
CQ1 高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として、3剤併用療法(5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか?
CQ2 高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として、デキサメタゾンの投与期間を1日に短縮することは推奨されるか?
CQ3 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として、NK1受容体拮抗薬の投与は推奨されるか?
CQ4 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として、3剤併用療法(5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか?
CQ5 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として、2剤併用療法(5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか?
CQ6 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として、デキサメタゾンの投与期間を1日に短縮することは推奨されるか?
CQ7 R±CHOP療法の悪心・嘔吐予防として、NK1受容体拮抗薬の投与を省略することは推奨されるか?
FQ1 軽度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として、5-HT3受容体拮抗薬の投与は推奨されるか?

IV.薬物によるその他の制吐療法
1.概要
2.各悪心・嘔吐に対する制吐療法
 (1)予期性悪心・嘔吐の予防
 (2)放射線治療の悪心・嘔吐予防
 (3)連日静脈内投与の抗がん薬の悪心・嘔吐予防
 (4)経口抗がん薬の悪心・嘔吐予防
 (5)突出性悪心・嘔吐に対する制吐療法
BQ6 予期性悪心・嘔吐に対する制吐療法にはどのようなものがあるか?
BQ7 放射線治療による悪心・嘔吐に対する制吐療法にはどのようなものがあるか?
CQ8 突出性悪心・嘔吐に対して、メトクロプラミドの投与は推奨されるか?
CQ9 細胞障害性抗がん薬の静脈内投与を連日受ける患者に対して、連日制吐療法は推奨されるか?
FQ2 経口抗がん薬の悪心・嘔吐予防として、制吐薬の投与は推奨されるか?
FQ3 悪心・嘔吐予防としてオランザピンを投与しても突出性悪心・嘔吐をきたした場合、オランザピンの追加投与は推奨されるか?

V.副作用・薬物相互作用
1.概要
2.制吐薬の投与経路や副作用
 (1)制吐薬の投与経路選択
 (2)注意すべき制吐薬の副作用
 (3)制吐薬の薬物相互作用について
 (4)免疫チェックポイント阻害薬を併用したがん薬物療法におけるステロイド投与
BQ8 制吐薬の投与経路選択において考慮すべき点は何か?
BQ9 制吐薬の注意すべき副作用にはどのようなものがあるか?
BQ10 免疫チェックポイント阻害薬を併用したがん薬物療法における制吐療法はどのように行うか?

VI.非薬物療法による制吐療法
1.概要
2.悪心・嘔吐に対する非薬物療法
3.予期性悪心・嘔吐に対する非薬物療法
CQ10 悪心・嘔吐に対して、非薬物療法を併施することは推奨されるか?
CQ11 予期性悪心・嘔吐に対して、非薬物療法は推奨されるか?

VII.制吐療法の評価と患者サポート
1.概要
2.制吐療法の評価について
 (1)悪心・嘔吐の評価方法
 (2)悪心・嘔吐の評価に用いる尺度
3.患者のセルフケアを促進するための情報提供や支援
BQ11 制吐療法の効果に影響を及ぼす患者関連因子にはどのようなものがあるか?
BQ12 自宅など病院外で生じた悪心・嘔吐のコントロールにあたって、求められる支援は何か?
BQ13 悪心・嘔吐に対する患者の効果的なセルフケアを促進するために、求められる情報提供や支援は何か?
CQ12 悪心・嘔吐の評価に、患者報告アウトカムを用いることは推奨されるか?

VIII.制吐療法の医療経済評価
1.背景
2.システマティックレビューの結果
3.制吐薬の費用の評価
4.個別性を考慮した制吐薬の費用
5.今後の研究課題

付録
1.リスク分類からみた臓器がん別のレジメン一覧
 1.肺がん
 2.消化器がん
 3.頭頸部がん
 4.乳がん
 5.婦人科がん
 6.泌尿器がん
 7.胚細胞性腫瘍
 8.造血器腫瘍
 9.骨軟部腫瘍
 10.皮膚悪性腫瘍
 11.脳腫瘍
 12.原発不明がん
2.外部評価
 1.評価ワーキンググループによる外部評価およびパブリックコメントで寄せられた意見とその対応
 (1)本ガイドライン全般について
 (2)II章について
 (3)個別のQuestionについて
 (4)図表・付録類について
 2.がん診療ガイドライン評価委員会によるAGREEII評価結果とその対応
 (1)AGREEII評価結果
 (2)AGREEII評価結果への対応
3.投票結果
 Mindsのガイドラインライブラリで「がん」と入力して検索すると380ものガイドラインが出てきます(2023年8月現在)。高血圧や糖尿病などの成人病よりもはるかに多い数のがんに関するガイドラインが存在するということは、それだけ多くの医師、医療関係者、患者、一般市民が困っているということを示しているのだと思います。日本癌治療学会はがんに関する診療ガイドラインを多数作成していますが、臓器・領域横断的な学会として、特にがんの支持療法に関するガイドラインに力を入れています。その代表的なものが「制吐薬適正使用ガイドライン」です。
 「制吐薬適正使用ガイドライン」は2010年に初版を刊行し、2015年に第2版、途中の部分改訂を挟みながら、8年という長い歳月を経て、このたび全面改訂し、第3版となりました。この第3版の大きな特徴は、Mindsの指針に従い、CQ(clinical question)に対してシステマティックレビューを行い、エビデンス総体を評価したことです。今では当たり前になりましたシステマティックレビューという手法は膨大なマンパワーを要しますが、客観的、普遍的で、エビデンスの評価手法としての信頼性は最も高いとされています。
 昔から、抗がん薬による副作用として、悪心・嘔吐は最も患者さんを悩ませていた症状です。これらの症状をコントロールすることは、患者さんの苦痛を取ると同時に薬物のコンプライアンスを上げて、がん治療の成績そのものを大きく向上させてきました。しかし、現在でも「がん治療において、身体的なつらさがある時にすぐに医療スタッフ相談ができると思う患者の割合は46.5%」(第4期がん対策基本計画より)と半数に至っていません。副作用を軽減するための支持療法を発達させると同時に、我々医療スタッフが症状や治療についての十分な知識をもち、患者さんに寄り添うことにより、真の意味で患者さんが安心して治療に専念できる環境が整うのだと思います。
 青儀健二郎委員長のもと、本ガイドラインの作成に携わってこられた制吐薬適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループ、システマティックレビューチームをはじめ、制吐薬適正使用ガイドライン評価ワーキンググループ、がん診療ガイドライン作成・改訂委員会、がん診療ガイドライン評価委員会、ガイドライン作成事務局など多くの方々に深謝申し上げます。
 このガイドラインが多くの医療関係者、患者さん、市民の方に活用され、臨床の現場で生かされることを祈念しております。

2023年9月

一般社団法人日本癌治療学会
理事長 土岐 祐一郎