G-CSF適正使用ガイドライン 2022年10月改訂 第2版

書籍としては7年ぶりの全面改訂!科学的根拠に基づく新たな指針

編 集 日本癌治療学会
定 価 3,520円
(3,200円+税)
発行日 2022/10/24
ISBN 978-4-307-20431-6

B5判・208頁・図数:20枚

在庫状況 あり

Web版としては4年ぶり、書籍としては7年ぶりの全面改訂となる第2版は、Minds 2014および2017に準拠して作成された。世界の多くのガイドラインで科学的根拠に乏しい「FN発症率20%」のカットオフを前提に推奨が決められてきた歴史があるが、今回議論を重ね「FN発症率20%」の前提を捨て、個々のQuestionに対して科学的にエビデンスを評価した。エビデンスに乏しく明確な推奨ができないがん種やレジメンにおいても、それぞれの状況でリスクとベネフィットのバランスを評価する際の参考になるように作成した。目の前の患者さんに最適な医療を行うためにご活用いただきたい。
I.本ガイドラインの概要
はじめに
1 本ガイドラインの目的
2 本ガイドラインが対象とする利用者
3 本ガイドラインが対象とする患者
4 利用上の注意
5 Questionの区分と呼称について
6 診療ガイドライン作成方法
(1)ワーキンググループ
(2)作成基本方針
(3)スコープ作成
(4)CQ・FQ・BQ作成
(5)文献検索と採択基準
(6)システマティックレビュー
(7)推奨草案作成
(8)推奨決定
7 外部評価
(1)日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本血液学会でのパブリックコメント
(2)日本癌治療学会がん診療ガイドライン評価委員会による外部評価
8 本ガイドラインの普及と改訂
9 利益相反(COI)
(1)利益相反申告
(2)利益相反申告に基づく推奨決定会議における制限
(3)本ガイドラインの独立性
第2版 関係者名簿
1 ガイドライン作成団体
2 ガイドライン作成組織
3 ガイドライン責任組織
4 外部評価組織
5 ガイドライン作成方法論アドバイザー
6 文献検索支援(G-CSF適正使用ガイドライン検索チーム)
7 協力学会
Question・推奨一覧
略語一覧
レジメン一覧

II.総論
1 がん薬物療法に伴う好中球減少症
2 G-CSFの益と害
3 G-CSFの使い方
4 発熱性好中球減少症(FN)の定義
5 アウトカムとしての発熱性好中球減少症発症率(FN発症率)
6 発熱性好中球減少症発症率(FN発症率)のカットオフ

III.一次予防投与
Q1(CQ) 乳がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q2(CQ) 進行非小細胞肺がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q3(CQ) 進展型小細胞肺がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q4(FQ) 食道がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q5(FQ) 胃がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q6(FQ) 膵がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q7(FQ) 胆道がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q8(CQ) 大腸がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q9(FQ) 消化器神経内分泌がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q10(CQ) 頭頸部がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q11(CQ) 卵巣がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q12(FQ) 子宮頸がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q13(FQ) 子宮体がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q14(CQ) 前立腺がんのがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q15(FQ) 非円形細胞軟部肉腫のがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q16(FQ) 骨肉腫のがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q17(FQ) 横紋筋肉腫のがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q18(FQ) Ewing肉腫のがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q19(CQ) 古典的ホジキンリンパ腫のがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q20(CQ) B細胞リンパ腫のがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q21(CQ) T/NK細胞リンパ腫および再発・難治リンパ腫のがん薬物療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q22(CQ) 成人急性骨髄性白血病(急性前骨髄球性白血病を除く)の寛解導入療法において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q23(CQ) 成人急性リンパ性白血病の治療において、G-CSFの一次予防投与は有用か?
Q24(CQ) 好中球減少症が持続する骨髄異形成症候群において、G-CSFの一次予防投与は有用か?

IV.治療強度増強
Q25(CQ) 乳がんにおいて、G-CSF一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?
Q26(FQ) 食道がんにおいて、G-CSF一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?
Q27(FQ) 膵がんにおいて、G-CSF一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?
Q28(FQ) 大腸がんにおいて、G-CSF一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?
Q29(FQ) 頭頸部がんにおいて、G-CSF一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?
Q30(CQ) 卵巣がんにおいて、G-CSF一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?
Q31(CQ) 尿路上皮がんにおいて、G-CSF一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?
Q32(FQ) 非円形細胞軟部肉腫において、G-CSF一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?
Q33(FQ) 横紋筋肉腫において、G-CSF一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?
Q34(CQ) Ewing肉腫において、G-CSF投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?
Q35(CQ) バーキットリンパ腫・マントル細胞リンパ腫において、G-CSF一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か?

V.血液がん
Q36(BQ) 悪性リンパ腫・多発性骨髄腫の自家末梢血幹細胞採取において、G-CSFの投与は有用か?
Q37(CQ) 前コースで発熱性好中球減少症を認めた悪性リンパ腫に対してがん薬物療法を継続して行う場合、G-CSFの二次予防投与は有用か?
Q38(CQ) 成人急性骨髄性白血病(急性前骨髄球性白血病を除く)の治療において、G-CSFとがん薬物療法の併用投与は有用か?

IV.その他
Q39(BQ) 発熱性好中球減少症の発症リスクと相関する患者背景因子は何か?
Q40(CQ) がん薬物療法を受けて発熱性好中球減少症を発症した固形がん患者において、G-CSFの二次予防投与は有用か?
Q41(CQ) がん薬物療法中の発熱性好中球減少症患者に、G-CSFの治療投与は有用か?
Q42(CQ) がん薬物療法中の無熱性好中球減少症患者に、G-CSFの治療投与は有用か?
Q43(CQ) フィルグラスチムを予防投与で用いるとき、バイオシミラーと先行バイオ医薬品のいずれが推奨されるか?
Q44(CQ) がん薬物療法において、ペグ化G-CSF単回投与は非ペグ化G-CSF連日投与より推奨されるか?
Q45(CQ) がん薬物療法でペグ化G-CSFを投与するとき、Day 2とDay 3〜Day 5のいずれが推奨されるか?
Q46(CQ) がん薬物療法と同時に放射線療法を行う場合に、G-CSFの予防投与や治療投与は有用か?

附録
1.各Questionの投票結果内訳
(1)CQ
(2)FQ・BQ
2.外部評価

索引
<刊行にあたって>

 日本癌治療学会はがんに関する診療ガイドラインを多数作成していますが、臓器・領域横断的な学会として、特にがんの支持療法に関するガイドラインに力を入れています。その代表的なものが「G-CSF適正使用ガイドライン」です。
 「G-CSF適正使用ガイドライン」をたどると、1994年にASCO(American Society of Clinical Oncology)においてG-CSF使用に関するガイドライン(1996年改訂)が出されたことを受け、当学会では1998年にG-CSF適正使用ガイドライン作成小委員会が設置され、2001年に初版のガイドラインが本会機関誌IJCOに論文として掲載されています。その後、間をおいて2011年からG-CSF適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループが中心となって改訂作業を進め、「G-CSF適正使用ガイドライン2013年版」が第1版として刊行となりました。ガイドライン2013年版は、その後、毎年部分改訂を重ね2018年のversion 5まで第1版として発行されています。そして今回、4年の間隔をおいて全面的な改訂となり、「G-CSF適正使用ガイドライン2022年10月改訂第2版」として刊行されるに至りました。
 今回の改訂の最大の特徴は「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に準拠して科学的なエビデンスのもとに作成されたということです。この手法では膨大な資料を適切に整理し、システマティックレビューを行い、科学的なエビデンスをまとめることが必要になります。高野利実委員長をはじめとするG-CSF適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループの先生方、そしてそれを支えたシステマティックレビューチームの先生方には大変なご苦労であったと思います。ここに深く感謝を申し上げます。
 近年は分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など、それぞれに特異的な有害事象を見かけることも増えましたが、やはり、従来通り薬物療法の中心は殺細胞性抗がん薬であり、最も懸念すべき有害事象は骨髄抑制であることは変わらないと思います。さらに高齢の患者が急速に増えている現況を考えると、骨髄抑制への対応策としてのG-CSFの使用は現場で増えていると実感しています。幅広い医療従事者に本ガイドラインが活用され、安全かつ有効にがん薬物療法が実施されることを期待しています。

2022年10月
一般社団法人日本癌治療学会
理事長 土岐 祐一郎


<第2版 序>

 「G-CSF適正使用ガイドライン2022年10月改訂第2版」をお届けできることになり、このガイドライン作成に携わったメンバーの一人として、大変嬉しく思います。このガイドラインが、診療現場で、多くの皆様のお役に立てることを心より願っております。
 前版である「G-CSF適正使用ガイドライン2013年版(第1版)」は、年1回の部分改訂が重ねられていましたが、2018年に「2013年版ver. 5」が公開されたところで、大幅改訂の方針が決定され、私が委員長を拝命しました。その後、第2版の発刊までに4年もの歳月を要したわけですが、この間、けっして作業を怠っていたわけではなく、「G-CSF適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループ」の委員とシステマティックレビューチームメンバー42名をはじめ、数多くの方々のたゆまない努力がありました。4年間で費やされた労力を思い返すと、実に感慨深いものがございます。
 これだけの時間と労力を要した理由の一つとして、「Minds診療ガイドライン作成の手引2014」「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に本格的に準拠する方針をとったことがあります。近年の標準的なガイドライン作成手法ですので、当然の流れではありましたが、G-CSFの使用については、世界の多くのガイドラインでも、本ガイドライン2013年版でも、科学的根拠に乏しい「FN発症率20%」のカットオフを前提に推奨が決められてきた歴史があり、これは、Mindsの手法とはかけ離れたものでした。本ガイドライン改訂ワーキンググループは、議論を重ねた上で、「FN発症率20%」の前提を捨て、Mindsの手法に則って、個々のQuestionに対して科学的にエビデンスを評価していく方針を決定しました。これは、おそらく世界初の試みであり、想像以上に大変な道のりが待っていました。「FN発症率20%」で決められたらどんなに楽だろうと思うこともありましたが、メンバーの多大なる尽力のおかげで、当初の方針を貫き、科学的根拠に基づくガイドラインを作り上げることができました。
 作成過程で、個々のがん種、個々のレジメンについて、G-CSF使用の有無を比較したエビデンスが乏しいことも浮き彫りになり、今後の改訂の際には、Questionの設定も含め、改善の余地があると考えられました。診療現場で利用する中でお気づきの点等ございましたら、是非ご意見をお寄せいただきたく存じます。本ガイドラインでは明確な推奨ができていないところも多々ございますが、エビデンスが乏しい場合でも、個々の状況で、リスクとベネフィットのバランスを評価する際の参考になるように作成していますので、目の前の患者さんに最適な医療を行うためにご活用いただければ幸いです。
 本ガイドライン作成にご尽力くださった多くの皆様、そして、何度も心折れそうになったわれわれを支え、作業をリードしてくださった、日本癌治療学会事務局の福田奈津喜さんに、この場を借りて、心より感謝申し上げます。

2022年10月

がん診療ガイドライン作成・改訂委員会
G-CSF適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループ
委員長 高野 利実