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腫瘍崩壊症候群(TLS)診療ガイダンス 第2版
8年ぶりの大改訂! TLSの予防・治療に関する最新知見を徹底解説!
多数の新規分子標的治療薬の登場により、腫瘍崩壊症候群(TLS)は大きく変貌した。造血器腫瘍だけでなく、様々ながん腫においてTLS診療の重要性が高まっている。新規治療薬の導入毎にリスクを再検討する必要が生じたこと、また2015年に英国においてTLS panel consensusを踏まえた新たなガイドラインが公表されたこと、さらにTLSの治療薬であるラスブリカーゼの臨床導入によりTLSの病態が高尿酸型から高リン型へ質的に変化したことなどから、8年ぶりの大改訂が行われた。
I 総論
II TLSの定義・病態
1.定義
2.病態
1)高尿酸血症
2)高カリウム血症
3)高リン血症・低カルシウム血症
4)高サイトカイン血症
III TLSリスク評価の流れ
1.TLSリスク評価の手順
1)TLSリスク評価の実際
IV 各疾患におけるTLSリスク評価
1.固形腫瘍におけるTLSリスク評価
1)TLSリスク分類
2)固形腫瘍におけるTLSの現状
3)固形腫瘍におけるTLSの予防と治療
2.多発性骨髄腫におけるTLSリスク評価
1)はじめに
2)多発性骨髄腫におけるTLSの発症頻度とリスクの考え方
3)多発性骨髄腫におけるTLSリスク評価と予防
3.白血病におけるTLSリスク評価
1)TLSリスク分類
4.悪性リンパ腫におけるTLSリスク評価
1)TLSリスク分類
5.小児科領域におけるTLSリスク評価
1)固形腫瘍におけるリスク分類
2)白血病におけるリスク分類
3)リンパ腫におけるリスク分類
4)腎障害、腎浸潤によるリスク変更
5)分子標的治療薬、免疫制御薬等の新規治療薬に伴うTLS
6)小児におけるフェブキソスタットの使用について
7)小児におけるラスブリカーゼ適正投与について
V TLSの予防と治療
1.TLSの治療法
1)大量補液
2)利尿剤
3)尿のアルカリ化の是非
4)高尿酸血症の治療
5)高リン血症と低カルシウム血症の治療
6)高カリウム血症の治療
7)腎機能代行療法
2.TLS予防・治療の実際
1)リスク別推奨TLS予防処置
2)TLSの治療について
VI Clinical Question
CQ1 TLS予防のために尿のアルカリ化は必要か
CQ2 TLSの管理における血清リン値の評価は必要か
CQ3 TLS予防においてアロプリノールと比べラスブリカーゼは有効か
CQ4 TLS予防における尿酸生成阻害薬としてフェブキソスタットは推奨されるか
CQ5 TLS予防においてラスブリカーゼの適切な投与法はなにか
CQ6 ラスブリカーゼの使用歴のある症例に対して再投与は可能か
CQ7 Hyperleukocytosisに合併したTLSに対するLeukocytapheresis/Exchange transfusionは推奨されるか
CQ8 固形腫瘍においてTLSのモニタリングや予防は必要か
付録1 15歳以上の固形腫瘍におけるTLSの報告
付録2 15歳未満の固形腫瘍(良性腫瘍を含む)におけるTLSの報告
付録3 15歳未満の稀な造血器腫瘍におけるTLSの報告
付録4 分子標的治療薬等の新規治療薬に伴うTLSの報告
索引
II TLSの定義・病態
1.定義
2.病態
1)高尿酸血症
2)高カリウム血症
3)高リン血症・低カルシウム血症
4)高サイトカイン血症
III TLSリスク評価の流れ
1.TLSリスク評価の手順
1)TLSリスク評価の実際
IV 各疾患におけるTLSリスク評価
1.固形腫瘍におけるTLSリスク評価
1)TLSリスク分類
2)固形腫瘍におけるTLSの現状
3)固形腫瘍におけるTLSの予防と治療
2.多発性骨髄腫におけるTLSリスク評価
1)はじめに
2)多発性骨髄腫におけるTLSの発症頻度とリスクの考え方
3)多発性骨髄腫におけるTLSリスク評価と予防
3.白血病におけるTLSリスク評価
1)TLSリスク分類
4.悪性リンパ腫におけるTLSリスク評価
1)TLSリスク分類
5.小児科領域におけるTLSリスク評価
1)固形腫瘍におけるリスク分類
2)白血病におけるリスク分類
3)リンパ腫におけるリスク分類
4)腎障害、腎浸潤によるリスク変更
5)分子標的治療薬、免疫制御薬等の新規治療薬に伴うTLS
6)小児におけるフェブキソスタットの使用について
7)小児におけるラスブリカーゼ適正投与について
V TLSの予防と治療
1.TLSの治療法
1)大量補液
2)利尿剤
3)尿のアルカリ化の是非
4)高尿酸血症の治療
5)高リン血症と低カルシウム血症の治療
6)高カリウム血症の治療
7)腎機能代行療法
2.TLS予防・治療の実際
1)リスク別推奨TLS予防処置
2)TLSの治療について
VI Clinical Question
CQ1 TLS予防のために尿のアルカリ化は必要か
CQ2 TLSの管理における血清リン値の評価は必要か
CQ3 TLS予防においてアロプリノールと比べラスブリカーゼは有効か
CQ4 TLS予防における尿酸生成阻害薬としてフェブキソスタットは推奨されるか
CQ5 TLS予防においてラスブリカーゼの適切な投与法はなにか
CQ6 ラスブリカーゼの使用歴のある症例に対して再投与は可能か
CQ7 Hyperleukocytosisに合併したTLSに対するLeukocytapheresis/Exchange transfusionは推奨されるか
CQ8 固形腫瘍においてTLSのモニタリングや予防は必要か
付録1 15歳以上の固形腫瘍におけるTLSの報告
付録2 15歳未満の固形腫瘍(良性腫瘍を含む)におけるTLSの報告
付録3 15歳未満の稀な造血器腫瘍におけるTLSの報告
付録4 分子標的治療薬等の新規治療薬に伴うTLSの報告
索引
<第2版 序文>
腫瘍崩壊症候群(TLS)診療ガイダンス初版(2013年8月)が刊行されてから早7年半が経過しました。この間、新たに60種類以上のがん分子標的治療薬が承認され、がんの治療成績は年々向上しています。固形腫瘍に対する有効な薬剤が増えたためか、以前は、TLSの高リスクは造血器腫瘍と考えられていましたが、最近では固形腫瘍においてTLS発症の症例報告が増加しています。このような背景から、進行がん診療、とりわけ、固形腫瘍のがん薬物療法に携わる腫瘍内科医にとって、TLSの診療の重要性が増しています。そこで、日本臨床腫瘍学会では、腫瘍崩壊症候群診療ガイダンス作成WG(湯坐有希WG長)を組織してこの度この診療ガイダンスを改訂する運びとなりました。
今回の主な改訂内容のひとつは、各種悪性腫瘍に対するTLSのリスク評価に関することで、(1)固形腫瘍のTLSリスク評価に関しては、固形がんのTLSの症例報告集を更新し、初版では1986〜2012年まで論文から計103例が紹介されましたが、今回の改訂では、これらに加え2012〜2019年までの論文から106例(合計209例)の報告が追加紹介されています。この短期間で固形腫瘍のTLSの症例報告が増加していることをうかがわせます。さらに、(2)多発性骨髄腫のTLSリスク評価を大幅に改訂したほか、(3)白血病の中で特に慢性白血病のTLSリスク評価を見直しました。今回のもうひとつの主な改訂内容は、Clinical Question(CQ)です。遺伝子組み換え型尿酸オキシダーゼ(ラスブリカーゼ)の普及により高尿酸血症の予防が浸透する中で、以前よりも高リン血症が問題になってきたことなどにより、CQ2、CQ4およびCQ5を大幅に見直しました。また、固形腫瘍におけるTLSもモニタリングや予防に関するCQを新たに追加し、前回よりCQを1つ増やしました。
このように、がんの薬物療法の進歩とともにTLSの発症に注意が必要な患者数は固形腫瘍を中心に以前よりも増えています。このガイダンスが日常診療で有効に活用され、多くの患者さんの診療に役立つことを希望します。
2021年2月
公益社団法人日本臨床腫瘍学会
理事長 石岡 千加史
<第2版 発刊によせて>
日常診療としてがん薬物療法を行う上で、診療ガイドライン・ガイダンスは重要な役割を担っています。国内外のエビデンスを十分に評価した上で有効で安全な治療選択肢を示し、未だ結論が明らかでないクリニカルクエスチョンを取り上げることで、実臨床での注意を喚起し、さらに今後の研究開発の方向性を示唆します。日本臨床腫瘍学会は我が国のがん薬物療法を牽引する学術団体として、これまで多くの診療ガイドライン・ガイダンスを刊行してきました。これらには、高齢者のがん薬物療法ガイドライン(2019年)、がん免疫療法ガイドライン第2版(2019年)、発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン第2版(2017年)など、臓器横断的に診断、薬物療法、支持療法を解説したものが多く含まれています。まさに日本臨床腫瘍学会の使命である、がん薬物療法に関わる幅広い分野の診療、研究、教育、そして情報発信を実現するための活動として位置づけられます。
その一環として、2013年に腫瘍崩壊症候群(TLS)診療ガイダンス第1版が発刊されました。造血器腫瘍をはじめとした薬剤感受性の高い腫瘍において腫瘍崩壊症候群(TLS)はしばしば経験されてきましたが、それに加えて従来薬物療法の効果が乏しかった腫瘍に対しても種々の新規抗腫瘍薬が著明な効果を示し、その結果TLSを来す例が増したことが発刊の背景にあります。幅広い腫瘍の治療において経験されるTLSについて、そのリスク判断と予防的治療の重要性を明確に示した本ガイダンスは臨床現場で高く評価されました。しかし同時期にTLSの有効な治療薬ラスブリカーゼが使用可能となり、TLS診療が大きく変わる局面でもありました。すなわちTLSの管理すべき病態が高尿酸血症から高リン血症に移行してゆくという状況を生み出しました。さらに第1版刊行から現在までの間にも多種の新規抗腫瘍薬が用いられ、TLSを来す例も増しています。このたび発刊された腫瘍崩壊症候群(TLS)診療ガイダンス第2版では、これらの変化を十分に踏まえて大きく改訂がなされました。有効ながん薬物療法を行うとともに、万全の支持療法により有害事象に備えるがん薬物療法医や医療スタッフにとって、本ガイダンス第2版は確かな指針になると期待されます。
今回の改訂は湯坐有希WG長を中心とする7名の作成委員、5名の評価委員、そして関係する多くの方々の素晴らしいご尽力により完成しました。ガイドライン委員長として心より感謝を申し上げます。
2021年2月
日本臨床腫瘍学会 ガイドライン委員長
馬場 英司
腫瘍崩壊症候群(TLS)診療ガイダンス初版(2013年8月)が刊行されてから早7年半が経過しました。この間、新たに60種類以上のがん分子標的治療薬が承認され、がんの治療成績は年々向上しています。固形腫瘍に対する有効な薬剤が増えたためか、以前は、TLSの高リスクは造血器腫瘍と考えられていましたが、最近では固形腫瘍においてTLS発症の症例報告が増加しています。このような背景から、進行がん診療、とりわけ、固形腫瘍のがん薬物療法に携わる腫瘍内科医にとって、TLSの診療の重要性が増しています。そこで、日本臨床腫瘍学会では、腫瘍崩壊症候群診療ガイダンス作成WG(湯坐有希WG長)を組織してこの度この診療ガイダンスを改訂する運びとなりました。
今回の主な改訂内容のひとつは、各種悪性腫瘍に対するTLSのリスク評価に関することで、(1)固形腫瘍のTLSリスク評価に関しては、固形がんのTLSの症例報告集を更新し、初版では1986〜2012年まで論文から計103例が紹介されましたが、今回の改訂では、これらに加え2012〜2019年までの論文から106例(合計209例)の報告が追加紹介されています。この短期間で固形腫瘍のTLSの症例報告が増加していることをうかがわせます。さらに、(2)多発性骨髄腫のTLSリスク評価を大幅に改訂したほか、(3)白血病の中で特に慢性白血病のTLSリスク評価を見直しました。今回のもうひとつの主な改訂内容は、Clinical Question(CQ)です。遺伝子組み換え型尿酸オキシダーゼ(ラスブリカーゼ)の普及により高尿酸血症の予防が浸透する中で、以前よりも高リン血症が問題になってきたことなどにより、CQ2、CQ4およびCQ5を大幅に見直しました。また、固形腫瘍におけるTLSもモニタリングや予防に関するCQを新たに追加し、前回よりCQを1つ増やしました。
このように、がんの薬物療法の進歩とともにTLSの発症に注意が必要な患者数は固形腫瘍を中心に以前よりも増えています。このガイダンスが日常診療で有効に活用され、多くの患者さんの診療に役立つことを希望します。
2021年2月
公益社団法人日本臨床腫瘍学会
理事長 石岡 千加史
<第2版 発刊によせて>
日常診療としてがん薬物療法を行う上で、診療ガイドライン・ガイダンスは重要な役割を担っています。国内外のエビデンスを十分に評価した上で有効で安全な治療選択肢を示し、未だ結論が明らかでないクリニカルクエスチョンを取り上げることで、実臨床での注意を喚起し、さらに今後の研究開発の方向性を示唆します。日本臨床腫瘍学会は我が国のがん薬物療法を牽引する学術団体として、これまで多くの診療ガイドライン・ガイダンスを刊行してきました。これらには、高齢者のがん薬物療法ガイドライン(2019年)、がん免疫療法ガイドライン第2版(2019年)、発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン第2版(2017年)など、臓器横断的に診断、薬物療法、支持療法を解説したものが多く含まれています。まさに日本臨床腫瘍学会の使命である、がん薬物療法に関わる幅広い分野の診療、研究、教育、そして情報発信を実現するための活動として位置づけられます。
その一環として、2013年に腫瘍崩壊症候群(TLS)診療ガイダンス第1版が発刊されました。造血器腫瘍をはじめとした薬剤感受性の高い腫瘍において腫瘍崩壊症候群(TLS)はしばしば経験されてきましたが、それに加えて従来薬物療法の効果が乏しかった腫瘍に対しても種々の新規抗腫瘍薬が著明な効果を示し、その結果TLSを来す例が増したことが発刊の背景にあります。幅広い腫瘍の治療において経験されるTLSについて、そのリスク判断と予防的治療の重要性を明確に示した本ガイダンスは臨床現場で高く評価されました。しかし同時期にTLSの有効な治療薬ラスブリカーゼが使用可能となり、TLS診療が大きく変わる局面でもありました。すなわちTLSの管理すべき病態が高尿酸血症から高リン血症に移行してゆくという状況を生み出しました。さらに第1版刊行から現在までの間にも多種の新規抗腫瘍薬が用いられ、TLSを来す例も増しています。このたび発刊された腫瘍崩壊症候群(TLS)診療ガイダンス第2版では、これらの変化を十分に踏まえて大きく改訂がなされました。有効ながん薬物療法を行うとともに、万全の支持療法により有害事象に備えるがん薬物療法医や医療スタッフにとって、本ガイダンス第2版は確かな指針になると期待されます。
今回の改訂は湯坐有希WG長を中心とする7名の作成委員、5名の評価委員、そして関係する多くの方々の素晴らしいご尽力により完成しました。ガイドライン委員長として心より感謝を申し上げます。
2021年2月
日本臨床腫瘍学会 ガイドライン委員長
馬場 英司
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