小児感染症のトリセツ 2025 疾患編

小児感染症を徹底攻略! 敵(微生物)の倒し方を完全マスター

監 修 笠井 正志 / 伊藤 健太
著 者 山田 健太
定 価 4,400円
(4,000円+税)
発行日 2025/04/20
ISBN 978-4-307-17086-4

B6変判・392頁

在庫状況 あり

あの『小児感染症のトリセツ』が帰ってきた! 前版の構成を一新し『抗菌薬編』と『疾患編』の2部作となってさらにバージョンアップ。『疾患編』では、頻出のコモンディジーズから知っておきたい重症感染症の対応まで、小児感染症の診断名別に診療のプロセスが分かる。「病名」から小児感染症を学びたい方はまずはこちら。姉妹本の『抗菌薬編』もあわせて読めばさらに盤石! 圧倒的な情報量と現場で何をすべきかを両立した小児感染症マニュアルの決定版。


【姉妹本】小児感染症のトリセツ 2025 抗菌薬編
CONTENTS

Chapter 1 敗血症
1 敗血症

Chapter 2 中枢神経感染症
1 細菌性髄膜炎
2 ウイルス性髄膜炎
3 急性脳炎・脳症
4 新生児 HSV 脳炎
5 脳膿瘍/硬膜下膿/血栓性静脈炎
6 急性小脳失調/小脳炎

Chapter 3 上気道・頭頸部感染症
1 カゼ
2 新型コロナウイルス感染症
3 インフルエンザ
4 急性咽頭炎
5 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎
6 クループ
7 急性喉頭蓋炎
8 伝染性単核球症
9 急性中耳炎
10 外耳道炎
11 急性副鼻腔炎
12 頸部リンパ節炎
13 深頸部感染症/膿瘍

Chapter 4 肺炎・下気道感染症
1 下気道感染症のアプローチ
2 ウイルス性下気道感染症
3 細菌性下気道感染症
4 非定型肺炎
5 肺炎随伴性胸水、膿胸
6 壊死性肺炎・肺膿瘍
7 コッホ現象

Chapter 5 尿路感染症・外陰部感染症
1 腎盂腎炎・膀胱炎
2 尿道炎
3 亀頭炎、亀頭包皮炎
4 外陰腟炎
5 精巣上体炎

Chapter 6 血管内・血流感染症
1 感染性心内膜炎
2 感染性動脈瘤
3 血栓性静脈炎
4 縦隔炎
5 心筋炎

Chapter 7 消化管感染症
1 消化器症状のある小児のマネジメント
2 抗菌薬関連下痢症
3 Clostridioides difficile infection

Chapter 8 腹腔内感染症
1 急性虫垂炎
2 腹膜炎
3 腹腔内膿瘍
4 肝膿瘍
5 腎膿
6 脾膿瘍
7 膵膿瘍
8 後腹膜膿瘍
9 急性胆管炎
10 急性胆嚢炎

Chapter 9 発熱性発疹症の診かた・皮膚軟部組織感染症
1 発熱性発疹症
2 壊死性筋膜炎
3 毒素性ショック症候群
4 ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
5 蜂窩織炎・皮下膿瘍
6 咬傷
7 熱傷感染
8 猩紅熱
9 多形紅斑
10 伝染性膿痂疹
11 突発性発疹
12 麻疹
13 風疹
14 水痘
15 手足口病
16 伝染性紅斑
17 カポジ水痘様発疹症

Chapter 10 骨・関節感染症
1 急性血行性骨髄炎
2 化膿性関節炎
3 反応性関節炎
4 溶連菌感染症後関節炎
5 単純性関節炎

Chapter 11 眼の感染症
1 眼の感染症をみる前に
2 眼瞼感染症(麦粒腫)
3 結膜炎
4 角膜炎
5 ぶどう膜炎
6 眼内炎
7 眼窩隔膜前蜂窩織炎/眼窩蜂窩織炎

Chapter 12 発熱性好中球減少症
1 発熱性好中球減少症

Chapter 13 原発性免疫異常症
1 原発性免疫異常症

巻末資料 感染症別 抗微生物薬の投与量・投与期間
子どもと「感染症」という冒険の旅に出かけよう

 「地方で小児感染症を学ぶには、どうすればよいでしょうか?」
 2012 年の冬、私は小児科専攻医として学会で笠井正志先生に初めて声をかけました。そのときの質問です。ちょうどその年は、笠井先生の『小児感染症と抗菌薬のトリセツ』(初版)が出版された年でもありました。当時、トリセツの内容と自分の経験した感染症診療との間に大きなギャップがあることに衝撃を受けたのを今でも覚えています。
 本書を手に取っていただいた方のなかには、同じ疑問を抱えている方がいるかもしれません。ひとりで子どもの感染症を診ることが不安な方もいると思います。私もそのひとりでした。13 年前と比べ、小児感染症に関する書籍やガイドラインは格段に充実しました。「本は読んだけれど、どう学び、実践すればよいか分からない」という方にこそ、本書はきっと役立つはずです。

 冒頭の質問に対して、笠井先生は日本の小児感染症診療をどのように成長させたいかを熱く語り、勉強会で全国の仲間と共に学ぶことを勧めてくださいました。受講生として同じ疑問を持つ同志とつながり、次第に教える側にもなることで学びがさらに深まっていきました。
 私は小児感染症科で専門的なトレーニングを受けたことはありません。
福井の小児科医として「トリセツ」や成書を片手に自施設の患者さんと向き合ってきました。職場の仲間と相談し、疑問点は調べ、実践で迷った際には県外の小児感染症医に相談しながら、少しずつ知識と経験を積んできたと思います。
 『小児感染症のトリセツREMAKE』(2 版)は実践書として常に私を助けてくれました。著者である伊藤健太先生を筆頭に、小児感染症医のみなさんは、豊富な知識と経験を持ち、優しく社交的な方ばかりです。彼らとセミナーや学会で出会ったとき、トリセツで学んだことが共通言語となって小児感染症医とのつながりが広がっていったと感じています。

 本書は『REMAKE』の改訂版です。エビデンスはアップデートし、小児科専攻医に役立つ装備になれるよう、分かりやすさを重視しました。子どもの感染症に専攻医がひとりで初期対応をするときは必ず助けになるはずですし、指導医は知識の整理にも使えるはずです。
 子どもの感染症診療には問診、診察、検体採取、投薬などに特有の難しさがあります。しかしそれも大竹先生が執筆された『抗菌薬編』という攻略本があればクリアできるでしょう。診断から治療まで詳説されていますが、共感できる「現場あるある」が満載なので楽しく学べます。

 何かを学ぶには、ワクワクする気持ちが大切です。「子ども×感染症」という未知のリスクに立ち向かう点において、小児感染症は冒険に似ていると思います。危険を冒すことが魅力なのではありません。子どもや家族はもちろん、臨床微生物検査技師、薬剤師や看護師と仲間になり、力を合わせることで診療できることにワクワクします。小児感染症医が仲間に加わるとさらにチームが盛り上がります。
 多様な微生物との出会いも大きな楽しみです。微生物はヒトの体内環境の一部ですが、ヒトは微生物で覆われた地球環境の一部ともいえます。ヒトに向き合う医療をしながら、子どもと微生物という小さくて偉大な自然と向き合えることも私には大切な魅力です。
 ぜひ一緒に、子どもの感染症診療という冒険に旅立ちましょう!

 本書の完成は多くの方々のご支援のおかげです。監修をしてくださった笠井先生と伊藤先生はもちろん、同志である大竹先生からも多くの助言をいただきました。編集担当の中立様には、執筆の遅い私を諦めることなく励まし続けていただきました。私を小児科医として育ててくださった職場のみなさま、患者さんたちにも心から感謝申し上げます。最後に、執筆を支えてくれた最愛の妻と娘にも感謝の気持ちを込めて。

2025年4月
兵庫県立こども病院 感染症内科 医長
著者 山田 健太
トリセツはアップデートされる――KENTA によって

 私が笠井正志先生の2012 年に発売された『小児感染症と抗菌薬のトリセツ』を「REMAKE」させていただいたのが2019 年の4 月でした。当時は鼻息荒く日本語版小児感染症の成書を目指すと息巻いて、結果としてめちゃくちゃボリュームをつぎ込んでしまい、字、小っさ!……辞書かよ、
と方々からのご指摘をいただく羽目になってしまいました。
 2019 年から2025 年までの間に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがあり、さらに日本では少子化の勢いがとどまることを知らず、小児科の疾病構造に変化が起きてきています。
 そのなかでも特に少子化の影響は大きいですね。子どもが減れば、ある一定の割合で起きる重症感染症の発生数も減少します。ただでさえ肺炎球菌やインフルエンザ菌に対するワクチンが定期接種化されたことで大きく減少した細菌性髄膜炎は、今や10 万人あたり数人起きるか起きないかの超レアディジーズになっています。それ自体は素晴らしいことですが、若い小児科医が、「本物」を診る機会も減ってきていることを日々痛感します。
 さて、そんな近年の小児感染症を取り巻く状況の変化に対応するために、トリセツもアップデートしていく必要があります。『REMAKE』で頭でっかちになりすぎた分量は、そのまま、いや増量し、一方で可読性を高め、目の前の感染症を疑った診療を可能にする。そのために行った対策が……『抗菌薬編』『疾患編』に「分ける」ことでした。
 『疾患編』は目の前の患者に対して、感染症の疑い方、検査の進め方(その準備方法まで!)、そして治療に至るまでわかりやすい内容になっています。こんな読者に優しく、いつも小脇に抱えておきたいと思える内容に改訂してくださったのは北陸の勇、小児感染症業界のアナザーKENTA として有名な山田健太先生です。『REMAKE』のクセが強く、灰汁が濃い解説を『疾患編』として、やさしく、わかりやすい形にしてくれたのは、彼が現場で日々奔走する臨床医だからでしょう。現場でもっと使われるトリセツに見事にアップデートされたと思います。
 小児感染症医もトリセツもアップデートされます。次の小児感染症のKENTA はだれになるのでしょう? 次の改訂が今から楽しみですね!!

あいち小児保健医療総合センター 総合診療科 医長
監修 伊藤 健太