DOHaD 先制医療への展開

胎生期・乳幼児期の環境が、将来と次世代の健康に影響する!?

編 集 日本DOHaD学会
編集代表 佐田 文宏 / 福岡 秀興
定 価 7,700円
(7,000円+税)
発行日 2023/05/10
ISBN 978-4-307-17079-6

B5判・316頁・図数:100枚・カラー図数:1枚

在庫状況 あり

栄養、ストレス、腸内細菌……。胎生期・乳幼児期の環境要因が非感染性疾患(NCDs)の発症に大きな影響を与えるという概念DOHaD(ドーハッド)、その研究最前線の知見が集結した。産科医、小児科医、内科医などの臨床医、動物・細胞モデルを扱う実験研究者、疫学、教育学、経済学、畜産学などの研究者、助産師、栄養士、公衆衛生・保健行政従事者をはじめ多くの読者にとって有益かつ興味深い1冊となった。
1章 DOHaDの概念
1.DOHaD説と日本の現況
コラム
●小児医療とDOHaD
●周産期医療から周産期包括ケア(P3care)への展開が、DOHaD予防につながる

2章 DOHaDを基盤とするライフコースの取り組み
1.先制医療とライフコース・ヘルスケア
2.出生コホート研究の最近の動向
3.生涯健康データベース構築化構想

3章 DOHaDのメカニズム
A.DOHaDとエピジェネティクス
 1.エピジェネティクスとは
 2.DOHaDの生物学的基盤としてのエピジェネティクス
B.DOHaDとジェノミクス
 1.ゲノムワイド関連(相関)解析(GWAS)
C.DOHaDと腸内細菌叢
 1.新生児期・乳児期腸内細菌叢と免疫機構
 2.腸内細菌叢(マイクロバイオーム)を介した母子連間
 3.プロバイオティクスと乳幼児の栄養

4章 DOHaDの視点からみた疾患発症機序と先制医療
1.高血圧
2.腎疾患
3.糖尿病
4.肥満・脂質異常
5.アレルギー疾患
6.神経発達症群(発達障害)

5章 DOHaDを基盤とする保健・医療
A.プレコンセプションケア
 1.思春期の健康
 2.助産師の視点から
 3.産科医の視点から
 4.母性内科医の視点から
B.妊娠中の栄養
 1.「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」について
 2.わが国における妊婦の栄養管理の歴史:2021年新たな妊婦の体重増加指導の目安策定までの変遷
 3.妊娠中の栄養と胎児発育
C.胎児発育の評価
D.DOHaDと妊娠合併症
 1.妊娠高血圧症候群、特に妊娠高血圧腎症が児に与える長期予後─ DOHaD の観点から─
 2.妊娠糖尿病
E.歯周病とDOHaD
F.DOHaDと発育
 1.新生児・乳幼児の栄養
 2.低出生体重児

6章 DOHaDを基盤とする疫学研究
1.出生統計と疫学
2.エコチル調査
3.東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査
4.ライフコースアプローチに基づく妊娠中における喫煙のリスク評価:前向き出生コホート「北海道スタディ」
5.こども調査(C-MACH)
コラム
●エコチル調査福島ユニットセンター
●エコチル調査宮城ユニットセンター(MUC)

7章 DOHaDを基盤とする動物・細胞モデル
1.肥満・メタボリックシンドローム
2.Developmental Origins of Metaflammation:DOHaD学説と進化生物学の新たな接点
3.POHaD 研究における父加齢と精子のエピジェネティック変異
4.胎生期低栄養と行動異常
5.胎生期の過栄養と栄養シグナル
6.胎生期低栄養と身長
7.環境化学物質とDOHaD
8.ステロイド投与の影響
9.DOHaDの畜産への応用:DOHaDを応用して国土保全型牛肉生産システムを構築

8章 国内のDOHaD研究の状況
1.日本DOHaD学会と国内の状況
2.多職種連携および若手研究者参画の必要性:若手研究者からのメッセージ
コラム
●若手の会/ASTROと4コマ漫画プロジェクト

9章 海外のDOHaD研究の状況
1.国際DOHaD学会と世界の状況

索引
 2008年に「DOHaD その基礎と臨床」が金原出版より刊行された。当時は、胎生期、幼小児期の環境要因が成人期以降の非感染性疾患(non-communicable diseases:NCDs)の発症に大きな影響を与えるという概念Developmental Origins of Health and Disease(DOHaD)は、新規性はあるが、仮説の域をこえないとみなされていた。その後、臨床、疫学、基礎研究の各分野で数多くのエピデンスが蓄積され、学説として定着するに至った。結果的に、わが国の医学系および生物学研究に大きなインパクトを与えてきたと言っても過言ではないであろう。日本では、低出生体重児の割合が15年以上に渡り約10%という極めて高い値が続いており、DOHaDの観点からNCDsの急増が危惧される。それだけに日本全体でのDOHaDの概念の周知が強く求められている。現在、最先端の技術を用いた研究手法を導入し、新たな展開を迎えている。例えば、DOHaDの概念にマッチした先制医療という新しいパラダイムの提唱、エピジェネティクス、ジェノミックスによる分子レベルからゲノムワイド関連研究までの幅広い検討、腸内細菌叢による母児の健康影響の解析等によるDOHaDのメカニズムの解明が挙げられる。また、国家規模の出生コホート研究、国のデータヘルス計画に沿った生涯に渡る健康医療情報のデータベース化によるライフコースの視点に立った長期縦断研究が開始されている。それらに基づいたプレコンセプションおよび出生ハイリスク児のケアの在り方も検討されねばならない。米英などの先進諸国では国家的事業として、出生コホート連携に取り組み、出生コホートから得られた知見を活かし、胎児期〜幼小児期を最適の環境で過ごすことが健康長寿に繋がることを政策的に実現しようという試みが実践されつつある。わが国では、2012年に日本DOHaD学会(当時、研究会)が設立され、国際DOHaD学会の連携学会CHAPTERとしてDOHaD研究の推進に貢献し、2022年には10周年を迎えた。
 本書はわが国でDOHaD研究に造詣の深い諸先生方によって、ライフコースの視点に立った先制医療、精密医療への展開に焦点をあて、学際的な研究分野であるDOHaD研究をできるだけわかりやすく執筆していただいた。産科医、小児科医、内科医などの臨床医、動物・細胞モデルを扱う実験研究者、疫学、教育学、経済学、畜産学などのDOHaD関連分野の研究者、助産師、栄養士、公衆衛生・保健行政に係わっている実務家をはじめとして多くの方々にとって興味深い内容になっている。本書の刊行が、わが国におけるDOHaD研究展開の一助となれば幸いである。

一般社団法人日本DOHaD学会
編集代表 佐田 文宏
福岡 秀興