発達障害 子どもを診る医師に知っておいてほしいこと

発達障害の診療に力を入れてきた第一人者が執筆。外来診療する他科の医師に必要な知識をわかりやすく解説!

著 者 平岩 幹男
定 価 3,080円
(2,800円+税)
発行日 2009/09/30
ISBN 978-4-307-17059-8

B5判・200頁・図数:12枚

在庫状況 あり

平岩幹男先生の著書が刊行されるにあたり、いち早く校正原稿を手に入れる機会があった。思わず熟読し、アンダーラインを引き、あとがきまで一気に読んだ。
“子どもを診る医師にお願いしたいこと”で始まる本書は、優しい口調で書かれてはいるが、実は氏から我々への最終通告ではないか。発達障害を抱えた子どもたちに接する機会のある者が、その障害について理解を深める努力をしないのであれば、もうこれ以上診療を続ける資格はない。そう叱咤された気がした。
項目ごとにある箇条書きの要点、これが極めて明快だ。そして、文章の切れが良い。問題点と今やるべきことを、ずばずばと直球で投げ込んでくる。素晴らしい個性を持ちながら、それを発揮するための社会性を獲得できず苦しんでいる子どもたち、大人たちがいる。だから、「様子をみましょう」と言わないでほしい。氏の強い気持ちがズンと腹に響いた。
推薦の言葉を贈るつもりが、逆に励まされた気がした。
慶應義塾大学医学部小児科教授・高橋孝雄
(「推薦のことば」より)
はじめに 子どもを診る医師にお願いしたいこと
 発達障害という言葉
 発達障害が疑われるきっかけ
 子どもには個人差がある
 子どもを診る医師にお願いしたいこと
 「様子をみましょう」は使わない
 疑い病名は一人歩きする
 理解しようとすることから始まる
 対応にはいくつかの原則があります

第1章 発達障害とは
 はじめに
 発達障害者支援法
 発達障害者支援法の内容
 発達障害というあいまいな障害
 操作的診断の問題点:ADHD
 操作的診断の問題点:自閉症
 知的障害を伴わない発達障害
 発達障害の抱える問題
 なぜ問題になってきたか
 なぜ増加しているのか
 発達障害の原因
 診断では終わらない
 診断ができる社会資源は多くはない
 知能検査・発達検査のわな
 保護者に疑いを伝える
 障害の受容と告知
 子どもへの告知とその受容

第2章 目指すゴール
 何を目標とするか
 self-esteemを育てるということ
 今だけのことを考えない

第3章 幼児期の自閉症をめぐって
 はじめに
 PDDかASDか
 Kannerの自閉症とその後の展開
 言葉の遅れ
 非言語的コミュニケーションの問題
 自閉症の早期スクリーニングと診断
 自閉症の治療や療育とは
 言語的なコミュニケーションがみられないときの療育
 言語的な対応がみられるようになってからの療育
 療育の目的はCoreからCategoryへ
 障害を暖かく見守る?
 個別療育と集団療育
 療育を行わないとどうなるか
 幼児期の自閉症の問題点

第4章 高機能自閉症をめぐって
 Asperger症候群から高機能自閉症への流れ
 高機能自閉症とは
 非言語的コミュニケーションの問題
 高機能自閉症:そのほかの特徴
 第2の高機能自閉症
 高機能自閉症はいつごろ診断される?
 高機能自閉症の集中力
 高機能自閉症からの移行と合併症
 高機能自閉症の治療の基本
 高機能自閉症の将来は?

第5章 ADHDをめぐって
 ADHDの歴史的経過
 ADHDの症状
 多動型のADHDはパワフル
 ADHDのパワーにどう対応するか
 ゲームなら集中できるのに
 ADHDからの移行
 ADHDの合併症・二次障害
 ADHDの薬物療法
 ADHDの将来は

第6章 学習障害
 学習障害とは
 学習障害の診断時期
 学習障害への対応
 学習障害の補助ツール
 学習障害の将来

第7章 発達障害の抱える問題は年齢により異なる
 はじめに
 幼稚園・保育園の時期
 小学校入学の時期
 小学校のころ
 中学校・高校のころ
 成人になってから
 社会で暮らしていくためには
 将来を考える

第8章 乳幼児健診をめぐって
 乳幼児健診の法的根拠
 1歳6か月ころの子ども
 1歳6か月では発達が質的に変化
 1歳6か月の言葉
 1歳6か月健診と発達障害
 3歳ころの子ども
 3歳では発達が社会的に変化
 3歳児における「扱いにくさ」
 3歳児健診と発達障害
 5歳児健診
 5歳児健診のデザイン
 発達障害はいつ診断されるか、5歳児健診は適当な時期か
 就学時健診と就学指導
 就学前に発見された発達障害への継続支援、事前協議
 事前協議においての確認事項

第9章 発達障害でしばしば用いられる薬剤について
 はじめに
 Methylphenidate
 Atomoxetine
 SSRI:selective serotonin reuptake inhibitors
 Risperidone リスパダール
 その他の薬剤

第10章 外来でできること実際の対応の方法
 はじめに
 基本はスモールステップ
 予定・決まりごとは守る
 目をみる
 耳から入る情報よりは目から入る情報
 手をもって小さな世界をつくる
 タイムアウト
 声かけの基本
 褒めること、叱ること
 話しはじめた時、説明の時
 感覚過敏の問題
 社会生活訓練(SST)
 あいさつ
 シールを使う
 カレンダーでチェックをする
 チェックシートを使う
 3行日記
 こんなときどうする
 片付けられない
 SSTで大切なこと

あとがき

参考図書・参考論文

資料 診断基準