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がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版 第3版
緩和ケアに関わる医療者必携の「がん疼痛」ガイドライン、6年ぶりの改訂!
緩和ケアの重要課題である「がん疼痛」に対する治療法のうち、最も使用頻度が高い薬物療法についてのガイドライン。
6年ぶりの改訂となった本書では、この間に上市された新たな薬剤の情報や、海外ガイドラインの最新情報などを十分に取り込んだ。推奨では、前版の構成と臨床疑問を全面的に改訂し、より現場の状況に即した指針を提示している。緩和ケアに携わる医療者必携の一冊。
6年ぶりの改訂となった本書では、この間に上市された新たな薬剤の情報や、海外ガイドラインの最新情報などを十分に取り込んだ。推奨では、前版の構成と臨床疑問を全面的に改訂し、より現場の状況に即した指針を提示している。緩和ケアに携わる医療者必携の一冊。
I章 はじめに
1 本ガイドライン作成の目的と経緯
1.本ガイドラインの目的
2.2020年版作成までの経緯
3.2020年版作成の経緯
4.ガイドライン普及と活用促進のための工夫
2 ガイドラインの使用上の注意
1.ガイドラインの使用上の注意
2.ガイドラインの構成とインストラクション
3.日本緩和医療学会の他の教育プログラムとの関係
3 推奨の強さとエビデンスレベル
1.エビデンスレベル
2.推奨の強さ
3.推奨の強さとエビデンスレベルの臨床的意味
4 作成過程
1.概要
2.臨床疑問の設定
3.システマティックレビュー
4.エビデンスの評価
5.妥当性の検証
6.日本緩和医療学会の承認
7.ガイドライン作成者と利益相反
5 文献検索式
II章 背景知識
1 がん疼痛の分類・機序・症候群
1.痛みの性質による分類
2.痛みのパターンによる分類
3.痛みの臨床的症候群
2 痛みの包括的評価
1.痛みの包括的評価の実際
2.痛みの原因を診断し、治療計画を立てる
3 がん疼痛治療の概要
1 WHO方式がん疼痛治療法
1.WHOがん疼痛ガイドラインとは
2.がん疼痛マネジメントの基本原則
3.推奨
2 海外のがん疼痛ガイドラインの概要
1.がん疼痛に対するオピオイドの使用:エビデンスに基づいたEAPCの推奨(Lancet Oncol, 2012)
2.がん疼痛のマネジメント:ESMOの臨床ガイドライン(Ann Oncol, 2018)
3.がんの突出痛のマネジメント:APMによる推奨(Eur J Pain, 2008)
4.成人のがん疼痛:NCCNの臨床ガイドライン(Web, 2019)
4 薬理学的知識
1 オピオイド
1.オピオイドとは何か
2.本邦で利用可能なオピオイドとその特徴
3.投与経路の変更
4.オピオイドスイッチング
5.換算表
6.各オピオイドの薬理学的特徴
7.特殊な病態でのオピオイドの選択
2 オピオイドによる副作用と対策
1.悪心・嘔吐
2.便秘
3.眠気
4.せん妄・幻覚
5.呼吸抑制
6.口内乾燥
7.掻痒感
8.排尿障害
9.ミオクローヌス
10.セロトニン症候群
11.心血管系の副作用
3 オピオイドに与える影響・薬物相互作用
1.薬物相互作用とは
2.オピオイド使用時に注意すべき相互作用
3.特にモルヒネ・ヒドロモルフォン・オキシコドン・フェンタニル・タペンタドール・メサドン・トラマドール使用時に注意すべき相互作用
4 非ステロイド性抗炎症薬使用時に注意すべき相互作用
5 精神依存・身体依存・耐性
1.精神依存
2.身体依存
3.耐性
5 非オピオイド鎮痛薬
1.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
2.アセトアミノフェン
6 鎮痛補助薬
1.鎮痛補助薬の定義
2.鎮痛補助薬の概要
3.各鎮痛補助薬の特徴
7 患者のオピオイドについての認識
1.患者はオピオイドをどうとらえているか
2.医学的真実と一致しない誤解に対してどのように対応していくか
III章 推奨
●推奨の概要
1 薬剤に関する臨床疑問
CQ 1 がん疼痛のある患者に対して、アセトアミノフェンの投与は推奨されるか?
CQ 2 がん疼痛のある患者に対して、NSAIDsの投与は推奨されるか?
CQ 3 がん疼痛のある患者に対して、モルヒネの投与は推奨されるか?
CQ 4 がん疼痛のある患者に対して、ヒドロモルフォンの投与は推奨されるか?
CQ 5 がん疼痛のある患者に対して、オキシコドンの投与は推奨されるか?
CQ 6 がん疼痛のある患者に対して、フェンタニルの投与は推奨されるか?
CQ 7 がん疼痛のある患者に対して、タペンタドールの投与は推奨されるか?
CQ 8 がん疼痛のある患者に対して、コデインの投与は推奨されるか?
CQ 9 がん疼痛のある患者に対して、トラマドールの投与は推奨されるか?
CQ 10 中等度から高度のがん疼痛のあるがん患者に対して、メサドンの投与は推奨されるか?
CQ 11 がん疼痛のある患者に対して、ブプレノルフィンの投与は推奨されるか?
CQ 12 がん疼痛のある患者に対して、オピオイドに加えて、抗うつ薬の投与は推奨されるか?
CQ 13 がん疼痛のある患者に対して、オピオイドに加えて、抗痙攣薬、ガバペンチノイドの投与は推奨されるか?
CQ 14 がん疼痛のある患者に対して、オピオイドに加えて、抗不整脈薬の投与は推奨されるか?
CQ 15 がん疼痛のある患者に対して、オピオイドに加えて、ケタミンの投与は推奨されるか?
CQ 16 がん疼痛のある患者に対して、ステロイドの投与は推奨されるか?
2 有害作用に関する臨床疑問
CQ 17 オピオイドが原因で、便秘のあるがん患者に対して、下剤、その他の便秘治療薬の投与は推奨されるか?
CQ 18 オピオイドが原因で、悪心・嘔吐のあるがん患者に対して、制吐薬の投与は推奨されるか?
CQ 19 オピオイドが原因で、悪心・嘔吐のあるがん患者に対して、他のオピオイドへの変更、投与経路の変更は推奨されるか?
CQ 20 オピオイドが原因で、眠気のあるがん患者に対して、精神刺激薬の投与は推奨されるか?
3 治療法に関する臨床疑問
CQ 21 がん疼痛のある患者に対して、病態(原発臓器、痛みの部位・種類)により特定のオピオイドを投与することは推奨されるか?
CQ 22 がん疼痛のある、高度の腎機能障害患者に対して、特定のオピオイドの投与は推奨されるか?
CQ 23 がん疼痛のある患者に対して、初回投与のオピオイドは、強オピオイドと弱オピオイドのどちらが推奨されるか?
CQ 24 がん疼痛のある患者に対して、より早く鎮痛するために、オピオイドを持続静注または持続皮下注で投与することは推奨されるか?
CQ 25 がん疼痛の突出痛のある患者に対して、どの強オピオイドの投与が推奨されるか?
CQ 26 オピオイドが投与されているにもかかわらず、適切な鎮痛効果が得られない、がん疼痛のある患者に対して、オピオイドの変更は推奨されるか?
CQ 27 オピオイドによる許容できない有害作用のある、がん疼痛のある患者に対して、オピオイドの変更は推奨されるか?
CQ 28 がん疼痛の突出痛のある患者に対して、医師や看護師がオピオイド注射剤をボーラス投与することや、患者自身がボーラス投与(PCA:自己調節鎮痛法)することは推奨されるか?
4 Appendix
1 ガイドライン委員会で討論したが、根拠が乏しく解説文に記載しなかったこと
2 現場の臨床疑問、現在までの研究と今後の検討課題
索引
1 本ガイドライン作成の目的と経緯
1.本ガイドラインの目的
2.2020年版作成までの経緯
3.2020年版作成の経緯
4.ガイドライン普及と活用促進のための工夫
2 ガイドラインの使用上の注意
1.ガイドラインの使用上の注意
2.ガイドラインの構成とインストラクション
3.日本緩和医療学会の他の教育プログラムとの関係
3 推奨の強さとエビデンスレベル
1.エビデンスレベル
2.推奨の強さ
3.推奨の強さとエビデンスレベルの臨床的意味
4 作成過程
1.概要
2.臨床疑問の設定
3.システマティックレビュー
4.エビデンスの評価
5.妥当性の検証
6.日本緩和医療学会の承認
7.ガイドライン作成者と利益相反
5 文献検索式
II章 背景知識
1 がん疼痛の分類・機序・症候群
1.痛みの性質による分類
2.痛みのパターンによる分類
3.痛みの臨床的症候群
2 痛みの包括的評価
1.痛みの包括的評価の実際
2.痛みの原因を診断し、治療計画を立てる
3 がん疼痛治療の概要
1 WHO方式がん疼痛治療法
1.WHOがん疼痛ガイドラインとは
2.がん疼痛マネジメントの基本原則
3.推奨
2 海外のがん疼痛ガイドラインの概要
1.がん疼痛に対するオピオイドの使用:エビデンスに基づいたEAPCの推奨(Lancet Oncol, 2012)
2.がん疼痛のマネジメント:ESMOの臨床ガイドライン(Ann Oncol, 2018)
3.がんの突出痛のマネジメント:APMによる推奨(Eur J Pain, 2008)
4.成人のがん疼痛:NCCNの臨床ガイドライン(Web, 2019)
4 薬理学的知識
1 オピオイド
1.オピオイドとは何か
2.本邦で利用可能なオピオイドとその特徴
3.投与経路の変更
4.オピオイドスイッチング
5.換算表
6.各オピオイドの薬理学的特徴
7.特殊な病態でのオピオイドの選択
2 オピオイドによる副作用と対策
1.悪心・嘔吐
2.便秘
3.眠気
4.せん妄・幻覚
5.呼吸抑制
6.口内乾燥
7.掻痒感
8.排尿障害
9.ミオクローヌス
10.セロトニン症候群
11.心血管系の副作用
3 オピオイドに与える影響・薬物相互作用
1.薬物相互作用とは
2.オピオイド使用時に注意すべき相互作用
3.特にモルヒネ・ヒドロモルフォン・オキシコドン・フェンタニル・タペンタドール・メサドン・トラマドール使用時に注意すべき相互作用
4 非ステロイド性抗炎症薬使用時に注意すべき相互作用
5 精神依存・身体依存・耐性
1.精神依存
2.身体依存
3.耐性
5 非オピオイド鎮痛薬
1.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
2.アセトアミノフェン
6 鎮痛補助薬
1.鎮痛補助薬の定義
2.鎮痛補助薬の概要
3.各鎮痛補助薬の特徴
7 患者のオピオイドについての認識
1.患者はオピオイドをどうとらえているか
2.医学的真実と一致しない誤解に対してどのように対応していくか
III章 推奨
●推奨の概要
1 薬剤に関する臨床疑問
CQ 1 がん疼痛のある患者に対して、アセトアミノフェンの投与は推奨されるか?
CQ 2 がん疼痛のある患者に対して、NSAIDsの投与は推奨されるか?
CQ 3 がん疼痛のある患者に対して、モルヒネの投与は推奨されるか?
CQ 4 がん疼痛のある患者に対して、ヒドロモルフォンの投与は推奨されるか?
CQ 5 がん疼痛のある患者に対して、オキシコドンの投与は推奨されるか?
CQ 6 がん疼痛のある患者に対して、フェンタニルの投与は推奨されるか?
CQ 7 がん疼痛のある患者に対して、タペンタドールの投与は推奨されるか?
CQ 8 がん疼痛のある患者に対して、コデインの投与は推奨されるか?
CQ 9 がん疼痛のある患者に対して、トラマドールの投与は推奨されるか?
CQ 10 中等度から高度のがん疼痛のあるがん患者に対して、メサドンの投与は推奨されるか?
CQ 11 がん疼痛のある患者に対して、ブプレノルフィンの投与は推奨されるか?
CQ 12 がん疼痛のある患者に対して、オピオイドに加えて、抗うつ薬の投与は推奨されるか?
CQ 13 がん疼痛のある患者に対して、オピオイドに加えて、抗痙攣薬、ガバペンチノイドの投与は推奨されるか?
CQ 14 がん疼痛のある患者に対して、オピオイドに加えて、抗不整脈薬の投与は推奨されるか?
CQ 15 がん疼痛のある患者に対して、オピオイドに加えて、ケタミンの投与は推奨されるか?
CQ 16 がん疼痛のある患者に対して、ステロイドの投与は推奨されるか?
2 有害作用に関する臨床疑問
CQ 17 オピオイドが原因で、便秘のあるがん患者に対して、下剤、その他の便秘治療薬の投与は推奨されるか?
CQ 18 オピオイドが原因で、悪心・嘔吐のあるがん患者に対して、制吐薬の投与は推奨されるか?
CQ 19 オピオイドが原因で、悪心・嘔吐のあるがん患者に対して、他のオピオイドへの変更、投与経路の変更は推奨されるか?
CQ 20 オピオイドが原因で、眠気のあるがん患者に対して、精神刺激薬の投与は推奨されるか?
3 治療法に関する臨床疑問
CQ 21 がん疼痛のある患者に対して、病態(原発臓器、痛みの部位・種類)により特定のオピオイドを投与することは推奨されるか?
CQ 22 がん疼痛のある、高度の腎機能障害患者に対して、特定のオピオイドの投与は推奨されるか?
CQ 23 がん疼痛のある患者に対して、初回投与のオピオイドは、強オピオイドと弱オピオイドのどちらが推奨されるか?
CQ 24 がん疼痛のある患者に対して、より早く鎮痛するために、オピオイドを持続静注または持続皮下注で投与することは推奨されるか?
CQ 25 がん疼痛の突出痛のある患者に対して、どの強オピオイドの投与が推奨されるか?
CQ 26 オピオイドが投与されているにもかかわらず、適切な鎮痛効果が得られない、がん疼痛のある患者に対して、オピオイドの変更は推奨されるか?
CQ 27 オピオイドによる許容できない有害作用のある、がん疼痛のある患者に対して、オピオイドの変更は推奨されるか?
CQ 28 がん疼痛の突出痛のある患者に対して、医師や看護師がオピオイド注射剤をボーラス投与することや、患者自身がボーラス投与(PCA:自己調節鎮痛法)することは推奨されるか?
4 Appendix
1 ガイドライン委員会で討論したが、根拠が乏しく解説文に記載しなかったこと
2 現場の臨床疑問、現在までの研究と今後の検討課題
索引
発刊にあたって
日本緩和医療学会は1996年に設立され、がんの緩和医療をその活動の中核において発展してきました。会員数は2020年3月で12,000名余を数えるまでに至りました。創立時の設立趣意書には学会の目的が以下のように書かれています。「本学会は、がんやその他の治癒困難な病気の全過程において、人々のQOLの向上を目指し、緩和医療を発展させるための学際的かつ学術的研究を促進し、その実践と教育を通して社会に貢献することを目的とする」。本学会は一貫して教育、研究、臨床の質の向上、啓発普及に取り組んできており、その1つの大きな柱になる活動がガイドラインの作成であります。
学会の初めてのガイドラインは、2000年に出版された、第2代の理事長である平賀一陽先生が委員長を務められて作成された『Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン』であり、その後がん疼痛治療のガイドラインは、2010年、2014年に改訂され今回が通算4冊目のガイドラインとなります。『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版』が発売されてから現在に至るまで、がん疼痛治療、特にオピオイドについては大きな動きがみられました。1つ目は、ヒドロモルフォン、トラマドール徐放製剤などの新しい薬剤が上市され、われわれの疼痛治療の選択肢が増えたことです。2つ目は、いわゆるオピオイドクライシスであります。米国を中心にオピオイドの乱用が広がり、米国では2017年に約47,000名のオピオイド関連死がみられ、がん以外の疾患に対してのオピオイドの使用について警笛が鳴らされました。3つ目には、分子標的薬ならびに免疫チェックポイント阻害薬を始めとするがん薬物療法の大きな進歩が挙げられます。「がん」がコントロールできる病気となり、その罹病期間が長くなっていることから、がん患者だからといって、漫然とオピオイドを投与することの危険性―つまり「がん患者」の痛みは「がん」による痛みだけではないため、がん患者の痛みだからといってオピオイドを何も考えずに処方し続けると、依存が形成されることがある―をみかけることが珍しくなくなってきました。痛みのアセスメントをもう一度見直して、がん疼痛治療に当たることの大切さを改めて感じています。
そのような中で、6年の年月をおいて、小川朝生ガイドライン統括委員会委員長、余宮きのみがん疼痛薬物療法ガイドライン改訂WPG 員長のもと、WPG員を中心に多くの執筆者、レビューワーがMinds診療ガイドライン作成マニュアル2017の手順に基づいて努力を重ね、総力を挙げて本書が作成されました。本ガイドラインがわが国の緩和医療・ケアを支える医療従事者にとっての海図としての役割を果たし、患者のQOL向上の一助となることを切に願い、巻頭の言葉とさせていただきます。
2020年4月
特定非営利活動法人 日本緩和医療学会
理事長 木澤 義之
日本緩和医療学会は1996年に設立され、がんの緩和医療をその活動の中核において発展してきました。会員数は2020年3月で12,000名余を数えるまでに至りました。創立時の設立趣意書には学会の目的が以下のように書かれています。「本学会は、がんやその他の治癒困難な病気の全過程において、人々のQOLの向上を目指し、緩和医療を発展させるための学際的かつ学術的研究を促進し、その実践と教育を通して社会に貢献することを目的とする」。本学会は一貫して教育、研究、臨床の質の向上、啓発普及に取り組んできており、その1つの大きな柱になる活動がガイドラインの作成であります。
学会の初めてのガイドラインは、2000年に出版された、第2代の理事長である平賀一陽先生が委員長を務められて作成された『Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン』であり、その後がん疼痛治療のガイドラインは、2010年、2014年に改訂され今回が通算4冊目のガイドラインとなります。『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版』が発売されてから現在に至るまで、がん疼痛治療、特にオピオイドについては大きな動きがみられました。1つ目は、ヒドロモルフォン、トラマドール徐放製剤などの新しい薬剤が上市され、われわれの疼痛治療の選択肢が増えたことです。2つ目は、いわゆるオピオイドクライシスであります。米国を中心にオピオイドの乱用が広がり、米国では2017年に約47,000名のオピオイド関連死がみられ、がん以外の疾患に対してのオピオイドの使用について警笛が鳴らされました。3つ目には、分子標的薬ならびに免疫チェックポイント阻害薬を始めとするがん薬物療法の大きな進歩が挙げられます。「がん」がコントロールできる病気となり、その罹病期間が長くなっていることから、がん患者だからといって、漫然とオピオイドを投与することの危険性―つまり「がん患者」の痛みは「がん」による痛みだけではないため、がん患者の痛みだからといってオピオイドを何も考えずに処方し続けると、依存が形成されることがある―をみかけることが珍しくなくなってきました。痛みのアセスメントをもう一度見直して、がん疼痛治療に当たることの大切さを改めて感じています。
そのような中で、6年の年月をおいて、小川朝生ガイドライン統括委員会委員長、余宮きのみがん疼痛薬物療法ガイドライン改訂WPG 員長のもと、WPG員を中心に多くの執筆者、レビューワーがMinds診療ガイドライン作成マニュアル2017の手順に基づいて努力を重ね、総力を挙げて本書が作成されました。本ガイドラインがわが国の緩和医療・ケアを支える医療従事者にとっての海図としての役割を果たし、患者のQOL向上の一助となることを切に願い、巻頭の言葉とさせていただきます。
2020年4月
特定非営利活動法人 日本緩和医療学会
理事長 木澤 義之
- 医書.jpで購入される方は
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