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頭頸部がん薬物療法ガイダンス 第2版
薬物療法に特化した診療指針に免疫療法も加えて大改訂!
『頭頸部癌診療ガイドライン』(日本頭頸部癌学会編)を補完する、薬物療法に特化した診療指針の改訂第2版。薬剤の選択やレジメンを詳述するとともに、支持療法、経過観察、機能障害への対処なども幅広く採り上げ、チーム医療の実践にも役立つ内容に。化学放射線療法のアップデートや、免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療など、進化を続ける薬物療法のエビデンスを詳細に検討し、時代に合った診療指針を提起する。
はじめに
1 頭頸部がん薬物療法ガイダンスの目的
2 第2版改訂の目的
3 本ガイダンスの対象
4 本ガイダンス使用時の注意点
5 本ガイダンス作成の過程
6 本ガイダンス発刊後の改訂
7 資金
8 利益相反に関して
9 本ガイダンスの普及
10 本ガイダンスの評価
I 総論
A 頭頸部がん治療の実際
1 頭頸部がん
2 頭頸部がんにおける集学的治療の重要性
3 頭頸部がんのチーム医療における各職種の役割
1)治療チーム
2)診断チーム
3)支持療法・生活支援チーム
B 頭頸部がん治療における薬物療法の考え方と管理
1 頭頸部がん治療における薬物療法の意義と目的
2 頭頸部がんに用いられる薬物
3 頭頸部がんで行われる薬物療法の管理
4 本ガイダンスに記載している主な治療の費用
C 頭頸部がん薬物療法開始時のチェック項目
1 全身状態・腫瘍関連症状
2 心機能
3 呼吸状態・肺機能
4 腎機能
5 肝機能
6 骨髄機能
7 歯科診察
8 過敏症など
9 耐糖能
10 内分泌系
11 その他、がん薬物療法の臨床試験における除外規準等からみた注意点
D 局所進行頭頸部がんで行われる薬物療法
1 化学放射線療法(分子標的薬を含む)
1)化学放射線療法の原理
2)化学放射線療法の意義・目的・適応・方法
3)切除可能例における喉頭温存希望患者に対する化学放射線療法
4)切除不能例に対する化学放射線療法
5)Cmab-RTの意義・目的・適応・注意点
6)Cmab-RTとCRTとの比較
7)化学放射線療法やCmab-RT における支持療法の意義
2 動注化学放射線療法(進行上顎洞癌、その他)
3 導入化学療法
1)切除可能例における導入化学療法の意義・目的・適応
2)導入化学療法後の治療選択
3)切除不能局所進行例における導入化学療法の意義・目的・適応
4)導入化学療法時の支持療法
4 術後治療
1)術後再発高リスク患者に対する術後化学放射線療法
2)術後化学療法、放射線治療後化学療法の意義
E 再発・転移頭頸部がんに対する薬物療法
1 再発・転移頭頸部がんに対する標準的な初回薬物療法と, その意義・目的・適応
2 再発・転移頭頸部扁平上皮癌に対する初回薬物療法
3 二次治療以降の薬物療法
4 再発・転移唾液腺癌に対する薬物療法
F 頭頸部がん治療における支持療法
1 治療中に推奨される栄養補給路
2 頭頸部がん薬物療法における栄養管理
3 粘膜障害の管理
1)頭頸部がんに対するCRTに伴う口腔粘膜炎
2)歯科受診
3)口腔ケア
4)疼痛治療
5)感染を併発した場合の治療
4 放射線皮膚炎
5 Cmab に対する支持療法
1)infusion reaction(IR)
2)皮膚毒性
3)薬剤性間質性肺炎
4)低マグネシウム血症
6 免疫チェックポイント阻害薬の支持療法
G 頭頸部がん治療における効果判定と治療後の経過観察
1 頭頸部がん初回治療後の経過観察
1)診察、内視鏡検査、口腔ケア
2)画像検査
3)血液検査、腫瘍マーカー
2 頭頸部がん治療における効果判定
1)はじめに
2)RECIST の解釈
3 局所進行頭頸部がん
1)放射線治療単独療法または化学放射線療法後の効果判定
2)導入化学療法後の効果判定
3)再発・転移頭頸部扁平上皮癌の治療効果判定
H 頭頸部がんにおける機能障害とその対処
1 放射線治療後の嚥下障害
2 嚥下リハビリテーションの効果
1)臨床的評価
2)生理学的評価
参考文献
II 各論
A 臓器別CQ
1 上咽頭
CQ1 上咽頭癌は早期であっても化学放射線療法が推奨されるか?
CQ2 上咽頭癌に対してCmab-RT の実施は推奨されるか?
CQ3 上咽頭癌において導入化学療法(ICT)を含んだ治療戦略は推奨されるか?
CQ4 再発・転移上咽頭癌に対して薬物療法は推奨されるか?
2 舌・口腔
CQ5 舌・口腔癌に対する術前化学療法・術前化学放射線療法は有用か?
3 中咽頭
CQ6 HPV感染の有無に基づいた治療選択は推奨されるか?
4 原発不明頸部転移癌
CQ7 原発不明頸部転移癌のみに対しての初回治療に、手術療法を選択すべきか、化学放射線療法を選択すべきか?
CQ8 原発不明頸部転移癌術後、高リスク(断端陽性もしくはリンパ節転移被膜外浸潤)であった場合、化学放射線療法は有用か?
CQ9 原発不明頸部転移癌で病理診断が扁平上皮癌の場合に、化学放射線療法で併用する抗がん薬は何がよいか?
B 治療別CQ
1 化学放射線療法
CQ10 遠隔転移を有する上咽頭癌において、局所制御目的の緩和的化学放射線療法は適応となるか?
CQ11 遠隔転移を有する上咽頭癌以外の頭頸部がんにおいて、原発巣や頸部リンパ節に対する局所治療は有用か?
CQ12 放射線治療歴のある切除不能な頭頸部扁平上皮癌局所再発に対する化学療法は推奨されるか?
CQ13 頭頸部がん局所再発に対する救済手術後の術後化学放射線療法は推奨されるか?
CQ14 鼻腔癌に薬物療法は推奨されるか?
2 免疫療法
CQ15 PD-L1発現率をもとに免疫チェックポイント阻害薬の適応を判断すべきか?
CQ16 免疫チェックポイント阻害薬による治療で進行が認められた場合、治療継続はどうすべきか?
索引
1 頭頸部がん薬物療法ガイダンスの目的
2 第2版改訂の目的
3 本ガイダンスの対象
4 本ガイダンス使用時の注意点
5 本ガイダンス作成の過程
6 本ガイダンス発刊後の改訂
7 資金
8 利益相反に関して
9 本ガイダンスの普及
10 本ガイダンスの評価
I 総論
A 頭頸部がん治療の実際
1 頭頸部がん
2 頭頸部がんにおける集学的治療の重要性
3 頭頸部がんのチーム医療における各職種の役割
1)治療チーム
2)診断チーム
3)支持療法・生活支援チーム
B 頭頸部がん治療における薬物療法の考え方と管理
1 頭頸部がん治療における薬物療法の意義と目的
2 頭頸部がんに用いられる薬物
3 頭頸部がんで行われる薬物療法の管理
4 本ガイダンスに記載している主な治療の費用
C 頭頸部がん薬物療法開始時のチェック項目
1 全身状態・腫瘍関連症状
2 心機能
3 呼吸状態・肺機能
4 腎機能
5 肝機能
6 骨髄機能
7 歯科診察
8 過敏症など
9 耐糖能
10 内分泌系
11 その他、がん薬物療法の臨床試験における除外規準等からみた注意点
D 局所進行頭頸部がんで行われる薬物療法
1 化学放射線療法(分子標的薬を含む)
1)化学放射線療法の原理
2)化学放射線療法の意義・目的・適応・方法
3)切除可能例における喉頭温存希望患者に対する化学放射線療法
4)切除不能例に対する化学放射線療法
5)Cmab-RTの意義・目的・適応・注意点
6)Cmab-RTとCRTとの比較
7)化学放射線療法やCmab-RT における支持療法の意義
2 動注化学放射線療法(進行上顎洞癌、その他)
3 導入化学療法
1)切除可能例における導入化学療法の意義・目的・適応
2)導入化学療法後の治療選択
3)切除不能局所進行例における導入化学療法の意義・目的・適応
4)導入化学療法時の支持療法
4 術後治療
1)術後再発高リスク患者に対する術後化学放射線療法
2)術後化学療法、放射線治療後化学療法の意義
E 再発・転移頭頸部がんに対する薬物療法
1 再発・転移頭頸部がんに対する標準的な初回薬物療法と, その意義・目的・適応
2 再発・転移頭頸部扁平上皮癌に対する初回薬物療法
3 二次治療以降の薬物療法
4 再発・転移唾液腺癌に対する薬物療法
F 頭頸部がん治療における支持療法
1 治療中に推奨される栄養補給路
2 頭頸部がん薬物療法における栄養管理
3 粘膜障害の管理
1)頭頸部がんに対するCRTに伴う口腔粘膜炎
2)歯科受診
3)口腔ケア
4)疼痛治療
5)感染を併発した場合の治療
4 放射線皮膚炎
5 Cmab に対する支持療法
1)infusion reaction(IR)
2)皮膚毒性
3)薬剤性間質性肺炎
4)低マグネシウム血症
6 免疫チェックポイント阻害薬の支持療法
G 頭頸部がん治療における効果判定と治療後の経過観察
1 頭頸部がん初回治療後の経過観察
1)診察、内視鏡検査、口腔ケア
2)画像検査
3)血液検査、腫瘍マーカー
2 頭頸部がん治療における効果判定
1)はじめに
2)RECIST の解釈
3 局所進行頭頸部がん
1)放射線治療単独療法または化学放射線療法後の効果判定
2)導入化学療法後の効果判定
3)再発・転移頭頸部扁平上皮癌の治療効果判定
H 頭頸部がんにおける機能障害とその対処
1 放射線治療後の嚥下障害
2 嚥下リハビリテーションの効果
1)臨床的評価
2)生理学的評価
参考文献
II 各論
A 臓器別CQ
1 上咽頭
CQ1 上咽頭癌は早期であっても化学放射線療法が推奨されるか?
CQ2 上咽頭癌に対してCmab-RT の実施は推奨されるか?
CQ3 上咽頭癌において導入化学療法(ICT)を含んだ治療戦略は推奨されるか?
CQ4 再発・転移上咽頭癌に対して薬物療法は推奨されるか?
2 舌・口腔
CQ5 舌・口腔癌に対する術前化学療法・術前化学放射線療法は有用か?
3 中咽頭
CQ6 HPV感染の有無に基づいた治療選択は推奨されるか?
4 原発不明頸部転移癌
CQ7 原発不明頸部転移癌のみに対しての初回治療に、手術療法を選択すべきか、化学放射線療法を選択すべきか?
CQ8 原発不明頸部転移癌術後、高リスク(断端陽性もしくはリンパ節転移被膜外浸潤)であった場合、化学放射線療法は有用か?
CQ9 原発不明頸部転移癌で病理診断が扁平上皮癌の場合に、化学放射線療法で併用する抗がん薬は何がよいか?
B 治療別CQ
1 化学放射線療法
CQ10 遠隔転移を有する上咽頭癌において、局所制御目的の緩和的化学放射線療法は適応となるか?
CQ11 遠隔転移を有する上咽頭癌以外の頭頸部がんにおいて、原発巣や頸部リンパ節に対する局所治療は有用か?
CQ12 放射線治療歴のある切除不能な頭頸部扁平上皮癌局所再発に対する化学療法は推奨されるか?
CQ13 頭頸部がん局所再発に対する救済手術後の術後化学放射線療法は推奨されるか?
CQ14 鼻腔癌に薬物療法は推奨されるか?
2 免疫療法
CQ15 PD-L1発現率をもとに免疫チェックポイント阻害薬の適応を判断すべきか?
CQ16 免疫チェックポイント阻害薬による治療で進行が認められた場合、治療継続はどうすべきか?
索引
・第2版発刊にあたり
頭頸部がんの治療には外科療法、放射線治療、化学放射線療法、薬物療法と多彩な方法があり、根治を目指した治療にもいろいろな選択肢が考えられるが、薬物療法は重要な役割を果たしている。再発や遠隔転移を起こし局所療法が適応とならない場合には治療の目的は緩和と延命になるが、その場合は薬物療法が治療の中核となる。薬物療法ではシスプラチンや5-フルオロウラシル、ドセタキセルを中心とした従来の殺細胞性の薬物に加えて、上皮成長因子受容体(EGFR)に対する抗体薬であるセツキシマブも幅広く使用されている。これらの薬物は頭頸部がん以外にも多くのがん種で有効性を示し幅広く用いられている。しかし、副作用は多彩でしばしば重篤となるため、抗がん薬の有効性を引き出すためには副作用を適切に管理する必要がある。抗がん薬の副作用管理はがん種によらず共通である。したがって、薬物療法は特定の領域のがんのみを診療する医師でなく、臓器横断的にトレーニングを積んだがん薬物療法専門医が担当するのが合理的である。がん薬物療法専門医が頭頸部外科医、放射線治療医と協力しながら集学的治療の中で頭頸部がんの薬物療法を行う必要がある。さらに、頭頸部領域は咀嚼・嚥下、発声、聴覚などの重要な機能を担っており、頭頸部がんの治療には歯科医、形成外科医、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、言語聴覚士など多くの職種によるチーム医療が必要となる。このような多くの専門職種が関与する頭頸部がん治療において薬物療法を適切に行うための一助とするために、日本臨床腫瘍学会では関連他学会と協力して『頭頸部がん薬物療法ガイダンス』を2015年に出版した。
医療、特にがん薬物療法およびその支持療法の進歩は目覚ましく、診療ガイドラインやガイダンスは定期的に改訂する必要がある。最近では頭頸部がんでも免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブが有効性を示して用いられるようになった。免疫チェックポイント阻害薬も多くのがん種で臓器横断的に広く用いられているが、治療の考え方は共通である。さらに副作用は免疫を介するため全身に発生する上に、従来の抗がん薬による副作用とは全く異なる。したがって、免疫チェックポイント阻害薬を適切に使用するためにも、臓器横断的に治療を行うがん薬物療法専門医が担当するのが合理的である。そこで今回、免疫チェックポイント阻害薬などを含む最近の進歩を取り入れて『頭頸部がん薬物療法ガイダンス第2版』として改訂することにした。
本ガイダンスは頭頸部がんの薬物療法に特化しているためクリニカルクエスチョンの数は少ないが、総論は薬物療法の考え方、副作用対策を含む治療の実際が要領よく記載されており、頭頸部がんの薬物療法を理解するための教科書としても役立つ。それぞれの記述に対し文献も紹介しているので参考書としても十分使用可能である。さらには臨床試験の効果判定に用いられるRECISTにまで言及している。しかし、RECISTは臨床試験で使用されるものであり実地診療で使用することはその目的ではないため、診療方針決定に際してRECISTは参考にはなろうが実地診療での適用には注意が必要である。
ガイドラインやガイダンスは、その作成および定期的な改訂には多大な労力が伴うが、内容は中立かつ適正である必要がある。日本臨床腫瘍学会ではガイドラインやガイダンスの作成および改訂の目的のために製薬企業などのステークホルダーから資金援助を受けないことを決定した。本ガイダンスの改訂に日本臨床腫瘍学会および関連学会からボランティアとして尽力していただいたガイドライン委員会ならびに作成部会のメンバーに感謝したい。
本ガイダンスはがん薬物療法専門医のみならず、外科系医師あるいは医師以外の医療職が頭頸部がんに対する薬物療法を理解するために役立つはずである。本ガイダンスを利用することにより、頭頸部がんのチーム医療の質が向上することを願って止まない。
2018年10月
日本臨床腫瘍学会 理事長
神戸大学大学院医学研究科腫瘍・血液内科教授
南 博信
・第2版発刊によせて
このたび、『頭頸部がん薬物療法ガイダンス第2版』を発刊することとなった。第1版は2015年7月の発刊であったため、3年ぶりの改訂となる。頭頸部がんは外科療法、放射線治療、薬物療法の最適な組み合わせによる集学的治療が重要な位置を占めている。その中軸をなすものが、日本頭頸部癌学会による『頭頸部癌診療ガイドライン』である。日本臨床腫瘍学会による『頭頸部がん薬物療法ガイダンス』は、近年の薬物療法の発展を受けて、ガイドライン2018年版における薬物療法領域を補完するものである。
頭頸部は極めて高度に機能分化した臓器の集合体であるがゆえに、治療の目的は生存期間延長に加えて、機能温存を含めた治療後のQOLの維持・向上に対する配慮がより重要となる。当然のことながら、多職種連携の下での対応が必要となる。そのため、本ガイダンスは、診断チーム、治療チーム、副作用対策チーム、支持療法・生活支援チームのすべてを対象として作成された。さらに、第1版から追加された点としては、新たに承認された免疫チェックポイント阻害薬や、本ガイダンスに示す主な治療法における医療費の概算が提示されたことなど、最新の医療事情を反映したものとなっている。
日本臨床腫瘍学会は、日本頭頸部外科学会および日本口腔外科学会と共に学会間の診療連携協力を推進することを決定した。この連携プログラムにおいては、耳鼻咽喉科・頭頸部外科医や歯科・口腔外科医と腫瘍内科医が協力して頭頸部がんの患者さんを診療するのみならず、お互いの知識を高め合う教育面での連携も取り入れている。
このように、大きく進歩・発展するがゆえに、より複雑化する医療を適正に推進するためには、職種間連携・学会間連携・社会との連携は必須のものである。本ガイダンスが、頭頸部がん薬物療法を適正に推進するための一助となり、ひいては患者さんとそのご家族によりよい医療を届ける指標となれば幸いである。
2018年10月
日本臨床腫瘍学会ガイドライン委員会 委員長
九州大学大学院医学研究院胸部疾患研究施設教授
中西 洋一
頭頸部がんの治療には外科療法、放射線治療、化学放射線療法、薬物療法と多彩な方法があり、根治を目指した治療にもいろいろな選択肢が考えられるが、薬物療法は重要な役割を果たしている。再発や遠隔転移を起こし局所療法が適応とならない場合には治療の目的は緩和と延命になるが、その場合は薬物療法が治療の中核となる。薬物療法ではシスプラチンや5-フルオロウラシル、ドセタキセルを中心とした従来の殺細胞性の薬物に加えて、上皮成長因子受容体(EGFR)に対する抗体薬であるセツキシマブも幅広く使用されている。これらの薬物は頭頸部がん以外にも多くのがん種で有効性を示し幅広く用いられている。しかし、副作用は多彩でしばしば重篤となるため、抗がん薬の有効性を引き出すためには副作用を適切に管理する必要がある。抗がん薬の副作用管理はがん種によらず共通である。したがって、薬物療法は特定の領域のがんのみを診療する医師でなく、臓器横断的にトレーニングを積んだがん薬物療法専門医が担当するのが合理的である。がん薬物療法専門医が頭頸部外科医、放射線治療医と協力しながら集学的治療の中で頭頸部がんの薬物療法を行う必要がある。さらに、頭頸部領域は咀嚼・嚥下、発声、聴覚などの重要な機能を担っており、頭頸部がんの治療には歯科医、形成外科医、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、言語聴覚士など多くの職種によるチーム医療が必要となる。このような多くの専門職種が関与する頭頸部がん治療において薬物療法を適切に行うための一助とするために、日本臨床腫瘍学会では関連他学会と協力して『頭頸部がん薬物療法ガイダンス』を2015年に出版した。
医療、特にがん薬物療法およびその支持療法の進歩は目覚ましく、診療ガイドラインやガイダンスは定期的に改訂する必要がある。最近では頭頸部がんでも免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブが有効性を示して用いられるようになった。免疫チェックポイント阻害薬も多くのがん種で臓器横断的に広く用いられているが、治療の考え方は共通である。さらに副作用は免疫を介するため全身に発生する上に、従来の抗がん薬による副作用とは全く異なる。したがって、免疫チェックポイント阻害薬を適切に使用するためにも、臓器横断的に治療を行うがん薬物療法専門医が担当するのが合理的である。そこで今回、免疫チェックポイント阻害薬などを含む最近の進歩を取り入れて『頭頸部がん薬物療法ガイダンス第2版』として改訂することにした。
本ガイダンスは頭頸部がんの薬物療法に特化しているためクリニカルクエスチョンの数は少ないが、総論は薬物療法の考え方、副作用対策を含む治療の実際が要領よく記載されており、頭頸部がんの薬物療法を理解するための教科書としても役立つ。それぞれの記述に対し文献も紹介しているので参考書としても十分使用可能である。さらには臨床試験の効果判定に用いられるRECISTにまで言及している。しかし、RECISTは臨床試験で使用されるものであり実地診療で使用することはその目的ではないため、診療方針決定に際してRECISTは参考にはなろうが実地診療での適用には注意が必要である。
ガイドラインやガイダンスは、その作成および定期的な改訂には多大な労力が伴うが、内容は中立かつ適正である必要がある。日本臨床腫瘍学会ではガイドラインやガイダンスの作成および改訂の目的のために製薬企業などのステークホルダーから資金援助を受けないことを決定した。本ガイダンスの改訂に日本臨床腫瘍学会および関連学会からボランティアとして尽力していただいたガイドライン委員会ならびに作成部会のメンバーに感謝したい。
本ガイダンスはがん薬物療法専門医のみならず、外科系医師あるいは医師以外の医療職が頭頸部がんに対する薬物療法を理解するために役立つはずである。本ガイダンスを利用することにより、頭頸部がんのチーム医療の質が向上することを願って止まない。
2018年10月
日本臨床腫瘍学会 理事長
神戸大学大学院医学研究科腫瘍・血液内科教授
南 博信
・第2版発刊によせて
このたび、『頭頸部がん薬物療法ガイダンス第2版』を発刊することとなった。第1版は2015年7月の発刊であったため、3年ぶりの改訂となる。頭頸部がんは外科療法、放射線治療、薬物療法の最適な組み合わせによる集学的治療が重要な位置を占めている。その中軸をなすものが、日本頭頸部癌学会による『頭頸部癌診療ガイドライン』である。日本臨床腫瘍学会による『頭頸部がん薬物療法ガイダンス』は、近年の薬物療法の発展を受けて、ガイドライン2018年版における薬物療法領域を補完するものである。
頭頸部は極めて高度に機能分化した臓器の集合体であるがゆえに、治療の目的は生存期間延長に加えて、機能温存を含めた治療後のQOLの維持・向上に対する配慮がより重要となる。当然のことながら、多職種連携の下での対応が必要となる。そのため、本ガイダンスは、診断チーム、治療チーム、副作用対策チーム、支持療法・生活支援チームのすべてを対象として作成された。さらに、第1版から追加された点としては、新たに承認された免疫チェックポイント阻害薬や、本ガイダンスに示す主な治療法における医療費の概算が提示されたことなど、最新の医療事情を反映したものとなっている。
日本臨床腫瘍学会は、日本頭頸部外科学会および日本口腔外科学会と共に学会間の診療連携協力を推進することを決定した。この連携プログラムにおいては、耳鼻咽喉科・頭頸部外科医や歯科・口腔外科医と腫瘍内科医が協力して頭頸部がんの患者さんを診療するのみならず、お互いの知識を高め合う教育面での連携も取り入れている。
このように、大きく進歩・発展するがゆえに、より複雑化する医療を適正に推進するためには、職種間連携・学会間連携・社会との連携は必須のものである。本ガイダンスが、頭頸部がん薬物療法を適正に推進するための一助となり、ひいては患者さんとそのご家族によりよい医療を届ける指標となれば幸いである。
2018年10月
日本臨床腫瘍学会ガイドライン委員会 委員長
九州大学大学院医学研究院胸部疾患研究施設教授
中西 洋一
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