HEATAPP!(ヒートアップ!) たった5日で臨床の質問力が飛躍的に向上する、すごいレクチャー

Dr.岩田の名ライブ講義がパワーアップして帰ってきた!

著 者 岩田 健太郎
定 価 4,104円
(3,800円+税)
発行日 2018/04/15
ISBN 978-4-307-10190-5

A5判・432頁・図数:20枚

在庫状況 あり

2017年5月.神戸大学医学部4年生に行われた感染症チュートリアル5日間は、学生たちにとって、想定外の展開をみせることになる。講師の岩田健太郎氏は「医療に必要なのは質問に答える能力ではなく、問いを立てる力である」と説く。よい質問の仕方とは、本質の問題解決とは何か。インタラクティブに行われるレクチャーのなかで、その臨床マインドは長足の進歩を遂げる。5日間:全22セッション、至極の名講義がいま甦る!
1st Day 5月11日(木)
Session 1
 ・なぜグループ学習がうまくいかないのか
 ・医学生は、実は勉強嫌い
 ・ディスカッションがなぜ苦手なのか
 ・答えるのは得意だが、問うのは苦手
 ・診療とは質問だ!
 ・トヨタの「5つのWHY」
 ・問題の根っこを探し出す
 ・PBLとは何か、そしてその問題点
 ・TBLとは何か、そしてその問題点
 ・HEATAPP発表のルール
 ・病気の正体、感染症の正体
 ・病気かどうかは恣意性によって決まる
Session 2
 ・「微生物=感染症」ではない
 ・宗教と科学の違い
 ・MRSA腸炎は存在するのか
 ・微生物検査の種類
 ・発熱と腹痛の男性
 ・時間情報は検査できない
Session 3
 ・食中毒を疑ったら
 ・痛みのアプローチ
 ・解剖学的に考えよう
 ・腹痛の患者に必ず確認することは……?
 ・腹部のフィジカルのとり方
Session 4
 ・YSQとは何か
 ・感度の低い検査で疾患を除外してはならない
 ・無知の知と医者の知性
 ・臨床試験と治療の効果
 ・疫学に関する質問
 ・病気の「なぜ」を質問する
 ・医学は目的をもった学問―医療倫理について
 ・YSQをなぜ質問形にさせるのか
 ・どんな教科書を使うべきか
 ・分厚い教科書なんて読めない…?
Session 5
 ・レターを書くメリット
 ・医学生が論理的であるべき理由
 ・PubMedとGoogle Scholarの使い分け
 ・引用文献を付ける習慣を
 ・UpToDateを活用しよう
 ・原著論文は研究方法をみる
 ・スマホやタブレットも勉強に活用しよう!
 ・便利なスマホアプリ

2nd Day 5月12日(金)
Session 1
 ・critical thinking、critical reading
 ・トライアンギュレーションの必要性
 ・エポケーのすすめ
 ・ガイドラインは役に立つか
 ・感度・特異度は検査の評価 PPV、NPVは患者の評価
Session 2
 ・頻度が高いものから考える
 ・メディアは科学的か?
 ・研修医が踏んではいけない地雷
 ・コミュニケーションとは何か
 ・立場や経歴は関係ない!
Session 3
 ・二元論を捨てよう。可能性は常にある
 ・個別化か、一般化か
 ・「自然免疫」というワードがもたらす誤解
 ・なぜノウハウ主義ではいけないのか
 ・「老害」と言われないために
 ・続ける努力
 ・個別の経験を一般化するということ
 ・入院患者と外来患者の違い
 ・専門家とは―オタクとプロの違い
Session 4
 ・アレルギーの分類
 ・熱以外が大事
 ・意識状態の診かた
 ・ショックの原因を調べる
 ・正しく診断できなくても、正しい判断はできる
 ・臨床医学とゲーム理論
 ・薬剤熱の詰めかた
 ・患者さんに何が起きたのか?

3rd Day 5月15日(月)
Session 1
 ・そして診断は…?
 ・主治医はどこで誤ったのか
 ・抗菌薬の選びかた(1) ―菌のカバーと移行性
 ・抗菌薬の選びかた(2) ―投与量と投与間隔
 ・菌を殺すことだけが治療ではない
 ・エボラ出血熱の治療
 ・ローカルファクターを考える
 ・P/F ratioとは― ratioとrateの違い
Session 2
 ・術後の発熱のアプローチ(1) ―感染症の場合
 ・入院患者の便培養は不要!
 ・術後の発熱のアプローチ(2) ―非感染症の場合
 ・ゲシュタルトとは
 ・Bacterial translocationの罠
 ・血小板が減る理由
Session 3
 ・血小板減少へのアプローチ
 ・70代男性、2週間の発熱と陰嚢腫大
 ・男性生殖器の身体診察
 ・リンパ節腫脹のアプローチ
 ・尿検査でわかること
 ・細菌感染症は定常状態を取らない……が
Session 4
 ・“見通す”能力を鍛えよう
 ・分からないときに抗菌薬を変えない!
 ・IGRAのメカニズムとピットフォール
 ・結核とニューキノロン―“とりあえず抗菌薬”はなぜダメなのか
 ・不明熱とは
 ・サットンの法則とTissue is the issue

4th Day 5月16日(火)
Session 1
 ・分母の誤りで何が起こるか
 ・原発事故で甲状腺癌は増えたのか
 ・鑑別疾患はフォーカスから絞る
 ・YSQの考えかた
 ・M&Mのすすめ―失敗から学ぶということ
Session 2
 ・エンピリック治療とは
 ・鑑別診断リストをつくるためのアプローチ
 ・生検前にどこまで詰められるか
Session 3
 ・20歳男性、2日間の悪心と嘔吐
 ・食中毒とは何か
 ・食歴を訊くコツ
 ・医師に英語力が必要なワケ
 ・楽するためには苦労せよ
Session 4
 ・嘔吐に関連する精神科疾患
 ・バイタルサインの評価
 ・HIV治療薬とCD4値
 ・嘔吐の原因は3つのグループで考える
 ・生化学検査のみかた
 ・血液ガスのみかた
 ・嘔吐のアプローチ
 ・よいチームの条件

5th Day 5月17日(水)
Session 1
 ・アニオンギャップと代謝性アシドーシス
 ・身につく勉強法とは
 ・働きかたを考える―長時間労働がもたらす弊害
 ・時間効率を高めるために
 ・薬を変更するときに考えること
Session 2
 ・文献管理のための便利ツール
 ・HIVをめぐる医療経済の課題
 ・HIVの医療福祉制度がもつ矛盾
 ・新薬のほうが本当にいい薬なのか?
 ・製薬メーカーとの付き合い方
 ・売れている薬のほうが本当にいい薬なのか?
 ・「頭がよい」とはどういうことか―知性と勇気
Session 3
 ・アフリカ出身の男性、頭痛
 ・オンセットに着目する
Session 4
 ・「めまい」が意味すること
 ・長すぎる髄膜炎様症状の謎
 ・慢性髄膜炎の原因は……?
おまけ
 ・これから勉強をするうえで
はじめに

 卒後臨床研修が義務化されて10年以上になり、当初はやや混乱のみられたこのシステムもおおよそ関係諸氏の腑に落ちるような習慣化がなされたように思います。次は卒前教育だ、というわけで現在、卒前医学教育改革の議論が各所で起きています。
 が、どうもピンときません。クリニカル・クラークシップ、チュートリアル、シミュレーションといった、まあまあ馴染みが良くなったカタカナ言葉に加え、アクティブ・ラーニング、ポートフォリオ、コンピテンスやコンピテンシー(英語ではほぼ同義ですが、なぜか区別せよ、と教えられる。昔の(今でもあるのか?)「先生、これはSBOではなくて、GIOではありませんか?」といった不毛なコメントが想起されますねえ……)といった新たな業界用語が加わって教育現場を困惑させています。観念が暴走しているのに、地に足が付いていない。まるでゴールド・エクスペリエンスの初期設定(だが、何処かに消えた……)みたいです。
 地に足が付いた教育の実践のために、長い間教育方法を試行錯誤してきました。PBLとTBLのハイブリッドがよかろうということで、これは『神戸大学感染症内科版TBL』という本にもなり、一定の評価も得ました。海外の学会でもこの試みは発表され、おおむね好意的に受け止められましたし、ハワイ大学のPBLの実践者たちにも「面白い」とコメントをいただきました。日本の医学教育業界からは特段の反応はありませんでしたが(予想通り)。

 教育手法に100点満点はなく、常に改善の繰り返しです。数年かけてバージョンアップを重ね、独自の「HEATAPP」という方法に練り上げました。実況中継を録音し、文字起こしし、編集して書籍とする。2016年にはそうなるはずでした。
 しかし、この2016年のHEATAPP後に学生を対象とした質的研究で、我々は思わぬクリティークを受けます。それは、突き詰めて言えば、「アクティブ・ラーニングなんて興味ないよ」という日本の医学生のクールで、パッシブで、醒めた意見でした。熱くなっているのは教育者と意識高い系の少数の学生だけだったというよくあるパターン(Kobe J Med Sci.2017;63:E51-57)。
 出版社には誠に申し訳なかったのですが、そこでぼくは急遽、2016年版の出版を取りやめることにしました。フィードバックを受け、反省し、改善し、受け身でゆとりで草食で後ろ向きな学生であっても、なお学習効果が高いという方法に練り上げなおす必要を感じたのです。意識高い系の医学生はどうせ放っておいても勝手に勉強するのだから。

 そんなわけで満を持して今回送り出すのが2017年版の改良型HEATAPPです。注意深い読者は、そこに単にオーセンティックで、欧米で活用されている教育手法のみならず、欧米ではほとんど顧慮されていないタイプの学生たちへの配慮を発見することでしょう。アクティブ・ラーニングしろ、と言っている教育者自身がパッシブにコピペやっているは許されてはならないのです。
 まずは、百聞は一見にしかず。ぜひ本書をご覧ください。そして、ぜひ皆さんも自施設で試してみてください。権利問題なんてけちくさいことは申しません。オープンアクセス、リソースの転用、改善も自由にやってください。もっとよいものに改善したならば、ぜひ学術界で発表して、我々に教えてください。オープンソースの統計ソフトウェア、Rはそのようにして飛躍的な発展を遂げたのですから。

岩田 健太郎
"全医学生、そして医学教育に関わる(つまり全ての医療従事者)必読のぱねえ一冊"

評者:忽那 賢志(国立国際医療研究センター国際感染症センター 国際感染症対策室医長)

 岩田先生の本の書評を書くときが来るとは……私ももう「上がり」と言っても良いのではないだろうか。私が医師になった2004年から、私の医師生活は岩田先生の本とともにあったと言っても過言ではない。『抗菌薬の考え方、使い方』『感染症外来の事件簿』などの感染症医的マストな作品だけでなく、『感染症は実在しない』とか『ケニアのスラムで高血圧を治さない』などの岩田節の効きまくった本も、「えっ、実在しないの?」とか、「治療せんのかい!」とか心のなかでツッコミを入れつつ読んできた私である。そんな岩ラーの私が岩田先生の書籍の書評を書くというのは「上がる」ということに他ならないのである。上がって果たしてどこに行くのかは分からないのである。

 前作の『神戸大学感染症内科版TBL 問題解決型ライブ講義 集中!5日間』(通称サナダムシTBL)は、TBLをベースにした岩田先生と神戸大学医学部の学生さんとのやり取りを収録した作品であり、臨床推論の考え方を基本から学ぶ上で非常に参考になる内容であった。岩ラー的には、上位3位くらいに入る作品である。そして今作『HEATAPP!』は、前作の内容をさらに洗練させた内容となっている。
今作は、医学生の『質問力を上げる』ことを目標に5日間の講義が行われている。覚えることは得意だが、質問することは苦手というのが今の医学生の特徴だということで、患者さんにどのような質問をすれば診断を進めていくことができるのか、ということが講義の中心にあり、症例ベースで話が進んでいる。
前作もそうであったが、今作も「いかにして医学を学ぶのか」について岩田先生から医学生に多くの時間を割いて話されている。現代の医学の知識の総量は約2ヶ月で倍になるのだから、知識は覚えるよりも「どのように必要な情報を拾い上げるのか」を学ぶことの方が重要である、といったことや、試験前に徹夜して覚えたことは定着しないから日頃から長期的に勉強した方が長い目でみると時間の節約になる、とか医学生がこれから医学を学ぶ上で一生の財産になるであろう岩田先生のパールが散りばめられているのである。
そして、病棟回診の実況であった『テーブル回診LIVE@神戸大学感染症内科』では、初期研修医に対する「プロフェッショナルとは何か」という同じ医療のプロフェッショナルとしての厳しい一面も垣間見られたりもして、一読者として「ああ……この研修医の先生大変そうだなあ……」などと初期研修医の気持ちになり心窩部痛が起こる場面もあったが、この『HEATAPP!』では学生への愛がほとばしっており、安心して読める一冊なのである。

 ぶっちゃけ私が医学生の頃なんて、「医学をどう学ぶのか」なんて誰も教えてくれなかったし、それどころか感染症についても学んだ記憶すらない。本書を読んで神戸大学の医学生は羨ましいなあと心から思うと同時に、私も大学で教育に関わりたいという思いが強くなった。全ての医学生、そして医学教育に関わる(つまり全ての)医療従事者必読のぱねえ一冊である。

<J-IDEO Vol.2 No.4、2018年7月号、中外医学社、p621より転載>
研修医のいる病院に勤務するすべての医師が読むべき本

評者:國松 淳和(南多摩病院 総合内科)

 まず、本書を読む前の評者の気持ちを吐露しよう。1つは、私は大学の教員の経験がなく学生に臨床を教えたことがないため、それを岩田先生がどのように実践されているのか知ることができるという“期待と喜び”である。他大学・他機関の講義がそのまま聴けるというのは、本当においしい。2つ目は、評者自身が「グループ学習」が非常に苦手であり、正直に言えば“いぶかしい気持ち”である。「さあ、隣の人と考えてみましょう!」という、声高でキラキラした笑顔のリーダーの呼びかけが本当に嫌いだからだ。最後に、4月の中頃に手にした本書、正直言うと多忙であり「(書評のためとはいえ)せっかく読むのだから、役に立つといいな。」という“浅ましい気持ち”。以上、3つの気持ちである。
 そして読了後、これらの3つの気持ちはすべて裏切られた。書評の途中で恐縮だが、こういう書籍こそ読むべきである。何の裏切りもない本や、期待通りの本などは、読む必要がない。
 まず本書は、「教員-学生」という関係性を通して、「指導医-研修医」の関係性にも通ずる重要点を提示している。冒頭「感染症内科の岩田です」と登場し、感染症の集中講義をすると宣言されている。しかし実際には、一般的な教育論、医師としての心構え、臨床内科学(一般内科)、勉強法、統計学、論文の読み方、プロフェッショナリズム、アカデミズム、など多岐にわたっている。卒後の研修医、専修医、指導医にとっても、教養的に入ってくるので退屈しない。
 個人的には、「時間情報は検査できない(本書p.41)」という、さも自分が考えついたように使おうと心に決めたキラーフレーズは目から鱗だった。さらに、バクタ配合剤(スルファメトキサゾール トリメトプリム)のアレルギーの機序はまだよくわかっていないだとか、ratioとrateの違い、IGRA(インターフェロン-γ遊離試験)の(素人でも)非常にわかりやすい解説、なども勉強になった。「どんな分野の本か」と得心せずに読み始めても、最後には勉強になる。すごい仕かけである。
 「岩田流」のグループ学習のもっていき方は、書籍タイトルにもなっていることもあって本書の主題の1つだが、あえてここで触れないでおく。これこそ、著者が読者に感じ取って実践して欲しいと考えているはずだからだ。私のような、グループ学習に苦手意識(というか嫌悪感)をもつ者にも、そうした考えが浅はかで経験不足であることを序盤から突きつけられる。ファシリテーターを要しないという手法にも目から鱗だった。グループ学習に斜に構えた考えの人こそ、ぜひ本書を読んでみるべきである。
 読んでいる途中、飽きそう(?)になった頃合いに、なんと講義は突如英語で行われ始める! これは(実際の学生同様)、まさに文字どおり目が覚める。英語の重要性を学生に教える最良の手段だと思った。
 あらゆる意味で、本書は「自分には読む必要がない」という考えを裏切ってくれる。研修医のいる病院に勤務する医師ならば、全員が読んでおいた方がいい本であると思った。

<総合診療 Vol.28 No.7、2018年7月号、医学書院、p1007より転載>