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ニッチなディジーズ あなたがみたことのない病気を診断するための講義録
レアな疾患を診断するためのスキルを講義形式で楽しくレクチャー!
「ニッチなディジーズ」とは頻度的にレアな疾患、またスキマ領域にあってどの科にも属さない認知上の死角にある疾患の総称である。「診たことのない病気でも、その備えと考え方のスキルがあれば診断できる!」をテーマに10講のレクチャーを講義形式で掲載。授業を聴いているような臨場感で楽しく学べる。真の臨床医は“ひづめの音が聞こえたら、馬も探すし、シマウマも探す”。今日、出会うかもしれないレア疾患をつかまえろ!
【鬼才、國松淳和の新刊・好評書が一堂に会する「國祭り!」特設サイトはこちら!】
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第1講 なぜrareなものを学ぶのか
・まずは自己紹介
・Rareな疾患をどうやって見つけるのか
・最初の一例と言えば「忽那賢志先生」!
・「シマウマ」を探すとき
・ニッチに生きる総合内科
・あなたが診た患者は本当に風邪だったのか?
・ケースレポートが診療に役立つとき
・ニッチなディジーズ的勉強法
・サイゼリヤ勉強会のススメ
・Rare疾患を診断するために
第2講 カタマリをつくらないリンパ腫
・ニッチなリンパ腫をいつ疑うか?
・血管内大細胞型B細胞リンパ腫
・節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型
・Enteropathy-associated T-cell lymphoma
・原発性体腔液リンパ腫
・肝脾型T細胞性リンパ腫
・IVLは臨床診断がカナメ!
・IVLの「Jpn型」と「Euro型」
・まずはIVLを臨床診断できるようになろう
第3講 悪性じゃないけど困るカタマリ
・どこから採る?
・鑑別疾患を絞る思考プロセス
・IgG4関連疾患にニッチ感はない!?
・IgG4関連疾患のmimickerを考える
・Rosai-Dorfman病
・炎症性偽腫瘍
・キャッスルマン病
第4講 とにかく“繰り返す”病気 前篇
・序盤の各論力
・診断推論は二極化できない
・群発頭痛は実はレア!
・群発頭痛は経過でみる
・「duct」に関連する繰り返す疾患
・胆道ジスキネジー
・SMA 症候群
・頭がおかしくなっちゃうくらいつらい
・「後医は名医」の裏は真?
・頭がおかしくなっちゃうくらいつらい「腹痛」
第5講 とにかく“繰り返す”病気 後篇
・Sickle cell disease
・鉛中毒
・遺伝性血管性浮腫
・Fabry病
・パニック発作・ヒステリー発作
・Fume fever
・繰り返す病気を分類してみよう
第6講 不明熱のニッチな原因
・発熱が「不明熱」に変わるとき
・59歳男性:両下肢浮腫と繰り返す発熱
・初期プラン&アプローチ
・発熱の経過とプロブレムリスト
・診断に迫るためのプラン
・最終診断は…?
第7講 悪性のような性格を持ったアヤシイ病気
・病気にも性格がある
・病名からではなく、まずは病態を診断する
・しみこむ・たまる・カタマリをつくる
・しみこみ系:アミロイドーシス
・POEMS症候群
・Schnitzler症候群
・TAFRO症候群
・ランゲルハンス細胞組織球症
・Erdheim-Chester病
第8講 内科でもみかける子どもの(?)病気
・内科で小児の病気を考えるとき
・ウィルソン病
・ニーマンピック病C型
・糖原病
・小児のランゲルハンス細胞組織球症
・結節性硬化症
・「子どもは小さな大人ではない」と言うけれど……
・TNF受容体関連周期性症候群
第9講 まだまだあります惑わす病気
・Schizophrenicなディジーズ
・橋本脳症
・自己免疫性脳症とその周辺
・アイザックス症候群
・狐惑病と精神症状
・成人型シトルリン血症
第10講 最後の最後もニッチにディジーズ
・みたこともない病気を疑うスキル
・成人T細胞白血病・リンパ腫
・慢性活動性EB ウイルス感染症
・ニッチにディジーズ
■「KISS」でまとめるニッチなディジーズ
・まずは自己紹介
・Rareな疾患をどうやって見つけるのか
・最初の一例と言えば「忽那賢志先生」!
・「シマウマ」を探すとき
・ニッチに生きる総合内科
・あなたが診た患者は本当に風邪だったのか?
・ケースレポートが診療に役立つとき
・ニッチなディジーズ的勉強法
・サイゼリヤ勉強会のススメ
・Rare疾患を診断するために
第2講 カタマリをつくらないリンパ腫
・ニッチなリンパ腫をいつ疑うか?
・血管内大細胞型B細胞リンパ腫
・節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型
・Enteropathy-associated T-cell lymphoma
・原発性体腔液リンパ腫
・肝脾型T細胞性リンパ腫
・IVLは臨床診断がカナメ!
・IVLの「Jpn型」と「Euro型」
・まずはIVLを臨床診断できるようになろう
第3講 悪性じゃないけど困るカタマリ
・どこから採る?
・鑑別疾患を絞る思考プロセス
・IgG4関連疾患にニッチ感はない!?
・IgG4関連疾患のmimickerを考える
・Rosai-Dorfman病
・炎症性偽腫瘍
・キャッスルマン病
第4講 とにかく“繰り返す”病気 前篇
・序盤の各論力
・診断推論は二極化できない
・群発頭痛は実はレア!
・群発頭痛は経過でみる
・「duct」に関連する繰り返す疾患
・胆道ジスキネジー
・SMA 症候群
・頭がおかしくなっちゃうくらいつらい
・「後医は名医」の裏は真?
・頭がおかしくなっちゃうくらいつらい「腹痛」
第5講 とにかく“繰り返す”病気 後篇
・Sickle cell disease
・鉛中毒
・遺伝性血管性浮腫
・Fabry病
・パニック発作・ヒステリー発作
・Fume fever
・繰り返す病気を分類してみよう
第6講 不明熱のニッチな原因
・発熱が「不明熱」に変わるとき
・59歳男性:両下肢浮腫と繰り返す発熱
・初期プラン&アプローチ
・発熱の経過とプロブレムリスト
・診断に迫るためのプラン
・最終診断は…?
第7講 悪性のような性格を持ったアヤシイ病気
・病気にも性格がある
・病名からではなく、まずは病態を診断する
・しみこむ・たまる・カタマリをつくる
・しみこみ系:アミロイドーシス
・POEMS症候群
・Schnitzler症候群
・TAFRO症候群
・ランゲルハンス細胞組織球症
・Erdheim-Chester病
第8講 内科でもみかける子どもの(?)病気
・内科で小児の病気を考えるとき
・ウィルソン病
・ニーマンピック病C型
・糖原病
・小児のランゲルハンス細胞組織球症
・結節性硬化症
・「子どもは小さな大人ではない」と言うけれど……
・TNF受容体関連周期性症候群
第9講 まだまだあります惑わす病気
・Schizophrenicなディジーズ
・橋本脳症
・自己免疫性脳症とその周辺
・アイザックス症候群
・狐惑病と精神症状
・成人型シトルリン血症
第10講 最後の最後もニッチにディジーズ
・みたこともない病気を疑うスキル
・成人T細胞白血病・リンパ腫
・慢性活動性EB ウイルス感染症
・ニッチにディジーズ
■「KISS」でまとめるニッチなディジーズ
はじめに
国立国際医療研究センター総合診療科は、世間で思われているより、完成されたカチッとした診療科ではありません。定期的な教育レクチャーなどをウリにしている病院やプログラムと比べてしまえば、私たちがそれらに割く時間は圧倒的に劣ります。というのも、私を含めてうちの後期研修医は全員が朝が苦手で始業前なんてとてもできないし、また日中は外来業務で多忙で、夕〜夜も入院患者の病状説明などにあてられ、また各自の調べ物などをしていると、レクチャーなどする時間も受ける時間もろくにないからです。
とはいえ当科にも一応のレクチャーが存在します。それは、私と後期研修医の時間と気力が残り、しかもそのタイミングが合致したときです。なので不定期です。私のほうもちゃんとした準備をしていません。内容は大体次の要領で決まります。
・科のホワイトボードにメモが貼ってあり、後期研修医たちが「今度レクチャーがあったら取り上げて欲しいネタ」を雑に書きためていて、それに基づくもの
・その日、國松がしゃべりたいこと
・最近、なぜかよく診る疾患について
・てきとう
形式は、準備していないのでほとんどが「語り」で行われ、脳内を図解するためにホワイトボードは少し使います。必要と思える教科書などを持ってくることもあります。スライドはほぼ使いません。
さて本書は、すぐに原因がわからない症候からどのようにして比較的レアな疾患を疑い、診断していくかについて「講義録」の形で記述してあります。「ニッチなディジーズ」というレクチャーシリーズが、当科の教育リソースとして実際に確立しているわけではありませんが、私からウチの後期研修医たちへの日頃の「生の」語りの記録であることには間違いありません。そういう意味では、歴代・現役含めて、私と一緒に診療をした後期研修医たちにお礼を言いたいです。ありがとう。
書籍にするため多少物言いや体裁を(ある程度ちゃんとしたレクチャー風にするために)整えましたが、この講義録は、私 國松が内科系の後期研修医(一般には卒後3〜5 年目くらい)に向かって喋っているという設定であることをご想像いただければ幸いです。
最後に、先に言い訳をしておきますが、本書はあくまで「講義録」の体ですので、説明が字で読むと時に雑ですし、根拠というより考え方の一つを提示するような語りになっています。この点は、各自・各施設で整合性をお取りくださるようお願い申し上げます。
それではレクチャー、始まりますよ〜。
国立国際医療研究センター病院 総合診療科
國松 淳和
国立国際医療研究センター総合診療科は、世間で思われているより、完成されたカチッとした診療科ではありません。定期的な教育レクチャーなどをウリにしている病院やプログラムと比べてしまえば、私たちがそれらに割く時間は圧倒的に劣ります。というのも、私を含めてうちの後期研修医は全員が朝が苦手で始業前なんてとてもできないし、また日中は外来業務で多忙で、夕〜夜も入院患者の病状説明などにあてられ、また各自の調べ物などをしていると、レクチャーなどする時間も受ける時間もろくにないからです。
とはいえ当科にも一応のレクチャーが存在します。それは、私と後期研修医の時間と気力が残り、しかもそのタイミングが合致したときです。なので不定期です。私のほうもちゃんとした準備をしていません。内容は大体次の要領で決まります。
・科のホワイトボードにメモが貼ってあり、後期研修医たちが「今度レクチャーがあったら取り上げて欲しいネタ」を雑に書きためていて、それに基づくもの
・その日、國松がしゃべりたいこと
・最近、なぜかよく診る疾患について
・てきとう
形式は、準備していないのでほとんどが「語り」で行われ、脳内を図解するためにホワイトボードは少し使います。必要と思える教科書などを持ってくることもあります。スライドはほぼ使いません。
さて本書は、すぐに原因がわからない症候からどのようにして比較的レアな疾患を疑い、診断していくかについて「講義録」の形で記述してあります。「ニッチなディジーズ」というレクチャーシリーズが、当科の教育リソースとして実際に確立しているわけではありませんが、私からウチの後期研修医たちへの日頃の「生の」語りの記録であることには間違いありません。そういう意味では、歴代・現役含めて、私と一緒に診療をした後期研修医たちにお礼を言いたいです。ありがとう。
書籍にするため多少物言いや体裁を(ある程度ちゃんとしたレクチャー風にするために)整えましたが、この講義録は、私 國松が内科系の後期研修医(一般には卒後3〜5 年目くらい)に向かって喋っているという設定であることをご想像いただければ幸いです。
最後に、先に言い訳をしておきますが、本書はあくまで「講義録」の体ですので、説明が字で読むと時に雑ですし、根拠というより考え方の一つを提示するような語りになっています。この点は、各自・各施設で整合性をお取りくださるようお願い申し上げます。
それではレクチャー、始まりますよ〜。
国立国際医療研究センター病院 総合診療科
國松 淳和
評者:忽那 賢志 国立国際医療研究センター 国際感染症センター
■出会ったことがない病気を診断するために
ニッチなディジーズ…要するに稀な疾患のことである。私もこれまでに「本邦初の○○」といった感染症をいくつか診断している“ゼブラハンター”なのだが、そんな私を「あいつはシマウマ探しばかりしてるだけだ」などと揶揄する人もいるという。しかし、稀な疾患の診断というのは医師にとって、まさに國松氏の言うとおり「僥倖」なのである。
近い将来、AIの技術が医師の仕事を奪っていくことになるだろう。内視鏡検査、超音波検査、そして外科手術まで…。しかし、そうしたなかで一番AIに取って代わられにくい領域はどこか? 2017年4月に開催されたあるシンポジウムでそうした質問に対して、AI技術の専門科である医療CGプロデューサー瀬尾拡史氏とメディアアーティストの落合陽一氏は「超珍しい病気の診断はAIにはできないだろう」と答えていた。話している内容が難しすぎて半分くらいしか理解できなかったが、要するに“超珍しい疾患”だと統計的な処理ができずAIには向かないとのことであった。すなわち、“ニッチなディジーズ”を診断することは医師に残された最後の聖域とも言える。
國松氏の思考プロセスを惜しげもなく披露
“ニッチなディジーズ”は、その名の通り稀な疾患をどうやって診断するのかについて書かれた本である。著者の國松氏は国立国際医療研究センター病院 総合診療科の医師であるが、私も國松氏と同じ病院に勤務しときどき症例相談をしている立場である。たとえば不明熱症例のコンサルテーションをする際には、いわゆる「不明熱としてよくある疾患」はすでに除外されており、まさに國松氏に泣きつく状態でのコンサルテーションとなる。そんなときに國松氏からは「いや、この振る舞いはリンパ腫的ではないですね…」とか「TRAPS(TNF受容体関連周期性症候群)もあり得そうですね…」とか、核心をついた答えがポンポンと帰ってくるのである。これは国立国際医療研究センター病院で働く者の役得といえるだろう。
それにしても私と1つしか学年が違わない國松氏から、なぜレアな疾患を知り尽くしたような回答が帰ってくるのであろうか。ナショナルセンターの総合診療科ということで“ニッチなディジーズ”がたくさん集まってくるということはあるだろうが、いくらなんでも稀な疾患ばかりを診まくっているわけではないだろうに不思議だなあと思っていたのだが、この本を読んでようやく理解した。あまり書いてしまうと本を読む楽しみがなくなってしまうが、なぜ彼がニッチなディジーズを的確に捉えることができるのか、どうすれば初見であっても正しく診断できるようになるのか、いわば「國松氏のアタマの中」について本書では解説されている。このような書籍はこれまでになかったのではないだろうか。
たとえば第7講に登場する「病態の分類」。これは國松氏によるオリジナルの疾患の分類であるが、彼がどのように疾患を捉えているのかが分かる秀逸な分類法であると思う。あるいは第2講のタイトル「カタマリをつくらないリンパ腫」。このように、氏は稀な疾患を國松フィルターを通して分類・咀嚼し、自分のアタマの中の引き出しに入れているのだろう。そしてそのアタマの中の開陳っぷりもまた見事である。稀な疾患の捉え方だけでなく、稀な疾患を診断するための勉強法や心構えについても紹介されている。
ぶっちゃけ本書に登場する疾患の半分は私にとって初めて聞いたようなレアな疾患であり「なんだよErdheim-Chester病って……エド・はるみかよ」という感じであるが、本書を読んだ後ではなんとなく私でも次から診断できるような気になってくるから不思議である。「ああ、エルドハイムちゃんね、はいはい」てなもんである。そう國松氏があとがきに書いているようにニッチなディジーズの診断は「そんな病気、出会うわけない」と思った瞬間に終了なのである(たぶん“SLAM DUNK”を意識して書いた一文だと思う)。
いつシマウマが来てもいいように、本書を読みZEBRA LOVERになってシマウマが来るのを待ち構えておこうじゃないか!
雑誌「総合診療」vol. 27 No.7、2017、医学書院より転載
■出会ったことがない病気を診断するために
ニッチなディジーズ…要するに稀な疾患のことである。私もこれまでに「本邦初の○○」といった感染症をいくつか診断している“ゼブラハンター”なのだが、そんな私を「あいつはシマウマ探しばかりしてるだけだ」などと揶揄する人もいるという。しかし、稀な疾患の診断というのは医師にとって、まさに國松氏の言うとおり「僥倖」なのである。
近い将来、AIの技術が医師の仕事を奪っていくことになるだろう。内視鏡検査、超音波検査、そして外科手術まで…。しかし、そうしたなかで一番AIに取って代わられにくい領域はどこか? 2017年4月に開催されたあるシンポジウムでそうした質問に対して、AI技術の専門科である医療CGプロデューサー瀬尾拡史氏とメディアアーティストの落合陽一氏は「超珍しい病気の診断はAIにはできないだろう」と答えていた。話している内容が難しすぎて半分くらいしか理解できなかったが、要するに“超珍しい疾患”だと統計的な処理ができずAIには向かないとのことであった。すなわち、“ニッチなディジーズ”を診断することは医師に残された最後の聖域とも言える。
國松氏の思考プロセスを惜しげもなく披露
“ニッチなディジーズ”は、その名の通り稀な疾患をどうやって診断するのかについて書かれた本である。著者の國松氏は国立国際医療研究センター病院 総合診療科の医師であるが、私も國松氏と同じ病院に勤務しときどき症例相談をしている立場である。たとえば不明熱症例のコンサルテーションをする際には、いわゆる「不明熱としてよくある疾患」はすでに除外されており、まさに國松氏に泣きつく状態でのコンサルテーションとなる。そんなときに國松氏からは「いや、この振る舞いはリンパ腫的ではないですね…」とか「TRAPS(TNF受容体関連周期性症候群)もあり得そうですね…」とか、核心をついた答えがポンポンと帰ってくるのである。これは国立国際医療研究センター病院で働く者の役得といえるだろう。
それにしても私と1つしか学年が違わない國松氏から、なぜレアな疾患を知り尽くしたような回答が帰ってくるのであろうか。ナショナルセンターの総合診療科ということで“ニッチなディジーズ”がたくさん集まってくるということはあるだろうが、いくらなんでも稀な疾患ばかりを診まくっているわけではないだろうに不思議だなあと思っていたのだが、この本を読んでようやく理解した。あまり書いてしまうと本を読む楽しみがなくなってしまうが、なぜ彼がニッチなディジーズを的確に捉えることができるのか、どうすれば初見であっても正しく診断できるようになるのか、いわば「國松氏のアタマの中」について本書では解説されている。このような書籍はこれまでになかったのではないだろうか。
たとえば第7講に登場する「病態の分類」。これは國松氏によるオリジナルの疾患の分類であるが、彼がどのように疾患を捉えているのかが分かる秀逸な分類法であると思う。あるいは第2講のタイトル「カタマリをつくらないリンパ腫」。このように、氏は稀な疾患を國松フィルターを通して分類・咀嚼し、自分のアタマの中の引き出しに入れているのだろう。そしてそのアタマの中の開陳っぷりもまた見事である。稀な疾患の捉え方だけでなく、稀な疾患を診断するための勉強法や心構えについても紹介されている。
ぶっちゃけ本書に登場する疾患の半分は私にとって初めて聞いたようなレアな疾患であり「なんだよErdheim-Chester病って……エド・はるみかよ」という感じであるが、本書を読んだ後ではなんとなく私でも次から診断できるような気になってくるから不思議である。「ああ、エルドハイムちゃんね、はいはい」てなもんである。そう國松氏があとがきに書いているようにニッチなディジーズの診断は「そんな病気、出会うわけない」と思った瞬間に終了なのである(たぶん“SLAM DUNK”を意識して書いた一文だと思う)。
いつシマウマが来てもいいように、本書を読みZEBRA LOVERになってシマウマが来るのを待ち構えておこうじゃないか!
雑誌「総合診療」vol. 27 No.7、2017、医学書院より転載
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