よくわかるWHO方式がん疼痛治療法 すべてのがん患者さんが痛みのない日々を過ごすために

がんの痛みは薬でなくすことができる!痛みからの解放をめざして

著 者 武田 文和 / 的場 元弘 / 鈴木 勉
定 価 2,200円
(2,000円+税)
発行日 2016/06/20
ISBN 978-4-307-10181-3

A5判・120頁・図数:2枚

在庫状況 あり

もう、がんの痛みを我慢し、その治療薬を恐れる必要のない時代になっているのです――。「WHO方式がん疼痛治療法」は、“いつまでも間断なく続く痛み(持続性の痛み)”から、がん患者さんを解放する効果的な痛み治療の国際基準である。本方式の公表から30年が経過した今、日本におけるさらなる普及と治療薬の適切な使用をめざして、医師と薬剤師が本方式についてわかりやすく解説。日本に新たに導入されたオピオイド鎮痛薬なども扱う。
はじめに
用語の注釈

●第1部 「WHO方式がん疼痛治療法」に至るまでの変遷

I がんの痛み治療の変遷
II オピオイド鎮痛薬の代表薬モルヒネについての変遷
III 疼痛下におけるオピオイド鎮痛薬の精神的依存
IV 麻薬、オピオイド鎮痛薬などの用語について
V 痛みの定義


●第2部 「がんの痛みからの解放―WHO方式がん疼痛治療法 第2版」のわかりやすい解説

I WHO方式がん疼痛治療法の「いとぐち」の要約
II 痛みの原因別分類
III 痛みの診断(アセスメント)
IV 痛み治療の基本方針
V 鎮痛薬の使用法
VI 鎮痛薬の選択
VII オピオイド鎮痛薬の使用法
VIII オピオイド鎮痛薬の投与開始量
IX オピオイド鎮痛薬の副作用
X モルヒネおよび他のオピオイド鎮痛薬の非経口的投与経路
XI  神経障害性の痛み(neuropathic pain)の治療薬
XII 鎮痛薬治療を補助する薬
XIII WHO方式がん疼痛治療法のまとめ

●第3部 オピオイド鎮痛薬の医療目的使用への便宜を考慮した麻薬の規制ガイド(要約)

・がん患者さんの痛みからの解放を阻害する因子
・薬の供給にかかわる人々
・麻薬に関する単一条約
・オピオイド鎮痛薬の供給システム
・国による医療用オピオイド鎮痛薬の需要量の見積もり
・医療担当者と薬剤規制当局の意思疎通の重要性
・オピオイド鎮痛薬の供給確保
・国内での製造
・輸入、輸出のシステム
・報告システム
・国際システムは機能しているか?
・医療担当者の規制
・薬の不正使用と患者さんのニーズ
・UN-INCBによる医療担当者規制のガイドライン

文献
推薦したい文献資料
WHO方式がん疼痛治療法の作成に参画した人々
索引
はじめに

 がんの痛みは治療できる症状であり、治療すべき症状です。読者の皆さんやご家族のどなたかががん(癌)に襲われたとき、どのような医療が必要とお考えになるでしょうか。手術、放射線治療、抗がん剤治療などのがん病変を直接対象とした治療法をまずお考えでしょう。これらのがん病変の治療法は進歩し、がん患者さんの生存期間が延長し、がんの治癒率を改善させています。そうした進歩があるにもかかわらず、1978年以来今でも、日本国民の死因の第1位の座を「がん」が占め続けています。

(中略)

 WHO方式がん疼痛治療法が公表されてから30年が経過しました。日本でもっと広く活用され、がんの痛みに苦しむ全国の患者さんすべてに適切に用いられれば、日本のオピオイド鎮痛薬の年間消費量も大幅に増加するでしょうし、痛みに苦しむがん患者さんがいなくなるでしょう。本書は、そうなることを願いつつ、がんの痛み治療の普及に努力してきた医師と薬剤師の3名が協力して執筆しました。世界の標準的治療法であるWHO方式がん疼痛治療法にそい、その後の経験や知識の進歩、以前には導入されていなかったオピオイド鎮痛薬が本邦にも導入されたことなども念頭に置いて、「がんの痛み治療の実践法」の基本知識をわかりやすく解説いたします。
 本書をお読みくださった読者の方々は、ご自身またはご家族の一員ががんに襲われ、痛みが発生したら、遠慮なく痛みを訴え、痛みが消えるために十分量の鎮痛薬治療を求めてください。もう、がんの痛みを我慢し、その治療薬を恐れる必要のない時代になっているのです。しかし、担当医師が学習不足のこともあるでしょうし、医学教育は長い間にわたり「がんの痛みの治療法」を教えていなかったので、残念ながら、痛み治療に不満を感じることも起こるでしょう。そこで、治療を受ける側と行う側の双方が共通の理解を深めることに役立つよう心がけて本書を執筆しました。
 原著の性質上、解説も医療者向けとなってしまいますが、一般読者の方々にも有益な情報として受け止めていただければ幸いです。

2016年5月 著者一同