胸部腫瘍画像・病理アトラス

胸部腫瘍の画像・病理所見について最新の知見を交えながら解説!

編 著 立石 宇貴秀
定 価 13,200円
(12,000円+税)
発行日 2023/04/20
ISBN 978-4-307-07129-1

B5判・384頁・図数:1000枚

在庫状況 あり

胸部の画像診断では腫瘍以外にも肺炎を代表とする膨大な種類の疾患を扱うため、胸部X線からCT、MRI、PETなど、様々な診断機器を使用します。本書では臨床で遭遇頻度が高い胸部腫傷の各組織型について、複数のモダリティによる画像所見と病理所見を系統立てて解説しています。胸部腫瘍の診断・治療を行う多くの医師にとって必読の内容となっていますので、ぜひご一読ください。
1 章 悪性肺腫瘍とその他の肺疾患:L
L 01 異型腺腫様過形成
L 02 上皮内腺癌
L 03 多発性上皮内腺癌
L 04 置換性増殖優位型腺癌
L 05 腺房型腺癌
L 06 乳頭状増殖優位型腺癌
L 07 微小乳頭型腺癌
L 08 充実性腺癌
L 09 浸潤性粘液性腺癌
L 10 膠様(コロイド)腺癌
L 11 胎児型腺癌
L 12 腸型腺癌
L 13 微小浸潤性腺癌
L 14 扁平上皮癌
L 15 腺扁平上皮癌
L 16 大細胞癌
L 17 巨大細胞癌
L 18 多形癌
L 19 粘表皮癌
L 20 腺様嚢胞癌
L 21 上皮−筋上皮性癌
L 22 印環細胞癌
L 23 カルチノイド
L 24 異型カルチノイド
L 25 小細胞癌
L 26 大細胞神経内分泌癌
L 27 癌肉腫
L コラム01 バート-ホッグ-デュベ症候群
L コラム02 転移性肺腫瘍
L コラム03 感染症
L コラム04 気管癌
L コラム05 G-CSF産生肺癌
L コラム06 肺腫瘍血栓微小血管症

2 章 良性肺腫瘍とその他の肺疾患:Be
Be 01 過誤腫
Be 02 硬化性肺胞上皮腫
Be 03 肺内リンパ節
Be 04 限局性器質化肺炎
Be 05 円形無気肺
Be 06 炎症性偽腫瘍
Be 07 動静脈奇形
Be 08 肺子宮内膜症
Be 09 炎症性筋線維芽細胞腫
Be 10 唾液腺型腺腫
Be 11 顆粒細胞腫
Be 12 微小髄膜細胞様結節
Be 13 毛細血管性血管腫
Be 14 線毛性粘液結節性乳頭状腫瘍
Be 15 硝子化肉芽腫

3 章 縦隔腫瘍とその他の縦隔疾患:Med
Med 01 胸腺過形成
Med 02 胸腺腫
Med 03 胸腺癌
Med 04 胸腺神経内分泌腫瘍
Med 05 胸腺嚢胞
Med 06 性腺外胚細胞性腫瘍(テラトーマ)
Med 07 性腺外胚細胞性腫瘍(精上皮腫)
Med 08 性腺外胚細胞性腫瘍(非精上皮腫)
Med 09 縦隔甲状腺腫
Med 10 縦隔海綿状血管腫
Med 11 胸腺脂肪腫
Med 12 気管支原性嚢胞
Med 13 心膜嚢胞
Med 14 髄外造血
Med 15 リンパ管腫
Med 16 異所性副甲状腺腫
Med 17 神経鞘腫
Med 18 神経線維腫
Med 19 悪性末梢神経鞘腫瘍
Med 20 神経節腫
Med 21 神経節芽腫
Med 22 傍神経節腫

4 章 胸膜腫瘍とその他の胸膜疾患:PL
PL 01 アスベスト関連胸膜疾患
PL 02 悪性中皮腫
PL 03 中皮性嚢胞
PL 04 胸膜石灰化腫瘍
PL 05 結核性胸膜炎
PL 06 癌性胸膜炎

5 章 血液腫瘍とその他の血液疾患:BL
BL 01 古典的ホジキンリンパ腫
BL 02 びまん性大細胞B細胞性リンパ腫
BL 03 リンパ腫様肉芽腫症
BL 04 血管内大細胞型B細胞リンパ腫
BL 05 慢性炎症関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
BL 06 原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫
BL 07 Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫
BL 08 辺縁帯B細胞リンパ腫
BL 09 濾胞性リンパ腫
BL 10 末梢性T細胞リンパ腫・非特定型
BL 11 成人T細胞白血病/リンパ腫
BL 12 血管芽球性T細胞リンパ腫
BL 13 節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型
BL 14 未分化大細胞型リンパ腫・ALK陽性型
BL 15 原発性体腔液リンパ腫
BL 16 キャッスルマン病
BL 17 DLBCLとCHLの中間的特徴を伴うB細胞リンパ腫・分類不能型
BL 18 医原性リンパ増殖性疾患
BL 19 結節性リンパ腫様過形成
BL 20 骨髄性肉腫
BL 21 ランゲルハンス細胞組織球症
BL 22 組織球性肉腫
BL 23 エルドハイム・チェスター病
BL 24 TAFRO症候群
BL 25 骨外性形質細胞腫

6 章 骨軟部腫瘍:BST
BST 01 肺動脈肉腫
BST 02 異型脂肪腫様腫瘍/高分化脂肪肉腫
BST 03 粘液性脂肪肉腫
BST 04 脱分化型脂肪肉腫
BST 05 デスモイド型線維腫症
BST 06 リンパ脈管筋腫症/Perivascular epithelioid cell tumor (PEComa)
BST 07 淡明細胞腫
BST 08 微小結節性肺胞上皮過形成
BST 09 類上皮血管内皮腫
BST 10 胸膜孤立性線維性腫瘍
BST 11 粘液線維肉腫
BST 12 多形肉腫
BST 13 隆起性皮膚線維肉腫
BST 14 軟骨肉腫(通常型軟骨肉腫)
BST 15 間葉型軟骨肉腫
BST 16 骨外性粘液型軟骨肉腫
BST 17 脱分化軟骨肉腫
BST 18 良性転移性平滑筋腫
BST 19 平滑筋腫
BST 20 平滑筋肉腫
BST 21 軟骨腫
BST 22 骨軟骨腫
BST 23 線維性異形成
BST 24 骨肉腫
BST 25 横紋筋肉腫
BST 26 血管肉腫
BST 27 滑膜肉腫
BST 28 原始神経外胚葉腫瘍
BST 29 肺芽腫
BST 30 胸膜肺芽腫
BST 31 SMARCA4欠損胸部肉腫
BST 32 グロムス腫瘍
BST 33 悪性黒色腫、淡明細胞肉腫
BST 34 カポジ肉腫
BST 35 放射線関連肉腫
BST コラム01 良性線維性組織球種
BST コラム02 軟骨芽細胞腫
BST コラム03 骨化性線維粘液性腫瘍

7 章 全身系統性疾患:Sys
Sys 01 サルコイドーシス
Sys 02 IgG4関連呼吸器疾患
Sys 03 肉芽腫症性血管炎
Sys 04 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
Sys 05 顕微鏡的多発血管炎
Sys 06 肝炎ウイルス関連血管炎
Sys 07 アミロイド症
 胸部腫傷の組織型分類は肺腺癌に代表されるようにその歴史的疾患概念に変遷がみられ、再分類や名称変更が行われてきた。肺癌を例にすると、2017年の肺癌取扱い規約第8版が日本肺癌学会より出版された。この規約は2015年のWHO組織分類改訂と2017年のTNM分類改訂を受けて刊行され、今日の我が国における肺癌診療のスタンダードとなっている。この規約の特徴としてCTを主体とする画像所見、豊富な病理組織写真が提示され、疾患概念の把握がより明確となった。その後、遺伝子診断、分子生物学的診断の進歩などにより新たな臨床病理学的・分子遺伝学的知見が集積されている。
 胸部の画像診断では腫瘍以外に肺炎を代表とする多彩な種類の疾患を扱う。このため、使用される診断機器も様々である。CTはX線吸収量の違いを画像化する。水を基準として空気を−1,000に設定し物質の密度を水に対する相対値として表す。このため肺野内の病変把握には欠かせないモダリティである。MRIは強力な磁場と電磁波を用いて体内のプロトンの密度、運動状態の2つの情報を得て画像化する方法である。MRIでのプロトンとは体内に含まれる水素原子の原子核(陽子)を指し、プロトンは脂肪(脂肪髄、内臓脂肪、皮下脂肪)や体液、軟組織に多く分布している。このため、縦隔、胸膜、胸壁などの疾患の診断に多用される。PET/CTでは消滅γ線を生成する陽電子放出核種を目印にした放射性医薬品(18F-FDG)を用い、輪状に配置された検出器で同時計測を行う。正確に体内の放射線分布を推定し、病変を同定や腫瘍の代謝に関する情報を知ることができる。このほかに体内に放射性医薬品を投与し、臓器、組織に集積する様子を画像化する核医学検査も臓器・組織の代謝の情報を得るために使用されるに至っている。
 このような背景のもと、多数の疾患単位を有する胸部腫瘍について、日常臨床で使用される画像診断と病理所見について系統立てて解説した書は存在しない。胸部腫瘍はその緬蹴が極めて多く、その全てを網羅するのは限られた紙面では不十分である。したがって本書では比較的頻度の高い胸部腫傷に焦点を絞り、領域別に各組織型について可能な限り典型的な画像とともに病理所見について最新の知見を交えながら解説していただいた。各疾患を発生母地で区分し画像と病理を対比しやすく整理した。コラムには診断に病理組織を必須としない疾患や腫瘍類縁疾患をまとめた。とくに稀とされる疾患については国立がん研究センター中央病院の楠本昌彦副院長、谷田部恭病理診断科長、伊藤公輝放射線診断科長、東京医科歯科大学病院の桐村進助教に資料をご提供いただいたことを特筆させていただく。また、著者として名を連ねた方々をはじめ、ご尽力、ご協力賜りました諸賢の方々に深く感謝の意を表します。本書が胸部腫瘍診断の向上に寄与し、画像診断医、病理医はもちろんのこと、胸部腫瘍の診断・治療を行う多くの医師に必携のアトラスとなりえれば幸いである。

2023年4月
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科画像診断・核医学分野 教授
立石 宇貴秀