強度変調粒子線治療ガイドライン 2026年版
有効・安全な強度変調粒子線治療のための初のガイドライン!
| 編 集 |
国立がん研究センター研究開発費 秋元班 |
| 定 価 |
3,850円 (3,500円+税) |
| 発行日 |
2026/01/16 |
| ISBN |
978-4-307-07127-7 |
B5判・76頁
強度変調粒子線治療は、従来のブロードビームによる陽子線治療やX線を用いた放射線治療に比較して、リスク臓器線量低減を含めた臨床的なメリットがあります。本ガイドラインは、強度変調粒子線治療、強度変調陽子線治療(IMPT)、強度変調イオン線治療(IMIT)の用語と内容を定義し、「施設・人的要件/治療計画法/線量検証/治療装置/治療計画装置/位置照合/適応および対象疾患・病態」に即して解説しました。
「強度変調粒子線治療ガイドライン」発刊に寄せて
利益相反に関して
執筆者一覧
1章 強度変調粒子線治療の定義
2章 強度変調粒子線治療施行に際する施設・人的要件
3章 治療計画法
4章 線量検証
5章 治療装置
6章 治療計画装置
7章 位置照合
8章 適応および対象疾患・病態
column 強度変調陽子線治療(IMPT)・強度変調イオン線治療(IMIT)における生物学的事項の現状と課題
「強度変調粒子線治療ガイドライン」発刊に寄せて
「強度変調粒子線治療ガイドライン」はがん研究開発費 研究課題31-A-17(陽子線治療の高精度技術の標準化とその評価方法確立;2019年4月〜2022年3月)の研究班が中心となり、作成を開始して発刊に至ったガイドラインです。
粒子線治療において、独特な物理学的と特性であるブラッグピーク、ペンシルビームを用いたスキャニング照射法およびスキャニング照射法の発展型である強度変調技術を用いた治療適応は、技術的に進歩したX線を用いた放射線治療の弱点をカバーし、X線による放射線治療の臨床的な限界を打ち破る可能性を秘めた治療方法であると考えています。その臨床導入と普及および有効性の検証は今後の粒子線治療の可能性を考える上で非常に重要な課題です。しかし、Single field uniform dose(SFUD)などのスキャニング照射法や粒子線による強度変調技術などの高精度照射技術の標準化やその評価方法の確立はなされていないのが現状です。くわえて、本ガイドライン作成に取りかかってわかったことですが、強度変調技術を用いた陽子線治療および重粒子線治療の名称が、論文によってもさまざまで国際的にも統一されていないことがわかりました。
X線を用いた放射線治療は、3次元原体照射から強度変調放射線治療(IMRT)へ移行する過程で、先進医療の期間を経て保険収載、標準化と施設要件の整備などを経て、現在のように頭頸部癌や前立腺癌など幅広い疾患に普及している段階に至っています。この過程で新規技術には適切な加算がなされています。同様の取り組みが粒子線治療のスキャニング照射法や強度変調技術などの高精度照射技術でも必須であることはいうまでもありません。粒子線治療の技術開発で得られる成果を最大化するには、粒子線治療の新技術の標準化に加えて新技術の有効性検証の臨床試験実施への道筋をつけ、国内粒子線治療施設と連携してその実現を図るものです。また、IMRTはすでにその標準化作業の成果として、日本放射線腫瘍学会からIMRTの医学物理学的なQuality Assurance(QA)/Quality Control(QC)を中心に安全な実施方法の基準や施設要件などを記載した“IMRT物理技術ガイドライン”および“IMRTガイドライン”が作成されています。そのため、IMRTと同様に「強度変調粒子線治療」を有効かつ安全に実施するための基準などを提示するガイドライン作成と発刊は重要でかつ必須です。本ガイドラインでは、重粒子線治療と陽子線治療で標準的に実施される強度変調技術の医学物理的な定義や名称、施設要件、治療計画法、臨床的な有効性を客観的に記載して、今後の強度変調粒子線治療の技術的な評価や保険収載および加算の際にその根拠となればと考えています。なお、本ガイドラインは日本放射線腫瘍学会から発刊費用の一部負担と日本放射線腫瘍学会ガイドライン委員会および粒子線治療委員会の査読を経て、日本放射線腫瘍学会協賛の形での発刊となっています。
なお、本ガイドライン作成過程でICRU Report 99の責任者であるHakan Nystrom先生に、本ガイドラインで採用している定義等に関してご意見を伺い、ICRUで採用している定義とも齟齬がないことを確認して頂きました。加えて、本ガイドラインは日本放射線腫瘍学会から発刊費用の一部負担を頂き、内容についても日本放射線腫瘍学会ガイドライン委員会および粒子線治療委員会の査読を経て、日本放射線腫瘍学会協賛の形での発刊となっています。
2025年12月1日
ガイドライン作成委員を代表して
秋元 哲夫