乳房MRI検査マニュアル HBOCを念頭においたスクリーニング/サーベイランスから乳がんの精密検査まで

乳房MRIによる検診や検査実施方法をまとめた必携マニュアル

編 集 日本乳癌検診学会
定 価 2,420円
(2,200円+税)
発行日 2020/11/20
ISBN 978-4-307-07118-5

B5判・64頁・図数:2枚

在庫状況 あり

コンパニオン診断としてのBRCA遺伝子検査や、乳がん既発症の遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に対するリスク低減乳房切除術、リスク低減卵管卵巣摘出術の保険収載に伴い、近年、乳房MRI検査は、BRCA遺伝子変異保持者に対するスクリーニングやサーベイランスとしても重要性が高まっている。
BRCA遺伝子変異保持者に対する乳房MRIによる検診実施方法や、乳房MRI検査の実施方法をまとめた最新マニュアル。
1. がん検診の基礎知識
 1)検診と健診
 2)スクリーニングとサーベイランス
 3)がん検診の目的
 4)対策型検診と任意型検診
 5)がん検診の利益と不利益
 6)がん検診の有効性
2. MRI による乳がん検診の現状(これまでの経過と欧米の現状)
3. 対象者および検診の実施方法(間隔)
4. 人員、設備、安全管理
 1)人的体制の基準
 2)設備全般の基準
 3)安全管理
5. 乳房MRI 検査の注意事項
6. ガドリニウム造影剤の注意事項
7. 推奨される標準的な撮像方法
 1)造影剤
 2)指摘撮像時期
 3)撮像装置
 4)撮像コイル、撮像体位
 5)両側乳房同時撮像
 6)T2 強調画像
 7)T1 強調画像
 8)拡散強調画像
 9)ダイナミックMRI
8. 撮像条件
 1)造影剤投与量、投与方法
 2)撮像シーケンス例(1.5T 以上の装置、乳房専用コイル)
 3)ダイナミックMRI の画像表示法
 4)時間信号曲線(time intensity curve;TIC)
9. 乳房MRI の読影方法(判定基準)
 1)主たる用語
 2)カテゴリー分類
10. MRI detected lesion(MRI 検出病変)のマネジメント
11. MRI ガイド下生検
12. 受診者に対する説明
 1)MRI 検査とは
 2)MRI 検査の注意事項
 3)造影MRI 検査を受けられる方へ
 4)検診MRI のQ&A
13. プロセス指標に基づく精度管理
14. ブレスト・インプラントによる乳房再建後の定期的乳房MRI のプロトコル
 1)プロトコル
 2)ブレスト・インプラントの破損と随伴する画像所見
 3)国内外におけるブレスト・インプラントへの画像検査に関する知見
15. 参考資料
 1)Abbreviated 乳房MRI
 2)非造影乳房MRI
索引
 2013年3月、日本乳癌検診学会は“乳がん発症ハイリスクグループに対する乳房MRIスクリーニングに関するガイドライン”を公表した。これにより乳房MRIの新たな利用方法についての理解が深まるとともに、乳房MRI の基本的な撮影技術と読影方法が普及した。その後7年が経過し、改訂の時期を迎え、このたび、乳房MRIの最新知見を加えて、“乳房MRI検査マニュアル─HBOCを念頭においたスクリーニング/サーベイランスから乳がんの精密検査まで─”と改題して新たに作成を行った。
 本マニュアル作成チームは日本乳癌検診学会で新たに立ち上げた次世代乳癌検診検討委員会の小委員会メンバーで、前回のガイドラインとは異なり記載方法をCQに対する回答形式から総説的記載とし、名称もガイドラインからマニュアルに変更した。総説的な記載は、現場に常備し、適時参照するのに使いやすい形式になったと考えている。
 一方、わが国における乳房MRIは、最近の調査でも化学療法後を含む乳がんの術前精査での利用が中心で、ハイリスク女性のスクリーニングで行っている施設は多くはない。しかし今後、ゲノム解析の普及など種々の手法で乳がん発症リスク評価が広がる時代になったときにはMRIの利用は確実に増加すると考えられ、本マニュアルの意義はさらに高まると考えている。
 また、乳房MRIの普及を目指して開発された、造影早期相のみで評価を行う短縮MRIや拡散強調画像を主とした非造影MRIも注目されており、実際に利用している施設もある。本マニュアルでは、これらについても現時点での考え方がまとめられているので参考にしていただきたい。
 以上のように、本マニュアルは乳房MRIを行う際の留意点がもれなく記載されている。HBOCのサーベイランスを行っている施設だけでなく、乳房MRIを行っているすべての施設に常備いただき、常に参照する形で利用していただくことを期待している。

2020年10月

特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
理事長 中島 康雄
 近年、乳房MRI検査は、乳房温存手術の適応を決めるための広がり診断や、術前化学療法の効果判定など、乳がん診療において必要不可欠な検査法となった。それに加えて、2020年4月からは、BRCA遺伝学的検査で遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)症候群であることが判明した患者に対しては、術後の経過観察において、保険診療での乳房MRI 検査が実施可能となった。ただし、サーベイランス(術後の経過観察)として行う場合には、撮像法や読影法は、診療に用いる乳房MRIとは異なり、新たに習得し、導入することが必要である。そのためには、現在、海外で標準的に行われている方法を参考にすることが肝要で、その際、本マニュアルがとても有用である。
 HBOCの領域では、サーベイランスが保険診療として認められたのち、既発症のバリアント(変異)保持者の拾い上げが急速に進みつつある。また、その方々の遺伝カウンセリングを通じて、未発症のバリアント保持者が見つかってくる。欧米では、いわゆる乳がん発症ハイリスク者への検診として、乳房MRIの導入が診療ガイドラインのなかで推奨されている。わが国でも、乳がん発症ハイリスク者の同定とともに、個別化検診の導入が模索されている。本書を通じて、わが国においても、一定水準の撮像法や読影法が浸透し、乳房MRI検診の意義が証明されるようなビッグデータが創出されることを願ってやまない。

2020年10月

一般社団法人 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構
理事長 中村 清吾