読んで上達! 病気がわかる検査値ガイド 第3版

検査の知識と病気の全体像がわかるベストセラー。新診断基準に対応した第3版完成!

著 者 斉藤 嘉禎
定 価 4,180円
(3,800円+税)
発行日 2016/08/20
ISBN 978-4-307-05050-0

B5判・336頁

在庫状況 あり

法改正により、臨床検査室など診療補助部門では業務範囲が拡大しており、医療の最前線で臨床検査の重要性が高まっています。医師から検査結果の説明を受けると、患者自身も治療に積極的に参加するようになります。本書は臨床検査の知識にとどまらず、報告された検査数値(データ)からどんな病態が推測できるかに重点を置きました。経時的に変化する検査値と治療効果との関連、臓器の障害による異常値の出現と生体情報との関連、薬物による検査値への影響などが理解できます。
序章 臨床検査の基礎知識
・病院検査室の運営
・臨床検査の目的
・緊急検査

第1章 血液一般検査
1.赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値
Column 赤血球平均恒数から貧血を知る
2.白血球数(WBC)
3.白血球分類(白血球像)
知って得!深読み 白血病でみられる血液がん細胞

第2章 血栓・止血検査
1.血小板数(PLT)
Column 止血と血栓症とは
2.プロトロンビン時間(PT)
3.活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
Column 血友病A、B について
4.FDP、D−ダイマー
知って得!深読み 血管内皮細胞のはたらきと血液凝固検査

第3章 肝・胆道機能検査
○肝細胞の変性・壊死をみる
1.AST、ALT
2.乳酸脱水素酵素(LD)
Column 薬物性肝障害
○肝合成能をみる
3.総蛋白、アルブミン
Column 血清蛋白分画について
4.コリンエステラーゼ(ChE)
Column 有機リン中毒とコリンエステラーゼ活性
○解毒代謝能をみる
5.ビリルビン
6.アンモニア
Column 肝性昏睡と重症度分類
7.ICG試験
○間葉系の反応
8.TTT(チモール混濁試験)、ZTT(硫酸亜鉛混濁試験)
○胆汁うっ滞の具合をみる
9.γ−GT(γ−グルタミルトランスペプチダーゼ)
10.ALP(アルカリホスファターゼ)
Column 骨型アルカリホスファターゼ
○肝線維化の程度を推定
11.ヒアルロン酸
12.IV型コラーゲン
Column 新しい肝線維化マーカー
知って得!深読み 免疫電気泳動法(IEP)/免疫固定法(IFE)

第4章 腎機能検査
1.血清尿素窒素(BUN、S−UN)
2.血清クレアチニン(Scr)
Column 尿濃縮試験(フィッシュバーグ濃縮試験)
3.血清シスタチンC(Scys)
Column 急性腎不全と急性腎障害
4.β 2−ミクログロブリン(β 2−m)
5.α 1−ミクログロブリン(α 1−m)
6.尿中L−FABP
Column 尿クレアチニン補正について
7.尿 酸
Column 薬剤性腎障害
知って得!深読み 腎機能評価方法(クリアランス、GFR推算式)

第5章 心・血管系検査
1.心筋トロポニンT
2.ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H−FABP)
3.ミオグロビン(Mb)
Column ヒト心室筋ミオシン軽鎖I(MLC−I)
4.クレアチンキナーゼ(CK)、CKアイソザイム
5.ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
6.脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT−proBNP)
Column ヒト心房性ナトリウム利尿ホルモン(h−ANP)
知って得!深読み 高血圧の診断基準、降圧薬の選択基準

第6章 膵疾患検査
1.アミラーゼ
2.リパーゼ
3.エラスターゼ1

第7章 糖代謝異常検査
○診断のための検査
1.血糖検査
Column 血糖自己測定(SMBG:self−monitoring of blood glucose)の方法
2.75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT)
Column インスリン分泌能を知る便利な計算式
○血糖コントロールの指標となる検査
3.HbA1c
4.グリコアルブミン(GA)
Column 糖尿病合併症
5.1、5−アンヒドログルシトール(1、5−AG)
Column 糖尿病の診断
○インスリン分泌能をみる検査
6.インスリン
Column 糖尿病の分類
7.C−ペプチド
○1型糖尿病をみる検査
8.抗GAD抗体
9.抗IA−2抗体
Column 妊娠糖尿病の診断基準
知って得!深読み インスリン抵抗性/境界型の判定をどう読むか
知って得!深読み 糖尿病と歯周病

第8章 脂質異常症検査
1.総コレステロール(TC)
2.HDL−コレステロール(HDL−C)
3.LDL−コレステロール(LDL−C)
Column LDL−C直接測定法/Friedewald の式
4.トリグリセリド(TG、中性脂肪)
5.マロンジアルデヒド修飾LDL(MDA−LDL)
Column 脂質の酸化
知って得!深読み 電気泳動による脂質分画 表現型分類/原発性高脂血症の分類

第9章 内分泌検査
○甲状腺疾患
1.甲状腺ホルモン(FT4、T4、FT3、T3 )
2.甲状腺刺激ホルモン(TSH)
Column 他の甲状腺自己抗体の検査
3.副甲状腺ホルモン(PTH)
○副腎皮質
4.コルチゾール
○性腺ホルモン
5.エストラジオール
知って得!深読み 骨粗鬆症の検査と薬物治療

第10章 感染症検査
○ウイルス感染症
1.B型肝炎ウイルス感染症
Column 医療従事者におけるHB ワクチンの必要性
2.C型肝炎ウイルス感染症
3.インフルエンザウイルス抗原
4.RSウイルス抗原
5.HIV−1/2抗体
Column HIV の呼称について
6.性器ヘルペス感染症
Column 水痘と帯状疱疹との関係
7.ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症
Column 子宮頸がん予防ワクチン
8.HTLV−1抗体
9.ロタウイルス抗原
10.ノロウイルス
Column ワクチンで予防できる病気
○細菌感染症
11.肺炎マイコプラズマ感染症
12.性器クラミジア感染症
13.淋菌感染症(淋病)
14.梅毒
15.A群レンサ球菌感染症
Column 劇症型溶血性レンサ球菌感染症(severe invasive streptococcal infectious)
Column ペア血清について
16.ヘリコバクター・ピロリ感染症
Column ABC 分類について
17.腸管出血性大腸菌感染症(EHEC)
18.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
Column IMP(β− ラクタム薬耐性因)およびAAC(6’) −Iae、AAC(6’) −Ib(アミノグリコシド薬耐性因)同時検出について
○真菌感染症
19.アスペルギルス感染症
20.カンジダ感染症
クリプトコックス感染症
知って得!深読み B型肝炎ウイルスの生活環
知って得!深読み 銀増幅技術による高感度インフルエンザ診断薬
知って得!深読み 胃カメラ開発の歴史

第11章 炎症マーカー検査
1.赤血球沈降速度測定(ESR)
2.C−反応性蛋白(CRP)
3.プロカルシトニン(PCT)
Column 敗血症とSIRS(全身性炎症反応症候群)

第12章 動脈血ガス分析検査
1.動脈血酸素分圧(PaO2)
2.動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)
3.動脈血酸素飽和度(SaO2)
Column 酸・塩基平衡(動脈血pH、HCO 3−濃度)
知って得! 深読み パルスオキシメータ

第13章 電解質・微量金属検査
1.ナトリウム(Na)
2.カリウム(K)
3.クロール(Cl)
Column アニオンギャップ(AG)と代謝性アシドーシス
4.カルシウム(Ca)
Column 無機リン(IP:inorganic phosphorus)の測定
5.マグネシウム(Mg)
6.鉄(Fe)、鉄結合能(TIBC、UIBC)

第14章 自己免疫疾患・アレルギー検査
1.自己免疫疾患
Column 膠原病の概念
○全身性自己免疫疾患
2.関節リウマチ(RA)
Column 関節リウマチでみられる自己抗体
3.全身性エリテマトーデス(SLE)
Column 全身性エリテマトーデス(SLE)でみられる自己抗体
4.全身性強皮症(SSc)
Column 全身性強皮症(SSc)でみられる自己抗体
Column 多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)でみられる自己抗体
Column 血管炎症候群でみられる自己抗体
5.シェーグレン症候群(SS)
Column SS でみられる自己抗体
6.多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)
7.混合性結合組織病(MCTD)
Column 結合組織病でみられる自己抗体
8.抗リン脂質抗体症候群(APS)
Column 抗リン脂質抗体症候群(APS)でみられる自己抗体
9.血管炎症候群
○臓器特異的自己免疫疾患
10.天疱瘡・類天疱瘡
11.原発性胆汁性肝硬変(PBC)
Column 臓器特異的自己免疫疾患の検査
○アレルゲン定量検査
12.アレルゲン特異的IgE
知って得!深読み やさしい免疫学

第15章 遺伝子関連検査
○体細胞遺伝子検査
1.EGFR遺伝子変異解析(受容体型チロシンキナーゼ)
2.RAS遺伝子変異解析
3.BCR/ABL融合遺伝子解析(BCR-ABLチロシンキナーゼ)
4.EML4-ALK融合遺伝子解析(EML4-ALKチロシンキナーゼ)
○遺伝学的検査
5.UGT1A1遺伝子多型解析
6.チトクロームP450遺伝子多型解析
Column 薬物血中濃度モニタリング(TDM:therapeutic drug monitoring)

第16章 腫瘍マーカー検査
1.腫瘍マーカーの特性
Column 科学的根拠に基づくがん診療
2.日常検査に用いる主な腫瘍マーカー

第17章 尿検査
1.尿量・尿色調
Column 尿試験紙による検査
2.尿比重
3.尿pH
4.尿蛋白
Column 尿蛋白/クレアチニン比(P/C比)について
Column 尿アルブミン/クレアチニン比(A/C 比)
5.尿糖
6.尿ケトン体
7.尿ビリルビン、尿ウロビリノゲン
8.尿潜血反応
9.妊娠反応
10.尿沈渣

付録 検査値データの取扱い方と読み方
1.検体取扱い上の注意
2.検査データの読み方
3.主な測定法と測定原理
参考文献
索引
 本書は看護師、薬剤師、臨床検査技師などの医療従事者および製薬企業にはたらく医療情報担当者(MR)を読者層として製作された書籍です。
 血液や尿など体液の分析は、おもに臨床検査技師によって行われます。ときに医師や看護師によって行われますが、各医療人は実践力のある専門的職業人として自覚し、迅速かつ正確な検査データ(検査値)を診療部門に提供しています。さらに法改正により、臨床検査室など診療補助部門では業務範囲が拡大しており、医療の最前線で臨床検査の重要性が高まっています。
 本書は臨床検査の知識にとどまらず、報告された検査数値(データ)からどんな病態が推測できるか、経時的に変化する検査値と治療効果との関連、どのような機序により健常な生体が恒常性を失って異常値が出現するかなどに重点を置き、臓器の障害による異常値の出現と生体情報との関連および薬物による検査値への影響などが理解できるように心がけました。
 情報開示が進み、医師は患者の要望などから検査データをコピーして手渡すことが多くなっています。医師から検査結果の説明を受けると、相互の信頼関係が深まり、患者自身も治療に積極的に参加するようになります。近年、病院から処方せんに印字された臨床検査データが散見されます。薬局薬剤師は従来からの処方せんの調剤記録のみでは医師の処方意図が読めず、患者への適切な指導には限界があります。保険薬局等において、臨床検査値が読める環境が次第に整備されると、処方監査の際、医師などに対する疑義照会の機会が増加し、薬局業務の質の向上につながります。薬剤の知識に加え、臨床検査値をどのように活用し、患者への服薬指導をどのように行うのか、薬剤師のスキルアップと医療チームの一員としての専門的医療人の育成が必要です。
 改訂第3版の刊行にあたり、先端医療振興財団 臨床研究情報センター長の福島雅典先生より推薦の言葉をお寄せいただきました。福島先生は、1985年ごろに米国ベンチャー企業で開発された糖鎖抗原を国内に導入後、膵臓がんや他の消化器がんにおける臨床的意義を確立された医師です。この臨床試験成績は、わずかの血液を用いて膵臓がんの診断補助に画期的なものとして、新聞全国紙に大きく報道されました。当時、私は出向先の合弁企業で仕事をしていたさなかに、この新聞記事を目にし、臨床試験で得られた先生の臨床試験結果に深い感銘を受けたのです。
 その後、仕事を通じて何度となく先生にお目にかかり、ご指導を仰ぐ機会を得ました。今日、私が著書の出版や看護学生への教育、あるいは若い薬剤師への研修を生業としているのも、福島先生とのあの時心揺り動かされた感動があってこその事です。
 本書の執筆範囲は、主に検体検査を中心に掲載されています。大学病院、がんセンター、診断薬企業の専門家を取材し、最新情報の入手に努めました。記述内容、表記法など不十分な点があるかと思います。読者各位のご意見をお聞かせいただけると幸いです。
 最後に出版までの間、辛抱強く対応し励ましてしてくださった金原出版株式会社編集部スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。

2016年7月
斉藤 嘉禎