TNM悪性腫瘍の分類 第9版 日本語版

がん病期分類の国際基準、8年ぶりの改訂

編著者 James Brierley, Meredith Giuliani, Brian O'Sullivan / Brian Rous, Elizabeth Van Eycken
訳 者 UICC日本委員会 TNM委員会
定 価 5,500円
(5,000円+税)
発行日 2026/09/25
ISBN 978-4-307-00496-1

A5変判・280頁

在庫状況 なし

がん病期分類の国際基準、8年ぶりの改訂。主に下記の点が改訂された。
・上咽頭、HPV関連中咽頭、肺、胸腺、中皮腫、虫垂、肛門管、子宮頸部、外陰部、前立腺癌など、多くの腫瘍部位の病期分類をアップデート
・エッセンシャル TNMおよび小児がんの病期分類の章を改訂・更新
・髄芽腫、皮膚リンパ腫、副甲状腺癌、副腎髄質腫瘍および副腎外傍神経節腫瘍の新分類を掲載
・多くの悪性腫瘍の予後因子に関する分類を改訂
編集主幹
編者
序文
謝辞
TNM分類法の作成に参画した機関
TNM分類法の作成に参画したUICC委員会の委員

序論

頭頸部腫瘍
 口腔および口唇粘膜
 咽頭
 喉頭
 鼻腔および副鼻腔
 原発不明─頸部リンパ節
 上気道消化管の悪性黒色腫
 唾液腺
 甲状腺
 副甲状腺

消化器系腫瘍
 食道
 胃
 小腸
 虫垂
 結腸および直腸
 肛門管および肛門周囲皮膚
 肝臓
 肝内胆管
 胆嚢
 肝門部胆管
 遠位肝外胆管
 Vater膨大部
 膵臓
 消化管の高分化型神経内分泌腫瘍

肺・胸膜・胸腺腫瘍
 肺
 胸膜中皮腫
 胸腺腫瘍

骨・軟部腫瘍
 骨
 軟部組織
 消化管間質腫瘍(GIST)

皮膚腫瘍
 皮膚癌(眼瞼、頭頸部、肛門、外陰部および陰茎を除く)
 頭頸部領域の皮膚癌
 眼瞼の皮膚癌
 皮膚黒色腫
 皮膚のメルケル細胞癌

乳腺腫瘍

婦人科腫瘍
 外陰
 腟
 子宮頸部
 子宮内膜
 子宮肉腫
 卵巣、卵管、および原発性腹膜癌
 妊娠性絨毛性新生物

泌尿器系腫瘍
 陰茎
 前立腺
 精巣
 腎
 腎盂および尿管
 膀胱
 尿道

副腎皮質

副腎髄質腫瘍および副腎外傍神経節腫瘍

眼部腫瘍
 結膜癌
 結膜黒色腫
 ぶどう膜黒色腫
 網膜芽細胞腫
 眼窩肉腫
 涙腺癌

脳および脊髄

ホジキンリンパ腫

非ホジキンリンパ腫

エッセンシャルTNM

小児腫瘍
 消化管腫瘍
 骨・軟部腫瘍
 婦人科腫瘍
 泌尿器系腫瘍
 眼部腫瘍
 リンパ腫
 白血病
 中枢神経系
【第9版日本語版についての訳者前書き】

 本書は、UICC(Union for International Cancer Control, Geneva)が2025年に刊行した“TNM Classification of Malignant Tumours, 9th edition, Wiley”の邦訳版であり、この第9版も、UICC日本委員会が翻訳刊行したものである。2017年に第8版が刊行されてから、すでに8年が経過したことになる。
 今回の第9版の改訂は、第8版までの改訂と大きく異なる点があり、まずそのことを読者の皆さんにお伝えし、ご理解いただく必要がある。
 TNM病期分類の改訂作業は、従来、UICCとAJCC(American Joint Committee on Cancer)とが、同期に協調して7年ごとに行ってきたものであり、分類内容それ自体は、それぞれが独自に1冊の書籍を刊行してきたとはいえ、両者が討議、調整のうえ基本的には同一内容となるよう準備、執筆されてきたものである。程度の差はあれ、すべての臓器の分類が改訂の対象となったのが、第8版までの改訂状況である。しかし、第9版からは、改訂についてUICCとAJCCとが異なった対応をとることとなった。AJCCは、全臓器がんの病期分類を一斉同時に改訂することは、マンパワー上の制約もあることから、改訂する臓器を選択し、それらの改訂された新しい分類のみを分冊で刊行することとしたのである。ACS(American College of Surgeons)より新たに刊行された“AJCC Cancer Staging System VERSION NINE”は、従来の分厚い本から、例えば訳者(淺村)が担当する“Lung”は、肺癌のみを扱う比較的薄い分冊へと変貌した。今回改訂のなされなかった臓器については、出版はされていない。改訂の行われなかった臓器の改訂は2031 年を待たずに行われる予定であり、これを第9版と呼ぶのかについて、いささか混乱を生ずるかもしれない。一方、UICCにおいては、従来通りWiley 社より、全臓器の分類を扱う“TNM Classification of Malignant Tumours, 9th edition”が刊行されており、本書はその邦訳版である。したがって、本書は、改訂のいかんにかかわらず全臓器がんを包含する合本となっていることをご確認いただきたい。さらに、本書は改訂の行われた臓器については、従来通り両団体の間ですり合わせが行われており、基本的には同一内容の分類となっている。本邦の各臓器の病期分類担当者、がん登録関係の方々におかれては、今後の新しい分類の発表について注意を払われたい。また、お気づきの方もおられると思うが、日本語の訳語、“版”については、UICCが従来通りの“Edition”を使用しているのに対して、AJCCは“Version”を使用することとなり、両者の間で相違が生じていることも、指摘しておきたい。
 最後に、TNM 病期分類の今後の展望についても触れておきたい。もともと、“病期(stage)”とは、がんの解剖学的な進展範囲と定義されており、これを、T(主腫瘍)、N(リンパ節転移)、M(遠隔転移)のパラメーターごとにそれぞれの状況を評価し、その組み合わせによって病期(stage)を決定するというものであった。すなわち、がんの進展範囲は、解剖学的な定義を基盤とするものであった。しかし、近年の分子病理学的な知見の蓄積によって、がんの生物学的な理解、特に、種々の分子マーカーの検出、測定技術の向上とその病理学的な意義の理解が急速に進んでおり、これらの知見を病期分類にも取り入れる方向での検討が、UICC、AJCCにおいて活発に展開されるようになっており、2031年に刊行されるであろう第10版においては、これらの非解剖学的因子を包含した新しい病期分類(TNM-B)が導入されることになるかもしれない。ただし、そのためには、データに基づく詳細な検討と、非解剖学的因子の測定方法の標準化が早急に検討される必要がある。このような点に留意して、今後の対応をお願いしたいところである。
 今回の翻訳も、UICC日本委員会TNM委員会の事業として行い、全体のとりまとめと序論の翻訳は、UICC TNM Prognostic Factors Core Group(Geneva)委員の淺村尚生(慶應義塾大学・東京曳舟病院)とUICC日本委員会TNM委員会委員長の佐野武(がん研究会有明病院)が担当し、各臓器については別掲する専門家の先生に分担してお願いすることになった。この場をお借りして先生方に深く感謝申し上げたい。翻訳を担当していただいた先生方からは、日本国内で広く用いられている各臓器の“取扱い規約”の“TNM分類”との差異についても、いくつかのご指摘をお受けした。しかし、翻訳の原則として、あくまでも原著に忠実に翻訳することとし、あえて脚注などは設けず、むしろUICCと取扱い規約の間にある差異が明確になるようにした。
 UICC日本委員会としては、UICCの規定するTNM病期分類がより広く、日本のがん臨床に浸透することを祈念して、本書を世に送り出すこととした。

2026年8月

野田 哲生
淺村 尚生
佐野 武



【序文】

 この『TNM悪性腫瘍の分類』第9版は、多くの腫瘍部位において第8版(1) をそのまま継承している。しかし、新たに病期分類が定義された腫瘍や解剖学的部位がある一方、改訂が行われた腫瘍もある。これは、時代をこえてTNM分類が安定的に維持されるべきであるというフィロソフィーに従うものである。これらの改訂ならびに加筆は、予後を評価する新しい方法だけでなく、予後に関する新しいデータが生まれたことに基づくものである(2)。その実例はすでに『TNM Supplement』(3) に提案として示されており、その後の支持を得て、今回のTNM分類に取り込まれた。
 第7版では、新たなアプローチとして従来の病期分類とは別にT、N、Mカテゴリー以外の予後因子を加えた「予後群分類」が導入された。この新しい予後群分類は、食道癌と前立腺癌で導入されている。今回の第9 版では、第8 版と同様に、“病期”という用語は病変の解剖学的進展のみが記載される場合に、そして“予後群”という用語は追加的な予後因子が含まれる場合に使用している。
 第9版における第8版からの変更箇所は、本文の左側に縦線を引き示してある。TNM分類を引用する場合には、曖昧さを避けるため、何年に出版された何版の分類かを明記することを奨励したい。
 TNMウェブページ(http://www.uicc.org)では、FAQ(たびたび寄せられる質問)やTNM分類に対する問合せや意見を送るための書式が提示されている。更新情報や正誤訂正もhttp://www.uicc.orgで確認することが推奨される。根拠に基づいた変更案は、審査のために提出できる。詳細および提案作成を容易にするチェックリストは、http://www.uicc.orgで入手できる。
 AJCCは、この『TNM 悪性腫瘍の分類』第9版と並行する形でのマニュアルは出版せず、一連のローリングアップデートを発行することになる。FIGOおよび対応するUICCのアップデート(http://www.uicc.orgで入手可能)に準拠し、2021年に子宮頸癌から開始された。
 子宮頸癌と同様に、この第9版の変更は、UICC TNMプロジェクト、AJCC、およびFIGOや胸部腫瘍領域におけるIASLCなどの専門家グループ、その他のグローバル腫瘍グループ、コンソーシアム、各国のTNM委員会との協議の結果である。

国際対がん連合〔Union for International Cancer Control(UICC)〕
31-33 Avenue Giuseppe Motta
1202 Geneva, Switzerland
https://www.uicc.org/

文献
(1) Brierley, J.D., Gospodarowicz, M.K., and Wittekind, C.(ed.)(2017). International Union Against Cancer(UICC). TNM Classification of Malignant Tumours, 8th ed. New York:Wiley.
(2) Gospodarowicz, M.K., O’Sullivan, B., and Sobin, L.H.(ed.)(2006). International Union Against Cancer(UICC):Prognostic Factors in Cancer, 3rd ed. New York:Wiley.
(3) Ch, W., Brierley, J.D., Lee, A., and van Eycken(ed.)(2019). International Union Against Cancer( UICC):TNM Supplement. A Commentary on Uniform Use, 5th ed. Oxford:Wiley Blackwell Publications.