TNM悪性腫瘍の分類 第8版 日本語版

がんの病期を記載・分類するための国際標準、7年ぶりの改訂版。がん診療に携わる医療者必携の1冊!

編著者 James D Brierley, Mary K Gospodarowicz, Christian Wittekind
訳 者 UICC日本委員会TNM委員会
定 価 4,620円
(4,200円+税)
発行日 2017/12/15
ISBN 978-4-307-00480-0

A5変判・276頁・図数:5枚

在庫状況 あり

がんの病期を記載・分類するための国際基準、7年ぶりの改訂版。p16陽性中咽頭癌、胸腺癌、膵神経内分泌腫瘍、脊椎・骨盤肉腫、頭頸部、胸部・腹部臓器および後腹膜の軟部組織肉腫の新分類が追加された。また、中低所得国においてがんの病期情報の収集を容易にするため、結腸および直腸、乳腺、子宮頸部、前立腺についてエッセンシャルTNMの章を新設し、小児腫瘍には簡略化した病期分類を掲載。がん診療やがん登録に必携の一冊。
序文
謝辞
TNM分類法の作成に参画した機関
TNM分類法の作成に参画したUICC委員会の委員
部位別編者
序論

頭頸部腫瘍
 口唇および口腔
 咽頭
 喉頭
 鼻腔および副鼻腔
 原発不明-頸部リンパ節
 上気道消化管の悪性黒色腫
 大唾液腺
 甲状腺
消化器系腫瘍
 食道(食道胃接合部を含む)
 胃
 小腸
 虫垂
 結腸および直腸
 肛門管および肛門周囲皮膚
 肝臓
 肝内胆管
 胆嚢
 肝門部胆管
 遠位肝外胆管
 Vater膨大部
 膵臓
 消化管の高分化型神経内分泌腫瘍
肺・胸膜・胸腺腫瘍
 肺
 胸膜中皮腫
 胸腺腫瘍
骨・軟部腫瘍
 骨
 軟部組織
 消化管間質腫瘍(GIST)
皮膚腫瘍
 皮膚癌
 頭頸部の皮膚癌
 眼瞼の皮膚癌
 皮膚悪性黒色腫
 皮膚のメルケル細胞癌
乳腺腫瘍
婦人科腫瘍
 外陰
 腟
 子宮頸部
 子宮内膜
 子宮肉腫
 卵巣、卵管、および原発性腹膜癌
 妊娠性絨毛性新生物
泌尿器系腫瘍
 陰茎
 前立腺
 精巣
 腎
 腎盂および尿管
 膀胱
尿道
副腎皮質
眼部腫瘍
 結膜癌
 結膜悪性黒色腫
 ぶどう膜悪性黒色腫
 網膜芽細胞腫
 眼窩肉腫
 涙腺癌
ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫
エッセンシャルTNM
小児腫瘍
 消化管腫瘍
 骨・軟部腫瘍
 婦人科腫瘍
 泌尿器系腫瘍
 眼部腫瘍
 悪性リンパ腫
中枢神経系
【第8版日本語版についての訳者前書き】

 本書は、UICC(Union for International Cancer Control, Geneva)が2017年に刊行した“TNM Classification of Malignant Tumours, 8th edition, Wiley Blackwell”の邦訳版で、今回もUICC日本委員会が翻訳刊行することとなった。2010年に第7版の邦訳版を刊行して、既に7年が経過したことになる。
 この間、UICCにおいてはAJCC(American Joint Committee on Cancer)との協議を重ねながら、第8版の準備を進めてきたが、そこにはTNM病期分類に対する基本的な考え方を含む根源的な議論が横たわっていて、これについてはまだ明確な方向性は示されていない。従来、がんの病期分類とは、がんの解剖学的な広がりを主腫瘍T、リンパ節転移N、遠隔転移Mによって評価して、その関数として一義的に病期(stage)が決定されるというものであった。すなわち、TNM分類で規定される病期とは、基本的にはがんの解剖学的な広がりを指すのであった。病期に関するこの定義は現在でも変わっていない。しかし、各患者個人の予後予測により重点を置くAJCCは、近年TNM以外の分子マーカーなどの新たな予後因子を加味して病期を決定することに積極的であり、その方向を模索し始めている。既に第7版においても前立腺(PSA)、軟部腫瘍(histological grade)、甲状腺(年齢)などの一部にそのような改訂がなされていて、方向性としてはこれらをすべての臓器に拡大しようとするものである。その結果、UICCの出版する本書においてさえ、各章には、予後因子グリッドとして有望な予後因子の表が加えられている。第9版に向けた改訂ではさらにこの方向性が強まると思われる。ただし、こういった予後因子がTNM病期分類の一部として定着している臓器は極めて限られていることに注意喚起しておきたい。例えば、肺癌は、従前通り、完全な解剖学的なTNM病期分類が踏襲されている。
 その一方では、新しい試みとして、エッセンシャルTNMを挙げなければならない。がん登録が世界規模で進むなか、最低限度のTNMを規定してこれを入力してもらい、欠損値の少ないデータベースを完成させようというものである。今後の使い勝手に期待したいところである。
 今回の翻訳も、UICC日本委員会TNM委員会の事業として行い、全体のとりまとめと序論の翻訳は、UICC TNM Prognostic Factors Core Group(Geneva)委員の淺村尚生(慶應義塾大学)とUICC日本委員会TNM委員会委員長の佐野武(がん研究会有明病院)が担当し、各臓器については別掲する専門家の先生に分担してお願いすることになった。この場をお借りして各先生方に深く感謝申し上げたい。翻訳を担当していただいた先生方からは、日本国内で広く用いられている各臓器の“取扱い規約”の“TNM分類”との差異についても、いくつかのご指摘をお受けした。しかし、翻訳の原則として、あくまでも原著に忠実に翻訳することとし、あえて脚注などは設けず、むしろUICCと取扱い規約の間にある差異が明確になるようにした。
 UICC日本委員会としては、UICCの規定するTNM病期分類がより広く、日本のがん臨床に浸透することを祈念して、本書を世に送り出すこととした。

2017年11月
野田 哲生
淺村 尚生
佐野 武



【序文】

 この『TNM悪性腫瘍の分類』第8版は、多くの腫瘍臓器において第7版をそのまま継承している。しかし、新たに病期分類が定義された腫瘍や臓器がある一方、改訂が行われた臓器もある。これは、時代をこえてTNM分類が安定的に維持されるべきであるというフィロソフィーに従うものである。これらの改訂ならびに加筆は、予後を評価する新しい方法だけでなく、予後に関する新しいデータが生まれたことに基づくものである。その実例はすでに『TNM Supplement』 に提案として示されており、その後の支持を得て、今回のTNM分類に取り込まれた。副甲状腺腫瘍および傍神経節腫に対する新たな提案は、『TNM Supplement』の次の版に掲載される予定である。
 第7版では、新たなアプローチとして従来の病期分類とは別にT、N、Mカテゴリー以外の予後因子を加えた「予後群分類」が導入された。この新しい予後群分類は、食道癌と前立腺癌で導入されている。今回の第8版では、“病期”という用語は病変の解剖学的進展のみが記載される場合に、“予後群”という用語は追加的な予後因子が含まれる場合に使用している。
 第8版における第7版からの変更箇所は、本文の左側に縦線を引き示してある。TNM分類を引用する場合には、曖昧さを避けるため、何年に出版された何版の分類かを明記することを奨励したい。
 インターネット上のTNMホームページ(http://tnm.uicc.org)では、FAQ(たびたび寄せられる質問)やTNM分類に対する意見や問合せを送るための書式が提示されている。
 UICCのTNM予後因子検討事業(TNM Prognostic Factors Project)では、TNM分類を改善するための提案に対する評価制度を設けてきた。本制度は二通りの方法による継続的、かつ体系的な評価を目指している。すなわち、(1)研究者からの正式な提案を見直すこと、および(2)TNM分類の改善に関連する文献を毎年検索するというものである。正式な提案や文献検索の結果は、TNM予後因子検討委員会のメンバーばかりでなく、UICCの専門委員により評価、検討される。各国のTNM委員会もこれらの評価、検討には参画している。提案が一定の書式に則ってできるように提案内容の詳細やチェックリストは、http://www.uicc.orgで入手することができる。