がん放射線治療と看護の実践 部位別でわかりやすい! 最新治療と有害事象ケア

最新の放射線治療とその有害事象ケアを部位別にわかりやすく解説

編 集 井上 俊彦 / 山下 孝 / 齋藤 安子
定 価 4,180円
(3,800円+税)
発行日 2011/11/10
ISBN 978-4-307-07087-4

B5判・328頁・図数:95枚・カラー図数:90枚

在庫状況 あり

進化しつづけるがん放射線治療と、その有害事象ケアを部位別にわかりやすく解説した。それぞれに携わる医師、看護師、放射線技師、医学物理士の目線で、最新情報を紹介している。また、放射線治療につき物の難解用語については付録の用語解説集ですぐに確認できるのが特徴。放射線治療と有害事象ケアの“今”を習得できる実用書である。

『序』より
 がん治療は半世紀の間に大きく変わりました。50年前に受けた学生時代の講義の中心は感染症でした。1950年代前半にがんが三大死因の一つになったのを受けて、1962年以降がんセンター、成人病センターが各地に設立されました。1980年にがんが死因の第一位になって、さらに事情が変わりました。1984年以降3次にわたる対がん10か年戦略が進められてきました。この間、ケア中心からキュアを含めた総合的がん医療への変換が図られました。
 がん治療法選択の決定権を患者にゆだねる時代です。患者のためのチーム医療が必要です。放射線治療の比重が大きくなりました。高精度治療装置と周辺機器の進化は線量増を可能にし、治癒率を向上させました。反面、晩期有害事象の一部が再登場してきました。高度のキュアには、新しいケアが必要です。
 放射線治療だけでなく、画像診断、腫瘍マーカ、内視鏡手術、外来化学療法、分子標的治療薬剤、造血幹細胞移植などもがん診療現場に大きな変化をもたらしました。再生医療が放射線治療に生かされる時代が来れば、キュアとケアは想像もつかない変化を見せます。
 本書の狙いは最新の放射線治療によるキュアと患者ケアを理解・実践するための情報を提供することです。決して、マニュアルやガイドラインの暗記を強制するものではありません。そのことはマニュアルやガイドラインが数年ごとに書き換えられることからも分かります。ある時点で完全だと思われた標準治療に基づいて治療を受けた患者が5年後10年後にその治療の影響で悩まされている実態があります。医療現場における新技術導入で標準治療は刻々と変貌します。患者を眼の前にしたときに、個々の特異性を見抜き考える基礎力が必要です。Learn Moreの欄もその意図からです。放射線治療の対象疾患をすべて網羅しなかったのも同じ考えです。理解を深めやすいように、巻末1節「わかりやすい用語解説」を設けました。本文中からの対応のために通し番号を用語につけました。活用してください。
 本書の学習を通して次代のがん放射線治療のキュアとケアの新たな接点を考える一里塚にしていただくことを望みます。常に前向きに取り組む姿勢を忘れないでください。
第I章 総論
1節 がん治療における放射線治療の役割
 1.がんとは
 2.がん対策・がん対策基本法・がん対策推進基本計画
 3.最先端のがん診断と治療法
 4.治療前評価
 5.効果判定
 6.集学的治療における放射線治療・チーム医療
 7.放射線治療の特徴
 8.放射線治療の種類と治療方針
 9.根拠に基づいた医療、標準治療法
 10.インフォームド・コンセント、危機管理

2節 放射線生物学の最先端トピックス
 1.ゲノムとは
 2.がん遺伝子とがん抑制遺伝子、発がん
 3.ゲノム情報を利用した抗がん療法の開発
 4.DNAチップ
 5.多型頻度解析
 6.個別化医療

3節 話題の放射線治療装置
 1.外部放射線治療装置
 2.小線源治療装置
 3.粒子線治療
 4.治療計画・線量計算・治療計画の評価
 5.放射線治療の品質管理・品質保証
 6.安全管理・教育
 7.放射線治療データベース

4節 放射線治療装置と関連機器の基本技術
 1.最先端の高精度放射線治療
 2.周辺装置
 3.患者固定と位置決めの進化
 4.呼吸性移動対策の種類

5節 看護からみたがん放射線治療患者のキュアとケア
 1.チーム医療とケア
 2.放射線治療にかかわる看護師の役割
 3.がん相談支援センター
 4.急性期・晩期有害事象のケアの基本
 5.小児のケア
 6.高齢者のケア

6節 がんの疫学
 1.がん罹患率と死亡率の年次推移と将来予測
 2.生存率と相対生存率
 3.有病者数
  Learn More:直接法、生命保険数理法、Kaplan-Meier法による実測生存率の計算例

第II章 各論
1節 がんの放射線治療
 A.脳腫瘍
 B.頭頸部癌
 C.食道癌
  Learn More:GERDと腺癌
 D.肝・胆・膵癌
 1.肝癌(肝細胞癌)
 2.胆道癌・膵癌
 E.肺癌
  Learn More:GGOとは
 F.骨・軟部腫瘍
 G.乳癌
  Learn More:乳癌の画像診断
 H.子宮頸癌
  Learn More:若年者子宮頸癌、HPV、ワクチン
 I.前立腺癌

2節 放射線治療の看護
 1.患者心理
 1.がん集学的治療から緩和ケア
 2.がん医療と在宅医療
 3.がんの臨床経過と患者の心のケア
 4.家族のケア
 2.有害事象対策
  A.頭部ケア
  B.口腔・咽頭・皮膚ケア
  C.消化器ケア
   Learn More:経腸栄養
   Learn More:放射線治療の流れに沿った看護のポイント
  D.呼吸器ケア
   Learn More:既存の呼吸器治療に対する放射線治療時のケア
  E.骨・軟部組織ケア
   Learn More:緩和医療
  F.乳癌ケア
  G.骨盤ケア
  H.栄養対策
  I.看護計画・クリティカルパス

付録
 1節 わかりやすい用語解説
 2節 資料(パンフレット・問診票)

索引