PT・OTのための実用・実践コミュニケーション術 身につけておきたい知識と技能

医療現場での接遇もメールの対応も、これ1冊でコミュ力向上!

監 修 日本保健衛生教育学会
編 集 金田 嘉清 / 櫻井 宏明 / 田辺 茂雄 / 小山 総市朗
定 価 3,520円
(3,200円+税)
発行日 2024/02/10
ISBN 978-4-307-75070-7

B5判・260頁・図数:69枚

在庫状況 あり

初対面で悪い印象を与えないためには?信頼を失わないためには?社会人、医療者としてのふるまいの基本を身につけ、接遇のポイントを習得することで、医療現場で周囲の信頼を失うことを防ぎ、円滑なコミュニケーションを行うことができます。「報告・連絡・相談」など社会人の基本から、「患者・同僚とのコミュニケーション」など医療現場での接遇のポイント、「電話・メールへの対応」など実践的な内容までを網羅した1冊。
1 章 医療技術者としての自覚とふさわしい態度
A 良きPT・OT を志す者の心構え
 1.自分はこれからどのような医療者になるか
 2.医療技術者の役割とは
 3.対象者に寄り添う
 4.謙虚な気持ち
 5.誠実で素直
 6.臨床家の本望
 7.厚い壁に挑む勇気
 8.知恵を絞り続ける
 9.ひとりで悩まない
 10.相手の立場を理解する
 11.仕事に誇りをもつ
B 良き社会人としての基本姿勢
 1.報告・連絡・相談
 2.お辞儀
 3.学び続ける
 4.チームの一員として/仲間をつくる
 5.他者への配慮
 6.言動に責任をもつ
 7.他者を頼る力
 8.非を認める
 9.秘密を守る
 10.影響力を知る
 11.感情と事実を分ける
C 良き医療技術者としてのふるまい方
 1.挨拶をする−医療現場における適切な接遇
 2.医療現場における身だしなみ
 3.清潔を保つ
 4.時間の遵守・調整
 5.明瞭な返事
 6.自己を制御する
 7.配慮して行動する
D 実践的なコミュニケーション術
 1.表情
 2.発話の速度、抑揚
 3.視線
 4.敬語(尊敬語、謙譲語、丁寧語)
 5.興味をもつ・もたせる
 6.伝える力
 7.傾聴
E 知識の定着のために
 1.アクティブラーニング
 2.確認問題

2 章 医療技術の専門家としての技能とその評価方法
A 専門家の技能とは何か
 1.技能とは何か
 2.専門家として
 3.型を重んじて、型から本質を学ぶ
 4.真似ることからはじめる
B 客観的にコミュニケーション技能(型)を測る客観的臨床能力試験(OSCE)
 1.何をどのように測るか
 2.技能の背景にある理論の体得
 3.模擬患者を通じて学ぶ

3 章 臨地実習におけるコミュニケーション
1.指導者とのコミュニケーション
2.患者とのコミュニケーション
3.関連職種とのコミュニケーション
4.患者家族とのコミュニケーション

4 章 就職後におけるコミュニケーション
1.患者、患者家族とのコミュニケーション
2.上司・先輩とのコミュニケーション
3.後輩とのコミュニケーション
4.実習生とのコミュニケーション
5.関連職種とのコミュニケーション
6.他部署職員とのコミュニケーション
はじめに

 わが国において少子高齢化が進展する中、医療・保健・福祉の現場で多様な健康ニーズが生まれ、その数も増加し続けています。その社会の変化と要求に対応するため、理学療法士(physical therapist:PT)と作業療法士(occupational therapist:OT)が速やかに配置されていきました。今後のPT・OT のさらなる発展に向けては、より能力の高いPT・OT の育成が養成校に求められています。
 良き医療者となるには、礼節を重んじること、誠実かつ利他的であること、前向きな態度であること、円滑でしなやかなコミュニケーションがとれること、人のためになる喜びを知ること、などが礎となります。本書は、PT・OT を志す方、または新卒者に向けて、良き医療者としての心構えや基本的な姿勢、ふるまい方、コミュニケーション術、そして臨床実習や就職後の場面で役立つ具体的かつ模範となるコミュニケーションのあり方を提供し、その能力獲得を支援することを目的としています。加えて、これらの知識を身につけておくことで、実習や就職後の臨床場面での新たな気づきにつながり、知っていてよかったと感じてもらえればとも考えています。
 第1 章では、「自分はこれからどのような医療者になるか」という問いかけからはじまり、医療者の役割と対象者への寄り添い方を考えることで、良き医療者としての自覚を育む支援をします。また、安心感を与える医療者として、謙虚さと誠実さをもち、知識と経験の向上に努め、壁に立ち向かう勇気を養う必要性にも触れます。実践的なコミュニケーション術として、表情や会話の速度、敬語の使い分け、興味をもつ姿勢なども考えます。また、傾聴力を磨き、患者や関係者とさらに深い信頼関係を築く方法も示します。
 第2 章では、医療技術の専門家としての技能と評価方法を考えていきます。技能とは何か、型を重んじて本質を学ぶ方法について考え、卒前教育・卒後研修で広く用いられている客観的臨床能力試験(objective structured clinical examination:OSCE)を題材に、コミュニケーション技能を改めて振り返り、良きPT・OT に求められる態度を解説します。専門性の基盤は態度・知識・技術であることは言うまでもありませんが、態度と技術を正しく評価するためにはOSCE が欠かせません。基礎・基本の定着の先に応用の獲得がありますが、その定着に向けては各段階での正しい能力の評価が必須となります。
 第3 章では、臨地実習におけるコミュニケーションに焦点をあてます。指導者とのコミュニケーションや患者との接し方を学びながら、関連専門職種との連携や患者家族との信頼関係の築き方を考えます。臨地実習は、理論だけでは体得できない実践的なコミュニケーションを養う重要な場です。臨地実習という限られた時間や環境の中で、最大限の学びを得るためにも、相手や状況に合わせたコミュニケーションスキルを身につけておきましょう。
 第4 章では、就職後におけるコミュニケーションの重要性を考えます。患者やその家族、上司・先輩や後輩、実習生とのコミュニケーションまで、様々なシチュエーションを想定して例示しています。関連専門職種や他部署職員との円滑な連携が業務に不可欠であることを理解し、多様な人々と適切なコミュニケーションを実現する力を磨いてください。
 本書は、良きPT・OT を目指す、または活躍しはじめた皆さんに向けた、実用的なコミュニケーションの教本です。皆さんの医療者としての自覚を育み、他者から信頼される良き医療者としての道を歩むための指南書になることを、執筆者一同願っています。

2024年2月 
藤田医科大学
金田 嘉清 櫻井 宏明 田辺 茂雄 小山 総市朗