PT・OTのための臨床実習の鉄則 実習準備からレポート作成まで

指導者が学生に知ってほしい最低限のルールとテクニックを解説!

編 著 下田 信明
定 価 3,080円
(2,800円+税)
発行日 2020/11/30
ISBN 978-4-307-75061-5

A5判・256頁・カラー図数:15枚

在庫状況 あり

不安でいっぱいな臨床実習も最低限押さえておくべきルールで乗り越えられる! 本書はまず「情報収集テクニック」「コミュニケーション術」「セルフマネジメント法」など、すぐに実践できるノウハウを具体的に解説します。また実践的なテクニックとして、5章では対象疾患の代表である「脳卒中の初期評価」について写真を多用して解説し、6章では21施設の理学療法士や作業療法士の臨床思考過程を知るために「実習報告書例」を示しました。

執筆者一覧

第1章 実習前準備
 1 実習開始2週間前に部屋を片付ける
 2 生活・睡眠リズムの修正、体調管理
 3 荷物1個原則
 4 実習に欠かせない物をそろえる
 5 服装―行き帰りの私服と実習着
 6 髪型・髪の色など
 7 交通機関の確認
 8 PC・プリンター・スマートフォンにおける備え
 9 各種書類・デイリーノート・報告書ファイルの事前作成
 10 データファイルの管理方法
 11 時間・スケジュール管理方法
 12 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の使用を最小限にする
 13 守秘義務
 14 「臨床実習の手引き」を熟読する
 15 講義で興味が湧いた事柄1つについて深く勉強する
 16 すべての実技練習(介助、検査・測定、治療・指導)が必要だが、せめて「血圧測定」と「車いす⇔ベッドの移乗」だけは適切・安全に行えるよう練習する

第2章 平静なこころの保ち方
 1 実習生は病院・施設職員にとって「異物」
 2 実習前や実習期間中の緊張・不安は当たり前の正常反応
 3 実習指導者も実習期間中は普段よりも緊張している
 4 他人をほめることは難しく、ミスや不十分な点を指摘することは簡単
 5 「指導する側は普通のトーンで話しているつもりでも、受け手側は強いトーンととらえてしまうのが通常」ということを知る
 6 人は普段、そんなに笑顔ではない
 7 多くの実習指導者は自分の仲間を育てようと一生懸命である
 8 睡眠不足は平静なこころを保つための最大の敵
 9 運動は平静なこころを保つために大いに役立つ
 10 毎日30分、没頭できる作業・活動をし、休日の楽しみを用意する
 11 つらい時に考えること(思考内容)は本来の自分の考えではない可能性が高い
 12 つらい時に考えること(思考内容)は被害的になるものだ(被害的思考)
 13 実習の単位が取得できず留年しても、人生は続く
 14 時にはきちんと休むこと(休学など)も必要
 15 学生が思う以上に、多くの教員は学生の人生を援助することに一生懸命

第3章 実習施設に早く慣れるための10の方法
 1 実習施設のホームページで施設の役割や概要を調べる
 2 施設名や実習指導者氏名を「医学中央雑誌」で検索する
 3 職員・対象者の名前をできるだけ早く・多く覚える
 4 なじみの対象者さん・患者さんをつくる
 5 リハビリテーション室の配置を覚え、動線を把握する・思い描く
 6 施設全体の部署や部屋、位置関係を覚える
 7 リハビリテーション室(理学療法室、作業療法室)の物品やその片付け場所・方法を覚える
 8 毎日自分が手伝える雑用を1つ見つける
 9 落ち着けるトイレ(個室)を見つける
 10 昼休みに散歩できる場所・コースを見つける

第4章 コミュニケーションで役立つ「常識」と「会話術」
 1 他人との言語的コミュニケーションほど人を緊張させ、難しいことはない
 2 挨拶の常識
 3 敬語の常識
 4 返事の常識
 5 言い訳の常識
 6 人は話していると気分がよくなる―話すよりも「聞く」
 7 人は自分が好きなことを話したがる―好きはきっかけになる
 8 人は自慢話をしたがる―それで元気になればいい
 9 人は自分の名前や出身地について話したがる―自分のル−ツを話したい
 10 人は自分が生きてきた時代のことを話したがる―相手の軌跡を知る
 11 人は自分の疾患とともに、病いを話したがる―大事なのは病いを聞くこと
 12 人は質問されるとうれしくなる―臆することなく質問を
 13 道聞かれ顔でいる
 14 人には触れてほしくない話題がある―相手の反応をみる
 15 対象者や実習指導者と一緒に作業や運動をする―自然に楽しく
 16 対象者への失礼な態度の実例

第5章 脳卒中初期評価の実際
 1 事例
 2 理学療法
  1)評価内容
  2)評価の実際
  1日目
   車椅子座位姿勢の確認
   挨拶・自己紹介
   病態・身体の認識、見当識の確認
   身体機能の評価
   基本動作
   立位保持
   歩行
   移乗動作
  2日目
   オリエンテーションとバイタルサインの確認
   ベッド上での起居動作
   背臥位から端坐位へ
   身体機能の評価
   深部腱反射
   感覚検査
   麻痺側下肢運動機能
   その他の検査
 3 作業療法
  1)評価内容
  2)評価の実際
  1日目
   来室
   挨拶・自己紹介
   ベッドへの移乗
   血圧
   脈拍数
   対象者自身による麻痺側肩関節屈曲他動運動
   腱反射(上肢)
   病的反射(上肢)
   筋緊張(上肢)
   ROM(上肢)
   随意運動[12段階式片麻痺機能テスト(上田法):上肢]
   腱反射(下肢)
   病的反射(下肢)
   筋緊張(下肢)
   ROM(下肢)
   随意運動[12段階式片麻痺機能テスト(上田法):下肢]
   車椅子への移乗
   随意運動[SIAS(脳卒中機能評価法)]
   筋力:非麻痺側
   血圧・脈測定(車椅子座位にて)
  2日目
   観察の視点
   血圧・脈測定
   感覚検査
   左半側空間無視 机上検査
   縦手すりを用いての立ち上がり
   手洗い

第6章 実習報告書例
 1.理学療法
  1 理学療法 脳卒中(急性期):大学病院
  2 理学療法 脳卒中(回復期):回復期リハビリテーション病院
  3 パーキンソン病:介護老人保健施設
  4 復職に向け屋内歩行および上肢機能改善を目指した不全頚髄損傷(C5):リハビリテーション病院
  5 左大腿骨頚部骨折にて人工骨頭置換術を呈した症例(人工骨頭置換術後):一般病院
  6 変形性膝関節症・フレイル:通所リハビリテーション
  7 膝前十字靱帯損傷(再建術後):一般病院
  8 急性心筋梗塞:大学病院
  9 慢性閉塞性肺疾患の急性増悪により入院となった症例:一般病院
  10 脳室周囲白質軟化症による痙直型脳性麻痺(両麻痺)の一症例:リハビリテーションセンター
 2.作業療法
  1 脳卒中(回復期):回復リハビリテーション病棟
  2 脳卒中(生活期):訪問リハビリテーション
  3 頚髄損傷:リハビリテーション病院
  4 末梢神経損傷:一般病院
  5 橈骨遠位端骨折:一般病院
  6 廃用症候群:一般病院
  7 認知症:大学病院認知症病棟
  8 認知症:介護老人保健施設
  9 統合失調症:精神科病院
  10 うつ病:一般病院精神科
  11 自閉症:児童福祉法施設 障害児通所支援事業所(医療型/福祉型)
第7章 他者を理解し、セラピスト人生を楽しむために役立つ本・映画案内
 1 学生におすすめの本
  科学・技術をテーマとしている本
  リハビリテーション・作業療法をテーマとしている本
  進化論をテーマとしている本
  人間社会をテーマとしている本
  幕末史をテーマとしている本
  病気や障害に関する体験をテーマとしている本
  研究のヒントを得るために役立った本
 2 学生におすすめの映画
  疾患や障害をテーマとしている映画
  差別や偏見をテーマとしている映画
  その他、実習生へのおすすめ映画


 理学療法士、作業療法士養成教育において、臨床実習は最も重要な科目の1つです。それとともに、学生にとって最もストレスフルな科目となっているようです。実習継続困難になったり、単位を取得できなかったりしている実習生 も少なくありません。その理由として、「実習前や実習中の生活の仕方や考え 方についての工夫を知らない」「評価や臨床思考の実際について十分に学習し ていない」ことが挙げられます。その状況を少しでも改善できないだろうかと 考え、本書を企画しました。
 本書の第1章〜第4章には、充実した実習にするための具体的工夫(事前準備方法、平静なこころの保ち方、施設に慣れるための工夫、コミュニケーションの工夫)を記載しました。

 第5章では、対象疾患の代表である脳卒中に対する評価について、写真を多用して解説しました。第6章では、理学療法士、作業療法士の臨床思考過程を知るために報告書例を示し、第7章では、長い専門職人生を楽しむために参考となる書籍・映画を紹介しています。

 本書は、実習生への応援歌のつもりで編集・執筆しました。本文中にも記載しましたが、多くの臨床実習指導者や教員は、実習生に「楽しい、安全な、充実した」実習生活を送って欲しいと思っています。そのことは実習生には実感できないのかもしれません。親になってみなければ親心がわからないように、実習生も実習指導者や教員になってみなければその気持ちはわからないのかもしれません。しかし、多くの実習指導者や教員は、心から実習生を応援したいと思っているのです。本書を読むことで、実習生がそのようなことを少しでも感じとってもらえればと思っています。

 本書が実習生にとって、少しでも楽しい、充実した実習を経験できるための一助になることを願っています。

 最後に、臨床や教育・研究でお忙しい中執筆いただいたPT・OTの先生方、編者のつたない企画を実現可能なところまで引き上げていただき、原稿作成開始後は編者の気が付かない細かいところまでお世話くださった金原出版 石黒 大介様をはじめ、編集部の皆さまに感謝いたします。

2020年10月 下田 信明