PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力

会話中心のストーリーでPT・OTのための現場のコツがわかる!

著 者 西尾 幸敏
定 価 2,376円
(2,200円+税)
発行日 2017/01/20
ISBN 978-4-307-75049-3

A5判・176頁・図数:20枚

在庫状況 あり

ベテランが長年培ってきた“コツ”が会話中心のストーリーでザックリわかります! 達人のようなリハビリを実践するには、知識・技術・心意気を三位一体にしないとなりません。本書では、「患者や介助者、他職種とのコミュニケーションのとり方」「科学的根拠と経験との使い分け」「学生時代に学んだことの活用法」などを具体的かつ簡単に解説します。新人PT・OTはもちろん、後輩を指導するリーダーにも最適な一冊です。
はじめに
人物紹介

第1話 「科学的根拠」と「経験」はどちらも大事!

第2話 「CAMR と足場作りの技術」

第3話 「最初にうまくいった方法」をいつまでも繰り返さない!

第4話 10分でざっくり学ぶシステム論とCAMR

第5話 実りある繰り返し課題はこう活かす

第6話 学んだ技術と考え方を現場で実践する

第7話 これだけは知っておきたい「運動課題設定」

第8話 失禁があって家に帰れない

本書のまとめ
CAMRのルール
ルール1 原因を切り離す
ルール2 成功経験こそ大事!
ルール3 いつでも「運動余力」を豊富にしよう
ルール4 セラピストの主な仕事は「課題設定」!
ルール5 「より良い状況変化」を繰り返す
ルール6 「その時、その場でできること」を積み重ねる

CARMならではの治療技術
技術1 状況評価
技術2 足場作り
技術3 課題設定

達之介さんと過ごし過ごした1年を振り返って
おわりに
セラピストのみなさん、臨床で楽しく仕事をしていますか?
 「もちろん!」という読者の方もいると思いますが、ほとんどのセラピスト、特に新人さんにとっては必ずしもそうではないでしょう。医療保険や介護保険の制度がある以上、施設の収入を増やすためにできるだけたくさんの訓練を行うように言われているはずです。新人のみなさんは慣れない訓練に日々追われ、いつの間にか“流れ作業” のように仕事をしている方も多いと思います。
 また現場で出会うリハビリは難問だらけです。学校で学んだ知識と技術だけでは対応できないことが普通です。「痛い」とか「動かない」と訴えられても「どうしようもない」と諦めたりしていませんか? そしていつの間にか時間に追われ、患者さんの問題を解決できないまま無力感にとらわれてしまい、「リハビリで少しでも患者さんとその家族のために働きたい!」という目標を忘れてしまっていませんか?
 実はリハビリの仕事を楽しくするコツがあります!それは新しい問題解決の方法を身につけることです。その時、その場でより良い状況変化を起こす方法を身につけましょう。毎日1人の患者さんで良いので、その方法を実践し、患者さんの問題解決や目標達成を少しずつでも積み重ねて熟練していくのです。
 新しい問題解決の方法は「医療的リハビリテーションのための状況的アプローチ(Contextual Approach for Medical Rehabilitation)」といい、頭文字をとってCAMR(カムル)と略します。CAMRはシステム論を基にした日本生まれのアプローチで、いままでみなさんが学校で習ったアプローチの弱点を補うものです。
 聞き慣れない言葉が出てきて、難しそうと思われますか?
 でも大丈夫!
 本書ではストーリー形式でわかりやすく説明していきます。登場人物たちの会話をながめるだけでも、システム論やCAMRの考え方、アプローチが自然に理解できるようになっています。
 まずはとにかく読み進めてみましょう! 日々の仕事で活かせるヒントや知識、技術が満載です。明日からの臨床が変わります!
 なお、この本の舞台は筆者の経験から介護老人保健施設が選ばれていますが、本書で紹介する考え方は急性期・回復期の病院でも十分に応用できます。
 また介護保険制度を利用される方は「患者」ではなく「利用者」と呼ばれますが、リハビリの対象者としては「患者」の方がなじみ深いと思いますので、本書ではあえて「患者」と呼びます。また本書で「セラピスト」と呼ぶ場合、理学療法士・作業療法士を指します。

2016年12月
西尾 幸敏
 この30年間、いろいろなセラピストを見てきました。知識は豊富だけど口ばかりのセラピスト。心意気はあるが工夫もなく突っ込んでは失敗を繰り返し、時には自分の体を痛めてしまうセラピスト。技術を学び技術を向上させることだけに夢中のセラピスト。なんの意気込みも持たず、ただ流れ作業的に仕事をこなすセラピスト……。
 また素晴らしいセラピストたちも見てきました。知識や技術だけでなく、心意気と工夫に溢れたセラピストたちです。
 正直、僕のセラピスト人生は、知識も技術も心意気も工夫もなく始まりました。ただ毎日の仕事を流れ作業的にこなしていたのです。そんな僕が少しずつでも成長できたのは、周りにいらっしゃった素晴らしい先輩セラピスト達のおかげだと思っています。
 彼らは明らかに、学校で習ったものとは違う考え方や方法で訓練を進めていました。より良い訓練効果を生み出すために、現場で試行錯誤を重ねるうちに「自分なりの方法論」を工夫してきたのでしょう。
 ただこのように、臨床で経験的に生み出された考え方や方法はあまり言葉にされることがなく、そのセラピストの個人的経験、個人的財産として消えてしまいます。どうしてそんなことをするのかを聞いても、なかなか言葉にはなりません。おそらく本人も容易に言葉にはできないのでしょう。「なんとなく、そうすると良かった」と言うばかりです。
 現場には言葉にはならない知識や技術や方法論があるのです。しかしそれは人には伝えられないのです。僕は以前からとても惜しいことであると思っていました。
 そして僕は自分なりにいろいろな経験を重ね、システム論と出会ってCAMRを組み立てるうちに、そんな先輩セラピスト達の見つけた方法論がわずかでも理解でき、言葉にできるようになったのではないかと思っています。そんないろいろな想いも本書に込めています。今のところ、まだまとまりきれていないと思いますが、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
 「リハビリは知識と技術だけでなく、心意気と工夫でやるものだ!」とつくづく思います。困難な問題にぶつかっても、利用可能な資源を探り治療方略を工夫することを諦めないで欲しいのです。
 本書を上梓するにあたっては、たくさんの方々のお世話になりました。CAMR研究会の秋山真理子さん、田上幸生さん、上田法のシニア国際インストラクターの江藤隆夫先生にはたくさんの意見やアイデアをいただきました。ありがとうございました。
 同じ職場の同僚には、日頃からいろいろと支えてもらっています。とくに病院や介護保険事業で出会ったたくさんの患者様や利用者様に支えられ、楽しく仕事ができたことで、本書は完成できたと思います。ありがとうございます。
 本書は元々、『説明の言葉 解決の言葉 諦めの言葉―臨床現場での諦めの言葉をなくすために』という堅苦しいテーマと内容の原稿でした。僕はそれを医療系の出版社にせっせと送りました。結果、各出版社から「売れない本です」とつれなく断られ、その数は11社に上ります。
 そしていよいよ僕には自費出版しか手がなくなったと思いました……。
 まさにその時、金原出版の編集の石黒さんから「わかりやすく書き換えてみませんか?」と声をかけていただいたのです。若者の本離れや最近の出版業界の流れなどを説明してもらい、会話を中心に読み進めていくストーリー形式という、無茶なくらい大幅なリライトを提案されました。結果、もう一度気力を振り絞って書き直し、めでたく出版の運びとなりました。特に御礼申し上げます。押忍!

2016年12月 西尾 幸敏