結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫診療ガイドライン 2016年版

診断から、経動脈的な塞栓術や手術療法、薬物療法の治療を解説。

編 集 日本泌尿器科学会 / 日本結節性硬化症学会
定 価 2,200円
(2,000円+税)
発行日 2016/08/15
ISBN 978-4-307-43059-3

B5判・56頁

在庫状況 なし

結節性硬化症は、他臓器に形成異常や腫瘍を発生する常染色体優性の遺伝性疾患であり、腎は多くの場合、血管筋脂肪腫を生じ、近年では治療体系が大きく変わりつつあります。本ガイドラインは「疫学」や「診断」、出血に対する経動脈的な塞栓術や手術療法など従来の治療法に加え、mTOR阻害剤(エベロリムス)による「治療」を解説します。泌尿器科医、小児科医、皮膚科医、患者さんにも役立つ一冊です。

『結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫診療ガイドライン』2016年度版作成の手順
■結節影硬化症の疫学(総論)
CQ1 結節性硬化症の有病率はどれくらいか?
CQ2 結節性硬化症患者のうち何%が腎病変を有し、腎腫瘍は何歳くらいから発生し、どのような経過をたどるか?
■症状
CQ3 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の診断に有用な症状はなにか?
CQ4 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫において、緊急検査や処置を必要とする症状はなにか?
■検査
CQ5 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫に対して、治療を開始する指標となる検査所見はなにか?
CQ6 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫のサーベイランスでは、どのような検査をどれくらいの頻度で行うべきか?
■遺伝子診断
CQ7 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫において遺伝子診断は必要か?
■画像診断
CQ8 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫はどのような画像検査で診断するのか?
CQ9 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫確定診断後の経過観察として、どのような検査が推奨されるか?
CQ10 結節性硬化症患者に対する腎のモニタリングはどのくらいの頻度で必要か?
■手術療法 
CQ11 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫に対する手術療法はどのような症例で推奨されるか?
■塞栓術
CQ12 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の予防的腎動脈塞栓術はどのように行うか?
CQ13 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫が破裂した場合の腎動脈塞栓術はどのように行うか?
■薬物療法
CQ14 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫に対するエベロリムスの使用はどのような場合に推奨されるか?
■小児薬物療法
CQ15 小児腎血管筋脂肪腫の治療にエベロリムスは推奨されるか?
 結節性硬化症は、多臓器に形成異常や腫瘍を発生する常染色体優性の遺伝性疾患である。腎は多くの場合、血管筋脂肪腫を生じる。泌尿器科領域ではしばしば巨大化した腫瘍に遭遇するが、治療法としては、出血に対する経動脈的な塞栓術や手術療法が選択されてきた。しかし、3年前にエベロリムスというmTOR阻害剤が上市され、その治療体系は大きく変わりつつある。EXIST-2 試験の長期フォローデータも報告され、その有効性はほぼ確立したといえるが、副作用対策、長期にわたる使用における中止や再開のタイミングに関してはまだまだ不明な点が多く、使用にあたっての疑問は尽きない。
 現在、『結節性硬化症の腎血管筋脂肪腫に対するガイドライン』は2008年に日本皮膚科学会雑誌に掲載されたものしかないのが現状である。本ガイドラインは、このような状況下で、日本結節性硬化症学会の理事長である樋野興夫先生から「結節性硬化症で苦しんでいる患者様あるいはその家族のために、エベロリムスによる薬物治療を含めた診療ガイドラインを是非作成してほしい」と依頼を受けたことを契機として、作成に取り掛かったものである。作成にあたっては、日本泌尿器科学会と日本結節性硬化症学会が共同で作業を行うこととなった。
 エベロリムスの使用に関しては、わが国では3年を経たばかりで長期投与の成績や副作用に関する報告も十分とはいえない。また、今回本ガイドラインの作成にあたっても、エビデンスレベルの高い報告は少なく、診療ガイドラインとしてはまだまだ未熟であるといえるが、結節性硬化症の治療に取り組む医療関係者、また疾患に苦しむ患者さんやその家族の方々のために少しでも役立てて頂けることを切に願っている。
 なお、本ガイドライン作成の作成期間中に『Mindsの診療ガイドライン作成の手引き』が改訂されたが、本ガイドラインでは2007年版に準じてエビデンスレベルを付けていることをお断りしておく。

2016年7月
結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫診療ガイドライン
作成委員長
野々村 祝夫