遺伝性難聴の診療の手引き 2016年版

遺伝性難聴の遺伝子診断と治療を詳説する初めての手引き書!

編 集 日本聴覚医学会
定 価 3,080円
(2,800円+税)
発行日 2016/01/20
ISBN 978-4-307-37113-1

B5判・152頁・図数:9枚

在庫状況 あり

遺伝性難聴の診療に関わる基礎的・臨床的事項を詳説。近年、遺伝学的検査の発達に伴い、難聴の原因遺伝子が多数発見されています。また、遺伝性難聴の遺伝学的検査は保険診療で行えることから、新生児聴覚スクリーニングと併用して、患者の発見が容易になってきています。そのため、遺伝性難聴の診療は耳鼻咽喉科・小児科医にとって、重要性を増しています。そんな状況にある遺伝性難聴の診療を、トータルに理解できる概説書です。
I 序論
 1 作成の目的
 2 作成方法
 3 エビデンスレベル、推奨グレ−ド
 4 作成上の留意点

II 総論
 1 対象疾患
 2 疾患概要、診断基準
 3 頻度、臨床的特徴
 4 タイプ分類・重症度分類
 5 診断・治療方針
 6 専門家による支援

III 各論
 1 GJB2遺伝子変異による難聴
 2 SLC26A4遺伝子変異による難聴
 3 CDH23遺伝子変異による難聴
 4 OTOF遺伝子変異による難聴
 5 ミトコンドリア遺伝子変異による難聴
 6 KCNQ4遺伝子変異による難聴
 7 TECTA遺伝子変異による難聴
 8 WFS1遺伝子変異による難聴
 9 COCH遺伝子変異による難聴
 10 MYO7A遺伝子変異による難聴
 11 CRYM遺伝子変異による難聴
 12 ACTG1遺伝子変異による難聴
 13 TMPRSS3遺伝子変異による難聴
 14 症候群性の難聴を伴う疾患
 14−1 Usher症候群
 14−2 Alport症候群
 14−3 EYA1遺伝子変異による難聴(BOR症候群)
 14−4 NOG遺伝子変異による難聴
 14−5 van der Hoeve症候群
 14−6 Waardenburg 症候群
 14−7 Treacher Collins症候群
 15 システマティックレビュ−・サマリ−
 
 索引
 ヒトゲノム研究の進歩により、従来原因不明であった難聴の原因遺伝子が明らかになってきた。それぞれの原因遺伝子ごとに臨床像が異なることが知られており、適切な介入・治療のためには遺伝子診断が有用である。難聴の遺伝子診断は、先進医療を経て2012年から保険診療として日常臨床で実施できるようになった。遺伝子診断により難聴の原因が科学的に解明され、難聴の程度、進行性の有無の予測、合併症の推測など、各々に適した個別化医療や予防について有用な情報が得られるようになっている。さらに、次世代シ−クエンサ−を用いた遺伝子診断の実用化も進められ、臨床現場で用いることが出来るようになった。また、2015年7月1日から「若年発症型両側性感音難聴」が指定難病として追加され、難聴の遺伝子診断の重要性がさらに増している。
 
 しかしながら難聴の遺伝子診断は急速に進歩した診療分野であり、診療の拠り所になる難聴の遺伝子診療の手引きが求められていた。本診療の手引きは日本聴覚医学会「先天性難聴遺伝子診断に関するアドホック委員会」、および厚生労働省「遺伝性難聴および外耳中耳、内耳奇形に関する調査研究班」、「難治性聴覚障害に関する調査研究班」が共同で出版作業を行ってきたものである。
 
 難聴の遺伝子診断については、2013年3月、日本聴覚医学会より「難聴遺伝子診断に関する提言」が示されている。それには、「難聴医療の現場で、主治医が十分な説明を行い、同意を得た後に実施する。『難聴のカウンセリング』および『遺伝カウンセリング』が共に実施できることが望ましい。」と明言されている。具体的には、I難聴医療が実際に提供できる、あるいは可能な施設との連携ができること、II臨床遺伝専門医(ないしは臨床遺伝カウンセラ−)による専門的なカウンセリングが可能、ないしはそうした施設との連携が可能である施設で検査が行われることが望ましいことが示されている。今後、難聴の遺伝子診断をもとに、適切な「難聴カウンセリング」および「遺伝カウンセリング」が実施され、原因診断にもとづいた新しい難聴医療が全国的に定着して行くことが望まれる。
 
 本書は耳鼻咽喉科医が適切に遺伝子診療を進める上で役に立つガイドライン的な役割を目指している。通常、診療のガイドラインは、その科学的エビデンスをもとに推奨レベルを示すのが基本的なスタイルであるが、遺伝性難聴のような希少疾患ではエビデンスレベルが低いのが現状であり、システマティックレビュ−に基づき推奨される治療法を記した。本書が、標準化された難聴の遺伝子診療が行われるために活用されることを期待している。

 2016年1月
                     日本聴覚医学会先天性難聴遺伝子診断に関するアドホック委員会
                                         委員長 宇佐美真一