帝王切開の強化書 Kaiserを極める

基本手技から底部横切開まで、術式のコツをわかりやすく解説。“考える帝王切開”の指南書が登場!

監 修 吉田 好雄
編 集 西島 浩二
定 価 8,640円
(8,000円+税)
発行日 2017/11/30
ISBN 978-4-307-30134-3

B5判・184頁・カラー図数:270枚

在庫状況 あり

帝王切開における基本手技から、応用手技である底部横切開法、腹膜外帝王切開、帝王切開時子宮摘出術まで、術式のコツをわかりやすく解説。手術手技の紹介のみに留まらず、その細部に至るまでを徹底的に分析、考察した、まさに“考える帝王切開”の指南書である。福井大学において長年培われた帝王切開術のノウハウが凝縮された本書は、研修医から熟練医まで、すべての産科医が納得できる1冊となった。
■第1章 通常の帝王切開

I はじめに 
II 通常の帝王切開の実際
術式の概要
術式の図解 
III 通常の帝王切開のポイント 
腹壁切開のコツ(1) ―恥骨結合を越えて―
腹壁切開のコツ(2) ―意識するのはど真ん中―
腹壁切開のコツ(3) ―メス刃の曲線を意識する―
腹壁切開のコツ(4) ―皮下脂肪の中央を切る―
安全な腹膜切開 ―腸管損傷を確実に避ける―
膀胱剥離は常在戦場 ―気持ちは常に前置癒着胎盤―
子宮筋層切開 ―very lowから入る意味―
大切な目印 ―子宮筋層マーキングの有用性―
子宮筋層切開(1) ―大胆に―
子宮筋層切開(2) ―0.5mm下の胎児の顔を思い浮かべて繊細に―
胎児娩出 ―“速ければ良い”は間違い―
胎盤娩出 ―自然に委ねることの大切さ― 
子宮筋層縫合(1) ―アンバランスな子宮筋―
子宮筋層縫合(2) ―効いてくる目印―
子宮筋切開創の縫合の最適解は?
子宮筋切開創の縫合法 ―二層縫合の利点―
膀胱子宮窩腹膜縫合の意義 
癒着防止材の使用について考える 
閉腹操作 ―すべての臓器、すべての組織を元あった形に戻す―
IV おわりに 


■第2章 早産児の帝王切開

I はじめに 
黒幕を炙り出せ ―陰に隠れる感染への対応― 
II 早産児の帝王切開の実際 
術式の概要 
術式の図解 
III 早産児の帝王切開のポイント 
早産児のストレス軽減のために 
子宮筋層切開の工夫 ―JかUかTか― 
幸帽児での胎児娩出を目指す ―Be born with a caul (lucky cap)!― 
術後血腫を作らないための工夫(1) ―筋層縫合は二層を絶妙の力加減で― 
術後血腫を作らないための工夫(2) ―子宮収縮薬― 
抗菌薬投与 ―あらゆる手段で黒幕を叩け!― 
感染性貯留液の排出 ―腐ったミカンは排除する―
効果的なドレナージ法を目指して 
帝王切開術後モデルの臨床へのフィードバック 
手術創(腹腔内)洗浄はドグマか 
IV おわりに 


■第3章 子宮底部横切開法

I はじめに
子宮底部横切開法は、あくまでも“last resort”!
II 子宮底部横切開法の実際
術式の概要
術式の図解 
III 子宮底部横切開法のポイント 
なぜ子宮底部を横切開するのか(1) ―胎盤を避けることの意味― 
Wardの手法とその限界 ―そして子宮底部横切開法の開発― 
なぜ子宮底部を横切開するのか(2) ―子宮底部の筋層は、体部の筋層よりもずっと薄い― 
なぜ子宮底部を横切開するのか(3) ―子宮の血流を意識すると、横に切りたくなる―
なぜ子宮底部を横切開するのか(4) ―驚異の子宮収縮:子宮底部を切っているのに子宮下方の胎盤が見える―
なぜ子宮底部を横切開するのか(5) ―子宮下部(下節)を切らない意味― 
どのように子宮底部を横切開するのか(1) ―胎盤辺縁(上縁)の描出― 
どのように子宮底部を横切開するのか(2) ―子宮筋層切開時の様々な工夫― 
子宮頸部からの膀胱?離(1) ―天下分け目の関ケ原―
子宮頸部からの膀胱?離(2) ―地獄の門が開かぬように、日々のトレーニングを―
二期的手術の捉え方 ―退くこともまた勇気― 
ターニケットの有用性 
胎盤?離の前に行う様々な工夫 
胎盤?離の前にできること(1) ―見ればわかる肉眼所見の重要性― 
胎盤?離の前にできること(2) ―術中超音波検査のもう1つの意味― 
胎盤?離後の確認は慎重に
止血操作の様々な工夫(1) ―U字縫合― 
止血操作の様々な工夫(2) ―Bakuriバルーンの使用― 
子宮筋層縫合 ―長所が短所にもなる子宮収縮―
次の妊娠への備え(1) ―子宮の再縫合手術―
次の妊娠への備え(2) ―術後管理の重要性― 
さらなる工夫 ―羊水の除去(愛仁会高槻病院)― 
IV おわりに 
すべての手術操作を落ち着いて行えることの意味


■第4章 腹膜外帝王切開

I はじめに
腹膜外帝王切開の登場と変遷 ―今なぜ、腹膜外なのか― 
腹膜外帝王切開の歴史と筆者らが目指すもの 
II 腹膜外帝王切開のトレーニング
一般開腹手術時に行うトレーニング ―腹横筋膜・腹膜・膀胱・中臍靱帯の解剖を知る―
トレーニング手技の実際 ―パワーソースの活用―
トレーニング手技の概要 
トレーニング手技の図解
トレーニング手技の有用性 ―膀胱を自在に扱う―
III 腹膜外帝王切開の実際 
トレーニング手技との相違点
術式の概要
術式の図解
IV 腹膜外帝王切開のポイント 
膀胱表面を広く露出するために
インジゴカルミン液腹腔内注入時の工夫 
中臍靱帯の取り回しこそ術式の要(1) ―中臍靱帯の切断― 
中臍靱帯の取り回しこそ術式の要(2) ―中臍靱帯付近の腹膜表面の露出―
腹膜からの膀胱遊離 
子宮下部からの膀胱遊離 
子宮下部(下節)横切開 ―子宮筋層マーキング―
忘れないで! レチウス腔へのドレーン留置 
膀胱遊離中に腹膜が破れたら
V おわりに


■第5章 帝王切開時子宮摘出術

I はじめに(子宮温存の工夫)
子宮摘出術はあくまでも最終手段 
残せる子宮、残せない子宮(常位胎盤早期?離) 
子宮温存への強い思い(前置癒着胎盤) 
II 二期的子宮摘出術の適応 
前置癒着胎盤の二期的子宮摘出術の適応 ―両手に余る子宮― 
III 二期的子宮摘出術の実際 
術式の概要
術式の図解 
IV 帝王切開時子宮摘出術のポイント
覚悟を支える知識と経験 
骨盤解剖の正しい知識 ―尿管の走行を知る― 
経験を学ぶ、真似る 
パワーソースを活用する 
膀胱剥離操作の要 
前が駄目なら、後方から攻める 
V 一期的子宮摘出術の適応 
適応は出血し続けている症例
VI 一期的子宮摘出術の実際 
術式の概要 
術式の図解 
VII おわりに

索引

COLUMN
●帝王切開の開腹法
●選択的帝王切開のタイミング
●bladder flapを作成するか?
●子宮筋切開創の縫合法
●臍帯結紮と胎盤娩出法
●帝王切開の閉腹法
●オキシトシン投与と頸管拡張
●帝王切開における感染予防
●早産に対する帝王切開は児の予後を改善するか?
●子宮筋の切開法
●娩出困難時の対処法
●帝王切開における血栓症予防
●癒着防止法
●肥満妊婦の注意点
●帝王切開のこれから
 帝王切開術は、産科医療の基本的な手術手技であり、必ず習得しなくてはいけない手技です。また、これを安全に実施することは、産科医としての必須条件です。
 帝王切開術の名称は、ドイツ語のKaiserschnittの直訳で、ラテン語のsectio caesareaを語源にしています。この起源に関しては、いくつかの説があります。最も有名なのは、Julius Caesar(100-44 B.C.)が腹壁切開で出生したことに由来するという説ですが、これは俗説であると考えられています。現在は、ローマ王Numa Pompilius (753-673B.C.)が、死んだ妊婦を埋葬する際に、必ず胎児を子宮切開して取り出すように義務づけた“lex regia”(王法)が、Julius Caesar 時代に“lex caesarea”(皇帝法)に引き継がれ、それがsectio caesarea になったという説が定説になっています。このように、帝王切開術は、古くから産科臨床において数多く実施されている基本中の基本術式です。しかしながら、個々の細かい点になると、どのように実施するのが良いか、エビデンスの乏しい部分が多い術式でもあります。
 産婦のみならず児に対しても十分な配慮が必要な術式であるため、それぞれの施設の流儀があり、それぞれの長所があります。最近のロボット手術をはじめ優れた医療機器の開発により、産婦人科手術のあり方も変わってきていますが、産科手術、特に帝王切開術に関しては、臨床現場での長年の経験から生み出されたものが多く、それぞれの施設の流儀も含蓄に富むものと感じられます。
 我々、福井大学医学部産科婦人科(旧福井医科大学)は、歴史は30年余と短く、産科の症例数もそれほど多い施設ではありません。しかしながら、京都大学医学部婦人科産科教室助教授から就任された初代富永敏朗教授は、いち早く関連病院内の全症例を共有化するシステムを構築され、現在年間4,000例あまりの分娩症例が教室員に共有されています。二代目小辻文和教授は、神戸大学時代に、手術の名手であり、『子宮頸癌の基本手術』の著者である東條伸平教授(3代目神戸大学教授、6代目京都大学教授)の薫陶を受けられ、教室主宰時には、「考える手術」が当教室に深く根を下ろしました。
 本書は、私たちのこれまでの帝王切開術に関する工夫をまとめ上げたものです。帝王切開術という古くて、かつ現在も問題が山積している術式に対して、地道にかつ大胆に取り組んだ内容を、平成28年度(2016年度)福井大学医学部産科婦人科に在籍したすべての医局員によりまとめ上げました。特に「子宮底部横切開法」「腹膜外帝王切開法」の項は、小辻文和名誉教授に、多大なご指導をいただきました。編集は、教室の産科部門の責任者である西島浩二講師にお願いいたしました。
 最後に、本書が婦人科手術の名著『実地婦人科手術』(遠藤幸三著)を手掛けた金原出版から発刊できることを、大変光栄に思います。金原出版の前田依利子様、藤嶋也寸彦様、瀧澤浩利様には、深謝申し上げます。

2017年11月
吉田 好雄
帝王切開の帝王学!
本書は帝王切開術の基本手技から早産時帝切、底部横切開、腹膜外法などの応用編まで、多くの図を用いつつ、初心者でも安全に行えるようにわかりやすくコツを披露した実用書である。長年、本術式を開発・改良してきた教室ならではの生きたノウハウがふんだんに詰め込まれている。その一方で、世界でもっとも多く行われる開腹術でありながら根拠なき伝習や慣習による部分も多かった本術式を、細部に至るまで徹底的に考え尽くし、そこから得られる結論を明快に導き出した、手術書というよりむしろ学術書でもある。そのため実用的でありながら随所に著者らの手術に対する思想が感じられ、ひとつひとつ納得しながら読み進めることができる。精読すれば、研修医から熟練者まで必ず得るものがあるだろう。

京都大学医学研究科 婦人科学・産科学分野
教授 万代 昌紀