肥満と消化器疾患 第2版

肥満と消化器疾患のかかわりについて,最新知見を完全網羅!

編 集 日本消化器病学会
定 価 3,300円
(3,000円+税)
発行日 2015/04/30
ISBN 978-4-307-10171-4

B5判・240頁

在庫状況 なし

「肥満と消化器疾患」第1版が2010年に上梓され、肥満がNASHをはじめとする消化器疾患や消化器癌のリスクを高めることに注目が集まってきた。刊行以来5年間で、特に DPP-4阻害薬の普及,肥満外科手術の保険収載など臨床に目覚ましい進歩がみられた。また腸内細菌叢、食欲調節ペプチドの一塩基多型に関する新たな知見も明らかになったため、このたび本書を改訂した。消化器病診療,肥満診療にあたるすべての医師必読の一冊である。
I基礎的領域
 1.肥満の発症機構
 2.内臓脂肪型肥満のメカニズムと疾患への関与
 3.摂食コントロ−ル 中枢性・末梢性メカニズム
 4.肥満と腸内細菌叢
 5.肥満と消化管ホルモン
 6.肥満と炎症・発癌・免疫

II臨床的領域
 1.肥満と肥満症の疫学 定義と診断
 2.肥満症とメタボリックシンドロ−ム
 3.肥満と関係のある消化器疾患
  1)肥満と食道・胃疾患
  2)肥満と大腸癌
  3)肥満と NAFLD・NASH
  4)肥満と C型肝炎
  5)肥満と胆石
  6)肥満と膵疾患
 4.肥満の治療
  1)栄養療法と運動療法
  2)行動療法と薬物療法
  3)手術療法

用語解説
索 引
第2版 序
 このたび、日本消化器病学会編集の「肥満と消化器疾患(第 2 版)」が完成し、金原出版社から上梓されることになった。初版の出版が 2010 年 3 月 31 日なので、ちょうど 5 年ぶりの改訂となる。今ではすっかり定着した感がある「メタボリックシンドロ−ム」であるが、第 1 版の作成が開始された 2009 年当時は、まだ耳慣れない言葉であった。メタボリックシンドロ−ムの基準がわが国で作成されたのが 2005 年。その該当者や予備群を減少させ、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などの生活習慣病の発症や重症化を予防するため、特定健診(特定健康診査)が導入されたのが 2008 年の 4 月である。国民の長期的な健康を考慮した国をあげての取り組みであり、国民を対象とした一種の大規模介入試験であった。
 このように、内臓脂肪型肥満と、心血管疾患や糖尿病などの生活習慣病との関連性について認知度が高まる一方、肥満が逆流性食道炎、非アルコ−ル性脂肪肝炎、胆石症などの消化器疾患や、肝臓癌、大腸癌、膵臓癌などの消化器系悪性腫瘍のリスクを高めることについては当時十分に知られていなかった。日本消化器病学会は、肥満が obesity pandemic と呼ばれるように、欧米諸国のみならずわが国を含むアジア諸国でも大きな社会的問題となりつつある状況を考慮し、菅野健太郎前理事長の強いリ−ダ−シップによって編纂されたのが、第 1 版の「肥満と消化器疾患」である。肥満の発症機構、内臓脂肪型肥満のメカニズム、摂食コントロ−ルの中枢性・末梢性メカニズム、肥満と腸内細菌叢の役割、肥満と消化管ホルモンの関係、炎症、発癌、免疫調節と肥満など基礎知識を解りやすく解説し、そのうえでメタボリックシンドロ−ムの臨床や、肥満と各種消化器疾患、消化器癌との関連、肥満の治療法を具体的に示した斬新な解説書であった。消化器領域においても肥満が重要なテ−マであることを認識しつつあった消化器専門医のアカデミックな興味を刺激するとともに、日常臨床にも役立つ有用な知識を提供する役割を果たしたと考えている。また、消化器内科、消化器外科、糖尿病・代謝、内分泌や心身内科の専門家が、領域を越えて肥満とその診療を解説した書籍としても注目すべき取組みであった。
 初版から 5 年が経つが、この間の肥満に関する研究の進歩には目を見張るものがある。消化器はエネルギ−摂取と代謝を司る生体にとって中心的臓器であり、消化器と肥満の関連は多分野・多領域の重要なテ−マとなりつつある。このような状況を踏まえ、日本消化器病学会の「肥満・栄養と消化器疾患委員会」は、最新の情報をレビュ−し、この領域における最近の進歩を総括することを目的に「肥満と消化器疾患」を改訂した。第 1 版の執筆者が改訂も担当し、初版の構成を保ちつつ、新たな情報を盛り込んだ読みやすい内容となっている。本書が日本消化器病学会の会員諸氏ならびに、肥満の診療や研究に携わる多分野、多職種の方々にも役立つことを願っている。また、第 1 版から本書の編纂に携わり、今回の改訂も担当された恩地森一理事ならびに本書の執筆を担当された多くの先生方のご努力に心より敬意を表したい。

 2015年3月
                                       日本消化器病学会理事長
                             (東北大学大学院医学系研究科消化器病態学)
                                             下瀬川 徹